ポケットモンスター 夢追う者と去る者2 作:Blueクラーケン
俺の名はサトシ、今はシオンタウンで会う予定をしてたシゲルと、そこで出会った老人の頼みで、ポケモンタワーの掃除をしている。…かったりぃーな。
~PM:12:30~
「いゃぁー、助かった。有り難うのぉ、若いの」
「高齢者を助けるのは、当然の事ですよ。…えーと、失礼。名前はお聞きしておりませんでしたね」
シゲルも俺も、出会って間もない老人の手伝いをしていた。けども名前を教えてもらっては…なかったわ。
「忘れとった!いや、すまんすまん。ワシの名はフジ、此処等ではフジ老人と慕われておる。宜しくじゃ!」
元気なじいさんだなぁと思いつつ
「俺の名はサトシ。マサラタウンから来ました。」
「自分もマサラタウン出身のシゲルと申します。」
俺達も名乗った。
「すまんな。今ではポケモンの墓地と言われておるこの場所は、人手がまーたく足りないのじゃ」
あ~なるほど。確かにお盆とかには墓参りでくる事はあるって聞くけど住みたいとは思わないってインタビューっで答えていた人がいたな。
「ですが、住民の人達も手伝っていませんが?」
掃除をしている時に俺も気づいていたが、フジ老人以外、ポケモンタワーに入る人は見なかったな。
「それはじゃな。ここに墓が大量にあるせいかのぉ、ゴーストが大量に徘徊しておってな、ワシ以外は怖がって地近づかないのじゃ」
そっかぁ、だから清めの塩が真っ黒になってたんだな。…?肩が重い?気のせいか??
自分の体に異変が起きていたが、それよりフジさんが何故、1人でも掃除をしていたのか?
「フジさん、どうして1人でも掃除するんですか?その年齢ではきついでしょう?」
俺の目から見ても、フジさんは80歳ってところかな。身体に堪えるよな。
さっきまで元気だったじいさんの口から、静かに俺たちに話した。
「ワシは元々他方の人じゃった。じゃが若い時に過ちを犯してしまってのぉ。今こうして掃除しているのは、せめてもの償いなんじゃ」
…過去に何をしてしまったのかは解らない。
けれど、表情で伝わってくる。己がしでかした事の重大さを。
続いてシゲルが、思い詰めた様顔をしながら話す。
「…自分もあります。ライバルに負けたくなくって、必死にポケモンバトルを繰り返していたんです。でも焦りが出始めて、ある時相棒だったラッタの治療をしないまま、バトルに出してしまったんです。」
連続での戦闘はポケモンにとって、ストレスしかない。
ポケモンセンターで治療を受けていれば別だが、傷ついた身体で戦闘を続けさせる。それが元になって死亡する例は初心者トレーナーによくあることだと、女医さんが言っていた。
「それが原因で、俺はラッタを死なせてしまった。最初は気にしない様に、またポケモンバトルに熱中して、忘れようとしたんだ。けど、出来なかった。頭からラッタの顔が離れないんだ!」
俺もじいさんも、シゲルの話を静かに聞く、
「『どうしたら、罪は消える?』だから1年に1度、ラッタの墓に謝ってるんだ。あの時、俺がちゃんとお前の事を見てさいいれば…お前を死しなすこともなかったのに」
シゲルが懺悔をした。今まで必死に、誰にも悟られるようにしていたのだろう。
…お前って奴は、天国にいるラッタに伝わってるよきっと。
「お前さんは立派じゃ。近頃のトレーナーはその事を忘れとる、ポケモンバトルで一番大事なのは『勝つ』ことじゃぁない。傍にいるポケモン達を勝つこと以上に『大切』にしてやることじゃ。勝っても負けても笑い合えることが出来る信頼関係、その者達こそ真のポケモントレーナーじゃないかのぉ」
じいさんはシゲルにそう言い聞かせた。
「…フジさん、ありがとうございます。少し気分が落ち着きました」
じいさんの話を聞いて、いつものシゲルに戻りつつあった。
その時、向こう側から俺の事を呼ぶ声が
「ん?そこにいるのはジャリボーイじゃないかにゃー」
「え、ニャース?何でここに?」
元ロケット団の一員であった、ニャースがポケモンタワーに来ているのにはびっくり。
けど
「ニャース、そちらの女性はどなた?」
ムサシ以外でニャースと一緒にいる女性(おばはん)はどちら様?
