ブレイブハーツ ~もう一つのハイスクール・フリート~   作:ISOKAZE

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第一話お読み頂きありがとうございます。ISOKAZEです。

第二話は、海外の学生たちから話が始まります。ミーナも登場しますよ。


第二話 遠くの地に、芽吹く風

ドイツ・ニーダーザクセン州に属する『ヴィルヘルムスハーフェン』は元々片田舎だが、昔から海軍の基地が置かれており今では大きな港町へと発展している。

 

ここにドイツのブルーマーメイドを養成する学校の一つ、『ヴィルヘルムスハーフェン 海洋準備校』があった。10歳から始まる中等教育の中で成績上位者しか入ることを許されない最大級の海洋学校である。

 

ドイツ・ニーダーザクセン州 ヴィルヘルムスハーフェンー

 

『ヴィルヘルムスハーフェン 海洋準備校 教務部 第二隊舎』

 

船舶航行に必須となる『見張り・霧中航行』の教務中。一人の少女が前回の教務で習ったことの復習として、先生に指名されていた。

 

「前後の続艦の針路、速力の変化。他艦の礼式日課……機械、舵等の錯誤……。前後の航跡波の状態……自艦の行脚、振れ廻りの状況です」

 

「よろしい。前回も言ったように、これらは変化を認めた場合には速やかに報告をしなければなりません。ヴィルヘルミーナは良く復習してますね」

 

教官から誉められ彼女は思わず嬉しくて口元がゆるむ。着席し姿勢を整える彼女に後ろから教官にバレないよう声を掛ける生徒がいた。

 

「流石ミーナ…やりますねぇ…」

 

「ローゼ…ほら、ちゃんと教務受けないと駄目だろ?」

 

「ごめんごめん…」

 

その少女の名はヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルク(本人は同級生などに“ミーナ”と呼ばせてる)で、二年前にこの学校に入校した。

 

ブルーマーメイドになるため上級学校に入校するのを目標に、毎日勉学に励んでいた。

 

午前中の教務が終わり、昼食を採るため本校舎の内にある食堂へとミーナは友達と渡り廊下を歩いていた。

 

「マスト灯が…たしか225度で、……左右舷灯が112度30分。」

 

ちょっとした移動時間でもミーナたちは教務の復習をしていた。マスト灯・左右舷灯の視認範囲を答えているのが、レターナ・ハーデガン。おてんば娘でミーナの幼馴染み。田舎生まれ田舎育ちで、アホ毛が一本あるのが特徴。

 

「船尾灯が135度で、引き船灯が『船尾灯と同一の特性を有する黄灯』のことを指す…か」

 

そしてこの少女はミーナの後ろの席で、ローザ・ヘレーネ・カールス。シフォンショートボブでドジっ子で天然キャラ。

 

「…どうしたんだ?移動中でも勉強って…らしくないな」

 

普段の様子と違い違和感を感じたミーナは、体調でも悪くしたのかと心配の眼差しを向ける。見つめられ恥ずかしくなったのか、赤面し慌てて二人は否定する。

 

「だっ…大丈夫だって!」

 

「ミーナに負けていられないから…」

 

ミーナは二人の弁解を聞いて、「そっか…」と安心した表情をしたかと思えば、まだ何か引っ掛かったようで険しい顔になった。

 

それを見て、レターナとローザは一瞬顔を見合わす。そしてミーナは腕を組み目を閉じてなにやら考え始めた。

 

「…いや。ローザは分かるが、レターナ…医務室に行こう」

 

「……えっ!?」

 

目を見開き、レターナの手を取って医務室へと歩くミーナ。一瞬のことで驚くレターナとローザ。

 

「いやいやいやいや、疑いすぎ疑いすぎ!大丈夫だってミーナぁ~!」

 

ミーナの手を離そうともがくレターナ。そんな賑やかな彼女たちの前に立ちはだかるように道を遮る人影があった。

 

「随分と楽しそうですわね。あなたたちを見ていると、わたくし達にまで“バカ”が移りそうですわ」

 

「お前は…確か……ローゼr」

 

「リーゼロッテです!何度言ったら覚えてくださいますか!」

 

入学式当日からミーナと色々あったリーゼロッテは、旧貴族アルノー家の出身。彼女のとなりにはいつも一緒にいるアウレリアがいた。

 

「何だ…。あっ…もしかして、自分たち『上流階級』には私たちみたいな付き合い方が出来ないから羨ましいとか思ってるのか?」

 

「何ですって!?」

 

