別行動していた材木座は一人でギルドに行き、他の冒険者に一時的に仲間に入れてもらい討伐に参加させてもらったりしていたそうだ。
他には個人で請け負えるようなボディーガード等、本当に同一人物かと思えるレベルだ。
本人曰く、剣を持っていると勇気が湧いて積極的になれるんだそうだ。
気持ちは何となくわかる、実際イキがった奴が学校にナイフを持ち込んで没収されるなんてたまにあったしな。
でもただのロングソードをエクスカリバーだの約束された勝利の剣だの言うのはどうかと思うぞ。
あと乱れ雪月花とか虎牙破斬とか言いながら剣を振り回すのは危ないので止めろ。
二週間ほど休みにしていた俺達はまた討伐を開始する。
材木座のレベルは著しく向上しておりちゃんと攻撃は当たるようになっている上にゴブリン程度なら一撃で胴体を真っ二つ出来るようになっていた。
時折技名を叫びながら斬り付けるわけだが唐突に弧月斬とか言いながら剣を振り回すのはやめてほしい、血が飛び散って雪ノ下が不機嫌になるからな。
刃物で切り付けながら回復魔法を唱えれば痛みだけ与えることが可能ではないかと戸塚に相談していたぐらいだ。
超怖いです雪ノ下さん。
しかしながら討伐は順調に進み、熊や狼タイプのモンスターも討伐出来るようになってきた。
ただ材木座は休日になっても一人で行動することが多くなっていた。
遅くなる前に戻ってくるし、相変わらずいつもの調子なので特に気にすることもなかったのだが。
2ヶ月ほども経ち、早めに帰った時は自炊をし、ギルドの依頼もたまにこなして余ったお金は貯金、週に1日以上は休みにしてと生活サイクルが安定してきた頃だった。
「葉山達が帰ってくるって?」
「そうなんです!パンを持っていったときアダムさんから聞きました!聖騎士になって結構活躍しているそうですよ!」
一色が嬉々として情報を伝えに来た。
「何か帰れる情報を掴んだんだろうか?」
「故郷に錦を飾るとかそういうのじゃないですかねー?聖騎士ってなるのが難しいって話ですし、葉山先輩って義理堅い人ですしね」
まあここの街は実際この世界に来て一番始めにお世話になったところだし、故郷と言ってもいいぐらいだしな。
「あたし達で料理をつくってもてなしたらどうかな?」
「そうだな、あいつら相当頑張ってるし、帰れる方法をまともに探しているしな」
「比企谷くん、一応私たちも帰れる方法を探すという目標があったと思うのだけれど」
俺達の場合は毎日の討伐で手一杯だしその手の情報もいまいち集まっていない、やみくもに遠出しても自殺行為なので足踏み状態が現状なのだ。
「まあ何か情報掴んでるか聞いてみようぜ」
帰ってきた葉山達に食事を振る待う為にダメもとでアダムさんに話をしたら館の宴会場とキッチンとお手伝いのメイドさんを貸し出してくれた。
ずいぶんと太っ腹だとおもったら、雪ノ下のパンやら料理が目的だった模様。
雪ノ下は調味料が少ないこの世界でなんとかやりくりしてその辺より旨い料理に仕上げていたのだ。
アダムさんは雪ノ下に専属料理人にならないかという申し出をすっぱり断られて、たいそう残念そうな顔になっていたが。
宴会は大にぎわいとなった。
俺たちの他に吉原さん達も呼んだからだ。
雪ノ下はメイドさんたちに指示を出してどんどん料理を作らせていた、でも味は雪ノ下が作るより若干落ちてる気がするのが謎だ、同じように作ってるのにね。
帰ってきた葉山達はずいぶんと高そうな上級者っぽい装備になっていた。
それこそゲームとかに出てくる聖騎士そのものの格好だ。
王都で国王から直々の依頼をこなした際にもらったとのこと。
なんでも国王に元の世界に帰るための情報が何かないかと聞くため謁見しに行った際、ちょうど遠出していた王女がオーク達に襲われたと情報が入った為、謁見中の葉山達がそのままオーク討伐隊に組み込まれて色々あった末に寸でのところで王女を救出したとか、なにその出来すぎた話は?寸での所ってアレか?くっころって奴か?
