ブレイブハーツ ~もう一つのハイスクール・フリート~ 作:ISOKAZE
海上自衛隊で得た知識などを使いつつ書いていきますが、ミリタリー描写に自信があるわけでもありません。また、文章力にも乏しく作品内の描写や表現に違和感を感じられるかも知れませんが、暖かい目でご覧いただけると嬉しいです。
なるべく連載していくつもりではありますのでよろしくお願い致します。それではわたしの描くハイスクール・フリートの世界観・ストーリーをお楽しみください。m(__)m
残暑が遠のき、季節は露骨なほど秋らしい顔を見せる。たくさんの思い出が詰まってる場所、『横須賀女子海洋学校』でもしっかり季節を感じられた。
(あれから…もう9年か……)
営門を通り身分証明書を左胸のポケットに納めると、ビジネスバッグと紙袋を片手に教官事務室がある本校舎に向かって歩く。道中この学校の制服を着ている生徒とすれ違う。
明るく元気いっぱいで挨拶する彼女に、こちらも笑顔で答える。この日は日曜日であり休業日課になっている。その為、すれ違う生徒の人数も少なければ、敷地内も人気が少ない。
(……変わってないわね)
無人飛行艇の着陸場が近くにある本校舎へ入ると真っ直ぐ教官事務室に向かった。
コンコン。ノックを2回してから入室した。
部屋には三人の濃いベージュ色の海洋学校教官指定の制服を着た隊員が居た。スーツ姿でビジネスバッグと紙袋を持った人物が入ってきて一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに察したのか全員姿勢を正す。
「初めまして、来週14日から『横須賀女子海洋学校教務部臨時教官』として着任します、三等保安監督正.水原 三玖と申します。着任前のご挨拶に参りました」
組織の儀式めいた挨拶を終わらすと、一人の教官が口を開けた。肩章には『三等保安監督』の階級章が見えた。
「わざわざありがとうございます。教務部主任教官をしています、三等保安監督.古庄 薫といいます。これからよろしくね」
凛とした態度でカッコ良く見えた古庄三監の第一印象は『真面目な人』だと思った。僅かな期間とはいえこの人の同僚として働くことになると思うと、引き締まる思いがした。
あと二人との挨拶も終わらすと、紙袋の中に入れていた手土産(中身は鳥取県の『砂の丘』というクッキー。仕事先で買ったもの)を渡した。
「ごめんなさい。今校長が出ててね、もうちょっとだけ待ってて」
「あ、はい。大丈夫です」
古庄三監に案内されて来客用のソファーに腰を下ろすと、出された珈琲を一口飲む。改めて教官事務室を見渡す。内装は若干変わっていたが、飾られている装飾品などはそのままだった。
「校長から聞いたのだけれど、あなたはこの学校の卒業生なのよね?確か…第12期生」
「ええ。……そうです」
「私、ここに来る前は教養学校の教官をしていたのよ。その時あの事件の報告書を見たことがあるのよ…」
「………あれは、忘れはしませんよ」
ソファーから立ち上がった私は、各期の終業アルバムが納められてる棚から『第12期生終業アルバム』を取り出すと、ある一枚の写真が印刷されているページを開いた。
その写真には、『第21期生『晴風』クラス』と右上に記されており、見るからに集合写真だった。写真に写る生徒たちに囲まれている外国人らしき女子生徒の姿もあった。
これは日本未曾有の大事件に対し、勇敢にも挑み戦った学生たちの物語である。
相模湾から抜け、辺り一面に広がる大海原。太陽の日差しの波をかき分けて航行する一隻の艦(ふね)。旧軍時代から引き継がれる塗装に、所属先を表す赤いライン。マストの旗竿に風を受け靡くのは『横須賀女子海洋学校』の旗だった。
世界からも注目を集める世界最大クラスのかつての戦艦である大和型が一般客を乗せ『体験航海』中であった。
『教練、対水上戦闘用意!繰り返す…』
艦内号令と共に鳴り響く警報。艦の乗員全員がそれぞれの配置に急いで向かう。