(こんなやり取りも見慣れてきたなぁ…)

 

「あっ…ミーナ。食堂に早く行かないと“クロイツェル”が待ってるよ」

 

そう言いながらレターナが腕時計を見せてくる。

 

「あっ……ごめん。リーゼロッテ、今急いでるからまた今度」

 

「ちょ…ちょっと…」

 

ミーナたちは二人に謝ると颯爽と食堂の方へ駆け抜けて行った。ただただリーゼロッテとアウレリアは、三人の後ろ姿を見るしかなかった。

 

「はぁ……まったく彼女たちは変わりませんわね」

 

 

 

「遅いな…」

 

待ち合わせの時間になっても相手の姿が見えないことに彼女は不安を感じた。食堂はセルフ方式になっており、入り口で待っていた彼女の目にはカウンターにトレイを持って並ぶ生徒の列が映っていた。

 

「テア!すまない。遅くなって」

 

走ってここまで来たのか、息が上がっていた三人が彼女の前に現れた。

 

「……三人とも大丈夫か?」

 

心配する彼女の名は、テア・クロイツェル。テアの親は海軍大将とブルーマーメイド。入学時の成績は満点で、その容姿からくる二つ名が“海の妖精”である。

 

トレイにご飯を乗せ空いていた席に座る。ミーナにとってこの時間は幸せな一時なのだ。その理由は、テアの仕草一つ一つが可愛くて、ついつい見とれてしまうことだった。

 

「ミーナ。そんなに見られると…食べにくいんだが……」

 

「…すまない。でもテアが可愛すぎて…」

 

「むぅ……」

 

幸せそうな表情を向けて話してくるミーナに、テアは頬を赤くして目をそらす。何度も一緒に昼食を食べてきたが一向に慣れない。

 

もしかして一緒の艦に乗ってもずっとこうなのはと、頭の隅で考えてしまう自分がいた。今思えば、ミーナとの出会いは良い出会いとは決して言えないものだっただろう。

 

最初はミーナを拒絶していたテアも、諦めなかった彼女たちと接していくうちに心を開くようになった。

 

「今ではミーナは…一番信頼できる。私の友達だ」

 

「えっ……」

 

「…あ」

 

つい思っていた言葉が口から出てしまいテアは赤面しそっぽを向く。ボソッと呟いた言葉を聞き、恥ずかしがるテアを見ていたミーナは、抱きしめたい衝動に駆られていた。

 

そんなミーナが暴走しないように見守りながら、大人しく食事をとるレターナとローザだった。

 

 

 

一方、今期の海洋実習において留学校として参加する『アメリカ合衆国 アナポリス海洋準備校』でブルーマーメイドを目指すローズマリー・パーカー・チェンバースは出港前に行われていた『アイオワ』の船体修理の様子を見にドックまで足を運んでいた。

 

「わぁ…間違えるように綺麗になったね」

 

「…まるで『人』を見て言ったような感想だね」

 

各所不調又は壊れていた箇所を修理し、船体の塗料である外板も新しく塗り直された『アイオワ』を前にして、目の輝きに一層磨きが掛かかるローズマリーを若干引き気味で見るのは、艦長のセレーナ・スティーヴンス・オズワルトだった。

 

「ローズ、今回の遠洋航海で実弾射撃の項目もあるから16インチ砲をはじめ各火器整備の方も済ませましたが問題は無かったよ」

 

「…よし。そういえば……弾薬搭載は明々後日だったよね」

 

「うん。さぁ…みんなが待ってるよ。急ぎましょう」

 

舷梯を上がり艦に乗り込む二人は、整備作業に当たる業者の人に挨拶をしながら各パートリーダーが集まる士官室へと向かった。

 

「気をつけ!」

 

「…休め」

 

入り口で待機していた砲術科の砲術長が中にいる士官たちに艦長が来たことを伝えるため、姿勢を正させる気をつけの号令を掛けると敬礼し、セレーナがそれを休ませる。

 

赤い絨毯が敷かれコーヒーの匂いが漂ってくる士官室にローズマリーが足を踏み入れたその時だった。

 

「副長~。誕生日、おめでとうございま~す!」

 

航海長のクリスティー・ドイ・ヒルティの掛け声と共に、パンッという発火音が鳴りクラッカーの紙テープと紙ふぶきが宙を舞った。

 

「えっ……えぇっ!?」

 

思わず困惑するローズマリーに、セレーナが「ローズ、おめでとう」と声をかける。どうやらセレーナも知っていたんだとローズマリーは理解した。

 