他にも西の山に発生したワイバーンを討伐しただとか、古戦場から唐突に湧いてきたスケルトン達を葬り直してやったとか、モンスターが異常に集まっているところを叩いた時は王様から一部隊を貸し出されそれを指揮しながら殲滅しただとか。
材木座がものすごく羨ましそうにしてたが、悪いが今の俺たちには無理だからな?
なんかどっかのRPGのお使いイベントみたいなのをこなしているように聞こえて非現実感半端なかったが、葉山や三浦達の顔つきを見るとベテランの冒険者と言った風貌に変化している気がした。
ちなみに三浦の格好は三角帽子をかぶったザ・魔法使いといった格好だ、そのうち箒に乗って飛んで行ったりしませんよね?
戸部は相変わらずべーべーといつもの調子、こいつは槍を使った攻撃を得意としているそうで、なんかを宿している的な感じの凄そうな槍を王様からもらったとか、材木座が物欲しそうに見ていたので試しに触らせると一緒に外に出ていったみたいだ、しばらくすると外から無双三段とか流星衝とか聞こえる、王様からもらったものをおもちゃにするなよ、つか戸部もやべーわとか言って笑ってる模様、あいつらいつの間に仲良くなったの?
大和は材木座と同じ大剣使い、こいつも持っていたら殺してでも奪い取るというコマンドが出そうな剣をもらったそうだ。
でもこいつは今一なに考えてるのかわからん、大岡もなんかもらったそうだが相変わらず童貞感丸出しで女子に話しかけてるので簡単にあしらわれているようだ。
海老名さんはプリーストだが回復魔法の他に補助魔法も使うんだとか、完全にパーティの補助担当をこなしてるようだ。
この人の格好は某RPGの白魔導師とそっくりな格好をしているからコスプレにしか見えない、本人もそのつもりなのかもしれない。しかも相変わらず葉山に俺のそばにいくように進言している模様。
ハチハヤハヤハチとかブツブツ言ってるんだが、この人この世界の人達に新しい扉を開かせたりしてないだろうな?
「せっかく大活躍して帰って来てもらっても寝るところがあれじゃあな」
宴会は終わり、何故か二人だけの状況にされ宿舎に戻ることになった。
歩きながら葉山と話すはめになったんだがこれ仕組まれてないよね?
「俺たち王都にいるときはずっと宿屋暮らしだったからね、ここが第二の故郷みたいなもんだから逆に落ち着くよ」
「悪いがお前らの宿舎は手入れもなにもしてないぞ」
「まあいいさ、それより平塚先生たちはどうだい?帰る気はありそうかい?」
「平塚先生は無いだろうな、必殺技の研究に余念がないし理想の相手見つけちまっている、今日の宴会の様子見ただろう?教官の惚気話ばかりだ。小町の話によると宿舎に帰らない日も有るそうだしな」
あの人毎日が楽しくて仕方ないようだ。
「そういやかめはめ波の完成披露会に行ったがとんでもない目にあったんだよな」
「かめはめ波か、それはちょっと興味あるな」
葉山といえども男子である、興味がないわけがない
「ホントに手から火とも水ともなんとも言えない光線が出て標的を吹っ飛ばしていたんだが、例のアニメと違って出した瞬間先生の周りに衝撃波がでて周囲の人全員吹っ飛んでな、俺たちも危うく吹っ飛ばされるところだった」
「ビームみたいなものかな?しかも周りも巻き込むのか、恐ろしいな」
「光線の正体も魔力ともなんとも言えないものらしい、光線の周囲の物まで吹っ飛ばされるんだよ、先生大喜びだった」
ついでにとファースト、セカンド、ラストブリットを見せてもらったが、本当に岩石を素手で粉々にしていた。
原作同様三連撃で使うようだが、一発で十分だろ。
次は覇王翔哮拳を開発するかとか言っていて教官と楽しげに会話していたしな。
何でも武器を持った奴が相手なら覇王翔吼拳を使わざるを得ないだろう?
だと、今のあなたには要りませんよね?
