機密戦隊ポリコレンジャー(不定期更新中です)   作:あばばばばsho

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今回、ヘイトスピーチ的表現、そして暴力的表現を一部含みます。
これらの点が読むのに支障となる方は戻っていただくことをお勧めいたします。

久々の投稿となりました。夏休み中にもう1話くらい書きたいですね。


第8話

 A.D.2018 5/19 15:07 湊区 代場シティーセンタービル ポリコレンジャーラボ

 

「狩野さん! 唯野さんとの通信が切れてしまいました!」

「やはり、向こうも電脳世界にある程度干渉できるようになったか」

「そんなこと言ってる場合ですかっ! 今すぐ現地に向かいましょう」

 

 狩野は、おもむろに立ち上がり、動こうとする原須を手で制した。

 

「お前はここに残って、唯野を外側から救出できないか試みてくれ。私が現地に行く」

 

 狩野はそう言い捨てると、ラボを出て行ってしまった。

 

 

 A.D.2018 5/19 15:12 ??? 

 

「ピシャァァァア!」

 青い鳥が、咆哮と共に、バイクに跨る紅い戦士に向かって滑空する。青い鳥に跨る檸檬色の戦士は紅い戦士に照準を合わせる。

 雷の砲弾を避けられないと判断した唯野は、バイク蹴り飛ばし、地面に転がる。佐別が放った青い砲弾は無人のバイクを爆発四散させた。

 

「なかなかやるな。だが、もう俺は勝利を手にしている」

 

 佐別がそう叫んだ時、ツイートバードの口から、白い物体が一気に放出された。

 

 

 A.D.2018 5/19 15:13 ??? 

 

「ぐっっ……」

 いきなり襲いかかってきた黄色い奴の砲撃を避けるために、私は止むを得ずバイクを捨て、地面を転がることを選んだ。

 

 なんでこんな痛い思いをしなくちゃいけないんだっけ……? 

 

「なかなかやるな。だが、もう俺は勝利を手にしている」

 

 上空にいる黄色い奴がそう叫ぶと、青い鳥の口から白い物体がたくさん降り注いできた。

 最初に降ってきた白い物体をポリコレイダーで弾こうとしたら、その物体は形を変え、パソコンのウィンドウみたいなものに変わり、その中には文字列が並んでいた。

 

『ポリコレとかまじでダサい。特に男女差別とか、男女で違いがあるに決まってんだろ』

 

 次から次へと文字列は現れる。

 

『LGBTって、キモすぎ。少数派には少数派である理由ってもんがあるんだよな』

『社会保障費とか高すぎなんだよ。弱者は甘んじでその立場を受け入れるべき』

『外人、まじでウザすぎるし、五月蝿すぎる。この日本国から出て行ってくれ』

 

 私って、なんのために戦ってたんだっけ? ポリコレを唱えることって、本当は悪いことなのかな? 

 

『ポリコレ唱えてる奴らって、ただ自惚れてるだけなんだよな。偽善者ぶってて満足してるだけ』

 

 偽善者……? 違う! 私はただ、狩野さんの役に立ちたかっただけ……! 

 

 なんで狩野さんの役に立ちたかったんだっけ……? 

 

 

 A.D.2018 5/19 15:15 ??? 

 

 ポリコレッドがツイートバードの攻撃によって膝から崩れ落ちる瞬間を、佐別は見ていた。

 

「本来の使い方ではなかったが、予想以上の結果が得られたな」

 

 佐別はポリコレチェンジャーのトリガーを引く。

 

『ポリコレイズ!』

 

 ツイートバードの背中から飛び降り、目の前に現れたエネルギーの障壁を通り抜けながら、自身の脚へとエネルギーを収束させる。

 

「これで終わりだっ!」

 

 上空から飛び降りた佐別は、その踵をポリコレッドの肩から胸へと落とした。

 

 白い世界が崩壊し、元の青い世界が姿を現した。

 

 

 A.D.2018 5/19 15:36 隅田区 矢広付近

 

 気がつくと、私は道端に倒れていた。どうやら雨が降っているみたいで、かなり寒い。立ち上がろうとしても、力が入らない。

 黄色い奴に攻撃され、ポリコレッドの鎧が砕けてた所までは覚えているけど、そこからの記憶はよく覚えていない。原須さんの声が聞こえた気がするけど……。

 

「ゴブッ……ヴォェ……」

 

 血反吐を吐いたことなんて、初めて。感動してる場合じゃないか……。

 徐々に朦朧とする意識の中で、近付いてくる人の気配を感じた。

 

「ご苦労様。やっぱり君は私が見込んだ働き、いやそれ以上の働きをしてくれた。これでゲームクリアに近づくだろう」

 

 狩野さん……? どういうこと……? 

