機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です) 作:あばばばばsho
A.D.2018 4/8 10:09 ???
「ゔぐぁっ…」
爆発音とともに政の身体は飛ばされ、近くの店の外壁に衝突した。
「あなたは…?」
顔を上げた政の前には、砲身を携えた檸檬色の戦士が立っていた。
A.D.2018 4/8 9:54 大埼駅付近の裏路地
「やっぱウィルスは便利だねぇ。お陰で電脳世界とやらの仕組みの解析も予定より早く進みそうだ。」
「別にそのためにウィルスを創ったわけじゃないんだろ?」
「まあまあ、こういう寄り道っていうのも大事なわけだよ、レモンちゃん。」
「俺をその名前で呼ぶな。」
俺がこう言っても奴は一向に俺をレモンと呼び続ける。
「まあ今回は、あの赤いのの戦力を見るってことも大事なんだけど、結構やばくなったらウィルスを助けに行ってくれるかな?このサンプルを失うわけにはいかないからね。」
「お前のサンプルなどどうでも良い。俺はあいつらを叩き潰せれば十分だ。」
「今の君じゃ、無理だろうけどね。あいつらも君を泳がせてるだけなんだろうし。」
そうだ。今の俺のままではあいつらを倒すことは出来ない。そのためにこいつと手を組んだんだ。
目の前の奴はタブレットを興味津々な様子で眺めている。
「お、例の赤い子、かなりトリッキーだねぇ。結構危なそうだから、一応援軍に言ってくれるかな?レモンちゃん?」
赤いのには申し訳ないが、お前には犠牲になってもらうしかない。
「お前の指図を受けるつもりはないが、今回は俺の都合で奴を倒す。」
『ポリコレチェンジャー!』
『レモン!』
あいつらを倒す。その思いで、俺は戦う。戦うしかない。
「変身。」
『ポリコレモン!』
身体の各所に雷の紋様が象られた鎧が装着される。
「いってらっしゃーい!期待してるよ?」
「勝手にしろ。」
『電脳転移システム、起動』
A.D.2018 4/8 10:06 ???
『ポリコレイダー!』
ウィルスと奴の位置はすでに把握している。ここからはあまり遠くない。
「なかなかやるな。」
1分ほど移動した先では、奴とウィルスの戦いが繰り広げられていた。奴は棒状の武器で戦っているのか。
「だが俺はお前を倒す。」
腰のホルダーからカードを取り出す。
『文春キャノン!』
左腕に砲身が装着され、俺は奴に照準を定める。奴は棒状の武器にエネルギーを溜めている。ウィルスに当たればウィルスは消滅するだろう。ウィルス中の性原とかいうやつがどうなるかは分からない。俺の知ったことではないが。
「ハァッ!」
火球を奴に放つ。奴がウィルスに攻撃をするのを予測したが、奴が何故か攻撃を止めた所為で直撃はしなかった。
あの調子に乗った奴の為ではないが、俺の目的のために、こいつは回収させてもらう。
『ウィルスアブゾーバー!』
これはあいつらが作ったカードではない。あいつらの作るものと違って、無駄がなく、ふざけた名前も付いていない。
黒に青い差し色が入った瓶のような容器をウィルスに向けると、ウィルスは吸収された。中の人間がどうなったかなんて知ったことではない。
ウィルスを回収した後、赤い奴に近づくと、向こうはこちらに気がついたようだ。
「あなたは…?」
やはり女か。鎧の形状からしてそのような気はしていたが。
「お前には申し訳ないが、その鎧を残しておくわけにはいかない。お前をここで倒す。」
俺はカードを取ろうとカードホルダーに手を伸ばした。
A.D.2018 4/8 10:10 ???
私の前に現れた黄色の鎧は、私のものととても似ていた。
『政、緊急事態だ。奴はカードを使うだろう。ポリコレイダーを操縦して、奴に衝突させろ。その隙に至急電脳世界から離脱すること。』
ポリコレイダーを操縦?って思ったけど、そういえば鎧を装着している間はポリコレイダーを脳内で操作できることを忘れてた。
ポリコレイダーの位置を頭部の鎧内部のモニターの地図で確認すると、ちょうど後ろにあることが分かった。
「お前には申し訳ないが、その鎧を残しておくわけにはいかない。お前をここで倒す。」
前にいる黄色の鎧が喋った。私のように中に人が入っているのかも…というか、倒すって何?!狩野さんも緊急事態だと言ってたけど、やっぱりかなりやばい状況だったりするのかな?!早くログアウトしないと…
見ると、目の前の人は腰のホルダーに手を伸ばしつつあった。
ポリコレイダー、急いで〜!
