機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です) 作:あばばばばsho
まだ今後の生活がどうなるかわからないので、いつごろ投稿できるかまだ分かりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
A.D.2018 5/21 15:16台頭区 植野付近
「あっ!狩野さん!」
電脳世界から戻った私は、迎えにいく、という狩野さんの連絡を受けて、集合場所の駅の公園の近くの改札で待っていた。今、やっと狩野さんが人混みの中から出てきた。
「お疲れ様。色々あったが、とりあえず無事に帰ってこられたことは良かったと思うべきか。」
車はこっちに駐めてあるから、と狩野さんは言い、私を手招きした。私と狩野さんは人混みの中を歩き始めた。
「わざわざ迎えに来ていただいて、ありがとうございます。ですけど、あの黄色い人はまだウィルスに取り込まれているままです…。」
「ああ、そうだな。お前があいつを救いたいのは百も承知だが、あいつの持っているカードがどうにも面倒でね。」
そういえば、狩野さんは黄色の人があのカードをスキャンするのを警戒してたよね…。
「あのカードは、あの青い鎧の装着者である天野 才乃
あの青い鎧の女の子、天野才乃っていうんだ…。鎧を着た背丈は私より少し高いくらいだったな。
「そして、そのカードの効果は、自分か相手のどちらかが命を落とすまで、電脳世界から更に別な世界に隔離される、というものだ。」
じゃあ、さっきあのカードを使われてたら、私が死ぬか、私があの黄色い人を倒すまで外に出られなかったってこと?危なかったぁ…。
「あのカードを使われたら危険だ。今後あいつを見かけたら、たとえ仕事の途中でもすぐに電脳世界から離脱するんだ。」
「そんなの、出来ないです!仕事の途中ってことは、誰かがウィルスに取り込まれたりしている時に見捨てるってことですよね。」
「そこであいつにあのカードを使われたらどうする?今のお前は、あいつを攻撃しないだろう。そうすれば、奴に一方的に倒されるだけだ。離脱すれば別な機会に助けられる命を、もう二度と助けられない命にするのか?」
確かに、狩野さんの言う通りだ。私は、争わずに世界を変えたい。誰かを止めるならまだしも、誰かを殺すことなんて、絶対にできない。
「…わかりました。今度見かけたらすぐ離脱します。」
「わかったならそれでいい。」
若干モヤモヤが残ったまま、私は狩野さんの車に乗り込んだ。
モヤモヤが残るのは、黄色い人のこともそうだけど、あの青い人、に言われたこともそう。あの青い人は、ウィルスを管理している人だから、今までウィルスによって困った人、苦しんだ人がいた原因はあの人。絶対に許せない。でも、あの人も天野才乃っていう名前があって、この世界に現実に存在する、みんなと同じ人間なんだよね。
あの人を倒しても、私の理想は達成できない。でも、ウィルスによって生み出される悲しみ、苦しみは、誰かがあの人を倒さないと消えない。私は、誰かがあの人を倒すのをただ待っているだけしかできないの…?
「そういえば、黄色い鎧のやつについての話、聞きたいか?」
運転しながら、狩野さんは私に尋ねた。
「はい。黄色い鎧の人は、狩野さんが自分に都合のいい事しか言わないっていってましたけど、私は狩野さんを信用します。」
「そうか。ならば話そう。あいつは佐別 仁朱という奴だ。あいつの装着する鎧は、pc.anti virus Mk-Ⅰ、つまりお前の装着するポリコレッドの鎧の一つ前の型、ということになる。元々あいつはポリコレンジャーの一員だったんだよ。」
「そうだったんですか?!」
だったら、なんで今は狩野さんたちと行動してないんだろう…。
「だが、あの天野やアンチポリコレ派の輩が彼の意識を変えてしまったんだよ。」
「でも、ポリコレンジャーになるには、それなりのポリコレ係数が必要じゃないですか。アンチポリコレ派の考えになったら、ポリコレンジャーにはなれないんじゃないですか?」
「いいや。彼の場合はまた別だ。」
赤信号で車は一時停車し、狩野さんは話し続けた。
「彼が高いポリコレ係数を示している原因は、憎しみだ。」
「憎しみ、って、そんなものでもポリコレ係数は高くなるんですか?!」
「ああ。彼の父親はこの国の出身だったが、彼の母親はそうではなくてね。それが原因で色々不当な扱いを受けたようだ。それで、そのような差別に深い怨念を抱いているようだ。」
そんな...。だから何も知らない私に対して、あんなに怒ったんだ。あの人の心の傷に気が付かない私に。
彼にそんなことを聞こうとしたなんて、私はなんてバカなんだ。私がもしあの人の立場だったら、そんなこと、言えるわけない。
黙ったままの私に、狩野さんは話しかけた。
「どうせお前のことだから、佐別に彼自身のことを尋ねたことを後悔してるんだろう。確かにあれは軽率な発言だったかもしれない。でも、先程原須がお前に言った通り、一つ一つ学べ。今回の失敗は、必ず将来に生かせ。そして、お前の理想を曲げるな。」
「はい…。」
狩野さんは何でもお見通しだ。でも、絶対あの人には謝らなきゃ。そのためにも、絶対天野才乃からあの人を救わなきゃ。
そうこうしているうちに、車はポリコレンジャーラボのあるビルに到着した。
「突然で申し訳ないが、お前に客が来ているようだ。」
「え、私ですか?」
私がポリコレンジャーにいるってことを知っている人は…。もしかして、学校の先生?!
