八幡達は異世界にて奮闘する。   作:もよぶ

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第五十四話

「ふうむ、ファンタジーな異世界なのにこのような設備があるとはな、さてはこの世界の管理システムだな?」

としったかぶりをする材木座

 

ゴブリンは全部逃げ出してしまったのでとりあえず全員呼ぶことにしたのだが、ゴブリンチャンピンも逃げ出すとか、材木座も平塚先生も異常すぎるだろう。

まあ余計な戦闘は避けられるので助かるのだが。

そんなこんなでゴブリンロードのいた部屋へ全員を連れてきたのだが、やはり道中のゴブリンの培養設備?には皆驚いていた。

 

「これマジでやべーでしょ、何がやべーってもうマジでぱないぐらいやべーって」

と戸部、全く何を言っているか分からないが気持ちはよくわかる。

他の連中もザワザワとしている中

「まーとりあえずゴブリンがこれ作ったとは思えないから誰かが作ったってことだよね?それをゴブリンロードが乗っ取ったかなんかで使っていたということかな?」

と陽乃さん、確かにそうかもしれないがいったい誰が?

 

ともかく皆で部屋の探索をすることにした。

ゴブリンにつながっていたチューブは魔力を圧縮した大きな箱のようなものに接続されていたようである。

「ここから有線で魔力を供給していたわけか」

これを繋げば俺でも魔法が使え放題?

ちょっと魅力的だがチューブを切断したときのゴブリンの死にざまを思い出すととてもそんな気持ちにはなれない。

 

「ん?これはなんだ?これ私も学校で使っていた事務用のファイルではないか!」

コンソール付近を材木座と漁っていた平塚先生は叫び声をあげる。

平塚先生が手にしたそれは現代日本でも事務の戸棚に良く鎮座している大量の書類を束ねる分厚いファイルである。

もろにKIN〇JIMと書いてあるそのファイルにはタイトルが書かれていた。

 

「・・・設備操作マニュアル(引継ぎ用)・・・なんだこれは・・・」

「なんか仕事できる人見たいっすねそのファイル残した人」

と俺は平塚先生に言うと

「うむ、引継ぎは重要だからな、私も・・・ってそういうことではないだろ!」

「静ちゃん、まずそれ見て見ようよ」

と陽乃さんはファイルをバサッと開いて読み始める

 

「ふむふむ、確かにこれここのコンソールの使い方が載っているね、あとそこのゴブリン培養設備の使い方も書いてる、もとからゴブリンや寄生虫?を育てるのに使ってたみたいだね」

 

と陽乃さんはマニュアルを見ながらコンソールを操作、ピピっという電子音がするとどこかで何かのスイッチが切れたバン!という音がする。

「これで外のゴブリン培養設備が停止したはずだね、なんかこのマニュアルあちこち濡れてたりして汚いんだけどもしかしてゴブリンロードはこれを見てここの設備を使っていたみたいだね」

 

陽乃さんはまたマニュアルを読み進める

「ゴブリンに魔法を使わせるやり方なんて書いてるね・・・魔法が使えるレベルの魔力を強制的に送り込ませるって書いてある・・・」

「姉さん、それよ!私たちがこの場で戦ったゴブリン達は魔法を使ってきたの」

「魔法力は有線で供給させるとか・・・虫を使った操り方なんかも書いてあるわね・・・」

流石の陽乃さんも驚愕している、これを使えばゴブリン共を使役して一国と戦争することも可能なのかもしれない。

 

「ゴブリンロードってのがなにをやろうとしてたのかちょっと調べてみるね、静ちゃん手伝って」

陽乃さんはマニュアル片手にコンソールを操る、どうやら稼働履歴を見ているようだ。

それにしてもこの人、初めて触るはずの機械なのに順応しすぎだろう。

 

「うむ、では他になにか書類が無いか調べてみるか」

「小町も手伝います!」

 

「ここは陽乃さん達に任せて俺達は他を探索しよう」

と葉山、確かにゴブリンの残党がいたりしたら困るしな、実はさっき倒したのは影武者だったとかそんなだったら目も当てられん。

 

