機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です)   作:あばばばばsho

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第5話

 A.D.2018 4/12 13:47 澁谷区 明治神宮付近

 

「お前はっ…。」

 

  俺の目の前には、一番憎い奴が立っていた。ポリコレイダーから降り、ポリコレチェンジャーとメモリを取り出す。

 

「お前からやってくるとは都合がいい。今ここでお前を殺す。」

 

  ポリコレチェンジャーを腕に巻く。

 

『ポリコレチェンジャー!』

 

「何っ?!」

 

  ポリコレメモリを起動しようとしたが、何度押しても反応しない。

 

「私に対してポリコレメモリを起動したって無駄だ。私達が作ったんだからね。」

「俺に何か用があって来たんだろ?無いならとっとと失せろ。」

「今、お前を政の方に向かわせるわけにはいかない。私の計画がここで頓挫すると全く面白く無いからな。」

「へぇ、"私達"じゃないのか。喧嘩でもして出てきたのか?」

「いや、元々私と彼は目的も違う。互いに利用し合っているだけだ。」

「ああそうかい、まぁお前らの事情などどうでもいい。ここは通させてもらう。」

 

  ポリコレイダーに戻る。奴をバイクで轢いてやればいい。

 

「轢かれたく無かったらそこをどけ。おまえには今は用はない。」

 

  ポリコレイダーを発進させた。今頃赤いのとウィルスは交戦しているだろう。ここで時間を食う訳にはいかない。

 

「お前になくても、私にはあるんだよ。」

 

  次の瞬間、まるで"始めからそうであった"かのように、俺とポリコレイダーは道端に横倒しにされていた。

 

「どういう事だっ?!」

「今の君には私を突破出来ない。今後も出来ないだろうが。あ、あと君の協力者に電話を繋いでくれないか?」

「お前に協力する筋合いがどこにある?」

「ならば"力"で奪うのみだ。」

 

  俺は目を疑った。奴の手中には俺の携帯が収まり、更に電話もかけていた。

 

「もしもし。君が仁珠君の協力者、"ゲームメイカー"君だね?話はよく聞いている。今回の君の作ったゲームは、政がクリアする。次は、より面白いゲームを期待しているよ。」

 

  狩野は通話を切ると、俺に携帯を投げ返した。

 

「君が今更向かったところで、もうそろそろ君たちのゲームはクリアされるだろう。また会おう。」

 

  そう言うと、奴は俺に背を向け歩いて何処かへ消えてしまった。

 

 

 A.D.2018 4/12 13:53 ???

 

  何かが身体を蝕んでいく、そんな気がする。当たり前だよね。モニターには"ウィルス感染"の文字があるんだから。

 

『政さん、大丈夫ですか?』

 

  狩野さんではなく、原須さんの声がする。ごめんなさい、もうそっちには帰れないかもしれない。あのおじさんみたいにウィルスに取り込まれちゃうかもしれない。

 

「…。大丈夫です…。」

『大丈夫じゃないでしょ?!しかも、多分地面の黒いやつ、ウィルスだよね?坑ウィルス力が低下している今、このまま戦うのは危険だ。今すぐ離脱しなさい。』

 

  今離脱したらもしかしたらウィルスも治るかもしれない。でも、あのおじさんと約束したんだ。おじさんも救うって。

 

「いや、今逃げるわけにはいかないんです。」

 

  原須さんは少し黙っていたけど、そのあと、少し声色を変えて私に語りかけた。

 

『今の君なら、ウィルスに攻撃せずに、中の人を救うことができるかもしれない。今からある装備のデータをアップロードするから、それが終了したら、完成したカードを読み込むんだ。』

「原須さん、ありがとうございます。」

『もう少し耐えてくれるかな?まだ少し時間がかかるようだから。』

「了解です。」

 

  原須さんは通信を切った。今、アップロードしているのかな。

  ウィルスはゆっくりこっちに移動してきた。

 

「おじさん、あなたを絶対に救う。ここまできたらもう後には引けないんだ。」

 

  私は、私の考える正義のヒーローとして、生きたいんだ。

 

「私の、決め台詞、聞いてよ。」

 

  大きく息を吸い込む。ずっと考えていた決め台詞、今こそ言う時だよね。原須さんも聞いてないから、あんまり恥ずかしくないし。

 

「正すは世界の常識!救うは少数派(マイノリティ)!ポリコレッド、見参!!」

 

  あぁーっ!!やっと言えたぁー!!

