「見つけたぞ...お前がイグナだな」
「...誰だ?」
城に向かって進み続けるその途中、俺達の前にまた、新たな魔族が現れた。
だが...他の奴らと雰囲気が違う。魔王の臣下、とかか?
「私の名はアスト。王の命で、お前を捕らえさせてもらう」
やっぱり、あいつらを仕向けたのは魔族の王様なんだな。何があったのか、調べる必要がありそうだ...。
だけど、今はとりあえず。
「...俺がついてったら帰ってくれるのか?」
「そうはいかないな」
「じゃあ...従うわけにはいかないなっ!」
先手必勝。俺は双剣を引き抜いて走り出す。
龍の力の使い方も分かってきた。
するとアストの方も、短刀のようなものを構えて俺の攻撃を受け止める。やっぱり、他の奴とは違うか...!
けど、お前の武器は一つだけ。なら!
「横が!」
「がら空きだよ!」
ロアとレギナにも俺の意図は伝わったみたいで、それぞれアストの左右から攻撃を仕掛ける。
さあ、どうくるか...!
「...ふっ」
アストは、受け止めていた俺の剣を押し返し、自由になった短刀でそのまま2人の攻撃も捌いた。
さっきのあれで勝てれば楽だったんだが、そうもいかないか...けどこれくらいは、想定の内だ!
「まだまだぁっ!」
「無駄な事を...」
双剣で連続攻撃を浴びせていく。だが、その全てが受け流され、有効打にはならなかった。
ロアとレギナも共に攻撃してくれているが、それでも中々ダメージを与えられず、むしろこちらが消耗していくだけだった。
「こいつ...相当強いな...!だけど...」
俺は勝つ...勝たなきゃいけない...
もっと...
もっと...力を...!
『いいだろう』
またあの声...ってことは...
──────!?
「がっ...ぐぁぁっ...!?」
「...兄さん!?」
ちょっと待ってくれよ、今攻撃なんてされたか!?
兄さんの目が一瞬赤くなったかと思ったら、急に苦しみだして...
「どうした?もう終わりか?」
「くっ...!」
やべぇ...あいつはまだピンピンしてるってのに!
「まずは邪魔者から片づけようか...はっ!」
「しまっ...!」
あいつは一瞬で間合いを詰めて、斬り掛かってきた。
その速度に俺は反応しきれなかった。
あいつの構えた短刀が、後少しで俺を斬るっていうその時、だった。
バァンッ!
目の前で弟を失ってしまうと思ったその時、どこからともなく魔法と思われるエネルギー弾が飛んでくる。
一体誰が...?
「勝手にこいつらに手を出さないでくれよな?」
その声は、何度も聞いた声だった。そしてその顔は、とてもよく知った人だった。
「ラクシアさん...!?」
「よっ!お前らこんなとこにいたのか...探したぞ?」
「それは...ってそんなことより急がなきゃ!あの城の中に人がいるかもしれない!」
「ふむ...」
俺達の戦い方は、ラクシアさんに教わった物だ。つまりこの人は、俺達の親同然の人であり師でもある。そんな人が一緒に戦ってくれるなら...!
「...退くぞ」
「え...なんで!」
「...今のお前じゃあ、魔族達を退けることはできない」
「でも!」
「安心しろ。この国の王族やその兵士達は魔導にも秀でてる。俺達が助けなくとも、無事でいる筈だ」
ラクシアさんは俺の考えとは逆に、退くという選択をした。
確かに...俺はあいつに勝てそうもなかった...けど...だからって...俺は...逃げなきゃいけないのか...?
何も出来ないのか...?
「逃がすつもりは無いぞ?」
「つもりが無くても逃げさせてもらうぜ...よっと!」
ラクシアさんはさっきと同じエネルギー弾を地面に向かって放ち、爆煙で辺りを覆う。
「お前ら、今の内に!」
「あ、ああっ!」
「うん!」
「...イグナ、お前も早く!」
「...っ!」
悔しさを噛み締めながら、俺は皆と一緒に逃げ出した...。
「これぐらい逃げればもう十分だろう」
「はぁっ、はぁっ...流石に疲れたよ」
相当な距離を走ってきた。どうやらアストは追いかけてきていないらしい。
「...で、兄さん。さっき後回しにしてた話、教えてくれよ。どうやってあんな力を?」
「あぁ、そうだったな...あれは...」
「おっと、話はもう少し待ってくれ」
「?何かあるのか?」
「もうすぐで見えてくる筈だが...お、きたきた」
「あれは...?」
ひび割れた瓦礫の散らばる土地に、いくつかのキャンプと無数の人。これって...?
「紹介するぜ。ここにいるのは...魔族の侵略に対抗するために集まった人間達」
ラクシアさんはそこで一度言葉を切った後、こちらを向いて言った。
「要するに...レジスタンスってヤツだな」
「レジスタンス...」
レギナは口が開きっぱなしになるくらいに驚いていた。かく言う俺も、だいぶ驚かされていた。
「さっきはあんな事言った訳だが...もしまだ戦う気があるなら、俺達と一緒に戦おう。ここで皆と一緒に強くなり、魔族の侵略に打ち勝つんだ」
こんなにも、侵略に抵抗しようとしている人達がいたなんて。
この中でなら、俺はきっともっと強くなれる。
「わかったよ、ラクシアさん」
俺の答えは決まっていた。
「俺、やるよ!もっと強くなって、いつかあいつらを...!」
「...お前なら、そう言うって思ってたよ!さて、お前らはどうする?」
ラクシアさんは俺の答えを笑って受け入れると、ロアとレギナの方に向き合った。
「兄さんには負けてられねぇからな!俺もやるぞ!」
「私だって!誰かの為に出来ることがあるなら、しないわけにはいかないよね!」
「決まりだな」
ラクシアさんは3人分の何かを持ってきた。これって...スカーフか?
「それはレジスタンスの証だ。それを巻いてる奴は全員仲間だ。ちなみに、魔力を使えば通信も可能っていう便利な物だから、大事にしろよな?」
すう言いながら渡されたスカーフを首に巻きながら、俺は決意する。
俺の...いや、俺達の力であいつらを倒す。
その為にも...もっともっと強くなる、と。