その慌ただしさと緊迫感は艦橋に居た『彼女』たちにも伝わっていた。目の前の指揮官たちが、速やかに艦の戦闘体制を構築するために、一瞬も無駄な動きを見せなかった。
『射撃指揮所配置よし』『前後部応急班配置よし』
伝声管を伝って響き渡り聞こえてくる各部署からの「配置よし」の報告を副長が取りまとめ艦長へ報告する。この一連のやり取りを観ていた彼女たちの表情も真剣な眼差しへと変わっていた。
『各部署配置よし。戦闘用意よし。艦長』
艦長への報告終わりと同時に『ピッ』という電子音が聞こえた。艦長の隣に立っていた女性が手にしていたストップウォッチで計測していたタイマーのスイッチを押し計測を止めた。
『よし。ここまで。上出来よ』
「タイムは8分19秒でした。訓練教本に記されている時間内です」
すると、自然と『彼女』から拍手が起こった。彼女の気持ちを代弁するならきっとこんな感じだろう。自分達が目指しているのは、目の前の彼女たちみたいな『ブルーマーメイド』だ、さすが『武蔵』の乗員だと。
「ねぇねぇ…あなたもブルマーを目指してるの?」
偶然隣にいた知らない女の子に話し掛けられた。その子はこの訓練風景に心打たれたのか目を輝かせていた。
「うん!もちろんだよ。わたしはぜーったいに立派なブルーマーメイドになるんだからっ!」
『彼女』は笑顔で声を高らかに宣言する。この頃から、既にもう『彼女』の夢に向かう航路は完成していたのかもしれない。
時刻は16時になろうとしている頃だった。体験航海を終えた艦(ふね)が、次々と神奈川県横須賀市のブルーマーメイド『横須賀泊地』へと戻ってきた。
この中には、人々の注目を集める大和型2番艦である大型直接教育艦『武蔵』(JBNS-Y-118)の姿もある。もやい支援作業員たちが担当艦が係留する埠頭に整列する。
体験航海に参加した『水原 三玖』(みずはら みく)は『武蔵』の2番砲搭上から手摺に掴まりながら入港作業を見学していた。
「もやいの順序!3番を2番。1番を0番。2番を3番ピットにお願いします!」
小さいメガホンを首にぶら下げる作業長らしい学生が、埠頭にいる作業員にもやいの順番と係留するピットを伝える。
両手に革手をはめて、外舷索(作業時で主に使われるロープ)の索端ををもやいのアイの部分に結び付ける。サンドレット要員も、投射に備えていた。
「あかり!あの紐はね『サンドレット』って言うんだよ。あの紐の先に重りが付いてるんだけど、あれを陸に投げてからもやいに結んで持っていくの」
「へぇ~…凄いねぇ。みくって物知りなんだね」
もうすっかりと打ち解けた様子の二人。相手のあかりは三玖とは同い年で、両親と一緒にブルーマーメイドフェスタ(BMF)に来ているという。そして彼女もブルーマーメイドを目指している。
「うん…。わたしのお母さんもブルーマーメイドだったからね」
「そうなんだ。羨ましいなぁ~」
三玖の母親は、ブルーマーメイド救難課に所属していた。数々の海難事故に出動して、沢山の功績を貰った優秀な隊員だった。
タグボートが二隻『武蔵』に接舷し、徐々に埠頭へと寄せられる。最初のもやいがピットに係留されると同時に、艦首旗が揚げられ、そして中部作業員により舷梯が降ろされる。
「本艦にご乗艦ありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい」
『武蔵』の乗組員たちが埠頭に降りようと舷梯に向かって伸びるお客さんに敬礼し笑顔で見送っていた。その列の中に居た穂希とあかりも『武蔵』での楽しかった時間が終わろうとしていることに少し残念な気持ちだった。
「ねぇ…君?ブルマーを目指してるんだよね?」
「……え?」
「…あ」
突然聞こえたその声に反応した三玖とあかりは、声がした方へ顔を向けた。視線の先に居たのは、士官服を身に纏い艦長だけが被ることを許されてる帽子を被っていた。間違いなく『武蔵』の艦長だった。