 

『ポリコレイズ!』

 

  ポリコレチェンジャーのトリガーを引いて現れる障壁に、手を通すと、腕、そして身体全体に力が漲る。これなら、あの力にも耐えられるかも。

  ウィルスはさっきみたいに、近くに来た途端に拳を振るいあげる。私もさっきみたいに掌を重ねる。

 

「っ…。はぁぁあ!」

 

  拳と掌が衝突した瞬間はすごい衝撃が身体に走った。おまけに、身体を蝕むウィルスもなんか元気になったみたいで、身体のあちこちが痛い。けど、原須さんが新しい装備を完成させるまで、倒れる訳にはいかない。

 

「てやぁあ!」

 

  ポリコレイズで集めた力を一気に解放して、ウィルスにぶつけると、ウィルスは怯んだ。

  その時、原須さんから通信が来た。

 

『政、只今アップデートを完了した。新装備名は、名付けて、"もしもし労働相談"だ。』

 

  えぇぇえー?!なにその名前?!まあ、とりあえず、ありがとうございます。

 

「了解です!待ってました!」

『使い方は、現れる受話器のエンターキーを押すだけ。他のボタンは全部飾りだよ。』

 

  まじですか。

 

『もしもし労働相談!』

 

  カードをスキャンすると、原須さんの言う通り、受話器が現れた。エンターキーを押してみますか。

 

「うわぁああ!」

 

  いきなり視界がホワイトアウトした。

 

 

 A.D.2018 4/12 13:56 ???

 

  目を開けると、少し向こう側に中年くらいの男性が項垂れていた。もしかして、あの人は…!

 

「すいません、もしかして、あなたはこのあいだの…?」

「君は…?」

「あっ、ええっと、分からないですか?」

「君みたいな女の子は知らないね。僕にはまだ孫もいないし。」

 

  女の子…って…ええ?!

  私は自分を見ると、鎧は一切纏っておらず、ポリコレッドになる前の服のままだった。

 

「あっ、ええと、私はポリコレッドって言って…。」

「ああ、あの赤いのの正体は君だったのか。世界の常識を正したりする子だよね?」

 

  おじさんは少し悪戯っぽく笑った。あー、やっぱり面と向かって言われると、恥ずかしいかな…。でもあまり怒っていなさそうでよかった。

 

「あの、ごめんなさい。わたし、ポリコレ棒…いや、武器であなたを叩いちゃったことを謝りたくて…。」

「いや、いいんだ。私は許されないことを今までしてきたっていう自覚があるからね。私がここのよくわからない世界に送られる前に、夢を見たんだ。」

「夢…ですか?」

「今まで私が責め立ててきた部下や、セクハラをしてきた女の子たちが私の前に現れたんだ。今の君のようにね。」

 

  目の前のおじさんは優しそうな目をしている。あまりそういうことをするような人ではなさそうだけど。

 

「その時まで、僕はそういうことをしていた自覚なんて無かった。けど、その時になって、思い知らされたんだ。僕の地位が少しずつ上がるたびに、僕は少しずつ変わってしまったらしい。権力を盾にして、力を誇示してしまうような大人にね。」

 

  おじさんはまくしたてるように言った。

 

「僕は友達も、家族もいないし、何も特技もないし、能力もあまり良いとは思えない。そういう奴が権力を持ち始めると、きっとそれにすがっちゃうんだろうねぇ…。」

 

  おじさんはとても悲しそうだ。でも、私はおじさんを救うって決めた。

 

「私は、あなたの事を知らないから、おじさんの特技とか、能力とかを褒めることは今は出来ない。けど、権力を持つってことは、誰かにおじさんの事が認められたって事だよね。それって、凄いと思わない?」

 

  それに、と続けて言う。

 

「おじさんが、自分の間違いを認めたっていうことも、凄いと思う。自分の欠点を分ったなら、今からでも、きっとやり直せる。あなたの部下とも、きっと。」

「何故僕の為にボロボロになってまで戦うんだ?君の信条がポリティカル・コレクトネスなら僕の行動は許されるものではないじゃないか。」

 

「あなただって、ずっと一人(マイノリティ)だったんでしょ?それなら、私が救うしかないじゃん!」

 

  おじさんは、顔をやっと上げてくれた。

 

「始めは、君みたいな子供に、何を諭されてるのかって思ったよ。だけど、君に大事な事を気付かされたような気がする。僕は絶対、やり直してみせる。君が諦めなかったようにね。ありがとう。」

 

  おじさんは私に笑顔を見せてくれた。私も笑顔で返した。笑顔と笑顔を合わせたら、もう友達だけって、どっかで聞いたことがある気がする。

  おじさんは、もう私の友達だ。名前も、お互いに知らないけど、友達だ。

  次の瞬間、また視界がホワイトアウトした。

 

 

 A.D.2018 4/12 13:56 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ

 

  モニターに映るのは、停止したウィルスと、停止したポリコレッドの姿。未だにポリコレッドの身体はウィルスに侵されつつあるみたいだ。

 

