Fate/Masked Order Cosmos in the Rider belt   作:語屋アヤ

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第9節『Lの世界/ジェノサイドを食い止めろ』≫2

「市民を撃つな! 殺戮猟兵(オプリチニキ)を狙え!」

 

 部下のヤガ達へと叫んだ悠の言葉は届かない。いや、届いても叶えられないものだった。

 叛逆軍、市民、殺戮猟兵(オプリチニキ)は混ざり合いもはや三つ巴の乱戦になっている。

 こうなると、どう戦っても市民は巻き込まれてしまう。

 

「そんな……どうして……ワシの街が……狩場を隠していたのだって、仕方なかったんだ……そうしないと……ただ、街を守りたかっただけなんだ……」

 

 流れ弾に当たったのだろう、足から血を流して蹲る市長がぼろぼろと涙を流しながら、誰に向けたものでもない言葉で訴える。

 

 少数の弱きヤガを犠牲に一人でも多くの者を救う。残酷なやり方だが、強き者しか生きられないこの世界では決して間違っていると言い切れるものではない。

 そんなことは悠だって知っている。

 

 ヤガ達は過酷な世界で誰もが必死に生きている。

 皇帝(ツァーリ)に恭順するのだって生きていくため、仕方なく横暴に耐え忍んでいるのだ。

 叛逆軍とは選択が違うだけ。共に虐げられてきたことに変わりはない。

 

 それでもやらなければならなかった。

 この理不尽な世界からヤガ達を救うために、まだ余裕のあるヤガ達から奪うことを選んだ。その結果がこの惨状だった。

 

 わかっていてやったことだ。なのに、いくつもの悲痛な叫びが悠の心を締め付ける。

 苦しい。世界を救うのはこんなにも苦しいことなのか。

 

 何人もの殺戮猟兵(オプリチニキ)が並んでこちらへ銃を向ける。

 一人ずつ倒していたのでは間に合わない。

 自分が盾になって庇うにしたって、敵も、守るべき者も多過ぎる。

 

「うおあああああ!」

 

 それでも飛び掛かった。一人でも犠牲を減らすために、正面にいた二人を巻き込み倒れ込む。

 残りの殺戮猟兵(オプリチニキ)が無情に、無感動に引き金を引く。

 

 悠は獲物を腕のひれで切り裂きながら、その様を見ているしかできなかった。

 凶弾が罪無き者達を穿つ残酷――――が回避される瞬間を。

 

 突如、大型トレーラーがヤガ達と殺戮猟兵(オプリチニキ)達の間に割って入った。

 銃弾は堅牢な装甲を撃ち抜けず弾かれる。それはヤガ達の前に巨大な盾が出現したも同然だった。

 

「あれは……」

 

 突如乱入したトレーラーを立香達も目撃していた。

 

『こちらも確認しました、先輩。謎の大型車両です!』

 

 立香や殺戮猟兵(オプリチニキ)か困惑する中で、車両が大きく開閉され、そこから何かが飛び出した。

 よく見ると、前方と後方が黒と緑で塗り分けられ前輪が横倒しになったバイクに、飛行機のような赤い翼が付いて飛行している。

 見上げる姿勢でわかりにくいが、その操縦席には何者かの姿がチラチラと視界に入った。見たままの容姿を立香はつぶやく。

 

「青い仮面ライダー?」

 

『わたしは黄色く見えましたが……』

 

 空を舞うマシンを目で追う立香とマシュ。二人の言葉を士が訂正する。

 

「両方だ」

 

 右半身は黄色。左半身は青色。

 左右二色に分かれた仮面ライダー。その名は、

 

()()()()は……仮面ライダーW」

 

 ●

 

 ハードタービュラーで高速飛行するダブルの眼下では、今も激しい乱戦が繰り広げられていた。

 ()()はこの惨劇を止めるために、ここへとやってきた。

 

「予想通り大量だ。始めるぜフィリップ」

 

 一つの肉体に二人の会話がなされる。

 先に言葉を発したのはダブルのボディ担当となっている左翔太郎。

 

殺戮猟兵(オプリチニキ)の情報は検索済みだ。高い耐久性だが、弱点の頭部を狙えば倒しやすい』

 

 もう一人が応答すると右側の複眼が点滅して、エコーがかかった声になる。

 彼はダブルの体に乗り移り翔太郎と同居するソウル側、フィリップ。

 彼らこそまさに、二人で一人の仮面ライダーである。

 

「よし、ならっ」

 

 翔太郎が銃型の装備トリガーマグナムを構えて、地上へ向けて引き金を引くと数発の光弾が発射される。

 弾はただ落下するのではなく曲がりくねり、次々と地上にいる殺戮猟兵(オプリチニキ)の頭部へと着弾。上空からの不意打ちに為す術なく倒れた。

 

