機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です) 作:あばばばばsho
A.D.2018 7/8 15:09 杉波区 麻ヶ谷付近
迫り来る深碧の戦士は、腰のホルダーからカードを引き抜き、それを腕に着けたチェンジャーに読み込ませた。
『タイヨウセイバー!』
電子音声が鳴り、虚空に深紅の剣が生成される。
「もしかして、義道さん…?」
政の質問には応えることなく、彼はウィルスに向かっていく。
「確かに、タイヨウセイバーを出されちゃったらこっちはかなり分が悪いね。」
天野はウィルスの前に歩み寄り、深碧の戦士の行く手を阻む。タイヨウセイバーの切っ先を向けられても、天野は全く動じなかった。風が止み、一瞬の静寂が訪れた。
「ウィルスは所詮道具だ。使えなくなれば、その力をうまく再利用するまで。」
そう言うと、天野はアンチチェンジャーのトリガーを二回引いた。
『アンチャージ!コバルトブルー!』
天野の変身するアンチ・コバルトブルーの腕からチューブ状のものが伸び、政と深碧の戦士は身構えた。しかし、そのチューブが彼女らの方の向かうことはなかった。
「何っ?!」
声を発したのは自らウィルスを身体に打ち込んだ男だった。彼と、彼が生み出した新たなウィルスの胸部にチューブが刺さっていた。
すると、黒い輪郭が薄れ、二体のウィルスは元の人間の姿に戻った。
「ううっ…狩野、お前…!」
ウィルスから解放され、倒れこむように膝をついた男は、鋭い目つきでアンチ・コバルトブルーを睨む。
天野は彼に歩み寄り、彼の頭に手を置いて話始める。
「いやー、いい働きだったよ。ポリコレッドの現実世界での戦闘力のデータ収集は上手くいったし、最後には私のエネルギー源にもなってくれたし。そんなに睨まないでよ。これは君を守るためでもある。ここは通さないから、早く逃げな?そこにいる君もね?」
男は舌打ちをしたが、彼女の言葉に従い、その場を去った。二体目のウィルスにされた青年も、確かでない足取りでその場から素早く逃げだした。
「やっぱり利用してただけじゃない!何も関係ない人をあなたの都合に巻き込まないで!」
政は天野に向かって叫んだが、それを深碧の鎧を身に着けた青年は彼女を制した。
「先輩は下がっててください。ここは僕が決着をつけます。」
「やっぱりあなたは…。」
「はい。義道です。」
義道は政との短い会話を終え、天野の変身するアンチ・コバルトブルーに向き直った。
「天野、お前にはこの世界に存在する価値がない。世界の秩序を乱す危険因子はここで排除する。」
義道にタイヨウセイバーを向けられた天野はため息を漏らし、義道の言葉に応える。
「ポリコレッドに比べて随分と骨のあるやつが来たねえ。その心意気に免じて、命だけは奪わないでおいてあげるよ。」
義道が天野に斬りかかろうとしたそのとき、義道の腕は政により掴まれていた。
A.D.2018 7/8 15:12 杉波区 麻ヶ谷付近
「先輩、放してください。」
義道さんは驚きもせず、私の腕を払おうとする。
「義道さんが今、誰かをその剣で傷つけたら、きっと後悔する。そうならないように止めるのが、先輩である私の責任です。」
私が初めて戦った時に、他人を傷つけてしまった時の後悔は、いまでも忘れてない。忘れちゃいけない。傷つけずに解決できる方法があるのなら、それを目指すのが私たちポリコレンジャーの使命だと私は思う。
「先輩は、あいつにも話が通じると思ってるんですか?あいつはもはや人間じゃない。自分の目的の為なら、他人を騙して、傷つけたりしてもいいと思っている。そんな奴は、生かしておく価値もないですよ。」
「確かに、天野さんは他人を騙して、傷つけてる。だけど、天野さんも人間だよ。彼女の命を奪う権利なんて、誰にもない。」
私の言葉に、天野さんは呆れたように溜息を漏らす。
「黙って聞いていれば、私について随分と語ってくれちゃって。でも、私の命を奪うことは、権利があるとかないとか以前に、そもそも不可能だってこと、忘れてない?今は自分の命の心配をしなよ。」
いつの間にか天野さんは、ポリコレモンの使う大砲を装着してこちらに向けていた。
『ジャスティスレイズ!』
「うわっ!」
