機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です) 作:あばばばばsho
A.D.2018 4/12 12:35 隅田区 隅田区立隅田第三中学校
初めてポリコレッドになった日からしばらく経った。狩野さんと原須さんとは、あの日以来連絡も取っていない。
何となく学校生活を過ごしていても、何となく罪悪感というか、後悔というか、そんなモヤモヤが心の中に残っている感じ。あのおじさんにもう一度会うには、またウィルスに感染して貰うしか無い事を考えると、人の不幸を願っているようで、自分が嫌になる。
給食を食べ終わると、私はお手洗いに行こうと席を立つ。私の携帯が鳴ったのは、廊下を歩いていたその時だった。ちなみに携帯の持ち込みは校則違反なんだけどね。
「はい、政です。」
『ウィルスがまた出現した。今度は澁谷区の方だ。ポリコレチェンジャーで変身して、現場に向かうこと。』
「了解です!」
前と同じウィルスかどうかはわかんないけど、きっと同じウィルスだと思う。なんかそんな気がするんだ。
この前校長先生に呼ばれて貰った外出許可証を職員室で見せ、学校を出た。どこか隠れられるところで変身してから向かおう。
『ポリコレチェンジャー!』
結局、近くの公園のトイレなら大丈夫だろうと思って、その中でポリコレチェンジャーを腕に巻いた。
『レッド!』
「ポリコレチェンジ!」
『ポリコレッド!』
狭いトイレの中で鎧が展開される。
いったぁ……やっぱり一気に身体にくっつくと痛いなぁ…。取り敢えず向かいますか。
「君、待ちなさい。」
振り返ると、自転車に乗ったお巡りさんがこっちを見ていた。あ、これはやばいかも…あ、でも名前を言っちゃうとあれだし、変身を解除しちゃうともっとやばいかな…。
「あ、あーっと…私はポリコレンジャーっていうのに所属しているんですけど……」
「取り敢えず同行して頂けますか?」
どうしよう…これが例の職務質問ってやつかな?少し興味あるけど、今はここに留まるわけにはいかないよね。
「あっ、UFOだ!」
「えっ?!」
えぇぇぇえ?!お巡りさん、振り向いたの?!マジで引っかかる人初めて見た!何とかなりそう。
『ポリコレイダー!』
カードをスキャンしてポリコレイダーを召喚する。
「ごめんなさい、嘘です!また今度会った時にお詫びします!」
「おい、君っ……あれ?……最近連勤だったし、疲れているのか……。」
ふぅ……。何とかポリコレイダーに乗れて助かったぁ…。ほんとにこのステルス機能のお陰で助かった…。
ええと、場所はどこだっけ……あぁ、そうそう、澁谷区ね。
A.D.2018 4/10 14:42 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ
「うーん。やはり攻撃せずにウィルスを消す方法は無いみたいです。」
「やはりな。奴らがそんなに生易しいもんじゃないのは今に始まったことでもない。」
僕は今、政さんの戦闘データから、ウィルスのデータを解析している途中だ。何通りかの方法を検証してみたんだけど、どれも通じなさそうなんだ。しかも、ウィルスに感染させられた人は、品河区の病院に搬送されて、今は意識不明の状態らしい。敵もここ数日は潜伏しているみたいだし、恐らく前のウィルスは強化された状態でまた現れるだろう。その為のポリコレッドの追加装備を作ろうとしている。
「ポリコレッドの追加装備は、どのような物がいいと思うか?遠距離武器が足りないから、レモンの物と同じようなものを作るか。」
「いえ。お言葉ですが、今の政に必要なものはそんなものではないと思います。」
滅多に狩野さんには口答えしないけど、今回は敢えて言ってみた。きっと、政なら、次にあのウィルスに遭遇しても攻撃しないだろう。今の政に必要なものは、武器じゃないんだ。僕はそう思う。
「そうか。ならお前に任せるとする。」
「ありがとうございます。」
政はウィルスと戦う運命にあるかもしれない。でも、政の戦いを止めたいっていう思いはきっと運命を変えるかもしれない。
そういえば、昔作ったあの装備なら…。ポリコレ係数の高い政なら、使えるかもしれない…。
A.D.2018 4/11 15:27 都内某所
「明日くらいにまたウィルスを使おうと思うんだよね。例のウィルスだけど。」
「また奴は現れるだろうな。」
足を組んでモニターに向かい作業をする少女に少年が返事をする。
「そう。私が甲斐甲斐しく君に御膳立てしてあげてるって訳。君にはそのウィルスの用心棒をして貰いたいんだけど、よろしくよ?」
「御膳立てしてもらう筋合いなんてない。」
「まぁまぁ、嬉しいことは嬉しいって言わないと、女の子には嫌われちゃうよ?ま、今回はウィルスも強くなったし、きみの出番はないかもだけど。」
「何でもいい。」
少年は目に確かな闘志と僅かな躊躇いを滾らせていた。
A.D.2018 4/12 13:41 澁谷区 真国立競技場付近
『電波障害の範囲は東の方に移動しつつあるから、そこの周辺で十分電脳世界の範囲にウィルスを捕捉できるだろう。』
「了解です。」
私の隣には澁谷区と真宿区に跨る、真国立競技場がある。といっても、未だに工事中。澁谷区の中心からは遠いけど、ウィルスの及ぼす電波障害の範囲が移動しているみたい。
『電脳転移システム、起動』
ポリコレチェンジャーの側面のボタンを押すと、目の前の世界は消えていった。このあいだと同じような感覚。待っててね、おじさん。
A.D.2018 4/12 13:42 ???