隔壁に付けられているホワイトボードには、『ローズマリー副長、誕生日おめでとう』と書かれ、目の前の長机のローズマリーの席の前にはケーキが置かれていた。

 

この日は彼女の17歳の誕生日であり、サプライズを受け思わず胸から込み上げてくるものがあった。

 

「みんな……ありがとう。嬉しいよ」

 

「さぁさぁ…副長、ケーキに火を点けるので吹き消してくださいね」

 

彼女たちと出会って6年。幾度となく航海を繰り返し『アイオワ』の乗員たちの絆は強固いものへと培ってた。お互いに信頼し合い、家族のような存在になった彼女たち。

 

目指す先(目標)は一緒だ。

 

 

 

月や無数の星広がる空の下、がいつもと変わらない景色のはずが、ネオンの光が眩しく感じるこの日の街灯は美しく見えた。

 

神奈川県 横浜 伊勢佐木町ー

 

先にお風呂を済ませて自室で課題をしていた三玖は、ノートの上で走らせていたシャーペンを止めた。次の項目に移り、ノートのページを一枚めくる。

 

復習の時に分かりやすくするため色ペンも使い分けながら書いていたため、机の上は文房具が散乱していた。その事に少し気にはなっていたものの、集中力を切らさぬようにと問題集と向き合う。

 

夜とはいえ季節は夏。ジワジワくる暑さで額から汗が流れる。髪の毛も体温上昇と邪魔に感じるのを防ぐため、ポニーテールにして纏め首元にはタオルを掛けている。

 

窓を開け雨戸の方から時おり風が入ってくるがあまり涼しくは感じない生暖かい風だった。

 

机に座ってからここまで一時間を越え、流石に集中力が切れたのか三玖はシャーペンを置くと首に掛けていたタオルで汗を拭く。

 

「もぉ~……せっかくシャワー浴びたのに…」

 

もう一回浴び直さないとと思い小さい声で嘆いていると、机の上に置いていた携帯電話が着信音と共に振動する。それに気づき画面を確認すると思わず笑みが溢れた。

 

「もしもし…お父さん、元気にしてた?」

 

《三玖~元気そうだな。元気だよ。今大丈夫か?》

 

それは懐かしく感じてしまうほど、ずっと聞くことができなかった声。

 

「うん。課題してたけど、今休憩しようと思ってたから……。えっと…連絡できるってことは…」

 

三玖の父親は日本とを結ぶ貿易の最前線である貨物船の船長をしている。そのため家にいることも少なく、三玖とは年に4~5ヶ月しか会えていない。

 

《そっちは最近どうだ?前に送ってくれたメールには海洋実習があるって書いてあったが……》

 

「うん…。みんなと仲良くやってるよ。休日にショッピング行ったりしてね」

 

久しぶりの父親との会話だ。話したいと思っていたことが無いわけがない。今まであった思い出や悩みを素直に打ち明けた。同じ、船を仕事場にする二人だからこそ理解し合あえる。

 

昔、母から聞かせれていた言葉があった。「穏やかな海なら誰でも舵をとれる。嵐を乗りきってから、更に前に進まないといけない」。この言葉は、身を奮い立たせる魔法の言葉だ。

 

艦船を指揮する立場の人間でも失敗もするし完全じゃない。仲間を思いやり、どんな時も冷静に対応することが求められる。

 

すっかり長電話になってしまい、夢中になると時が過ぎるのが早いのだと実感した三玖は、再びシャーペンを手に取り中断していた書き取りを再開する。手の進み具合がさっきより早くなったような気がした。

 

 

 

それから数日が経ち、いよいよ今回の海洋実習に参加するアメリカの留学艦が横須賀女子海洋学校に来る日を迎える。横須賀女子海洋学校では朝早く慌ただしい様子だった。

 

露天甲板の真水流しを終えた『アイオワ』は、浦賀水道航路に入る。航路ブイを左に見て横須賀への入港を目指すが、貨物船や漁船が多く慎重な操艦が必要となる。

 

「…R(ロメオ)測的やめ」

 

艦橋で立直中のローズマリーは、本艦とのCPAタイム(測的目標が一番近づく時間)が離れた目標の測的をやめる指示を出す。

 

「R(ロメオ)測的やめた。現在仮称中の目標はT(タンゴ).U(ユニホーム)」

 

『アイオワ』の針路上を遮るように航行する漁船に目を光らせているローズマリーだったが、右隣に人影が来る気配を感じとる。

 

