夜になり冒険者ご用達の酒場に集まり今後の相談をすることにした。
ここは酒場と謳っているがいわゆる食堂に近い物がある。
「訓練所ってのは剣や槍を扱うファイターと弓を使うハンター、魔法攻撃メインのメイジと回復メインのプリースト、罠解除やら偵察奇襲なんかが得意なシーフ、あと素手で戦う格闘とかあるみたいだな、あと特殊なのがいくつか」
「本当にそんなゲームみたいな職業を一ヶ月ぐらいで習得できるのかな?」
戸塚は不安げだ、いや全員不安げだ。
唯一材木座だけは元気だった。
「やはり我は大剣等の両手剣使いであろうか?うーむ二刀流もいいな、黒い装備にしてリアル黒の剣士というのはどうであろうか?、八幡どちらがいいと思う?」
「知るか、好きな方でいいんじゃね?ところで職業には適正があると吉原さん言っていたよな」
「そうなのだよ!八幡!」
またまた材木座が声をあげる
「魔法については実際に出してみれば分かるとのことだ!我も魔法訓練所のところで色々聞いて試したが平均レベルだったから普通に肉弾戦向きとか言われたぞ!」
確かにこいつは訓練所にずんずん入っていって中でなんか話をしてたな。
しかしそれ体格を見て言われたんじゃないですかね?
でかい体格のメイジってあんま見ない気もするが
「それはどうやって出せばいいの?僕もやってみたいんだけど」
戸塚は興味津々だ
「うむ、吉原殿もやっておったであろう、手をこうやって炎出ろ見たいに集中して念じるといいそうだ」
全員でやってみると以外と全員そこそこ大きい炎が出てくる。
俺のは材木座と同じぐらい、クソ!こいつと同じとは!
戸塚と雪ノ下は結構大きく同じぐらい、一色も俺と同じぐらいだった。
お揃いですねと言われたが、それって材木座ともお揃いってことだからな?
そして一名問題児がいた
「わ、わ、ちょっとヒッキーこれどうやって消すの?このままじゃ天井が燃えちゃうよ!」
「うぉう、由比ヶ浜こっちに向けるな!早く消せ!」
由比ヶ浜の炎がでかすぎる、炎というよりは火柱だ
「消えろと念じるだけでよい!はよう消すのだ!」
バケツの水をもった店員が走ってくる。
「ウーン、消えろ!」
由比ヶ浜が力を込めて言うと火柱はあっという間に消えた。
この後店主に怒られたのは言うまでもない。
宿舎に帰って一息着いてると葉山がやって来た。
「比企谷くん、雪ノ下さんちょっといいか」
「何かしら?」
葉山はやけに真剣な様子、雪ノ下は不安げに聞き返す
「これからのことで相談があってね、来てくれないか」
そういうと葉山は比企谷の腕を引っ張り外に連れ出した。
ちょっと待ちなさいと雪ノ下が不安げな表情で追いかける。
だからそういう表情をするなよ。俺まで不安になるだろうが。
「リーダーの君達をつれてきたのは他でもない、今後についてだ」
と葉山は宿舎から少し離れた広場で話をする。
ちょっと待て、リーダーってなんだよ。
「おい葉山、俺はリーダーなんてなった覚えがないんだが、雪ノ下もだ」
「比企谷、今はそういうのはいい、雪ノ下さん、異論はないね?」
いつものことなかれな葉山らしくはない、強引に話を進めようとしている。
「・・・無いわ、話を続けなさい」
雪ノ下までなんだよもう。
「俺はみんなで元の世界に帰りたいと思っている、全員そうだと思っていたんだが、様子がおかしいのが何人かいるので君たちはどうかと思ってね」
「様子がおかしいってどういうことだ?」
「材木座くんみたいだと言えば分かるかな」
異世界に来てから水を得た魚のように生き生きとしてるもんな、色々有益な情報を収集したり別人のようでもある。
「よく見てるな、確かにあいつはラノベ好きだからこういう世界に憧れたんだろ、でもこの世界に来て喜びまくってるのはあいつぐらいじゃないか?」
「それが、平塚先生もなんだかおかしいんだよ。あと本牧も理由は知らないがうかれている感じだった」
平塚先生はアニメ好きだからこういう世界に憧れてたふしもある、もしかしてこっちの世界ではワンちゃんあると思ってるのかもしれない、結婚的な意味で。
でも本牧は何でだ?あざとい会長様に振り回されることがなくなったからだろうか?
「それでそれがどうした?」
「さっきも言ったが俺はみんなで元の世界に帰りたいと思っている。うちのメンバーもそれに同意してくれている。だから冒険者になって帰る方法を探そうと思う。そこで問題になるのは・・・」
葉山が言葉を濁す、ああ言いたいことはわかった。でもそれはあまりに人を信用してなさすぎだろう。みんなの葉山じゃなかったのか?
「お前の言いたいことは帰りたくない連中がお前の妨害をするのではということか?」
「そうだ、そこで君たちだよ、もしかしたら君たちもそうじゃないかと思ってね」
「違ってたら説得するとかか?生憎俺たちは帰りたい派だ、材木座は知らんが」
「・・・本当にそうか?雪ノ下さんもか?」
「愚問ね、話は終わりかしら?今日買ってきたものの整理しないといけないからそろそろ宿舎に戻らせてもらえるかしら?」
「ここで暮らせば色々なしがらみとかと無縁になる。しかも生活手段も一応確保されている。平塚先生に早く帰る為の協力の相談に行ったら何て言ったと思う?」
「なんだよ・・・」
「焦らずゆっくり探そう、ここには面倒な上司もいないし責任を押し付け会うようなルールもない、それにここだと昔から考えてた妄想が実現できそうだし、だってさ、帰りたい人の言葉に聞こえるかい?」
それにと葉山は言葉を続ける
「君たちは色々なしがらみで縛られてる、いやいたといっていいな。元の世界に帰るとまた縛られることになる。本当に帰りたいか?そこだけ確認しておきたくてね。」
明らかに雪ノ下の表情が変わる。
こいつはいつもそうだ、いろんなしがらみやこうあるべきという態度を強いられている、姉の陽乃さんはそれらを受け入れ仮面を作ったが、こいつにはそれができなかった。
今回のプロムの一件もそうだ。
一応成功はしたが、雪ノ下のこれからについてはまだまだ藪の中といった方がいいぐらいだ。
俺はどうだろうか・・・本当に帰りたいんだろうか・・・
「・・・ともかく俺たちは帰る、みんなで元の世界に無事に帰るのを目標にする。協力してくれるのは構わないが、邪魔はしないでくれ」
俺たちの様子を見て葉山は踵を返すと自分の宿舎に戻っていった。
ふと雪ノ下があのとき由比ヶ浜のお願いを聞いてくれといったことを思い出した。
あのとき結局俺はうやむやにしてしまい答えを出せなかった。
二人は苦笑いしながら俺らしいと言ってくれた。
でもここに永住するとなったら雪ノ下と由比ヶ浜はなんと言うのだろう?
家のことや将来がここでは全く関係なくなってしまってるのだ。
俺も答えを出さないといけない。
俺たちは無言で宿舎に帰った。