八幡達は異世界にて奮闘する。   作:もよぶ

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第五十五話

コンソールのあった部屋に戻る、陽乃さん達はあちこちかなり調べていようだ。

 

「稼働履歴を見るとゴブリンロードはクローンを大量に生産していたみたいね、チャンピオンの類も増やしてたみたい、それよりそっちは何か見つかった?」

俺達は日記のみ、葉山達は何やら袋や箱を持ってきていた。

「へぇーここにいた人の日記ねぇ・・・」

と陽乃さんと平塚先生はその日記を読みはじめる

「なるほど、この男の人が私達の世界から色々盗んでこの設備を作り上げたのね、道理でこの世界に似つかわしくないものばかりだと思った」

 

物だけではなく人から技術まで盗んでいた訳だしな、盗まれたことがわからなかったら盗んだことにならん、巧妙にそれを繰り返していたようだ。

でも俺達の場合はかなり雑に転送されてきた。

しかしろくな物持ち合わせて無いし技術も同様、まあそれはそうとして葉山達は何持ってきたんだ?

 

「んでお前らは何を持ってきたんだ?」

「まぁ見てよこれ」

テーブルの上に置かれたそれは見覚えのある文房具

「鉛筆だな、鉛筆削りもある」

「消しゴムやコンパスもあるわね」

「見てください!これ!自由帳ですよ!」

 

他には書類を束ねるファイルはもちろん、付箋やらクリップやら事務用品があった。

「こっちは工具、ドライバーとかがある、奥の部屋には大型の工作機械もあったよ」

マジか、なんでもパクってたんだな

 

「日本の文房具はクォリティが高いと元の世界でも世界的に人気だ、ましてや鉛筆すら無いこの世界にとっては凄いお宝だろうね、実際さっきの日記、途中から鉛筆書きだったろ?俺達は当たり前だから全然違和感無かったけど」

 

「フム、書いて記録を手軽に残せたり、考えてることを図に描いて表すというのは重要なことだな!我もよく我の熱い思いを原稿にぶつけたものよ!」

お前はいつも珍妙なプロットやら中途半端な原稿ばかりだっただろ

「流石です義輝様!」

マリアさん、あなたどっかの流石ですお兄様みたいになってんぞ?

「彼の原稿はともかく、研究するにあたって書くのは重要ね」

雪乃が同意し、他の連中も文房具を囲んでワイワイ議論し始めた。

 

「ところでここに書いてあるゴブリンって比企谷くん達がやっつけたゴブリンロードって奴じゃないかな?設備を使えたり文字を読んだり書いたりしてたみたいだし普通のゴブリンには無理ね」

「あんなのが何匹もいたら大変ですよ」

 

陽乃さんによれば、ゴブリンロードはかなり知識を蓄えており、自分で作戦の書類を作っていたようだ。

「小町ちゃんが見つけたんだけど」

と書類の束を出してくる、汚い字と下手くそな絵が書かれていたが誰が読んでもそれは各領土をどう攻め落とすか、攻め落とした後人間をどうするかの計画書だった。

「ゴブリンが当たり前のように文字や絵を書けるようになったらもはやモンスターではないな」

 

それを見ると、本格的に各領土に戦争を仕掛ける為に、森にいるモンスターを限界まで集めその魔力を使えるだけ使いゴブリンを大量に量産するつもりだった模様。

しかも統率を取る為全部のゴブリンに虫を寄生させていたようだ。

「でも指示書という訳ではなくて単に自分で書いてただけみたいね、宮廷魔術師の人の真似していたみたい」

 

幸い他のゴブリン共の知識レベルは文字を書いたリ読んだりするレベルには無かったようだ。

 

「それと虫の女王を使わなくてもここのコンソールで思考を操れるようにしていたみたい」

 

「ボタン一つで攻撃したり止めたりとかゴブリンにとってもデストピア過ぎんだろ・・・」

まあ現実でも上司の一声で残業したり休日出勤したりと言うがままなんだけどな、あれ?なんか働いてばかりだなおかしいな?これってデストピアじゃね?

 

「トーテムを使いモンスターをけしかけた後、統率の取れたゴブリンの軍隊で街を制圧か・・・制圧後、女はゴブリンを増やすために使い、男は数を減らしてモンスターの餌と自分達の為の奴隷・・・遅れてたら厄介なことになっていたんだな」

葉山の顔が青くなる

 

「そうね、んで調べてたら面白いことが分かったんだけど」

稼働履歴を調べてたら異世界転送装置を頻繁に稼働させていたらしい、ただ細かい調整方法は分らなかったらしく座標を間違って入力していたので転送された人や物は全て辺境へ転送されてたようだ。

 