「…やっと“横須賀゛ですね。……艦長?」

 

「うん…。ここまで長かったね」

 

艦長のセレーナ・スティーヴンス・オズワルトは艦長席に座ると首から下げている双眼鏡を覗きこんだ。微笑んだ表情をしていたセレーナを見たあと、再び視線を海へと戻したローズマリーだったが、後ろの操舵コンソールから聞こえてきた声が耳に入ってきた。

 

「何だが艦長嬉しそうだよね」

 

「そりゃやっぱりここまで無事に来られたからじゃないの?」

 

彼女たちの声に反応はしなかったが、セレーナが微笑みを浮かべた理由、ローズマリーには察しがついていた。

 

母校のアナポリス校を離れここまで来るのに約二週間という時間を要した。長旅だった為にやっと目的地に到着できる喜びや陸に上がれることへに対する嬉しさもあるかもしれない。

 

だが一番の理由としては、彼女の祖母が横須賀生まれ育った場所だからだろう。それを知ったのは二回目の海洋実習だった。でも、楽しみなのはセレーナだけじゃない。

 

ローズマリー自信も日本に憧れていた。通常は入港ブリーフィングを終え、更には基地まで5マイル程になってから甲板作業員を整列させるのだが、早く入港したい気持ちが今にも高まりそうで。

 

「よ~し……そろそろ甲板作業員整列させよっか?」

 

操舵コンソールの方へ振り返り笑顔で言ってみる。普段のみんななら冗談だって気づいて、乗ってきたり笑ってくれるのだが…。

 

「いや、まだ10マイル以上離れてますけど!」

 

「副長、気が早すぎるよ!」

 

(……………………あれ?)

 

船舶の行き交いが多い浦賀水道を初めて航行するのだから、みんな余裕がないのか真剣な眼差しで各々の仕事をこなしていたのだ。

 

(……ここはふざけないほうがよかったね)

 

『アイオワ』の乗員との付き合いも二年になるが、まだまだ分からないこともあるんだなと思ったローズマリーだった。

 

 

そして……横須賀女子海洋学校入港が間近に迫り『甲板作業員整列』.『前中後部入港準備用意よし』の報告を艦橋で受けたローズマリーは、その報告を伝言ゲームのようにセレーナに伝える。

 

入港する埠頭が視認出来る距離まで近づいた頃、『アイオワ』の入港支援のため、左舷から来る二隻の曳船へ投げる外舷索の準備を作業員たちは始めていた。

 

一方、横須賀女子海洋学校では『アイオワ』入港を歓迎するため、全生徒がそれぞれの埠頭に接岸している艦で整列していた。

 

「かんちょー!信号旗よーし!」

 

『晴風』の前甲板.錨鎖付近で右舷沿いに一列になって整列している三玖たちは、航海科航海員の桜沢 墨が旗甲板から大声で艦長である水無月に信号旗を揚げたことを報告する。

 

それに水無月は『了解』の意味で手を上げた。揚げられている信号旗は『歓迎』を意味する三つ旗で、『晴風』だけでなく全艦同様に揚げられている。

 

「スッゴい……」

 

「大きくて……強そう…」

 

大和型とほぼ同等の大きさの『アイオワ』は、全校生徒たちの眼を釘付けにするには簡単だった。ゆっくりと埠頭との距離を縮めると、サンドレット投げる『アイオワ』の生徒。入港支援に行う作業員たちはサンドレットと結ばれた外舷索をだぐっていき、もやいを指定されたピットに掛けていく。

 

8月23日.午前9時26分.定刻より10分早く、横須賀女子海洋学校へと無事入港した。

 

 

 

全校生徒が体育館へと集められ、例の留学生が来るのを待つ。体育館の出入口とは反対側で後ろの方に並んでいる三玖たち『晴風』クラスは、水無月 環奈艦長のもと静かに大人しく待っていた。

 

……と言いたいところだが実際は違った。

 

「ねぇねぇ…『比叡』クラスにいる親友から聞いたんだけど、館長はなんと実家がお金持ちのお嬢様なんだって」

 

「あ、それ私も聞いたことがある。それに留学生全員が成績優秀で一目置かれていたそうだよ」

 

「………」

 

体育館という熱が籠りやすい独特の場所で、全校生徒が集まりジワジワくる暑さから皮膚から汗が滲み出てくる。各クラスは縦に2列で整列しており、最前列は艦長と副長で座るようにしている。その為、今三玖の隣に座っているのは水無月になのだが後ろから聴こえる話し声が気になっている様子だった。