「ああ!……艦長さんだ!」
艦全体の指揮を執る艦長は、ブルーマーメイドを目指す彼女たちにとって『憧れ』だ。そんな格好いい艦長に声を掛けて貰えたことで、少し沈んでいた心が再び浮き上がる。
二人が気づいたことを認識すると、『武蔵』の艦長はゆっくりと笑顔で歩み寄ってきた。側まで来ると、膝を下ろし目線を同じように下げる。
「あなたたち、ブルーマーメイドを目指してるのよね?」
「うん!お姉さんたちみたいにカッコいいブルーマーメイドになるの!」
「わたしも!カッコいい艦長さんになりたい!」
「ふふ、ありがとう。頑張ってね。応援するよ」
そう言うと、艦長は三玖とあかりのそれぞれの頭に手を置いた。優しい口調と暖かい手の温もりが伝わってきて、自然と笑顔が溢れてくる。
「ありがとう!」
手を振って見送ってくれる艦長に、三玖も最後まで手を振り続けた。数時間ぶりに埠頭に降り立った彼女は、改めて『武蔵』を見上げた。
丁度その時、父の声が聞こえた。どうやら舷梯を降りる姿見えたので、迎えに来てくれたようだった。その声に反応すると、笑顔のまま走って戻った。
それから7年の月日が流れた……。
神奈川県 横浜 伊勢佐木町ー
神奈川県 横浜市中央に位置する『伊勢佐木町』。ここが彼女の生まれ育った場所だった。都会というほどでもなく、それほど田舎でもない…。ごく普通な感じの町である。
駅周辺と地下にある地下街は特に栄えている場所であり、休日になると多くの家族連れなどで賑わいを見せていた。
暗闇に包まれていた町が徐々に明るさを取り戻してくる頃。陽が昇り初める。今日もいつもと同じ朝を迎える人も多いだろう。だが、この日は彼女にとって自分の運命が決まる重要な一日の始まりだった。
彼女の部屋に目覚まし時計のアラームが鳴り響く。毛布から手を伸ばし目覚まし時計のアラームを止める。上体を起こした穂希は、まだ眠たさが残り目元を手で擦って時間を確かめた。
そして、彼女は目を疑った。
「…ヤ…ヤバい。ヤバい!遅刻するぅ~!」
すっかり眠気が覚めると急いで学校に行くため、顔を洗ったり制服に着替えたり、準備を始めた。
すぐに出発できる準備を整えた三玖が、リビングに行くとそこには誰もいなかった。朝食のトーストと目玉焼きとサラダがテーブルに置いてあったが、ゆっくりと食べてる時間が無かったのでトーストを一噛りして、家を飛び出した。
彼女は学校までの通勤用として、小型スキッパーを保有している。三玖の住む伊勢佐木町から学校まではスキッパーで20分程の距離だ。
係留場まで走り、彼女のオレンジ色の小型スキッパーが姿を表す。腕時計で時間を確認すると、間に合うかどうかのギリギリの時間だった。
スキッパーに乗り込んだ三玖は、エンジンをかけると学校に間に合うように徐々に違反ギリギリ速度までを上げていった。空中に舞い上がる水しぶきが太陽の日差しに照らされキラキラと輝きを見せていた。
『ブルーマーメイド 横須賀女子海洋学校』は、関東地区の養成学校である。多くの女性に人気の職業のため、毎年入学時の倍率が高く入学するのも難しい学校なのだ。
横須賀女子海洋学校の敷地内の至るところには、桜の木が植えられている。春の時期になると桜は満開に咲き、新しい門出を迎えた新入生、新学期を迎える在校生を出迎えてくれる。今日も満開に桜が可憐に咲き誇っていた。
そしてこの日は、横須賀女子海洋学校にとって新しいスタートの始まりとなる日でもあった。
職員室に隣接する校長室には、ブラインドの隙間から射し込む日射しがトロフィーなどの装飾品が置いてある棚の扉のガラス窓に反射する。朝早くから書類仕事をこなしていた校長は目の前のパソコンから目を離し、椅子の背もたれに体重を掛ける。
丁度その時、職員室側の扉から声が聞こえた。
「……校長、失礼します」
「…入っていいわ」
入室を許可すると、姿勢を正しパソコンをスタンバイ状態にしてから閉じる。ブルーマーメイドの制服に身を包む教育部先任教官が、入室すると敬礼をする。
