蒼炎のレジスタンス   作:シン・ファリド

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説明回 なのだろうかこれは


第9話 涼風の真名

「今ここで、決めてみせる!...『プロミネンス』!」

「ぐ...ぁ...っ!」

 

振り下ろした双剣が、確かに直撃する。

...だが、奴はそれでもまだ、倒し切れてなかった。

寸前で懐に氷を纏わせ、衝撃を和らげたのだ。

 

「こいつっ...!」

「後一歩だったな...!お前の、負けだぁっ!」

 

奴は俺の腕を左手で掴み、右腕に持った槍を突き刺そうと構える。

今から回避は間に合わない。炎じゃあいつみたいな防御も出来ない。

俺が死を予感した、その時だった。

 

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「!?この声はっ...!?」

 

凄まじい勢いで、誰かが飛んできた。

その誰かの声に気を取られた奴は、そのまま思いっきり殴られ、吹き飛び、壁に衝突して気絶した。

奴にぶつかるその瞬間、一瞬見えたその顔は...。

 

「レギ、ナ...?」

 

待っててくれと頼んだ筈の、幼馴染だった。

 

 

 

 

──────────────────

 

「はぁ...」

 

大丈夫かなぁ...イグナ達。

いや、大丈夫な筈。きっと無事に戻ってくる。

 

...待って。氷の魔力が勢い増してる。

あの二人は氷なんて使わないし、敵の物だよね...

 

うーん...

 

「のう、お主」

「ひゃっ!?な、何ですか!?」

「不安なようじゃな」

「...はい、正直に言えば」

 

感じられる魔力の種類は三つ。炎と、雷、あと氷。

炎と雷は言うまでもなくあの二人の...いや、三人ので、氷の魔力はどこかで感じた覚えのある雰囲気。

そしてついさっき、氷の勢いがやたら増した。元々一番強かったのに。

それどころか、どことなくマーズの魔力に似た感じもする。もしかしたら、敵は龍なのかもしれない。

そんな状況の戦いの中に、自分はいない。不安にならない訳がない。

 

「...助けに行くといい」

「えっ?でも、それだとイストさんが...」

「心配いらんわい。手負いだった上に連戦で、さっきは情けない姿を見せたが...もう充分回復した。気にすることはない」

「...ありがとうございますっ!」

 

そうと決まれば、全速力だ。

魔力感知と、前にイグナの職場を見に来た時の記憶を頼りに、研究所を駆け抜ける。

 

「そろそろの筈...あっ、いた!」

 

イグナと、ロアと、敵っぽい人影。しかもイグナ、もうすぐで槍に刺されそう...!

 

「絶対させない...間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

──────────────────

 

「待っててくれって、言ったよな?」

「あはは、ごめんごめん...心配でさ」

「ったく...でも助かった。ありがとう」

「どーいたしましてっ」

 

助けにきてくれたのは、まさしくレギナ本人だった。

話によれば、魔力感知で危険を読み取り、急いで走ってきたらしい。

感謝すると同時に、己の力不足を痛感する。

 

「んで、この後どうすんだ?」

「ロア...そうだな、取りあえずあいつが起きるまで待って、起きたら色々聞き出すぞ。何かしら知ってる可能性は高い」

 

こんな重要な場所を、そこそこの期間一人で守ってるとなれば、相当敵側から信頼されている...もしくは、絶対逆らえない何かをされているのだろう。

 

「まずは、気を失ってる間に動きを封じて、武器も没収しておこう。それから...」

「そういえば碌に顔も見ないで殴っちゃったな。誰だったんだろ?」

「?少なくとも俺は知らない奴だったが...」

「いやー、どっかで感じたことある気がしたんだ。多分気のせいだけど...」

 

そう言いながら、レギナは気絶したその男の顔を覗き込む。そして...

 

「えっ...ええっ!?」

「どうした!?」

 

「私、殴っちゃいけない人殴っちゃったかも!!」

「...はぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、本当に大丈夫か?何もしないで」

「大丈夫、私を見たら攻撃なんてしない筈...」

「もしダメだったら止めるの大変だぞ?」

「それはそうだが...ここはレギナを信じよう、ロア」

 

数刻が経過した。外のイストさんにも状況は伝え、そのまま見張りについてもらった。ラクシアさんにも報告を済ませたからじきに合流できる筈だ。

 

「あ、そろそろ目を覚ますみたいだぞ」

「みたいだね」

 

顔を見つめ、様子を窺う俺達。それにしても、レギナの発言の意味は一体...いや、それもすぐに分かるか。

 

「くっ...何が起きて...あ?お前ら、人の顔覗き込んで何のつもり、で...!?」

 

そいつは飛び起きて辺りを見渡し、そしてレギナの顔を見た瞬間動きが止まる。

 

「なっ...カンナ様...っ!?」

「やっぱりわかるよね...あはは、久しぶり」

「久しぶり...ではありません!今まで何をやっていたのですか!?」

 

...は?

