蒼炎のレジスタンス   作:シン・ファリド

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リハビリも兼ねてまずこっちから だって風花楽しいんだもん!!!


第8話 願いの為に

「...さて、それじゃあ中には俺とロアで行く。レギナはイストさんと一緒に外で待っててくれ。何かあったらすぐに連絡、いいな?」

「うん、分かった」

 

今居るのは研究所の前。役割を決め、今から内部に向かうところだ。

最初はレギナも一緒に来たがってたけど...敵は強いみたいだからな。只でさえ毎日戦いで危ないし、極力危険な目には遭わせたくない。

 

「じゃ、行ってくる」

「さっさと終わらせてくるから、少し待ってろよなー!」

入口の扉を開け、俺達は足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...しかし、本当に敵のいる気配が無いな」

「案外誰も居なかったりしてな?」

「それは無いだろう。あの人はそんなくだらない嘘は吐かない」

「...だよなぁ...」

 

ひたすら真っ直ぐ歩いてきたが、人の気配は無い。

この研究所も結構な広さだ。もしかしたら、一カ所から動かずに、敵を待っているのかもしれない。

だとすると、この研究所において人間が行きたがる場所...

 

「...敵がいるとすれば、中央区か」

「何処だ、それ?」

「この研究所は東区、西区って感じで区間分けされるんだが...中央区には工房や実験室みたいな特に重要な部屋が揃ってる。敵が本当に1人だけなら、そこで待ち伏せしてるだろうな」

「なるほどー!...で、そこってあとどれくらいで着くんだ?」

「そろそろ見えてくる...あった。この扉の先が中央区だ」

 

中央区入口、と書かれた扉の前まで来る。ここから先こそ本当に危険だ。いつ敵が来るか分からない。

いつでも戦えるよう覚悟を決めて、俺は扉を開ける。

すると...

 

 

 

 

「...おぉ、また来客じゃねぇか。今日は多いな」

 

冷たい魔力と共に、誰かの声が耳まで届く。

奥を見ると、1人の人間が槍を構えて立っている。

また、今日は...ってことは前にも来た人間の相手をしてるってことだ。きっとその人達はその人達の判断でここを取り返そうとしてくれたんだろう。

そしてその人達は、こいつに負けた。

その敗北の連鎖は...俺達が断ってみせる!

 

「お前が、魔族に味方してるっていう人間だな?何の為かは知らないけど、ここは返してもらうぞ!」

「...はぁ、まーたそれか。悪ぃな、こんなとこまで来させて...けどな」

 

その男は息を吸い込み、叫ぶ。

 

「ここから先はどんな奴だろーと立ち入り禁止だぁっ!大人しく帰るか、死ぬか!選びやがれ糞野郎共がぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「...っ!来るぞ!」

 

叫び終えると、すぐさま此方に向かってくる男。俺とロアは咄嗟に自身の武器を引き抜き、構える。

 

「はっ、そらぁっ!」

「こいつっ...強いな...!」

 

乱暴な口調の癖に、槍の扱いは無茶苦茶上手い...!

力任せじゃない繊細な動きで、こちらの剣を巧みに捌き、その合間に攻撃を入れてくる。この強さじゃあ、イストさんが何も出来なかったのにも納得だ。

 

「俺を忘れんなよっ!」

「忘れてねぇよ」

「うわっ!?」

 

ロアが後ろから一撃入れようとするも、即座に反応して剣を弾く。

その隙に俺が攻撃しようとしても、またこっちに向き直って捌いてくる。

本当に隙が無い...あいつの守りを崩すにはもっと手数が必要になる。

なら、一撃の威力を下げてでも、こっちの人数を増やす。そしてそれが、俺達には出来る。

 

「...マーズ!」

『あぁ』

 

俺の身体から魔力が噴出し、頭上に集まり、形を成す。

そうして実態を持ったマーズは、その腕に炎を纏わせ、息つく暇も与えず殴りかかる。

 

「へぇ...龍か」

「俺達を知ってんのか」

「ふっ...どうだろう、なぁっ!」

 

しかし向こうも、その腕を弾き、その勢いのまま槍で前方を薙ぎ払う。

 

「3対1...いいぜ、少しは真面目にやってやるよ」

 

そう言ったあいつは、槍に冷たい魔力を込めていく。属性は...氷。

...ちょっと待て、まだあいつ真面目にやってなかったのか...!?