 でも、狩野さんの役に立てたみたいで、よかった。

 なんで狩野さんの役に立ちたかったんだっけ……? 

 

「最後の一仕事だ。ここにくるであろう少女に、君の持っているポリコレチェンジャーを渡してもらおうか。……っとその前に、少し細工をさせてもらおう」

 

 了解です……、と言おうとしたけど、声が喉から音として出ない。

 狩野さんらしき人は、私の腕からポリコレチェンジャーを外し、少し経ってから私の手にそれを握らせた。その後、足音がして、それは遠ざかっていった。待って、狩野さん、私はあなたの為に……。

 

 

 A.D.2018 5/19 15:20 隅田区 矢広付近

 

 学校からの帰り道、友達と別れた後に唐突に降ってきた雨の中、私はカバンを傘がわりにして、急ぎ足で家に帰る途中。とうとう梅雨入りが始まる頃なのかな? 

 

「えっ?!」

 

 今の、狩野さん?! 確かに覚えている、あの長身で長髪の、キリッとした感じの女の人。狩野さんっぽい人は、近くの角を曲がってしまった。

 ちょっとだけ付いて行こうかな? 

 急いでさっきの角を曲がると、狩野さんっぽい人はもっと前にいた。狩野さんと私の歩くスピードは全然違うから、私は急いで狩野さんを追いかけていたんだっけ。懐かしいなぁ……。

 狩野さんを見失って、また見つけて……を繰り返している間に、1人の女の子が倒れてるいるのを見つけた。雨に濡れて、顔は水溜りに浸かっている。

 あれ、あの子は……? 

 

「大丈夫ですかっ?!」

 

 近付いてみると、水溜りだと思ってたものは、血と雨が混ざっていて、ドス黒いものであった。そしてその子の手に握られていたのは……

 

「ポリコレチェンジャー?! どうしてあなたが……? もしかして、私の後にポリコレッドになったのはあなたなの……?」

 

 私が聞いても、その子は答えなかった。

 首筋に指を当ててみたけど、冷たくて、脈はわからなかった。とにかく救急車を呼ばなきゃ……。

 あれっ? 繋がらない……。

 

「ふーん。やっぱりそういうことだったんだ」

 

 繋がらない携帯から顔を上げると、そこには青と黒の服を着た女の子が立っていた。あの子、どこかで……? 

 

「携帯、繋がらないよ。ここには電波障害を起こすウィルスが蔓延しているからね」

「あなた、ウィルスについて知っているの?」

「知っているも何も、私がウィルスをばら撒いている、とでも言っておこうか」

 

 え……? あんな女の子がウィルスを……? 

 

「いやぁ、それにしても新旧ポリコレッドの揃い踏みとはなかなかアツいねぇ? 片方はもう死んじゃったみたいだけど」

「あんた……っ!」

 

 私は拳を握りしめ、その子に向かって走っていき、その拳を思い切り振る。

 

「えっ?!」

 

 その女の子は、私の拳をその頰に受けて、私の前を転がっていった。

 

「ハハッ! 最高だねっ! 正義のヒーローが、義憤に駆られて生身の人間に殴りかかった瞬間だよ!」

「いやっ! 違う!」

「何が違うの? 全くその通りじゃない? まあ、私たち人間ってのは自己中心主義なもんだよ。君たちも、正義の味方面しているけど、その力で多くの人を傷つけているんだよ? お前が今やったみたいにねぇ?!」

 

 その少女は、ポケットから何かを取り出した。

 