......はぁっ!?

待て、何が起きてるんだ?

あんだけ乱暴な喋り方だったあいつが、こんな丁寧な喋り方で...まるでどっかの国の騎士みたいだ。

しかも、カンナ様って誰だ?俺の知る限り、そんな名前の人間はこの場に居ないぞ?

 

「待ってくれよ、色々意味がわかんねぇぞ!?カンナって誰だ!?ってか何の話してんだよ!?」

「ロア、一旦落ち着け。...だが、俺も詳しく聞かせてほしいところだな」

「分かってるって。えーっと、まず...二人に謝らなきゃいけないことがあるの」

「...何だ?」

「私、本当はカンナって名前で...この国の王女なの!」

「「.......はぁぁぁぁぁぁっ!?!?」」

 

生涯、これ以上の叫び声を出すことがあるだろうか。それ程の大音量で、俺達は驚き叫んだ。

 

 

 

「ここからは俺が...ではなく、私が説明します。さっきカンナ様が言った通り、この方はこの『アリアス王国』の国王、オベルド陛下の娘。本来ならこんな場所に居ることの無い筈の方です」

「まじかよ...冗談とかじゃないのか?」

「はぁ?お前カンナ様が嘘をつくとでも思っているのか?死にたいらしいな?」

「...グレイ、続けて」

「はっ、失礼...」

 

一瞬、さっきまでの口調に戻ったな...どうやらあの丁寧な態度はどうやらレギナに対してのみらしい。

グレイと呼ばれたその男は、一度畏まると、再び説明に戻った。

 

「ですが、今からおよそ15年前...ある事情により、カンナ様は城を抜け出さねばならなくなった。...厳密に言えば、私がそう感じたのです」

「何か、あったんだな?」

「はい。ですがその件についてはこれ以上詮索しないでいただきたい。したら潰す」

「急に豹変するなよ...分かったよ。言えない訳があるってことだな?」

 

そこが一番気になるところだが...するなと言うなら無理に聞く気もない。

人に言えない話など、大概の人間が持ってるものだ。

 

「そして、当時からカンナ様に仕えることになっていた私はカンナ様を連れて城を抜け出し...陰ながら生きていくつもりが...カンナ様が逃げ出してしまって」

「お前みたいな狂暴な奴の側には居たくなかったって訳だ」

「あぁ!?」

「ロア、煽るのもそこまでにしとけよ...すいませんね、後で締め上げとくんで話続けてください」

「あ、あぁ...それで、必死に捜していたのですが一向に見つからず...まさかこんな所に、しかも違う名を名乗っていたとは」

 

そりゃ、こんな広い国を一人で捜索なんてしてたら、見つけられる筈もないか...

 

「本当ごめんね...イグナ達と出会って、凄い楽しくて」

「そういえば、俺達がレギナと初めて会ったのももう15年前か...」

 

 

 

──────────────────

「ねぇ。きみ、ひとり?」

「う、うん...」

「おやは?」

「...いないよ」

「そっか...じゃあさ、いっしょにあそぼうよ!」

「いいの...?」

「うん!ロアもいいよね?」

「いいよー!」

 

──────────────────

 

不意に、初めて交わした会話を思い出す。

そういえばあの時、レギナの周りには誰もいなかったな...

 

「肝心なところは話せないけど...大体そんな感じかな。...今まで黙っててごめん!」

「...確かに驚いたよ。けど謝る必要は無い。そうだろ?ロア」

「おう!言いたくなかったから言わなかったんだろ?じゃあ構わねえ!」

「ロアもこう言ってる。気にすることなんて一切無いってことだ」

「そっか...ふふ、ありがと」

「ああ」

 

何らかの理由で親の下から離され、自分に仕える人からは自らの意志で離れた。

俺達には想像も出来ない何かが、起きていたのだろう。

何者かの大きな陰謀かもしれないし、違うかもしれない。

けど、そんなことは関係無い。

もうとっくの昔に、俺達は出会い、共に歩み、ここまできた。

今更何を知ろうと、それは絶対に揺るがないのだから。

 

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