 

「ほら...よっ!」

「...チッ!」

 

再びの薙ぎ払い。

直接槍が届く間合いには誰も居ない。

けれど、槍を振るったことにより衝撃波が生まれた。

地を這いながら、吹き荒れる嵐のような勢いで魔力を伴い迫る衝撃波。通った場所は所々凍っている。

喰らえば自分達もああやって凍りついてしまうかもしれない。

即座にマーズは地面を殴り、炎の壁を作り出して衝撃波を防ぐ。

 

「防いだか...だがまだまだだぁっ!」

 

しかし、奴は間髪入れずに地を蹴り、迫ってくる。

ここで一気に倒すと言わんばかりに、より速く攻撃してくるのに合わせ、俺もそれを捌き続ける。

 

「少しずつ押されて...けど、この状況なら...」

「何ぶつぶつ言ってんだか知らねえが...早めに死んだ方が楽だぜ?」

「...死ぬつもりは、毛頭無い!」

 

相手はこっちに集中している。そして俺の仲間はあいつの後ろに二人いる。

ベルゼの時と同じ状況。

...試してみる価値は、ある。

 

「来いっ!」

「あぁ?」

「おっ...またあれだな!」「...あの時のか」

 

掛け声に反応して即座に攻撃を仕掛けてくれるロア、マーズ。

当然奴は後ろに振り向き、武器に魔力を溜める。二人がかりの攻撃を止める為だ。

敵の注意が逸れたこの瞬間を狙って、一撃を叩き込む為に此方も魔力を込めていく。

これで、倒しきると決意して。

...だが、次の瞬間俺達はまとめて吹き飛ばされていた。

 

「...『コキュートス』!」

 

 

 

 

──────────────────────

 

「凄い...今の攻撃、どうやったんですか?」

「ああ、今のはな...魔撃、って言うんだ」

「魔撃?」

「あぁ。自分の身に宿る魔力を、より強力に、より効率良く放出する為に人間が編み出した、いわば...必殺技、みたいなもんだ」

「へぇ...それが使えればもっと強くなれるんですか?」

「そりゃあな」

「俺にも出来ますか!?」

「勿論だ。努力を重ねればな、絶対にな」

 

──────────────────────

 

 

一瞬の出来事だった。

奴は魔力を込めた槍で攻撃を受けるのではなく、その槍を地面に突き刺した。

次の瞬間、奴から強い魔力が放出され、それらが氷塊となって押し寄せ、俺達はそれの直撃を浴びた。

その余りの威力に、俺は前にラクシアさんから教えてもらった技...「魔撃」を思い出していた。

きっと、今のもその一種なんだろう。あいつが編み出した、あいつの技。

やっぱりあいつは、格が違う。

それに、今の攻撃、今までと感じが違う...

 

「おい待て...今の魔力、まさか」

「...マーズも何か違和感あった?」

「...ハッ。俺が気付かない訳が無いだろ」

 

マーズは傷を負いながらも立ち上がり、そして...奴を睨み付け叫ぶ。

 

「お前、『契約者』だな?...そこに居るんだろ?マーキュリー!」

『...あぁ。我はここに居る』

 

マーズの叫びに応えるように、何処からか声が聞こえてくる。『契約者』、って...まさかあいつ、俺と同じ...!

 

「ったく...無しでも勝てると思ったんだがな」

「え、一体どういう...」

「簡単な話だ。あいつも、イグナと同じで竜と契約した人間ってことだ」

「...まじか」

 

ロアが呆然とする。俺も、予想は出来てたとはいえやはり驚かずにはいられなかった。

 

「...さて、どう勝つか」

 

圧倒的な力の強敵を前に、開きかけていた勝利への扉が閉じていくのを感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

遠くにいても衝撃波、近付けても隙の無い連続攻撃。

しかも全員で掛かったら周りにアレって...

滅茶苦茶強いなあいつ!

しかも兄さんと同じで竜の力も借りてるんだろ?もうどうすんだよ!

 

「ロア、動きが雑になってきてる!気持ちは分かるが冷静に動け!」

「っ!悪い兄さん!でも...」

 

...そうだった。戦いは怒りに任せたら負けって何回も言われてた!

けど、頭を使って咄嗟に作戦を立てるなんて俺に出来ることじゃない。だから今は...

 

ひたすら挑んで、道を探す!

 

「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「おいロア!人の話聞いてたか!?」

「猪かってんだお前は...まあいい、来るなら仕留めてやるよ!」

 

衝撃波をかいくぐって近づき、まず真正面で一発。

当然弾かれるが、そんなのは分かってる。

だからそのまんま連続で斬りかかる。勿論刃は届かない。

けど、二回でダメなら三回。三回でダメなら四回。

俺に出来るのは、諦めないことだけ、だからあいつが折れるまで、何度でも攻め続ける!

 

「いくら攻めても力が及ばないことぐらいは分かってるだろ?...『コキュートス』!」

「まずいっ...!」

 

またアレが来る、それがわかった瞬間俺は退き、迫ってくる氷塊を避ける。

...すると、それは空中で方向を変え、またこっちに向かってくる。

 

「追いかけてくるのか...あーもう!こうなりゃヤケだ!」

 

ほんと理不尽なんだよこいつ!魔力も俺らより上のくせに竜と契約して!?しかもこんな技まで使って!

怒りに任せたら負けって言うけど、こんなん怒らなきゃやってらんねぇよ!