~PM:1:00~
『この方はニャー、霊能者リカコさんにゃ。今日はリカコさんにお願いして、亡くなったポケモンを下界にこさせるニャス。そしたら、りかこさんの体に憑依してもらって、ニャーが通訳して遺族にお伝えする仕事をしていたニャス。」
今丁度終えて、飯でもどうかって話していたニャス』
なるほどね。心に傷を負った遺族を経ち直す事もできるし、遣り甲斐のあるいい仕事ですな。
俺は感心していると、じいさんがニャース達に頼み事を述べる。
「ど、どうか。この悩める少年を救ってはくれませぬか!」
「ちょ、いきなりにゃんなんにゃ!」
じいさんは、シゲルの悩みを何とかしたいと思っての行動なのだろう。
俺はただ聞いているだけだったが。
「…フジさん」
「しかしニャーはともかく、リカコさんがやってくれるかはわからないニャス。」
確かについさっきまで、仕事をしていたからお疲れだろう。
昼食も食べてないって言っていたし、仕事依頼でもないから断る可能性の方が十分にある。
「そ、そこをなんとか、お願いします。」
頭を地面につけて、いわゆる土下座をしている。
ニャースも無下に出来ず、リカコさんにやってくれるかと聞いている。
「フジさん、ありがとうございます。自分なんかの為に土下座までしてもらって」
「なぁーに、気にすることはない。老人のお節介じゃよ」
それにしても俺、ひょっとして今回影薄い?
そんな考えをしながら、待っているとニャースが俺達を呼んでいる。
「おーい!OKをもらったニャスが、先ずは昼食を食べてからって事で、開始するのは一時間後になったニャス」
あ、ありがたい。じいさんの誠意が伝わった。
儀式は1時間後か、その前に俺達も飯食いにいくか!
取り敢えず、此処等で評判の高い、ゴースト肉まんとホッポの焼き鳥を購入。うむ、外は紫芋に包まれていて、中はアンコがぎっしりで美味。ホッポの焼き鳥は想像しないで食べると旨いけど、気分的にはちょっと。
じいさんは好物である、ホッポの天丼を美味しそうに食べている。
シゲルさんは、コイキングの刺身定食を頼んだが、店員のミスでケムッソの天ぷらうどんになってしまった。…新手のテロかな?
「ふふふ。見てくれよ、ケムッソを口の中に入れた瞬間、ブチュって音がするんだよ。でも、味は美味しいんだ。ははは」
うわぁ。歯の間にケムッソの目?らしき食べかすがあるんだか。
数分後
「うひゃー。やはり小生の物が一番美味しそうでござる」
「いや、俺達はとっくに食べ終わっているんだが」
め、目がイカれてやがる。空の皿しかないのに…何が見えているんだ、今のシゲルには
「お、おい!それヤバイから違うのを頼もうぜ」
これ以上食べたら、シゲルの脳に異常がきたしそうな感じがして経たない。
「No!Don't touch my ケムッソ!これは誰にも渡さないでござる。…さては拙者のケムッソを奪いつもりでござるな!それなら殺す気でかかってこいでござる!」
ファイティングポーズを構えながら、丼を守っている。
「ワシ、あれがメニューとして存在しておるのが、不思議で仕方ないんじゃが」
「奇遇ですね。俺もッス」
シゲルの苦悶した顔を見ながら、これを作ろうとした経緯が知りたくなった一行だった。
~PM:2:00~
「改めまして、リカコと申します。では今回のご依頼内容の確認をします」
見た目からみて、60歳くらいかな。そんな感想を頭の隅で考えながら、依頼内容を伝える為、シゲル本人がリカコさんに話した。
「…了解しました。この件を引き受けて正解でした」
「…どういうことですか?」
確か、今回はボランティアという形で無料にしてくれた、普通ならあり得ないことだから何か理由があるのか?
ちょっとした疑問が出来たが、続けてリカコさんが話す
「実はですね。ニャースさんから話を聞いている時にね、シゲルさんのラッタらしき霊が遠くから私を見てきたんですよ。きっとシゲルさんの事が気になって、成仏できなかったんでしょう。だからこそ、その魂を成仏させる為、引き受けたのです」
…ラッタはシゲルを見ていたんだな。
シゲルは泣きそうな顔を食いしばいつつ、「儀式を始めましょうよ!」と早口になっていた。
「そうですね。では早速始めましょう」
シゲルとリカコさんが座布団(ニャースが用意)に座り、リカコさんが呪文?を唱え始めた。
「でも信じられんのう。死者をこの世に来させるできるとは」
「そうですね。不思議な感じがしますね」
霊とか、心霊スポットに縁が無かったからこんな体験は初めてで、緊張するよね。
「む、来ました!」
呼び出す為の呪文を唱え終わったのか、両手を擦っていた動作をやめ、リカコさんの体がガクッと疲れた様に倒れそうになった。
「ねえニャース。あれ本当に大丈夫なの?」
ニャースに問いただす。
「大丈夫ニャスよジャリボーイ。ニャアも最初は同じ気もちだったニャス、だけどあれが成功した証みたいなもんニャス」
そんなものなのか?ま、まあ。素人の視点からだからよく分かんねえや。
「む!リカコさんがしゃべりだしたぞ!」