「うーん…。まさかこんな形でこのツールの使用条件を満たすとは…。」

 

  このツール、実は昔に僕がお蔵入りにしたものを復元したものだ。ウィルスが人間を取り込み始める事を予想して作ったものだが、使用条件は、人間を取り込んだものと同じウィルスに感染する事。同じウィルスに感染するとこで、取り込まれた人間とシンクロする、という技術だが、ウィルスに感染する事自体が危険すぎる。

  それに、ウィルスにも種類があり、ハラスメントタイプ、差別タイプなど、様々だが、これはハラスメントタイプにしか通用しないことも分かっている。

  モニターに映し出されるのは、いつもは政の様子だけだが、今は別な人物のステータスも表示されている。

  突然、僕の携帯のベルが鳴った。狩野さんからだ。

 

「今どのような様子になっている。」

「例の通話機器を使いました…。」

「まあ、君のやりそうなことはそんなところだろうと思ってはいたが。今、性原のポリコレ係数はどれくらいか?」

「ポリコレ係数、1.2です。政は8.9です。」

「なるほど。」

 

  ポリコレ係数…。これが低いとウィルスに感染しやすいと考えられる数値だ。逆に、これが高いとpc.anti virus Mk-ⅠやMk-Ⅱに適合しやすくなる。

 

「えっ?!」

「どうかしたか?」

 

  僕は目を疑った。

 

「性原のポリコレ係数が上がっています!」

「ポリコレ係数が上がったところで、ウィルスと性原は分離できないと思うが。」

「いや、"もしもし労働相談"を用いれば、ポリコレ係数が5を越えれば分離できます!」

「よくわからないネーミングだし、よくわからない効果だが、まあよくやった。」

「ありがとうございます。」

 

  通話を切り、モニターに目を移した。すると、性原のステータスはモニターから消えた。ウィルスと性原を分離できた証拠だ。

 

 

 A.D.2018 4/12 14:00 ???

 

  視界が戻ると、私の目の前にはウィルスがいた。

 

『政さん、見事です!ウィルスと中の人の摘出、完了です!決めてください!』

 

  こんなに興奮した原須さんは初めてな気がする。でも、おじさんとウィルスを分離できたなら、成功だ!

 

『ポリコレイズ!』

 

  ポリコレチェンジャーのトリガーを引き、今度は障壁に足を通すと、足から身体全体に力が漲る。ウィルスに向かって、走る。

  一歩…二歩…三歩…と数え、両足で跳躍する。

 

「はぁぁあああ!!」

 

  空中で一回宙返りをし、片足を突き出す。

  ウィルスに足がぶつかると、足からウィルスにエネルギーが注入される。

  私が着地する瞬間、後ろに飛ばされたウィルスは爆散し、周りの黒い大地も、私の体内にいたウィルスも死滅したみたい。

  顔を上げると、前と同じような青い世界が広がっていた。

 

 

 A.D.2018 4/12 14:02 都内某所

 

  ベッドに横たわり、ヘッドギアをつけていた女は起き上がり、机の上の携帯に手を伸ばした。

 

「ああ、無事ゲームはクリアした。…ああ、やってくれ。よろしく。」

 

  再びベッドに横たわり、ヘッドギアを再び着用した。

 

「私達の目標まで、あともう少しだ。」

 

 

 A.D.2018 4/12 14:12 品河区 大埼駅付近

 

  今は、ウィルスを倒して、ラボに帰る途中。少し寄り道しようと思って、なんとなく品河区の大埼の近くを通る。ここら辺で初めてウィルスと戦ったんだっけ。

  近くの病院を通りかかる時、見たことのあるような顔があった気がする。気のせいかもしれないけど。

  やっとおじさんと会えて、友達にもなれて、スッキリした。明日からはちゃんと学校生活も楽しめそう!

 

 

 A.D.2018 4/12 14:25 都内某所

 

「よくのこのこと帰ってこれたよね。」

 

  薄暗い部屋で、少女が呟く。

 

「あいつら、やはり只者ではない。ポリコレメモリも起動できなかった。」

「そう。今日、私はあいつを殺す事を決意した。私もゲームをプレイする側に回るかな。」

「どういうことだ。」

「どうもこうも、そのまんまの意味だよ。まだしないけどね。あ、あとメモリを改造してあげるよ。あいつらにこれ以上邪魔させる訳にはいかないしね。」

 

  少年は少女にポリコレメモリを預けると、部屋を出て行った。

  少女の部屋のモニターには、"anti-changer completed"の文字があった。

 




とりあえずキリの良いところまで来ました。
新生活で忙しくなりそうなので、投稿スピードも少し落ちるかもしれないですが、是非よろしくお願いします。
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