「おう、んじゃよろしく」

しかしこういうのはやりたい奴にやらせるのが吉だ、俺は休ませてもらおうと思ったら

「よし、八幡!我らも行こうか!」

「八幡?私たちも行くわよ?」

「ハッチー置いてくよー!」

 

「比企谷!ここは私たちが調べておく!だから安心して行ってこい!」

「お兄ちゃん!あとはよろしく!」

なんで行くことが決定してるんですかね・・・

まあいつものことだと半ばあきらめ気味に俺は皆についていくことにした。

 

奥に行くとまたもいくつか部屋がある、あちこち覗くが物置やらよくわからない装置やらが置いてあるようだ。

そのうちの一つにはベッドがありここで生活していたと思われる部屋があった。

部屋には机が置いてありそこには日々の記録と愚痴が書き連なれている日記のようなものが置いてあった。

 

「これ日記みたいだな」

「日付は・・・先代の王様の時代のようね、ちょうど戦争真っただ中だったって話だったわね、読んでみましょう」

 

日記は結構分厚いがともかく開いて読むことにした。

 

 

『〇月×日 明日は国王陛下より直々に召喚の命令が下った。きっとこれまでの研究が認められたのであろう、これで宮廷魔術師の俺もいよいよ出世!今まで俺をさげすんでいた連中め!ざまぁ見ろ!国の支援があれば俺の研究している地図を使った転送魔法をこれまで以上に強化できる!これさえあればこの世界の物流を一変できるしコショウを始めとする香辛料が格安で入手できるようになるはずだ、昔一度だけ食った米というものはおいしかった、きっとあれが腹いっぱい食えるようになるぞ』

 

『〇月△日 違った・・・物流じゃなくて戦争に使う物資や人員の搬送の為の研究をしろだと、物だけなら何とかなるけど人なんて想定してねぇよ!早く安く正確に安全に転送する方法を考案しろだと?しかも予算はカツカツとか何考えてんだ?米や香辛料の偉大さを唱えたら馬鹿にしたような顔で見られた!クソ!殺し合いよりうまい飯だろ!』

 

『〇月□日 研究は極秘でやる上に完成したら即実戦で使うからと東の領地の国境付近の森に研究施設を建てることになったそうだ、あそこの森は瘴気のせいで普通の人が入ったら数分でぶっ倒れるしモンスターもわんさかいる、建物内は大丈夫なようにするとか言ってたが、実質的に監禁状態になるじゃねぇか!勘弁してくれと国王陛下に進言したが、誰にも邪魔されず静かに研究できるだろだと!マジふざけんな!飯はどうすんだと聞いたら浄化魔法を大量にかけた人に運ばせるだと?瘴気は防げてもそいつらが森をうろついてるモンスターに食われたらどうすんだ!』

 

「・・・これここの研究施設の人の日記か?」

ここまで読んで俺は顔を上げる

「優秀な宮廷魔術師だったようね、その頭脳を買われて一人で転送魔法の研究していたみたいね」

「でもなんかごはんのことばっかりだね」

雪乃も結衣もあきれ顔である、最も天才というのは往々にして変人なのが世の常だ

 

「うまい飯というのは重要だからのう、それよりもっと読ませろ」

と材木座も日記の主に同意している、その後の日記は一人っきりで着任し孤独に研究を強いられてる男の愚痴ばかりが並べ立てられていたので重要そうなところまで読み飛ばすことにする。

 

『△月◇日 しかしやはり人手が圧倒的に足りない、なんだかんだで設備はいいものではあるが人手が欲しい、昨日窓の外を見たらゴブリンが一匹ふらふらしていたので余ったパンを放り投げたらそいつ今日も来やがった。あいつを調教できないもんだろうか?』

 

『△月〇日 件のゴブリンをパンで油断させで施設に招き入れ捕獲に成功した。これから餌付けと調教をしよう、魔法をある程度使えるようにしたらこっちはかなり楽になるので、魔力を高める注入装置を製作した。でも注入終了前にチューブを抜くと死んでしまうので要注意』

 