しかし、「ラッタッタ」とラッタの言語で話している為、何言っているか分からない。
「ここからはニャースの出番ニャス」
流石は通訳のスペシャリスト。そこにシビレル、アコガレルゥ。
「えーと。シゲル僕だよ、ラッタだよ。」
「…本当にお前なのか!?」
シゲルが動揺してる、かつて謝れなかった相棒に。
「そうだよって言っても信じられないよね…そうだ!シゲルが良くカスミに手紙を送る時に書いて『わーーーやめろー』」
どうやら、本物らしい。でも気になる、リア充死すべしとか言っているけど、知り合いの恋愛事情って気になるよね。
「ほ、本当に、俺の相棒が…帰ってきた」
シゲルは涙を流した。
「でも、最初は復讐する為に地縛霊として、ここに留まっていたんだ」
…やはり、その可能性も十分にあった。自分を治療せず戦わせた結果死なせたからね。シゲルも覚悟をして儀式に挑んだのだが、苦悶した表情に変化してしまっていた。
「僕を見殺しにした君に、どんな事をしようかなってずっと考えてたんだ」
「あ、ああ。だから俺を呪い殺しても構わない!それほどの事をしてしまった」
これまで悩んでいても、答えが出なかったのだろう。死で償おうとしている。
「…いいや、命なんて取らない。この場を設けてもらった後に、僕は成仏するからね」
「え、どうして」
この機会の為だけに、待ってきたっていっているようだ。
「シゲルが亡くなった僕の為に、毎週日曜日に来ては、あの時の過ちをいつも謝ってるを見てたんだ。そしたらさ、何時しか僕の中にあった憎しみが無くなったんだ」
「ラッタ、本当にごめん。俺がちゃんと見ていれば…進化したり、彼女ができたりしたはずなのに」
ずっと前、ラッタを失った日から俺の時間は止まってしまっていた。
「確かにねそういう未来もあったかもしれないね。けど、もういいんだよ、自分を赦してやって。僕は十分罪を償ったと思っているからさ」
「でも、消えちゃうんだろ。良いのかよそれで!」
泣きながら、このまま消えてしまうラッタに文句を言う。
「うん。本当は消えてしまうのは怖いし、シゲルに会えなくなるのはもっと悲しい」
「なら、此処に残れよ!俺が毎日会いに行くから、逝かないでくれ…よ」
「…シゲル」
あんなに泣いているシゲルを見るのは初めてだ。
「嬉しいなぁ。シゲルにそう言って貰えて、僕は幸せ者だ」
「…あ…ああ…逝かないでくれ!」
リカコさんの身体から白い煙?が離れていく。きっとあれがラッタの魂なのだう。
「ありがとう、最後まで僕の事を心配してくれて。天国にいる仲間達にいい土産話がで…き……たよ」
「ラッタああああぁぁぁぁぁぁ…ぁ……あ」
「シゲル…」
泣き崩れてしまった。そっとしといてあげよう。
「儀式は終わりました。長年この職に就いていますが、あのラッタさん以上に愛されたポケモンは見たことがありません。」
リカコさんが、シゲルに取り憑かれた時に感じた事を話す。
「彼の子は私に憑依してからずっと、貴方に怨みは微塵も感じられませんでした。本当に幸せだったのでしょう。これからもその事を忘れずに有る限り、天国から見守ってくれますよ」
「そうじゃシゲンさんや、お主はまだまだ若い。人生は誰もが間違ったことをしてしまう、肝心なのは『認めること』。間違ったことをそのままにしておく者は成長しないぞ。…だからこそ今は想いっきり泣いて、立ち上がるのじゃ」
「お、おじいさん、リカコさん。ニャース。ありがとう」
皆にお礼を述べる
……ん? 俺には?
こうして、儀式は終了。シゲルは泣きじゃくったが、立ち直りを果たした。
~PM:3:00~
「さて、ワシ等も帰りますか」
儀式は終わったから、皆がその意見に賛同。
「じゃ、にゃーらも次の仕事があるにゃら。じゃーら、ジャリボーイ達!」
「もし、またお困りになった際は、次はちゃんと予約して下さいね」
「『しつれいします(にゃす)』」とポケモンタワーから出た後直ぐに、ニャース達は行ってしまった。
「フジさん。今日は本当にありがとうございました。貴方が申していなかったら…」
別れの最後に暗くなったらいけないと、首を振って
「重ね重ね感謝を致します。」っと礼をして、シゲルはハナダシティに帰ってた。
「今日は不謹慎じゃが、お前らさんと出会って楽しかったぞい」
笑顔で、俺にお辞儀をする。
「俺も今日はとってもいい体験を見れました。それもこれもフジさんのお陰です。じゃ、俺も次の町に向かうとするか。じゃーなシゲル、お元気でフジさん。」
俺も別れの挨拶をして次の町へ向かった。
~とあるニュース~
「こんにちは今日のニュースです。先程、ハナダシティに起きている行方不明者が続出する事件に新たな動きがありました。元ジムリーダーだったカスミさんが、昨日の夜から行方が解らなくなったと近隣住民から通報がありました。事件に巻き込まれたのではないか、とみられ警察は必死の大捜索に踏み切ったそうです。」
いゃー遅くなってすまぬすまぬ。新学期が始まって、ドタバタの毎日でしたので、書く時間が少なくなってしまいました。次回も投稿も早くて来週になりますので。