「昨日アナポリス海洋準備校から連絡がありまして、今期の合同海洋実習には問題なく、我々の実習スケジュールに合わせられるとのことです」
「…そう。良かったわ。なら当初の予定通りスケジュールで進めていきましょう」
「はい。分かりました。各教官にもそのように伝えます」
日本に存在する『呉』『横須賀』『佐世保』『舞鶴』の女子海洋学校では、一年次に近海での実習と二年次に遠洋での実習など、入学直後から艦を運用し、将来ブルーマーメイドになるための基礎的知識から状況に応じ必要となる専門的知識の取得、技能の向上を図る。
それはイギリスの『ダートマス』、アメリカの『アナポリス』『ニューポート』『サンディエゴ』、ドイツの『ヴィルヘルムスハーフェン』『キール』、イタリアの『タラント』、フランスの『ブレスト』にある女子海洋学校でも同様である。
因みに『呉』『ダートマス』『アナポリス』は三大女子海洋学校と呼ばれている。(歴史の古さと規模から)
今回、一年次で第二回目となる海洋実習では、前回イギリスの『ダートマス校』が参加したように、アメリカの『アナポリス』から学生が留学してくる。
用事を済ませ退室する前に、再び敬礼をして部屋を後にする。校長は今回の実習が当初の計画通りに無事に行うことが出来ることに安堵し、息を漏らす。そして閉じていたノートパソコンを立ち上げた。
「…けどまだ、これからよね」
本校の生徒のクラスは乗っている艦艇の種類によって分けられている。例えば『武蔵』のような超大型直接教育艦から『比叡』『山城』の大型直接教育艦までの戦艦クラスを第一教育舎の二階と三階。『伊吹』や『生駒』『鳥海』のような大型巡洋直接教育艦から、『長良』『五十鈴』の小型巡洋直接教育艦までが第一教育舎の三階から四階まで。『陽炎』や『不知火』のような航洋直接教育艦は、第二教育舎の二階から四階まで。
その他の支援教育艦は、第三教育舎で教務を受ける。
登校時間ギリギリに学校に到着した三玖は、走って第二教育舎に向かう。整えていた肩まで伸ばしている髪の毛が風で靡く。今の季節は夏で、朝とはいえジワジワくる暑い日差しと紫外線が彼女を襲う。
息を切らしながら階段を掛け上がると、彼女のクラスが程なくして見えてくる。ペースを落とさずに教室に扉を開けて駆け込む。汗をかいていたせいか、冷房の冷たい風が三玖の体を一瞬にして冷やす。
着ていた制服も汗で濡れていた部分もあって、ブラの肩ひもや後ろのフックも若干透けてしまっていた。
両手を膝について倒れ込む勢いのまま、息を切らす三玖を心配してか周りに人だかりが出来た。
「…良かったぁ。事故にでもあったかと思って心配したんだから」
「…スッゴい汗……大丈夫?…三玖」
最初に声を掛けてくれたのが、茶髪でショートヘアーで左の前髪にヘアピンをしているのが特徴の荒木 憂美(あらき ゆうみ)。航海長であり、彼女とは実は幼馴染みで幼稚園の頃から一緒だった。とても気さくで話しやすい。その為、友達も多い。
そして、黒髪のポニーテールでなかなかの胸の大きさを持つ、ちょっと大人しげな艦長の水無月 環奈(みなづき かんな)。人見知りで入学当初から、友達作りに悩んでいた彼女の力になった。今では、同じクラスの子となら普通に話が出来るようになっている。
「はぁ…はぁ……。だ…大丈夫。それより、みんな席に着かないと教官が来ちゃうよ」
「…そうだね。三玖ちゃんも来たことだし、みんな席に着こうか」
「「は~い」」
憂美がみんなを席へ着かせようとしている最中、呼吸を整えた三玖は前列の左側の席に着席する。左隣には環奈と右隣に憂美で役職が上の者から順番に座る席順である。
鞄ならノートや筆記用具を取り出した三玖。丁度、始業のチャイムがスピーカーから流れると、右から来る視線が気になり顔を向ける。
「…今日もまた頑張ろうね。副長…」
「…うん。今日も一日頑張ろう!」