天野さんの放ったエネルギー弾は私に当たることはなく、突然現れた緑色の障壁で遮られた。
衝撃波で舞い上がった砂ぼこりで視界が奪われてしまった。
「あれ…?」
視界が開けると、そこには天野さんはおらず、義道さんの変身する緑色の鎧しかいなかった。
「あ、さっきはありがとうございました。義道さんに守ってもらわなかったら、直撃でした…。」
義道さんは、鎧の表面に着いた砂ぼこりを払いながら私に応えた。
「いえ、当然のことをしたまでです。それより、先輩の考えには賛同できません。やはり、天野はここで倒しておくべきだった。今後さらなる被害を及ぼす可能性は高いです。それを見過ごすことは、結局多くの人を苦しめることにつながります。」
義道さんの言うことは正しい。でも、私は天野さんを傷つけることは嫌だし、義道さんにそうさせるのも嫌だ。
「私だって、天野さんをいち早く止めて、これからの被害をなくしたいです。でも、私たちの仕事は、みんなが不公平な思いをしないで暮らせる世界を創ること。その世界を創るために誰かを傷つけるなんて、私は嫌です。」
「失礼ですが、それは綺麗ごとじゃないですか?世の中には、話しても理解できない、理解しようともしない連中ばかりだ。そんな連中相手に、争うことなく平等な世界を創るなんて、不可能に決まってます。」
やっぱり、義道さんも前の狩野さんみたいに、私の考えは綺麗ごとだって思うよね。でも、私は諦めたくない。
「ポリコレンジャーを始めてから、同じようなことを、色々な人に言われた。でも、私は私の理想を叶えたい。せっかくポリコレッドの力をもらったんだから、その力は争うためじゃなくて、守るために使いたい。理想を諦めちゃったら、その理想は絶対に叶わないと私は思う。」
義道さんの変身する緑色の鎧は、腕に着けたチェンジャーから緑色のメモリを引き抜いた。緑色の鎧は消失し、中から義道さんが出てきた。
「先輩に何を言われようが、僕の考えは変わりません。僕は僕のやり方で、ポリコレンジャーの目指す世界に辿り着きます。」
待って、と言おうとしたけど、義道さんはすぐに来た道を戻ってしまった。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。すぐにここから離れないと。ポリコレイダーを脳内で操作して近くまで移動させる。ポリコレイダーに跨ると、ステルス機能が起動した。
『ご苦労。今日はもう帰っていい。今日のことを踏まえ、色々対応しなくてはならないことは多いが、また何かあったら連絡する。』
狩野さんからの通信だ。
「はい、わかりました。」
私の返答には何も答えず、狩野さんは通信を切ってしまった。
私は自宅に向けて、ポリコレイダーを走らせた。
A.D.2018 7/8 17:02 隅田区 東隅田 政宅
帰宅した私は、かれこれ30分くらい布団の上で仰向けの体勢で考え事をしている。
今日、色々なことがあった。たくさんのことが起こりすぎて、まだ頭が追い付いてない。まず、電脳世界じゃなくて、現実の世界にウィルスが現れてしまったこと。どういう原理かはわからないけど、世界がパニックになってしまうかもしれない。現に、私が帰って来た時に、お母さんから、ウィルスのことについて色々話された位には、テレビとかネットとかでも大騒ぎ。
そして、自分から望んでウィルスに感染する人もいた。あの人は、平等にするってことは、逆に差別になるって言ってたよね。それがまだどういう意味かは、ちゃんとは理解できてない気がする。あの人ともう一度ちゃんと話して、色々なことを聞いてみたい。そうしたら、私が今考えてるよりも良い平等の形が見つけられるかもしれない。
あとは、義道さんのこともあった。義道さんの言ってることは正しい。天野さんを早く止めないと、もっと多くの人がウィルスの被害にあう。でも、天野さんを傷つけることなしに、ウィルスで他の人を苦しめるのをやめてもらえたら、それが一番いい。でも、義道さんはそれだと納得しなさそう…。どうすればいいんだろう…。
「うわっ!」
おなかの上に乗せていたスマートフォンがいきなり振動して、思わず声を出してしまった。
画面を見ると、小学校からの友達である、
「よし!」
脚を上げ、反動をつけて起き上がる。色々考えて煮詰まっちゃったときは、気分転換するのが一番だよね!
