生き残った男の子ハリー・ポッター   作:はと麦茶

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秘密の部屋
1話 夏休み


ハリーは今までで一番楽しい夏休みを過ごしていた。

夏休み最初に向かったのはシリウスの新家だ。

プリベット通りの端に建てられた家はシンプルでさっぱりしていた。マグル風の形だが、黒と白と赤のレンガで出来ているところはどこか魔法使いらしさがある。

家は2階建てで、リビング、ダイニング、キッチンの他に部屋が4つある。

壁にはハリーの写真や魔法で動くポスターがたくさん貼られていた。

2階に用意されたハリーの部屋にはベッドと勉強机が運び込まれ、ドアには“ハリー”と書かれた看板が打ち付けられている。

ハリーはとても嬉しかった。

 

「僕、夏休みの間ずっとここに居たいよ!」

「私もできることなら君とずっと一緒に暮らしたいよ。ただ、11歳まで君を育ててくれたのはダーズリーの方々だ。だから初めの4週間だけはダーズリー家で寝泊まりしてほしい」

「そうだよね。うん、わかった。でも日中はこっちに来てもいい?」

「もちろんだ」

「わーい!」

 

ハリーは喜んでソファーの上で跳ねた。

 

それからハリーは子役の仕事をいくつかこなした。寮制の学校に行っているということになっているので、学校生活について聞かれた時には色々とでっち上げて話した。

やはり子役の仕事は格段に減っていた。でもレッスンスクールで久々に演技の稽古をするのは楽しかった。

ダーズリー家と再会できたのは、ハリーとしては嬉しかったのだが、あちら側は1ミリもそう思っていなかった。

ダドリーは1年前よりさらに太って、おバカになっていた。ハリーとは口をきく気もないらしい。

まあこんな関係も悪くない、とハリーは自分に思い込ませた。

 

 

溜まっていた子役の仕事とバーノンのドリル会社の客(ゴルフが好きなメイソン夫妻)の接待を終えたハリーはシリウスの家に引っ越した。シリウスと一緒に暮らせるのはこの上ない喜びだった。

 

ハリーはソファーに深く腰掛けてのんびりしながら、両親が赤ん坊の自分を抱いている写真をポケットから取り出して額縁に入れた。

両親はずっと変わらず幸せそうに微笑んで、時々カメラに向かって手を振っている。

もしヴォルデモート卿が居なければ、ピーター・ペティグリューが裏切らなければ、ハリーは両親と暮らせたはずだった。

 

「どうしたんだ?」

 

リビングに戻ってきたシリウスはジェームズとリリーの写真を見て、懐かしそうに目を細めた。

 

「魔法界の写真は動くからいいね。話せたらもっといいのに」

「そうだな……よし、これは一番目立つ棚に飾ろう」

 

シリウスは写真をリビングの真ん中の棚の上に置いた。

ハリーは嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 

夏休み後半、ハリーはロンの家を訪ねた。

オッタリー・セント・キャッチポール村に佇むロンの家は、豚小屋を改造したような見た目だった。ピサの斜塔のように斜めに立っていて、煙突も変な方向に飛び出している。庭には魔法植物がボウボウに生えていて、古びた長靴が落ちている。

でもハリーはロンの家が大好きだった。古いけれどウィーズリー家の暖かさを感じられるからだ。

怪我が治ったチャーリーも一時的に帰宅していて、ハリーに沢山ドラゴンの話をしてくれた。

ハリーは庭小人駆除など様々な珍しい体験が出来た。

途中からハーマイオニーも合流して、『隠れ穴』はより賑やかになった。ハリーとロンはハーマイオニーのお風呂を覗く誘惑を必死に振り切らなければいけなかった。

妖女シスターズのライブに備えて、ハリーとハーマイオニーはウィーズリー兄弟からメンバーの名前、有名な歌、掛け声など色々と教わった。

知れば知るほど、ハリーはライブが楽しみになってきた。ハーマイオニーはロックが好きではないらしく初めは渋い顔をしていたが、少しは穏やかな表情になったような気がする。

 

 

妖女シスターズのライブの前日には、シリウスも『隠れ穴』にやってきた。手に紙袋を持っている。

 

「妖女シスターズのTシャツを手に入れたぞ」

 

シリウスは黒地に派手なプリントがされたTシャツを一人一人に配った。みんなのテンションは最高潮に達した。

 