憂美の言葉に三玖も笑顔で返す。三玖の制服には襟下のループとスカーフ通しを通って、副長の特徴である金色の肩章が付いている。
チャイムが鳴りやむとほぼ同時に、彼女たちを担当する教官が教室へ入る。教官が教壇まで来ると、艦長の憂美が『起立』と号令を掛ける。
「……礼!」
『おはようございます!!!』
ここでもまた、十度の敬礼。
「おはよう!」
『……着席!』
これらも規律正しく、秩序を保つための日頃の習慣である。
「…みんな、今日も元気でよろしい。それじゃあ、出席を執るわね」
教官はクラス名簿を手に取ると、いつもと変わらない出席点検を始める。クラスには30人の生徒がいて、みんながそれぞれの『科』に別れている。
最後の生徒の名前を呼び終え、名簿を教壇の上に置く。
「それでは『晴風』クラス。みんな、今日も頑張りましょう」
近年、海上交通の発達により多くの人々が海を往来するようになった。そんな海の安全を守る乙女たちー『ブルーマーメイド』
そのブルーマーメイドの養成校の一つ『 横須賀女子海洋学校』で学ぶ、小鳥遊 三玖他30名の『晴風』クラスの壮絶な物語はまだ始まったばかりだ。
ぐぅぅぅぅぅ~~。
「え……!」カァァァ…
「…ん?」
朝礼中の教室に、響いた異音な音。周囲にいた者はそれがなんの音なのかはすぐに分かった。
あまりの恥ずかしさに赤面する三玖。そして彼女は思い出す。朝ごはんを…トーストを一口か食べていなかったことに……。
三玖の様子がおかしいと感じた環奈と憂美が察し、気づかなかったふりをするが、おどおどしさが表に出ており逆に違和感を覚えてしまう。
(も…もう…。は…恥ずかしい……)
朝からついていない三玖であった。
アメリカ合衆国 ーメリーランド州 アナポリスー
三日月が綺麗に見える天気が良いこの日。アナポリスの街は家の明かりがとても幻想的に見えていた。
この街で暮らす一人の少女がいた。彼女の名は、ローズマリー・パーカー・チェンバース。彼女は父親と母親との三人暮らし、両親とも有名企業に勤めている普通の家庭だったが、そんなローズマリーが目指している仕事があった。それは……。
「ねぇ…。今日学校休んでたけど大丈夫なの?風邪だって聞いたけど」
(…うん。ごめんね。ローズ)
お風呂上がりでパジャマ姿。腰まである黒髪を櫛で梳いていたローズマリーは、同級生と椅子に座り電話をしていた。
「今日さ……教官から聞いたけど、やっぱり次の遠洋航海は“日本”で決定だって」
(そうなんだ……。これで憧れの“日本”に行けるね。ローズも生きたがってたから良かったじゃない…)
「な…なに言ってるのよ。そ…そんなことないんだから……」
(またまた…。そんな…こといっちゃてさ…)
電話のスピーカーから聞こえてくる、少し鼻声気味の同級生の声だったが、返しもいつも変わらず安心する。
(明日はちゃんと学校に行けそうだから…。多分…クリスも…リゼルも暇そうにしてたでしょ…)
「流石だね。…二人ともセレーナが居なくて退屈そうだったよ。遊び相手が居なくてさ」
櫛を二階の自分の部屋からベランダに出ると、三日月と一緒に煌めく星空がローズマリー瞳に映る。
「ねぇ…セレーナ。“日本”に言っても私たちの実力…。存分に見せてあげましょう。私たち『アイオワ』クラスの…」
(…そうね。存分に暴れましょう。頼りにしてるわ。……副長)
日本から離れた、ここ『アメリカ』でもブルーマーメイドを目指す少女たちの物語が既に始まっていた。
「次回 第二話 『遠くの地に芽吹く風』」
『ブレイブハーツ ~もうひとつのハイスクールフリート~』
「第一話 夢見る仕事を目指して」
ー主要登場人物紹介ー
ー『横須賀女子海洋学校 教育部 初等科』ー
・陽炎型航洋直接教育艦 JBNS-Y-467 『晴風』クラスー
① 水原 三玖(みずはら みく)15歳 副長/艦橋要員
本作の主人公。7月21日生まれ。茶色けのあるセミロングでスタイル抜群。だが胸のサイズは標準?