「どのみち前にお前が懸念していた帰る邪魔をするってのは無いだろうから安心しろ、あと川崎も本牧も藤沢も帰れると言っても拒絶するだろうな、一応理由聞くか?」
「聞いたところで俺がどうにかできる問題なのか?」
「さぁ?お前なら悪化させるかもな」
「手厳しいね、んじゃ聞かないよ、その時になったら本人たちに判断させようか」
「そうだな」
「君たちは?」
「・・・そうだな、ところで何か情報は掴んだか?」
「今更か?さっきの場で君も誰も聞かなかったから本当は帰りたくないのかなと思っていたんだが」
「あの場の雰囲気でまじめな話できるかよ、俺だってたまには空気を読む」
「君が空気を読むとは恐れ入ったね、んじゃ一緒に帰るのを期待しててもいいってことか?」
「それは・・・どうだろうな」
その答えに葉山は一瞬渋い顔をするがすぐ元に戻り
「・・・まあいいさ、少しだけだけど手に入れたよ、国王に貸しを作ったから色々資料見せてもらったり話を聞かせてもらったからね」
葉山の情報によると先代の王の時代、国王命令で物体の転送の研究をしていた魔導師がいたそうだが国王が崩御した際に魔導師が失踪、葬儀や城内の体制変更のゴタゴタの中、研究資料が紛失したり担当が異動になったりして研究施設がどこにあるかも分からなくなっているとのことだった。
「その研究内容は戦争の際の兵站を地図を媒体にした魔法を使いあちこちに転送させるというものだったらしい、つまり術者は転送する場所とされる場所どちらにいなくてもいいってわけだ、なんか俺たちがここに来た状況と似ている気がしないか?恐らくそれが関係してるんじゃないのかと思ってね、これは比企谷にも伝えた方がいいかと思ったのが今回帰ってきた理由の一つだよ」
「誰かがどこかで異世界の俺たちを辺境の地へ転送したってか?でも地図を見ながらなんだろ?こっちの世界に俺たちの世界の地図なんて無いだろ」
「確かにね、しかも研究されていたのは数十年以上前だとさ、誰かがその転送のやり方を発見したとしても今の状況はつじつまが合わない」
確かにその通りだ、目的があるのならこちらに召喚されてきた人たちになんらかのアクションがあってもいいはず、初めに聞いた領主の話でも面倒事として処理されてるみたいだし・・・
考えを巡らせるがよくわからん
「まあ、調べて行けば目的もわかるんじゃないか?ところで今日の料理は大分美味しかったね」
「当然だ、雪ノ下と一色が頑張ってくれたからな」
「そうか・・・パン焼き釜も作ってもらったんだろ?君たちはこれからどうするんだ?」
「そうだな、お前見たいに思い切った行動するほど俺達は強くねぇからな、どうしたらいいか正直分からん」
「それはこっちも同じさ、勢いで聖騎士になって情報は得たがどうしていいか分からない状態だからな、手始めに陽乃さんでも探してみるよ。あの人なら何か掴んでるかも知れないからね」
陽乃さんは王都でも有名で、どの辺に行ったかはおおよそ検討はついているとのこと。
「あの人はどこでも目立つんだな」
「ヴァルキリー陽乃と女神めぐりのコンビはどこの酒場でも有名だよ」
「おまえ酒場って酒飲んでんのか?」
「こっちの世界じゃ年齢制限とかあってないような物さ、大体さっきの宴会場にもあって皆飲んでただろ?たしなむ程度なら問題ないし情報を集めたいなら酒場が一番だよ、俺も国王の依頼を受けたってことで少しは有名だからどこに行っても誰かしらは話しかけてくるしな」
え?お酒なんてあったの?
何でだれも教えてくれないの?俺ジュースという名の果物のしぼり汁しか飲んでないんだけど。
「そ、そうか、リア充はどこ行ってもリア充だな」
「なりたくてなってるわけでも無いんだけどね、君たちが羨ましいよ」
「何のことやらわからんな、それより陽乃さん見つけたら雪ノ下が心配してるって伝えてくれ」
「ああ、任せてくれ」
俺たちはそれぞれの宿舎に戻り寝ることにした。