「おったまげー最高だよ!」

「ありがとうシリウス!」

「あらまあ、わざわざありがとうございます。ほら子供達、ちゃんとお礼言うのよ」

「「ありがとう!」」

 

フレッドとジョージとジニーとロンが揃って言った。

 

「明日はどうやって行くことになっているんだ?」

 

シリウスは聞いた。

 

「明日はキングズ・クロス駅6と7分の2番線から出る電車に乗るのよ。ライブは午後2時からだから、11時には家を出ましょうね。だから子供達は早寝するのよ」

 

モリーは言いつけた。

その夜、ハリーはワクワクしてなかなか寝付けなかった。ハリーは暗闇の中で部屋を目だけ動かして見回した。

ロンの部屋は狭くて古い匂いがするし、天井裏でナールおばけがゴソゴソ動いている音が聞こえるけれど、漫画や贔屓のクィディッチチームのポスターがどっさりあった。こんな素敵な部屋で眠れるのは幸せなことだとハリーは思った。

 

 

翌日、6と7分の2番線のホームはライブに向かう魔法使いや魔女たちでごった返していた。みんな何かしらのグッズを身につけて、浮き足立った雰囲気でわいわい話している。

電車がホームに入ると歓声が上がった。

車体に稲妻のようなフォントで『The Weird Sisters』と描かれていた。

 

混み合う車内で何とか席を確保してハリーたちは会場までやってきた。

森の奥深くに石造りの円柱状の建物が聳え立っている。壁にはカラースプレーでカラフルに落書きされていた。

 

「あそこが会場なのか?」

 

ジョージが呟いた。

 

「そうだよ。それにしてもあのドラゴンの絵、大迫力だなあ」

 

チャーリーは壁の絵に見惚れていた。

 

「あれは妖女シスターズ専用の会場なの?」

 

ハーマイオニーは疑わしそうに建物を眺めていた。

優等生のハーマイオニーはロックバンドと縁のない生活を送ってきたので、戸惑っていた。

 

「そうだよ、あれは妖女シスターズがデザインしたんだ。あのスニッチが描かれた壁の前でジャンプして写真を撮るのがお決まりさ」

 

フレッドが解説した。

たしかに壁の前には行列が出来ていて、写真屋が写真を撮っていた。

 

「せっかくだから撮りに行こうよ」

 

ビルの声にみんな賛成した。

会場に行くまでの道にはグッズを売る屋台や食べ物屋が立ち並んでいて、ちょっとしたお祭り状態だった。

ビルは妖女シスターズがプロデュースしたピアスを買った。

ハリーは妖女シスターズのメンバーがプリントされたスノーボールを買って、ロンとハーマイオニーにプレゼントした。

 

「これ、今までのお礼だよ。ハーマイオニーはテスト対策してくれたし、ロンは妖女シスターズのコンサートに連れてきてくれたから!」

 

2人とも喜んで受け取ってくれた。

馬鹿騒ぎしている若者の集団やちびっ子魔女軍団とすれ違い、写真を撮り、ハリー達はとうとう会場に入った。

円形のホールに椅子が並べられて、中央に大きな舞台があった。席は5階ぐらいまであって、ハリーたちは2階の真ん中ぐらいの席だった。

 

「まだ時間があるわね」

 

モリーが時間を確認して言う。

 

「よっしゃ、俺たちやりたい事があったんだ!」

 

フレッドとジョージはあっという間に走り出して消えてしまった。モリーはやれやれと溜息をついた。

 

「全くあの2人ときたら……」

「ママ、わたし、トイレ行きたい」

 

ジニーがモリーの服の袖を引っ張って小声で言った。

 

「まあジニー! だから事前に行っておきなさいって言ったじゃない……」

「私がハリーたちを見るよ」

 

シリウスが胸を叩く。

 

「ありがとうシリウス。なら私はジニーをお手洗いに連れて行くわ。ビルとチャーリーは……」

「僕達は適当にぶらぶらするよ」

 

ビルが微笑んだ。

 

「俺達ならフレッドとジョージより信用があるだろ?」

 

チャーリーとビルには大家族の次男と長男としての落ち着きがあった。

 

ハリーはロン、ハーマイオニー、シリウスと共に外に出た。

 