伊勢佐木町で生まれ育ち、現在は父親と二人暮らし。父親は海運業に勤めており、民間客船の船長をしている。母親は優秀なブルーマーメイドだった。
② 水無月 環奈(みなづき かんな)15歳 艦長/艦橋要員
『晴風』艦長。8月14日生まれ。人見知りでおとなしい性格だが、思いやりもありクラスのみんなからも好かれる。地元で生まれで、幼い頃から親しみがあったブルーマーメイドを志す。
③ 荒木 憂美(あらき ゆうみ)15歳 航海長/艦橋要員
『晴風』航海長。10月4日生まれ。三玖とは幼馴染みで、小さい頃から一緒だった。それゆえ中学の頃も抜群の愛称のよさでピンチを乗り切ったこともある。明るい性格のためか、クラスのムードメーカー的な立ち位置でもある。
アメリカ合衆国 メリーランド州
ー『アナポリス海洋準備校 教務部 中等科』ー
・アイオワ級超大型直接教育艦 ABNS-A-601『アイオワ』クラスー
① ローズマリー・パーカー・チェンバース 15歳 副長/艦橋要員
アナポリス出身。腰まである黒髪ロング。両親と三人暮らしで、とある出来事からブルーマーメイドを目指すようになった。その成績の良さから、『アイオワ』の副長になった。
② セレーナ・スティーヴンス・オズワルト 15歳 艦長/艦橋要員
③ クリスティー・ドイ・ヒルティ
④ リゼル・サージェント・シュナップ
『~詳しくなりたい海上自衛隊~』
『 その① 【各分隊の色】について』
海上自衛隊の各部隊において、隊員達は各自それぞれの『分隊』に配属され、日々の職務に当たっている。海上自衛隊までは、全部で五つからなる分隊があり、各分隊で所属が瞬時に分かるよう色でも区別されている。
その① 『第一分隊』【赤色】(射撃.射管.運用など)
その② 『第二分隊』【黄色】(航海.電測.通信など)
その③ 『第三分隊』【青色】(ガスタービン.ディーゼル.電機など)
その④ 『第四分隊』【灰色】(給養.補給.衛生など)
その⑤ 『第五分隊』【黒色】(飛行)
従来の青色の作業服を着用している隊員の名札には所属部隊名と所属マークならびに分隊の色が記されている。見る機会があれば探してみて下さい。
(因みに筆者は、第一分隊なので赤色です)(^_^;)
第一話 ご覧いただきありがとうございました。上手ではないですが、暖かく見守ってください。
さて今回の話の時系列としては、水原 三玖という学生を主人公として、本編での主人公岬 明乃たちが入学してくる前になります。三玖が副長の航洋艦『晴風』を中心に今後物語が進んでいく予定です。
また、海外からの留学艦としてアメリカを選び、公式様の方でまだ出ていないアメリカの教育艦ですので、難しいところではありますが頑張って描いていきたいと思います。
私が考えた作中に登場する『ピンチ』に立ち向かう『晴風』を是非とも最後までご覧下さい。。