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!!」

 

思いっきり叫んで、思いっきり魔力を込めて、俺は向かってくる氷塊に向けて剣を振り下ろす。

 

「固ぇ...けど、負けねぇっ!」

 

剣を通して手が痺れるような衝撃が伝わってきたけど、退かずに力を込め続ける。

このまま...押し、切る!

 

バキィッ!

 

氷塊は二つに割れた。よし、まだ何とかなるな!

...と思った次の瞬間。

 

ゴッ

 

「ぐっ...」

 

すぐさま次の氷塊がこっちに向かってきて、俺はそれに吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだ、あいつは...」

 

人の忠告を無視して突っ込んで、結局やられてちゃ世話ないっての。でも...

 

「お陰でまだ戦える。活路も見えた」

「...ほう。お前、あいつに勝てるんだな?」

「あぁ。お前の力があればね」

 

ロアが戦ってくれたから、あいつの攻撃の性質が知れた。可能性が見えた。

...こりゃあ、あいつに感謝しないとな。

 

「よし...次で絶対に決める。行くぞマーズ!」

「フッ...言われなくとも決めてやるさ!」

 

言葉を交わしながら俺達は駆け出す。一方あいつは...槍を振るっての衝撃波。まだあの攻撃よりはマシだが...それでも竜の力で威力は増している。喰らえば危険なのは間違いない。

攻撃の合間を縫って俺達は前へ進む。

衝撃波をかいくぐって前を見ると、奴はまた【あの技】の構えをしていた。

槍に魔力が蓄積され、地面に突き立てると同時に解放。

それは巨大ないくつかの氷塊になって、敵を追尾する。

壊せない訳では無いが、壊せば瞬時に奴が次を飛ばしてくる。

だが、新しく次の氷塊が造られる訳では無い。

実際、さっきロアへ追撃した時に使われたのは途中まで俺を追いかけていた物だった。

多分、相当な量の魔力を使うために連発できないのだろう。

つまり、俺達が勝つには...

 

 

...迫ってくる氷塊を全部壊して、次を出される前に距離を詰める!

 

「...いい加減面倒だ。最大出力で行くぞ...マーキュリー!」

『そうだな...終わりにしよう』

 

もう一度さっきと同じ声が聞こえてくる。間違いなく、今までで一番の攻撃が来る。

 

「こっちも全力だ...力を貸せ、マーズ!」

「いいぜ、残らず焼き尽くせ!」

 

言葉の後、全身に魔力が満ちていく。

マーズが俺の体内に入ったんだ。

準備は万全。あとは強い方が勝つだけだ。

 

「凍てつきな!『コキュートス』!」

「来た...はぁぁぁっ!」

 

今まで以上の数の氷塊が、俺に向かって飛んでくる。

視覚に入った全てに向かって、俺は炎を纏わせた斬撃を放つ。

一撃では足りないのは分かっているから、何発も重ねて連続で。

無数の氷塊が砕け、破片が飛び散る。俺は止まらず、両手に剣を構えたまま突き進む。

 

「チッ...!」

 

すかさず奴は氷塊の一つを自らの前に持ってきて、更に魔力を注いで巨大な障壁に変える。だが...

 

「そんな壁、乗り越えてみせる!未来の...俺の、願いの為に!」

 

俺は飛び上がり、自分を奮い立たせる為に叫び、そして...両手で持った剣を、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

正直な所、さっきまでは折れる寸前だった。

敵は自分と同じ契約者で、しかも魔撃の使い手。

俺は魔撃というものの存在も、それによってより有利に戦えることも知っていた。にも関わらず今まで使わなかった。

否...使えなかった。

何度も特訓を重ねても、上手く思い描いた形にならない。大した威力にもならない。

結局、純粋な強さではなく、戦いの中で弱点を探してそれをつく方法で敵を倒す道を選んだのが俺。

けど...今は、純粋な強さが必要な瞬間だ。

...もしあいつに接近しようとした所でこうなるだろうという予感は、あの技を最初に見た時からしていた。

でも...ロアが見せてくれた。

作戦も何も無いような力押しだったけど、それであいつは、氷を砕いた。

勝つ為に、全力で戦った。

なら兄である俺が、こんな所で折れてる場合じゃない。

今まで出来なかったなら、今出来るようになればいい。

だから今は...

 

 

 

 

「絶対に、勝ってみせる!」

 

俺の叫びに呼応してか、内側から更に魔力が溢れてくる。身体中が熱くなる。心臓の鼓動さえ、速くなっていくように感じる。

先進を駆け巡る力の全てを、俺は両腕に、二つの剣に集中させる。

そして。

 

バキバキバキィッ!

 

「しまっ...!?」

 

砕けた!このまま...倒しきる!!

 

「今ここで、決めてみせる!...『プロミネンス』!」

「ぐ...ぁ...っ!」

 

落下の衝撃を乗せて、二振りの剣を叩き込む。

その一撃は...まさに、かつて思い描いた物だった。

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