「フレッドとジョージがやりたいことって何なのかしら?」

「きっと小遣い稼ぎだよ。試作品の悪戯グッズを売って金儲けしようってずっと言ってるんだ」

「すごいなあ2人とも」

「あなたは3歳の頃から稼いでるじゃない」

「ペチュニア叔母さんのおかげだよ……あ、あのアイス美味しそう!」

「おい、あっちの焼肉も美味しそうだよ!」

「どっちも美味しそうだわ。でも2つとも並んでる時間はないわね」

「なら、私が肉を買うから、君たちはアイスに並べばいい」

 

シリウスは微笑んだ。

 

「わーシリウスありがとう!」

 

ハリーたちはアイスの列に並んだ。

 

「おや楽しそうなこと」

 

談笑していると、聞き覚えのある低い声が聞こえてきた。

振り返るとマルフォイがクラッブ、ゴイル、そして屋敷しもべ妖精と共に立っていた。

クラッブとゴイルはアイスクリーム、パスタスープ、糖蜜パイ、かぼちゃジュース、チョコレートバーに夢中で食らいついている。

 

「黙れマルフォイ」

「父上から聞いたんだけど、ウィーズリー、お前の家は豚小屋らしいじゃないか。君達、そこに遊びに行っただって? 僕なら反吐が出るよ」

 

結局、ドラコは羨ましがって嫉妬しているだけじゃないかとハリーは感じた。

 

「ロンの家は最高だったよ。君の父さんがそう感じてないとしてもね。それより、その屋敷しもべ妖精はどうして付いてきてるの?」

「ドビーでございます。ドビーめは坊っちゃまの付き添いでいらっしゃっているのでございます!」

 

坊っちゃま、という言葉でロンが吹き出した。マルフォイは顔をしかめる。

 

「何がおかしいんだ?」

「私たちあなたに構ってる暇ないわ。突っかかりたいだけならどっか行ってちょうだい」

「マグル生まれが僕に話しかけないでくれないか、グレンジャー。ウィーズリー、君もだ。血を裏切る者め」

 

マルフォイはそのまま立ち去った。

 

「羨ましがってるだけだから間に受けなくて大丈夫。それより、アイスの味は何にしたい?」

 

ハリーは何事もなかったかのように話を続けた。

 

「なんでそんなにスルーできるんだよ?」

「うーん、たぶん僕がドラコみたいな人達だらけの場所で過ごしてきたからかな」

 

ハリーはにっこり笑顔で答えた。

ロンとハーマイオニーの顔は少し引きつった。

 

 

 

午後1時59分、会場の明かりが一斉に消え、会場のざわめきは一瞬にして無くなり静まり返った。

「今から凄いことが起こるぞ」という雰囲気が辺りを満たしている。

そして期待が最大まで高まった瞬間、スポットライトがパッと輝いた。

妖女シスターズのメンバーがヒッポグリフに乗って空を駆け回り、動きに合わせてライトが動く。

大音量で曲がかかり、ハリーはノリノリで杖を振った。

シリウスがハリーの杖に手をかけて、赤色の光を灯した。

 

「ありがとう!」

「なんてことないさ。それよりあのドレッドヘアのメンバーに注目してみろ。アクロバットで有名な奴だ」

 

メンバー達は自由自在に空を飛び回った。まるで縄なしのサーカスのようだった。

突然、姿くらましで客席に現れたかと思えば天井付近に現れ、観客達は大興奮だ。

魔法で水の球が浮かび上がって弾けたり、炎がドラゴンの形になって噴射されたり、マグルでは到底できない大迫力のパフォーマンスの数々が繰り広げられた。

 

「♪Can You Dance Like a Hippogriff?」

 

ボーカルが激しく歌い上げ、マイクを観客に向ける。

 

「♪MAMAMAMAMAMAMAMAMA!」

 

ハリー達はノリノリでジャンプしながら歌った。

一曲目、二曲目、三曲目……ライブは終盤に行くにつれてますます盛り上がった。

アップテンポの曲からしみじみする歌まであって、その度に観客達は杖の色を変えて振った。観客みんなが肩を組んで体を揺らしたりもした。

 

 

興奮のうちにライブは終わった。

ハリーはこのライブが衝撃すぎて、終わってもしばらく動けなかった。

ハリーはすっかり妖女シスターズの虜になった。ハーマイオニーも楽しそうに笑っている。

帰りの電車は行きよりもさらに熱気と楽しさで溢れていた。




途中で力尽きました
ライブの場面はいつか書き足します
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