A.D.2018 5/21 15:40 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ
見慣れたポリコレンジャーラボ、というかラボの部分を隠した事務所の部分で、スーツ姿の、かっこいい、見慣れない男の人が椅子に腰かけていた。学校の先生じゃなさそうだ。
「やあ、貴方がポリコレッド、政正子さん、ですよね?」
見慣れない男の人は、私に話しかけてきた。
「はい。そうです。私に何かあったんですか?」
「その前に、座って世間話でもしませんか?申し遅れました。私はこのような者です。」
そう言って、その人は私に名刺を差し出した。背も高そうだけど、指もスラっとしてて、綺麗。
指に見とれてて、名刺をまだ見ていないんだった…。
『銭倉コーポレーション 代表取締役社長 銭倉 守』
「ええ?!社長さんなんですか!」
「はい。銭倉 守
「こちらこそ、お願いします!」
そういえば、名刺、どうしよう。鞄の中にそのまま突っ込むのもまずいし、ポッケにそのまま入れるのもよくないよね…。
どうすればいいか分からず、そのまま手に持って話を聞くことにした。
「弊社は、ポリコレンジャーに協力させていただいているんですよ。」
「協力って、どういうことですか?」
ポリコレンジャーに協力している人がいるなんて、知らなかった。というか、考えもしなかった。
「ポリコレンジャーの活動に、主に金銭面でのサポートをさせていただいてます。貴方が使っているポリコレチェンジャーも、ポリコレンジャーと弊社の共同開発なんです。」
「そうだったんですね!てっきり、狩野さんと原須さんだけで作ったのかと思ってました。」
「そう思うのも無理はないですよ。狩野さんと原須さんはとても優秀ですからね。」
隣に座っている狩野さんを見ると、いつもと変わらない表情をしていた。私だったら、こんなこと言われたら、にやけちゃうかも。
「銭倉、世間話もこれくらいにして、本題に入らないか?どうせ、政の手に入れた新しい力についてだろう。」
狩野さんは、銭倉さんに対しても、そういう口調なんだ…。銭倉さんは敬語なのに…。
狩野さんの言葉で、さっきまで穏やかだった銭倉さんの表情が少し変わった。
「さすが、狩野さんですね。ただ、私の今回の要求は、政さんの新しい力についてではなく、政さん自身ですよ。」
「なるほど。対価は?」
「ちょ、ちょっと待ってください、私自身、ってどういうことですか?!」
狩野さんのほうを向いていた銭倉さんは、こちらに向き直った。
「貴方の力は、未知数です。狩野さんと弊社で開発したタイヨウセイバーは、貴方の力で変化を遂げた。これは私たちが予想にもしていなかったことです。そして、今回の我々の目的は、貴方の状態をより深く観察することです。」
「私を観察って、私の学校に来たり、家まで来たりするんですか?そんなの嫌ですよ!」
銭倉さんは私の言葉に笑いだしてしまった。だって、観察するって、そういうことだよね…??