目を開けた私の目の前には、この前のように青い世界が広がっている…はずだった。
「何これ?!」
『不味いな。これら全て、ウィルスの集合体だろう。』
私の目の前には、青い空と、真っ黒い地面と建物の世界が広がっていた。勿論私の足元も真っ黒。
『まあ、地面に薄く広がっている分には、pc.anti virus Mk-Ⅱの抗ウィルス性能で、ウィルスに触れた瞬間、周囲のウィルスは死滅する。』
「だといいんですけど…。」
そう言って、私は足を上げてみた。すると、私が今まで立っていた所には、青い足跡が付いていた。
「おおー!これが人類が電脳世界に残した最初の足跡になるんですね!」
『まあ、どうせすぐにウィルスが発生してなくなるだろうが。』
狩野さんがそんなことを言ってるうちに、やっぱり私の足跡は消えてしまった。
『そんなことより、早くポリコレイダーでウィルス本体の方に向かってくれ。』
「了解です。」
ヘルメット内に投影されたマップを確認し、ポリコレイダーを召喚する。
ポリコレイダーが走った車輪の跡も、少し時間が経つと消えてしまった。
A.D.2018 4/12 13:43 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ
「狩野さん、どこに行くんですか?こんな時に。」
僕は只今ポリコレッドの追加装備を作っている最中だから、狩野さんに政さんのオペレーターを頼んだんだけど、政さんとの会話が終わると、いきなり席を立って、ラボから出ようとしている。
「今こそ、私は佐別 仁珠
「仁珠君にですか?!危ないですよ!」
「だが、今は彼を政に会わせる訳にはいかない。」
「それはそうですけど…。」
「我々の使命は人々が公平に暮らせる世の中を創る事だ。その為に私が犠牲になったっていい。その為には政の存在は欠かせないんだ。今ここで彼女を失うわけにはいかないんだよ。」
「…。では、ポリコレモンのメモリの位置情報をお伝えします。」
狩野さんがその気なら、僕はいち早くこの新装備を政さんに届けるしかないか。
A.D.2018 4/12 12:37 澁谷区 澁谷駅周辺
「はぁ〜。お昼ご飯美味しかったね。どう、女の子に奢られる気分は?」
「勝手にお前が料金を払っただけだろうが。」
「そこは、遠慮せず男の人が払うってのが普通でしょ?まぁ、今のは"君たち"ポリコレンジャーにとっては聞き捨てならない台詞だろうけどね。」
「俺はもうあいつらとは関わりが無いと、何回言えばわかる。」
「あいつらを殺すって、目標低すぎ。私みたいにもっと広い視野で物事を考えないと。」
少し歩くと、スクランブル式交差点が見えてくる。
「見てみなよ、この人で溢れた空間。ここにいる人どもが、全部、ぜーーんぶ、私よりも劣っていると考えると、すーーっごく楽しくない?私は私の世界一の才能、力、そういうものを証明する為にこの戦いに参加してるって訳。君とはスケールが全然違うの。」
「お前にあいつらを超えることは無理だ。お前みたいに、全部あいつらの技術をパクっているような奴は駄目だ。」
「世話してやってる奴に、よくそんな口がきけるねぇ?まあ、今度の新作は君を驚かせてあげるから、せいぜいびっくりして死なないように気をつけるんだよ?」
少女は汚らしい裏路地に入り、そこで背負っていたリュックから、あらゆる機材を取り出し始めた。
「ここら辺で、ウィルスを発生させるかな。」
少女がウィルスアブゾーバーを取り出そうとしたその時だった。
「おい、君。ここで何してるんだよ?」
事情を知らない警察官は、裏路地で何やら作業をしている少女に近づいた。
「君こそ、こんな所に来ちゃ駄目だろ?」
「えっ?」
予想していたような返答とは異なり、低い声で返答をされた警察官がたじろいだ瞬間、自身の腹に何かを打ち込まれた感触に気がついた。
「私の邪魔をするなら、ウィルスの餌食になってもらうしかないか。」
「相変わらず邪魔する奴はすぐ殺すんだな。」
「私の用心棒の癖に、私に手を汚させてるなんて、全くあてにならないね?しかも、今回は大サービスで、殺さずに次の計画用のウィルスを植え込んであげたし。おまけに、幸いなことに、ウィルスを打ち込まれた記憶を抹消する機能付きだし。」
少年と少女の会話を聞きながら、とある警察官の意識はぷつりと切れた。
A.D.2018 4/12 13:50 ???