A.D.2018 7/8 22:02 台頭区 銭倉コーポレーション 谷仲研究所
「ついに完成したか。」
銭倉は部屋に入るや否や、研究員に尋ねた。
「はい。ですが、ポリコレメモリは変身者の生体を認証しないと起動しません。本当に一度亡くなった人間を蘇生させるつもりですか…?これが明るみに出れば、我々はどうなることか…。」
周囲には張り詰めた空気が漂っている。銭倉は唯野の遺体が格納されているケースの近くまで行くと、研究者たちに振り返った。
「先日、ポリコレッドがタイヨウセイバーではなく、タヨウセイバーを生み出した事件で、私は確信した。ポリコレンジャーは、人知を超えた何かを有していると。そして、全世界を支配することを目的とする我らにとっては、それが何なのかを知る必要がある。そのためには、我々はポリコレンジャーに力で負けてはならない。彼女を蘇生し、兵器として運用することはそのための一歩だ。そして、このことが明るみに出ないことは私が約束しよう。さあ、始めてくれ。」
研究員たちは各々の持ち場に戻り、一斉に作業を開始する。研究員たちの声があちこちで飛び交う。そして、カウントダウンが始まった。
カウントダウンが終わると、ケースの蓋がゆっくりと開いた。
「やっと君と話すことができて光栄だよ、唯野君。」
銭倉は、まだ覚醒していない唯野に囁いた。
A.D.2018 7/8 23:45 隅田区 東隅田 御供宅
「そろそろ寝るかー、明日も学校あるし。」
そう言ってきたニンちゃんは大分眠そうだ。しのぶちゃんの家族と夕飯を食べた後、ニンちゃんの部屋でゲームをしたり、学校のこととかをを話したりして、今に至る。
「そうしよっか。」
二人で布団を敷きながら、私はニンちゃんに悩みを打ち明けるかどうかを悩んでいた。相談したいけど、ポリコレンジャーのことなんか、言えるわけないし…。
そんな時、ニンちゃんが私に声をかけた。
「まっちゃん、何かあった?」
「えっと…うん、まあね」
ニンちゃんはいつも鋭い。ニンちゃんに言わせれば、私が分かりやすいだけ、らしいけど。
「最近、どうしても考えが合わない人と話すことが多くてね、そういう時にどうすればいいか、何かよくわからないんだよね…。ほら、小学校の時とかは、あんまりそういうことなかったじゃん?」
ポリコレンジャーの事は伏せたけど、大分不自然な言い方になってしまった。
「確かにね。小学校の頃はそんなに揉めることとかもなかったしね。でも、私も最近そんなことがあったよ。私は、地元のみんなが行く学校とは違う、隣の地区の中学校に行くことになったから、みんな初対面だった。」
ニンちゃんは、どうしてもやりたい部活があるとかで、その部活がある隣の地区の学校に通っている。私の通っている学校は、私のいた小学校から来る人が1/3くらいだから、その点では大分違う。
一呼吸おいて、ニンちゃんは再び口を開いた。
「でも私以外はみんなお互い知り合いみたいで、私だけみんなの輪に入りにくかった。だから、隣の地区の学校に来たことをちょっとだけ後悔しちゃった。でも、私は私の目標のためにこの学校に来たんだってことを思ったら、そんな風に思ってた自分が馬鹿らしくなっちゃった。」
ニンちゃん、そんなことを考えてたんだ…。私なんかよりも、ずっと大人だ。
「だから、自分からみんなに話しかけてみたり、遊びに誘ってみたりしたんだ。そうしたら、すぐにみんなと打ち解けたよ。話してみれば、簡単なことだった。今まで、私の方が心を開いてなかっただけなんだって気が付いたんだ。」
考えてみたら、私は天野さんや義道さんと、積極的に話したことはなかった気がする。何かを言われたからそれに言い返したりしていただけだったかも。それなのに、他人に考えを改めて欲しいと思うなんて、確かにおかしな話だよね。
「なるほどね…。なんかスッキリした感じがする。じゃあ、私も自分から話しかけたりしてみるよ!ありがとう!」
「うん、よかった。」
丁度布団も敷き終わり、私たちは布団の上に寝転んだ。今日はよく寝れる気がするけど、明日遅刻しないように気をつけなきゃ…。
A.D.2018 7/9 0:10 台頭区 銭倉コーポレーション 谷仲研究所
白い。視界がぼやけて、よく見えない。
霧が晴れるように少しずつ視界のもやが消えていくと、そこには真っ白に光るライトがあって、私を照らしていることが分かった。でも、どうして私はこんなところに…。
「やっとお目覚めになられたようだ。唯野さん。」