「流石相棒、情報通りだ」

 

『倒せはしたが数は多い。やはりマキシマムドライブで一掃するしかないね』

 

「元々その作戦だったろ」

 

『だが本当にいいのかい? 今の僕達がここに現界できているのは依頼人の力と魔力によるものだ。マキシマムドライブの使用は僕らの消耗も大きい』

 

 そもそも、今この場での戦闘自体が依頼から外れる行為だった。

 ここで多くの魔力を消費してしまうと、与えられた依頼を最後まで遂行できない可能性が出てくる。それは事前に翔太郎もフィリップから説明を受けていた。

 

「ここは俺達の愛した街じゃねえ。けどな、それは泣いているのを見過ごしていい理由にはならねえだろ!」

 

 それでも翔太郎に迷いはなかった。

 後のことを考えるなら、手放しに正しい決断とは言い難いだろう。

 

 けれど、今ここで消えかけている命を、ヤガ達の流す涙を放ってはおけない。

 たとえ半熟卵(ハーフボイルド)だと誰かに笑われても、貫き通すべき信念がある。

 

「ここまで来て出し惜しみはなしだ! いくぜ、相棒!」

 

『ああ、そうだね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでこそ僕の相棒、左翔太郎だ』

 

 翔太郎が黄色いルナのメモリをマキシマムスロットへセットすると、力強い音声が流れる。

 

『マキシマムドライブ!!』

 

『「トリガーフルバースト!」』

 

 二人の声が重なると同時に、引かれたトリガーから大量の光弾が矢継ぎ早に放たれだした。

 それらは変幻自在の軌道を描き、次々と目標に着弾していく。

 

 ヤガの持つ武器へ。

 そしてヤガ達に混ざる殺戮猟兵(オプリチニキ)の頭部へ。

 

 敵性だけでなく、虐殺の発生原因になるヤガの武器も一気に破壊して無力化する。

 

 弾丸はかつて、下水道の閉鎖空間で跳びまわる大量の猫達を全てすり抜け、狙ったドーパントのみを撃ち抜いた。それはこの敵味方入り乱れる乱戦状態でも、最高のパフォーマンスを発揮していると言えよう。

 

 これが虐殺を止めるためフィリップが選んだ最善策。連続誘導射撃による虐殺因子の排除だった。

 

 乱戦状態にある者の数が減ると、他のライダー達も格段に動きやすくなる。

 アマゾンオメガやディエンドは残っている殺戮猟兵(オプリチニキ)へと狙いを定めて残数を減らしていく。

 

「くそっ、あっちの方で火の手が上がってやがる」

 

『落ち着いて翔太郎。僕の計算では吹雪によって火はすぐに落ち着く。今は殺戮猟兵(オプリチニキ)を優先するんだ』

 

「……わかった」

 

 熱くなりやすく反射的に火元へ向かおうとした翔太郎を、冷静にフィリップが抑えた。

 性格の違う凸凹コンビだが、だからこそお互いの短所をカバーしつつ長所を活かし、最悪だった状況を改善に向かわせていく。

 

「残りの敵は少ない。降りた方がはええ!」

 

『了解した。メモリはメタルに変えよう』

 

『メタルゥゥゥ!』

 

 ハードタービュラーの高度を下げながら、取り出したメタルメモリを起動してトリガーと差し替える。

 

『ルナァ! メタルゥゥゥ!』

 

 ダブルの左半身が青からグレーへと変わり、武器も銃型から鋼鉄の棒メタルシャフトへと変化した。

 残った殺戮猟兵(オプリチニキ)が放った銃撃を、ぐにゃりと曲がるメタルシャフトが全て弾き飛ばす。

 

「おりゃっ!」

 

 まるで鞭のようにしならせたメタルシャフトが残る殺戮猟兵(オプリチニキ)達を打ち付ける。

 変幻自在の鋼鉄棒。これがルナメタル最大の武器だった。

 

『FINAL ATTACK RIDE! DE! DE! DE! DECADE!!』

 

「ふんっ!」

 

 鞭打でよろめいた殺戮猟兵(オプリチニキ)を、走り込んできたディケイドがライドブッカーで切り裂きトドメとした。

 

『久しぶりだね。仮面ライダーディケイド……門矢士』

 

「風都の探偵が出張か?」

 

 増援の殺戮猟兵(オプリチニキ)を全て片付けて、二人のライダーが向かい合う。

 

『僕らはこの地に喚ばれたサーヴァント達とは異なる。ある者の依頼を受けてこの地に導かれた』

 

「ある者だと?」

 

『君もよく知る人物……鳴滝氏さ』

 

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