「それは……ポリコレチェンジャー?!」

「そんなものと一緒にしないで欲しいねぇ…。」

 

『アンチチェンジャー!』

『コバルト!』『ブルー!』

 

「ポリコレメモリが二本も?!」

「だから、そんなものと一緒にするなって。変身」

 

 その女の子は、ポリコレチェンジャーみたいに横についているトリガーを引いた。

 

『Refine the alloy! 煌めく鎧! コバルトブルー!』

 

 激しい金属音の後、青くてツヤツヤした鎧が出てきた。ポリコレッドとちょっと似てるけど、細部が少し違う。

 

「君の存在は、もう私の作るゲームには必要無いの。ここでその子と一緒に死んでよ?」

「あなたをここで放ってはおけない!」

 

 私もポリコレチェンジャーとポリコレメモリを取り出す。

 

『ポリコレチェンジャー!』

『レッド!』

 

「ポリコレチェンジ!」

 

『ポリコレッド!』

 

 久々に鎧のくっつく痛みを感じたけど、今はそんなことを言っている場合じゃ無い。

 

「てやぁぁああ!」

 

 私はその青いやつに向かって走る。さっきみたいに拳を振るおうとした瞬間、さっきの女の子の言った言葉が脳裏に浮かんだ。一瞬、動きが鈍った。

 

「甘いよね。ホント」

「う゛ッ!」

 

 痛ッッ!! 殴られた瞬間には、声にならない声しか出なかった。

 

「覚悟もなしに戦場に来たかわい子ちゃん、ここで死にな?」

 

『アンチレイズ! コバルトブルー!』

 

 やっぱり、私は甘いんだ……。戦えないから他人に迷惑かけて、戦えないからポリコレッドを辞めさせられたのに、こんな相手にかないっこない。なのに、またポリコレッドになっちゃった。私なんて、ここで死んだ方が……。

 

「フンッ!」

 

 青いやつは倒れている私を踏みつけようとしていた。

 視界が真っ暗になった。

 

 

 A.D.2018 5/19 15:59 隅田区 矢広付近

 

『アンチレイズ! コバルトブルー!』

 

 少女の纏う蒼き鎧の戦士は、地震の発生させた障壁に、自らの右脚を通した。

 蒼き戦士はゆっくりとポリコレッドに近づき、足を振り上げた。

 

「フンッ!」

 

 その脚は、ポリコレッドの喉元に突き刺さる、筈だった。

 

「何っ?!」

 

 蒼き戦士の足がポリコレッドに当たる直前、ポリコレッドの身体は突然消えたのだった。

 

「全く。世話が焼けるやつだ」

「お前は……ッ!」

 

 蒼き戦士の見つめる先には、狩野が立っていた。

 

「完成したのか、我々の模造品が」

「確かに模造はしたけど、君たちのものより遥かに上回る性能だよ」

「確か、アンチチェンジャーと言ったよね? さしずめ、アンチ・コバルトブルーとでも名付けておこうか。それとも、もう既に名前は付けてあるのか?」

「名前なんかどうでもいいよ。それより、私のゲーム進行を邪魔した罰、ここで食らわせてあげる」

 

 そんなアンチ・コバルトブルーの言葉には動じず、狩野は腕を組み、落ち着いた様子で口を開いた。

 

「君のゲームをクリアしたいのは山々なんだが、今は少し分が悪くてね。少しズルをさせてもらったよ。あ、そこの死体は煮るなり焼くなり好きにしてもらって構わない」

 

 そう言うと、狩野は先ほどのポリコレッドの様に消えてしまった。

 

「クソッ!」

 

 少女は変身を解き、唯野の遺体の方へと向き直ったが、興味なさそうにその上を跨いで、路地から出て行ってしまった。

 

「一応回収しておくか…」

 

 彼女の血痕が発見されたのは、雨が止んだ数時間後であった。




今回は少し短めになってしまいましたが、話は結構進んだと思われます。もともと韻を踏んだ変身音をやりたかったので、コバルトブルーでやることができてよかったです。

最初は20話くらいで終わりたいと思っていたのですが、どうなるか怪しいですね。次回もいつ投稿できるかわからないですが、よろしくお願いいたします。
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