 

主任教官からは静かに待つようにと指示を受けていた全校生徒。その為、一クラスでも話し声が聞こえれば目立つため水無月としては私語をしてほしくないのだろう。

 

「………うぅ…」

 

体育座りをする水無月が頭を抱える様子を横目で確認しつつも、三玖自信もどうしようもないと思っていた。その理由は明確なものだった。

 

だって…私語しているのは『晴風』クラスだけではないのだがら。

 

「…うわぁ……アメリカからの留学生ってだけで、こんなにも騒ぎになるなんて…」

 

まさか……このこの暑さのせいで?とも思ったり思わなかったり……。

 

さすがにずっと私語をしていれば教官たちも気づく。注意を受け、ようやく体育館には静寂が訪れるようになった。設置された扇風機の僅かな稼働音が蝉の鳴き声と共に聴こえる。

 

しばらくすると壇上の右端からぞろぞろと入ってくる者たちが現れた。先頭に立つ女子は金髪セミロングベアーで艦長帽を被っているところから見て艦長だと分かる。

 

(うわぁ……羨ましい……)

 

『アイオワ』の乗員全員、女性なら誰もが憧れるような容姿で、思わず見とれてしまうほどだった。三玖も引けをとらない容姿だがさすが外国人、シャツの上からでも分かる胸の膨らみ.長くスレンダーな足。

 

その左隣には黒髪ロングヘアーで副長職を表す腕章を制服の左腕に付けていた。二人をはじめ壇上に上がる全員が綺麗な隊列を作ると、艦長の他は整列休めの姿勢を行う。

 

「はじめまして。手厚いおもてなしありがとうございます。アナポリス海洋準備校から来ました、『アイオワ』艦長のセレーナ・スティーヴンス・オズワルトです。

 

今回は横須賀女子海洋学校のみんなと一緒に海洋実習を行うことが出来、乗員一同とても嬉しく思っています。また、初めての日本なので色々と教えてくださると嬉しいです」

 

マイクを片手に流暢な日本語を話す艦長のセレーナ。その澄んだ瞳に映るのは、横須賀女子海洋学校の全校生徒。海洋実習終了までの長い期間を一緒に過ごし、同じブルーマーメイドを目指す仲間の姿だ。

 

水無月は、セレーナを見て同じ艦長なのに自分と違って逞しそうなイメージを持った。勿論、大型艦である『アイオワ』の艦長をしているのだから、器のでかさも関係あるのだろう。

 

「……私も…あんな艦長に……」

 

自分の思ったことがつい口に出てしまった。だが、隣にいる三玖も後に続くようにふと思った言葉を口走った。

 

「…あんな友達欲しいなぁ……」

 

瞳を輝かせる水無月と三玖だった。

 

 

 

式を終え生徒たちが各教室へと戻るなか、教官たちも教官事務室へと戻り教務の準備を始める。一人の教官も担当クラスにスタディーガイドやノートプリントを持って向かおうとしたその時だった。

 

《昨日未明、シリア北東部にて国際的テロ集団『ヴェルトロ』の指導者である『イムラン・ザカエフ』がアメリカ軍によって射殺されました。この攻防によりアメリカ軍側も死傷者が多数出ています》

 

朝のニュース番組を流していたテレビから聞こえてきたアナウンサーの声と一緒に実際の現場の映像だろうか、米軍の戦車や小銃を手にした兵士の姿が映る映像が見えた。

 

「遂に…米軍が指導者を…」

 

「これで少しは平和になってくれると良いけれど……」

 

また一つテロ組織が消滅することに教官たちは少しばかりの安心感を抱きつつも、不安を完全に払拭できないでいた。

 

その理由は、『まだ完全に終結してない』からだ。

 

《アメリカ軍.イギリス軍などは続いて残存するテロリストの掃討作戦に移行する模様で、外務省からは引き続き中東への渡航禁止令を発令しています。

 

続いてのニュースです…》

 

気づくと教務が始まるギリギリの時間になっていた。教官たちは急いで担当クラスに向かう。先に準備を終えていた彼女が担当するのは、大型巡洋直接教育艦『鳥海』クラスである。

 

同僚の教官と廊下で別れると、深呼吸して気合いを入れる。彼女の制服の右胸に付いているプレートには、所属と名前が『横校|教務部|宗谷』と表記されていた。

 

 

to be contenued

 

 

 




いよいよ、新たなピンチに向け話が始まろうとしています。これからの物語の進展にご注目下さい。

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