声のする方に目線を向けると、知らない男の人がそこに立っていた。そして、その後ろにはたくさんの白衣の人たちがいることにもその時気が付いた。
「あ、あの…。」
「初めまして。私は銭倉コーポレーションの銭倉守といいます。どうぞよろしく、唯野さん。」
状況が呑み込めない。なんで私はこんなところにいるんだっけ、さっきまで学校に行ってたはずなのに、それから全く記憶が無い。
「ここ、どこですか?それに、私は昨日まで…」
「唯野さん、言いにくいんですが、あなたはさっきまで謂わば仮死状態でした。やはり例の件以前の記憶は無いようですね。」
「えっ…」
仮死状態…ってことは、死んでたってこと…?嘘…嘘だよ。だって昨日まで身体は普通だったし、事故にも遭ってない。もしかして、学校に行った後の記憶が無いのは、交通事故とかで記憶が飛んでたとか…。
色々なことをグルグル考えていたら、銭倉さんとかいう人が、私に声をかけた。
「嘘ではありません。本当です。そして、貴方は事故ではない、事件に巻き込まれたのです。かなり厄介な事件にね。」
事件…。その言葉を聞いて、段々と息苦しくなってきた。恐怖に震えが止まらなくなった。
「そういえば、私のお母さん、お父さんはどこですか…?」
「貴方のご両親は…。残念ですが、もういません。」
え…お母さん、お父さんまで、事件に…。あまりの恐怖、怒りに、涙さえ出ない。
「うわああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!」
A.D.2018 7/9 0:15 台頭区 銭倉コーポレーション 谷仲研究所
「うわああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!」
叫び、ケースから出ようとする唯野だが、四肢にはめられた拘束具によりその動きは抑えられていた。
「これ取ってよっ!」
唯野は四肢にはめられた拘束具を外そうとしたが、一向に外れる気配はない。その様子を見た銭倉は、蓋の開いたケースの中の唯野に近づき、本来なら内出血で赤く腫れるはずの、真っ白な彼女の手首に触れて彼女に語りかけた。
「貴方の身体は、もはや人間のものではないのですよ。万が一の時のために、これはつけさせてもらっています。」
唯野の動きは止まった。そして、身体の震えが再び始まった。
「貴方の運ばれてきた状態からして、元の状態で命を救うことは不可能でした。過去の記憶があるのが奇跡なくらいだ。瀕死状態にあった君を拾ってくれた人が、然るべき処置を施して仮死状態にして保存してくれたから、命だけは助けることが出来ました。」
唯野は黙ったまま、唾を飲み込んだ。
「だけど、仮死状態から蘇らせて、自立して活動するには、君の身体は余りに損傷が大きかった。そのため、君の身体はある程度は機械化されているのです。」
「そんな…。」
唯野は拘束された自分の手を見た。
「まあ外から見ただけでは分からないですが。しかし、君の身体は普通の人間とは違います。万が一の時のために、セーフティーが用意されています。これについては、追々話しましょう。君が我々に協力して頂ければ、の話ですが。協力して頂けるのなら、貴方の拘束を解き、私たちの目的と、貴方とご両親の身に起こったことを全てお話します。」
銭倉の言葉に、周りの研究員はどよめく。
「銭倉さん、拘束を解くのはまだ危険すぎます!何が起こるか、まだ未知な部分も多いです。いくらセーフティーが仕掛けてあるからって…。」
どよめく研究員たちを、銭倉は腕を上げて制す。
「大丈夫。私は唯野さんを信じています。ここで手を打たなければ、我々も、唯野さんにも未来は無い。」
研究員たちは黙った。俯いていた唯野は、顔を上げた。彼女の眼は充血もしていないし、涙さえ流れることはない。
「私は…、私に何があったかを知りたい。協力って何をすれば…?」
唯野の言葉に、銭倉は黒いメモリとチェンジャーを、彼女のケースの脇のテーブルに置いて答えた。
「貴方がすることは、ただ一つ。貴方の新しい力を使って、貴方を巻き込んだ奴らに復讐をする。それが、我々にとっても大きな契機となる。悪くない条件でしょ?」
「…わかりました。」
唯野からの予想通りの返事に、銭倉はほくそ笑んだ。
約二ヶ月ぶりの投稿となりました。
ついに、15話まで投稿することができました。
物語も、ようやく各陣営が動きを見せ始めています。ここからどう展開していくのか、僕も楽しみです。
次回の投稿がいつになるかはまだ未定ですが、最低限二ヶ月に一回は投稿しようと考えております。今後とも、よろしくお願いします。