「これはこれは、失礼しました。こちらの伝え方が悪かったですね。観察するといっても、弊社の欲するデータは、貴方そのものではなく、貴方が変身したポリコレッドについてのデータなんですよ。実は、弊社は共同開発であるにも関わらず、ポリコレッドの実戦データはいただいてないんですよ。今後のポリコレンジャーの活動のためにも、ご協力いただけないでしょうか?」
うーん、なるほど…。
「銭倉、お前は今更何を企んでいる?このタイミングでポリコレッドのデータを要求するのは不自然だ。」
狩野さんは、厳しい目つきで銭倉さんを睨んでいる。もしかして、この二人ってあんまり仲が良くないのかも…。
「それに関してはお互い不干渉ということにしましょうよ。弊社も貴方の計画に関しては基本自由にしているんですから。そして、対価に関しては、新たなポリコレンジャーの隊員の候補に関するデータです。もしこの取引に応じていただけないのであれば、今後資金の援助は致しますが、データの提供に関しては致しかねます。もちろん、アンチポリコレ派に関するデータも。」
銭倉さんも狩野さんのように鋭い目つきになった。次のポリコレンジャーの隊員とか、アンチポリコレ派のデータとか、何故か不安になる言葉ばっかりだ…。
「なるほど。要求を呑もう。」
「取引に応じていただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」
銭倉さんは、さっきまでの鋭い目つきはどこへ行ったのか、少し前の優しそうな顔に戻った。あの顔の時の銭倉さんはなんだか凄い怖い感じがしたから、安心した。
「政さんは、今後もポリコレンジャーの活動に専念していただければ結構です。」
「はい。頑張ります!」
「もしよろしければ、お送りしますよ。」
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
帰り支度をしていた銭倉さんは、そうだ、と言うと、狩野さんに向き直った。
「そういえば、最近原須さんを見ませんが、今日も何か用事が?」
「いや。だが、原須はお前のやり方が気に食わないそうだ。だから今回は席を外してもらった。」
「なるほど。そういうことですか。」
銭倉さん、原須さんとも仲悪いのかな…。確かに少し怖い時もあるけど、いい人そうだと思うけどなあ。
「それでは、失礼します。」
私は、銭倉さんの後を追うように、ポリコレンジャーラボを後にした。
銭倉さんが送ってくれる、って言ってたけど、運転するのは銭倉さんじゃなかった。身なりからしてなんとなく分かってたけど、やっぱりお金持ちなんだろうな。
A.D.2018 5/23 14:25 都内某所
「まさか君の方から私の所に訪ねてくるとはね。丁度いろいろ聞きたいことがあったから、わざわざそっちから来てくれるとは嬉しいねぇ。」
昼下がりなのに妙に薄暗い部屋に入ってきた青年に対し、少女は回転椅子に座ったまま、背を向けて言葉を投げかける。
「貴方がウィルスに仕組んだ、いわば安全装置のようなものを彼女らに伝えた件に関して言っているのですか?」
「分かっているなら話は早くていいねぇ。なぜ奴らにそれを伝えた?契約違反のはずだけど?」
青年はいかにも決まり悪そうに肩をすくめ、口を開いた。
「あの行動は、結果的に我々の利益になったと私は考えておりますが。政の起こしたあの変異は、実に興味深い。貴方ほどの方なら理解していただけると思っていたんですがね。」
「いや、私以外の誰かが創ったものが私の作品を超えることは実に不愉快に思うタイプでね。しかも、今回は君の邪魔がなければあんなことは起こりえなかった。」
まあでも、と彼女は続ける。
「今回の一件でウィルスに関するデータ収集は一通り済んだね。ウィルスが人に感染し、そしてウィルスに感染した人間の意識をデータ化すること、そして感染中に暗示をかけた意識を保たせることにも成功。そして、ウィルスをポリコレ係数の高い奴に感染させてもきちんと制御することが難しいことも分かった。」
「つまり、弊社、というより、私にポリコレ係数の極度に低い人材を集めろ、というわけですね?」
「まあ、そういうこと。ほんとに話が早くて助かるね、どっかの黄色いのと違って。」
ようやく少女は回転椅子を回転させ、青年の顔をみた。
「そういうことなら、私と取引をしませんか?こちらの要求は、そこに保存されている、唯野の遺体を渡してくれないか?」
「死体を解析しようなんて、結構悪趣味なんだねぇ?まあ、何かに使えるかと思って遺体を状態が悪くならないようにした私も私だけどね。仕事をちゃんとやってくれるなら、持っていきなよ。まあ、信用のない君と取引するのはこれが最後だな。」
ありがとうございます、と告げ、青年が手元の携帯端末を弄ると、数人のスーツの男が、部屋に入り、手早く唯野の遺体をケースに入れて足早に持ち出した。
「君、こんなことしてよくポリコレ係数が低くならないよね。毎度毎度驚かされるよ。」
「いえいえ。ご存じの事とは思いますが、ポリコレ係数の数値は、行動じゃなくて、その先の目的、結果が重要なだけです。それだけのことですよ。」
そう言い残すと、青年は部屋を去った。
第12話、ご読了ありがとうございました。
新キャラを登場させる際に、毎回名前を考えるのですが、これが結構大変な作業だったりするんですよ(僕にとっては)。今回新しく名前が明らかになるキャラが二人もいたので、かなり大変でした。
さて、新キャラも登場し、新たな風がポリコレンジャーに吹きそうな予感がします。
次話の更新がいつになるかわかりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。