「何っ?!」
ポリコレイダーは急発進して、黄色い人に向かって行った。バイクで引くのはちょっと悪い気がするけど、ここは撤退すべきだよね。
『電脳転移システム、起動』
A.D.2018 4/8 10:12 ???
『まんまと逃げられちゃったねぇ?まあ、ウィルスは回収してくれたからいいけど。』
奴からの通信だ。こういう喋り方をする奴は本当に癪に触る。
「ウィルスを出現させればあいつも現れるだろう。倒す機会なら幾らでもある。」
『でもあの赤いのにはあの2人が付いているんだし、一筋縄ではいかないと思うよ?』
「それこそ、あのカードを使えばいいさ。」
そう。あのカードを使いさえすれば、俺も奴も、逃げられない。
A.D.2018 4/8 10:15 品河駅付近
今は、ポリコレイダーに乗って、ビルに帰る途中。帰る間もあの男の人の顔が思い浮かぶ。私がポリコレ棒で叩いてしまった所為で、あの人を傷つけてしまったのかも…。人を傷つけちゃったら、私は正義のヒーローじゃ無くなっちゃうのかなぁ…。さっきの黄色い人にもバイクをぶつけちゃったし、結局力でしか解決出来ないのかなぁ…?
A.D.2018 4/8 10:25 代場シティーセンタービル
ビルの地下に入り、さっきの転送装置の中に入ると、私の目の前にラボが現れて、そこには狩野さんも原須さんもいた。
「政、初仕事でこのような形になってしまい、申し訳ない。あちらもウィルスを日々進化させているようだ。人にウィルスを感染させている可能性があるのは、今回が初めてだ。」
「政さんの視界に映った男の顔を解析したところ、品河区のとある企業の社員である事が発覚したんだ。電波障害の発生地からして、ウィルスを感染させられたのはこの人で間違いないだろうね。」
「その人を助ける事は出来ないんですか?」
私はその人を助けたい。私がポリコレ棒で叩いてしまったばかりに、あの人を苦しめてしまった。
「とりあえず、ウィルスが消失した事により、電波障害が無くなったことは成果があったと言うべきか。」
まあ確かにそうなんだけど……。そうだ、あれを聞くのを忘れてた!
「そういえば、いきなり襲ってきたあの黄色い人は誰なんですか?」
「うーん…。彼は元々君の前任者だったんだよ。」
「なんでその人はポリコレンジャーを辞めちゃったんですか?」
「何というか、裏切ったんだよ、彼は。」
裏切っちゃったって言うけど、どうしてなのかな?やっぱり元々悪い人だったりするのかなぁ…。
そんなことを考えていると、狩野さんが口を挟んだ。
「それより今は新型のウィルスの対策の方が先決だ。ウィルスが電脳世界で正常に活動していた事を鑑みると、我々の技術が向こう側に出回っている事は確かだろう。恐らく、我々のpc.anti virus Mk-Ⅰ の技術を元に、ウィルスでも人間を媒介として電脳世界に介入する事が出来るようになったものと考えるべきか。」
色々なモニターを眺めていた原須さんがこちらに振り向いた。
「先程の品河区の企業の社員なのですが、常日頃からパワハラ、セクハラ等の行為に及んでいた事が発覚しました。ウィルスを培養するには、恐らくこの様なポリコレ係数の低い人材を用いるのが良いのだと思います。」
「パワハラ、セクハラって何ですか?」
私が二人に尋ねると、二人は呆れた様な顔をした。また私馬鹿な事聞いたかな…。
「パワハラ、セクハラというのはそれぞれパワー・ハラスメント、セクシャル・ハラスメントの略なんだ。パワハラは、自分の地位や権力によって、自分よりも地位が低かったり、権力が無かったりする人を不必要に攻撃したりすること。セクハラは、簡単に言うと、性的な嫌がらせのこと。もちろんこれは、女の人から男の人に対して行われてもダメなんだけどね。」
原須さんは詳しく教えてくれた。なかなかわかりやすいなぁ…。
「なるほど…。確かにそれらは公平じゃないですよね。私達ポリコレンジャーの考えとは真反対ですね。」
「そうだね。だから彼がウィルスの培養に使われたんだろうけど。」
うーん…。確かにその人は悪いことをしちゃったかも知れないけど、私はあの人をポリコレ棒で叩いちゃったんだよね…。
「私、その人に会って、謝りたいです!私はあの人を攻撃しちゃったんです!謝ってもどうにもならないかもしれないけど…。」
「何を言っているんだ。お前が彼に接触すれば、敵は君の正体を知るだろう。第一、お前は謝る必要は無い。ウィルスを除去するにはウィルスを攻撃するしか無いのだからな。」
狩野さんが口を挟む。
「攻撃する他にウィルスを消す方法は無いんですか?」
「ウィルスに感染した奴に謝ったらウィルスは消えてくれるのか?そんな訳があるか。いいか?これは戦争なんだよ。我々が生き残るか、それとも奴等が生き残るか、それしか無い。我々は分かり合えないんだよ。」
確かにそうかもしれないけど…。私は戦争を止めたくてポリコレンジャーになったのに、戦争に加担するしか無いの?