「これが僕たちが辺境の地に転送されてきた理由か・・・」

吉原さん達もあっけにとられている、ゴブリンが装置を間違って使ってたので転送されたとか、とばっちりもいいところだろう

 

「でも間違っててよかったともいえるわね、なにも分らないうちにゴブリンの群れの中に転送されてたら私たちは・・・」

と雪乃は青い顔になる、女性陣も暗い顔だ。

「ま、まあそれより私たちこれで帰れるんじゃない?」

「そうだね陽乃さん、装置はまだ動きそう?」

と葉山

「うーん調整が必要かなぁ?時間かかりそうだけど・・・」

とマニュアルを見ながら首をひねる陽乃さん

「ってかこの逃げた宮廷魔術師?ってのとっ捕まえれば早くね?あ!こんなことに気が付くなんて俺やべーわすげーわ!」

 

「戸部うるさい、大体記憶消されたとか書いてあるだろ?見つけても分からないんじゃないか?」

「そこは一発頭をバーンと殴って見ればひょっとするとひょっとしね?」

「あはは、とべっちらしいや」

結衣も海老名さんもこれには苦笑い

 

「兎に角一旦みんな戻りましょう?姉さん、この設備にこれ以上ゴブリンなんかのモンスターを侵入させないようにできるかしら?」

「まっかせてー、これをこうして・・・」

とコンソールをいじる陽乃さん、しばらくすると何処からからガコンという音となにかが切り替わる音が聞こえてくる

 

「これでオッケー!外の石像は人には反応しないようにしたし、隔壁閉鎖とかってのやったから誰も侵入できないと思うよ」

 

「それじゃみんな一旦ベースに帰るぞ」

と葉山が言うと俺達はアダムさん達が待つ森の入口へと戻ることにした。

 

アダムさんの所へ戻り施設内でのことを話すと当然ながら驚いていた。

それより今まで転送されてきた人たちは帰れるということを聞くと事の顛末を国王へ報告する為王都にもどることとなった。

 

王都へ向かう馬車にて

「そういえばアダムさんって森の近くの村で記憶失って倒れてたって言ってましたね」

「・・・うむ・・・」

「もしかしてこの逃げ出した宮廷魔術師って・・・」

アダムさんは強力な魔法を使えるそうだ、本当だったらその可能性はかなり高い。

「・・・そうかもしれん・・・でもそうなると一連の事件は私がゴブリンに知識を与えたのが原因ということになるな・・・」

 

アダムさんは暗い顔になる。

記憶が全くないのだ、この記憶を消去する装置とやらを探してみたが結局それらしいのは見つからなかった。

仮に見つけても記憶を戻せるかどうかもわからない、なにしろ相当時間は経っているわけだし。

しかしそれっきりずっとアダムさんは黙ってしまった。

 

王都へ入るとそのまま国王に謁見することとなる。

今回は内部で起きたことをそのまま話すことにした。

隠すようなことはないしな。

 

「葉山殿、比企谷殿、ご苦労であった。しかしそんな施設が森の中にあったとは・・・」

え?国王もしらんとか引継ぎとかなんもしてなかったのか?

「何しろ先代の国王、まあ私の父だが、亡くなったのは突然でな、私は父と違って戦争を止めたかったから葬儀が終わった後、すぐに戦争終結の為に大がかりな城の人員整理したのだよ、故に軍事施設の処分なんかは下に任せっきりだったのでこういった極秘の計画までは目が行き届かなかったんだよ、これは私の失敗だ」

 

「陛下・・・それでその逃走した宮廷魔術師というのは・・・」

 

「うむ、まあ記憶を消されてそのまま逃走したのか、ゴブリンにやられたのかどうなのかわからないが、今更見つけても仕方あるまい、仮にアダム殿だったとして、記憶も何もないのに責任を追及できんし、それに本当にそうだったとしても辺境で異世界人の面倒を見てもらってるから十分責任ははたしていると考える」

 

「は!ありがたきお言葉!」

恐縮するアダムさん

 

「そんな恐縮するでない、ところで葉山殿達はこれからどうするね?元の世界に帰るつもりか?」

「はい、その為に生き残ってきました」

葉山は即答だ。

「俺達は・・・まあそうですね・・・」

 

「ふむ、まあ家に帰ってじっくり考えて見たほうがいいだろ、施設に関しては内部は瘴気の汚染されてないとのことなのでこちらで調査隊を送り込む、すまんが誰か調査の手伝いをしてくれぬか?」

と視線を陽乃さんへ送る。

 

「ご指名ね、まあ仕方ないっか・・・静ちゃんも手伝ってよ、帰って旦那とイチャイチャしたいだろうけど」

「陽乃!お前という奴は・・・仕方がない」

 

というわけで陽乃さんと平塚先生は施設への案内をするために王都へ残り俺達は千葉亭へと帰ることにした。

 


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