ポリコレイダーを止め、政は人型のウィルスと対峙する。ウィルスの方も、政の姿を捉えている様子。
「おじさん、ごめん。私はあなたをポリコレ棒で叩いてしまった。ウィルスの中に人間がいるなんて知らなかった。こんなことを言っても、仕方ないよね…。」
政がウィルスに語りかけても、ウィルスはそれには反応せず、政に接近する。
「あなたの苦しそうな顔、私は絶対に忘れることができないと思う。私があなたを救うまで。でも、私はポリコレンジャーとして、みんなが公平に暮らせる世界を創る使命がある。そして、戦争を止める使命がある。その為に、あなたとは衝突しないといけないのかもしれない。だから、」
ウィルスは動きを止める。まるで動こうという力を何者かに抑えられているように。
「私は、世界も救うし、あなたも救ってみせる!どうすればいいかわからないけど!」
ウィルスは再び動き始めた。今度はゆっくりではなく、政に急接近する。
ウィルスと政の間の距離が僅か4m程になった時、人型にしては異様に太い腕を政に振るった。
「ゔぁっ…」
政は両手の掌を重ねてウィルスの拳を受け止めたが、衝撃のあまり後ろに吹き飛び、黒い大地を転がった。だが、黒い大地をには、先程のようには青い跡が付くことはなかった。
「少しやばいかな…。狩野さん、どうしよう…。」
ヘルメットの内側に映し出されたモニターには、坑ウィルス力低下の文字が映っていた。
A.D.2018 4/12 13:52 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ
よし、これで取り敢えず基本的な部分は完成したが、運用できる性能ではない。まだまだ改良しなければならないが、どうにもデータが足りないし、しかもこれを使うにはリスクが大きすぎる。
そう思っていた時、ラボにサイレンが鳴り響いた。ウィルスが出現した時とは別のサイレンだ。
「まさか…!」
僕は急いでラボ内のオペレーション室に移動する。そこに映っていたのは、倒れているポリコレッドの姿だった。
「政さん、大丈夫ですか?」
ポリコレッドの状態を確認すると、かなりの損傷を受けており、坑ウィルス力が低下していることも分かった。
もう一度電脳世界の様子を見ると、地面が全て黒くなっている事に気がついた。
『大丈夫です…。』
「大丈夫じゃないでしょ?!しかも、多分地面の黒いやつ、ウィルスだよね?坑ウィルス力が低下している今、このまま戦うのは危険だ。今すぐ離脱しなさい。」
『いや、今逃げるわけにはいかないんです。』
政さんが僕たちに対してきちんと反論するのは、これが初めてだな。何があったのかは知らないけど、相応の覚悟があるのだろう。
「今の君なら、ウィルスに攻撃せずに、中の人を救うことができるかもしれない。今からある装備のデータをアップロードするから、それが終了したら、完成したカードを読み込むんだ。」
『原須さん、ありがとうございます。』
「もう少し耐えてくれるかな?まだ少し時間がかかるようだから。」
『了解です。』
通信を切り、装備のアップロードに取り掛かる。これは、政さんを危険に晒してしまうかもしれない。けど、政さんが逃げないって決めたなら、僕も腹をくくるしかないか。
「政、只今アップデートを完了した。新装備名は、名付けて、"もしもし労働相談"だ。」