「お前は大義の為に戦うんだろ?」
大義の為…。皆が平等に暮らせるようにする、っていう大義だよね。私達が分かり合えないなら、戦うしか無いのかな…。
「まあ、彼に謝りに行くことはちょっと駄目だけど、攻撃しないでウィルスを退治する方法は探してみるよ。これ、持っててよ。」
そう言った原須さんは、私にカードを二枚渡した。ポリコレ棒や、ポリコレイダーのカードに似てるけど、絵柄のところに何も描かれていないみたい。
「もし僕が新しい装備の開発が終われば、そのカードが使えるようになるだろう。いつ完成しても良いように、持っててくれるかな?」
「ありがとうございます!」
緊急の時には連絡が来る、という事だけを伝えられ、その場は解散になった。
お父さんとの夕飯、楽しみだったのにあんまり楽しみじゃなくなっちゃったな…。
A.D.2018 4/9 18:04 都内某所
カーテンで締め切った小さな部屋に、カーテンの隙間から漏れる細い西日が少年の背中を照らす。
「昨日の性原はどうなったんだ?」
「君が人の心配ねぇ…?珍しいじゃないか。」
「別に奴の心配などはしてない。ただ、ウィルスが回収された後の人の行き先が気になっただけだ。」
「それ、心配してるって言うんじゃないの?まぁ、いいか。今、ここにいるよ。」
そう言うと、少女は黒に青の差し色が入った瓶状の物を指で弾いた。
「まさか。人間をその中に入れる事は不可能だろう。奴の肉体はどうなっている?」
「あー、肉体は今はどっかの病院とかに運ばれてるんじゃないかなぁ?あの人の身体は、今はいわば蛻の殻なんだよ。ウィルスが除去されれば意識が戻る可能性もない訳じゃないけどね。まぁ、どうでもいいけど。」
「どういう事だ。」
少年は少女の胸倉を掴み、少女を睨みつける。
「あら。Ladyの胸倉を掴むなんて、いい度胸じゃない?しかも、元々“あっち”側に居た人とは思えない行動だね。」
「お前はそんな柄じゃないだろ。しかも俺はあいつらとは縁を切った。」
「はいはい。てかさ、君に関係ない人がウィルスに感染させられてるだけなのに、そこまで気を揉むものなの?まだ正義のヒーローを気取ってる訳?そんなんだからあの赤いのにも逃げられるんだよ。あの赤いのを殺そうと思ったらいくらでも手はあったはずなんだけどねぇ?」
少年は少女から手を離すと目線を逸らし、腕を組んだ。
「あの赤いのもなかなかやるよねぇ。流石はあの女が選んだ少女、と言ったところか。こっちもどんどん開発を進めていかないとね?」
少年は黙ったまま、部屋を後にした。少年の背を興味無さげに一瞥すると、少女は引き出しを開け、先程の瓶と似たカラーリングのブレスレットを取り出す。
「さぁて、まだ調整が必要だけど、完成は間近だ。いつの時代も、科学を発展させるのはやっぱり戦争だよねぇ。しかも、今回の戦争はどいつもこいつも馬鹿ばっかりだし。まぁ、お陰で私の才能が世界一になる日も近いか。」
少女はブレスレットを掴み、恍惚と眺めると、そっと机の上に置いた。キャスター付きの回転椅子からおもむろに立ち上がると、窓際まで歩き、カーテンを開いた。日はもう沈みかかっており、街に灯りが灯りつつある。
「まずは、あのウィルスを改造しないとね。まだまだサンプルが必要なことだし。」
少女は机に戻ると、作業を再開した。