「猫の手も借りたいというのは聞いたことあるけどゴブリンの手を借りるとはね」

「さっき襲ってきた魔法を使えるゴブリンの正体はこれか、注入終了前にチューブ斬ったから死んだんだな」

日記はゴブリンの調教の様子が書かれていた。

ゴブリンはバカだが間抜けではない、調教後はそれなりに学習能力はあるようで研究の雑用として役に立ってたらしい。

 

『△月×日 誤った地図を描いたときの状況確認の為、適当なマップを書いて転送魔法を仕掛けたら転送は行われず妙なところにつながった。どうやらかなり高度な科学力をもつような所である、いわゆる異世界というところだろうか?都合のいいことに見るだけなら向こうからは気が付かれないようだ。こっちの研究の役に立ちそうな物があるかもしれない、何か物を転送して使えないか試してみることにする』

 

「・・・これまさかアレか、もしかして俺達の世界に繋がったとかそういうことか?」

日記はまだ続いている

 

『◇月〇日 物だけ転送したが使い方が全くわからないので近くの人も転送することにする、こちらの世界でもいきなり人が消えたら周囲の人が大騒ぎするだろうから他人とのつながりが薄い孤独な人を選別して転送することにした、転送しても言語が理解できないので拷問用の強制言語習得魔法を転送時に刷り込むことにする、副作用として転送してきた人は全員魔力が高くなるがまあいいか、転送成功した人は「異世界転移したのか!おれも今日からなろうチートでハーレムだ!」と騒いでいるのもいた、言葉はわかるが意味が分からん』

 

「これ我らの世界の話であろう、しかももろ日本ではないか?」

「ここにメモで適当に描いた地図とやらがあるが、これ千葉県の形しているな・・・」

 

『◇月△日 物の使い方を覚えたら転送した人は記憶を消して再度元の世界に転送、転送後は魔力も消失しこちらの世界のことや言語知識は全く覚えてないようにする。下手に覚えてられると面倒なことになって最悪戦争になるからな』

 

「成程、これなら騒ぎにならんな」

「でも私たちはどうして転送されたのかしら?」

「もっと読めばわかるかもな」

 

『×月△日 異世界の知識で研究施設を増設することにした、そうなると人手が足りなくなるからゴブリンを増やすことにする。

初めに手なずけたゴブリンのクローンを製造することにした。しかし出来たクローンは言うことを聞かない、再度調教するのも面倒だったので強制的に思考を操る方法として頭に寄生する特殊な虫のモンスターを製造し操ることにする』

 

『◇月×日 設備を増設したので稼働させるには膨大な魔力が必要になった、その為モンスターから強制的に魔力を吸い取とる装置を開発、モンスターをこの部屋の穴に落とせば強制的に魔力を吸ってくれる、モンスターを穴におびき寄せる為の術式アイテムを製作した、骨の目印にこのアイテムを近づけると発動しモンスターをおびき寄せられる、このアイテムの形は異世界にあった鳥居というものと同じ形にした』

 

「これって葉山が言ってたアレか・・・この人が作ったのか」

研究は順調に進んでいったようだ

 

『△月〇日 大変なことになった。国王陛下が崩御された、次の国王は戦争を終結させると宣言しいて。この研究も国外に洩れたら面倒なことになりとかで闇に葬られることとなったそうだ。一応設備は残すそうなので引継ぎ用の操作マニュアルを作ることにする。しかしこの異世界の書類を綴じるファイルというのは便利だ、似たようなもの作れば売れるのでは?それよりゴブリンを始末しなくてはいけなくなった。これは面倒くさい』

 

『△月◇日 初めに捕まえたゴブリンはかなり知識をつけており、始末しようとしたら逆に返り討ちにあった、あいつらごとき簡単に焼き払えるが数が多すぎた、しかもあいつら転送した異世界人に使っていた記憶を消去する装置を使いこちらの記憶を消しにかかってきた、もういろんなことが思い出せなくなっている、もう駄目だ、なんとかここから逃げ出さないと、この日記もここで終わりにする』

 

「・・・一旦戻るか」

「そうね、戻りましょうか・・・」

 

俺達は一旦先ほどのコンソールがあった部屋まで戻ることにした。

 


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