生き残った男の子ハリー・ポッター   作:はと麦茶

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9話 ノルウェー・ドラゴン

ハグリッドから貰った写真をトランクにしまう。

ハリーは大きく息を吐いた。

幼い頃から天才子役として持て囃されて、魔法界に来てからも“生き残った男の子”として勝手に英雄視されてきた。

もし神様と取引できるなら、そんな名誉や人気なんか全部捨ててもいいから、両親を取り戻したい。

……考えてもどうしようもないことだ。

そんなことよりハーマイオニーのパンツのことを考えよう!

うまくいけば、次の飛行訓練の授業で見えるはずだ。それと、大広間の長椅子を跨ぐ時もなかなか際どい瞬間がある。

そうだ、身の回りには幸せなことが沢山あるじゃないか!

 

「ハリー、いつのまに帰ってたんだい?」

 

ロンは中々帰ってこないハリーを心配していた。

 

「今帰ってきたところだよ。それより、ちょっと気になることがあるんだ」

 

ハリーはハグリッドの小屋にあった黒い卵について話した。

 

「うーんなんだろう。ドラゴンの一部はそんな卵だった気がするけど……」

「ドラゴンを飼育できるの!?」

「違法行為だけどね。1709年のワーロック法でドラゴン飼育は禁止になったんだ。みんな知ってる。だって、もし家の裏庭でドラゴン飼ってたら、どうしたってマグルに気づかれるだろ」

「よく知ってるね」

「チャーリーがルーマニアでドラゴンの研究してるんだ」

 

チャーリーはウィーズリー家の次男だ。

 

「なら、ハグリッドは法律違反しようとしてるってこと?」

「その卵がドラゴンならね」

 

ハリーは心配になった。

ハグリッドは猛獣であればあるほど大好きだ。ドラゴンを飼おうと思っていても不思議ではない。

 

 

次の日、ハリーはハーマイオニーに質問した。

ドラゴンの卵について知りたいと言ったのだ。

 

「どうしてそんなことが知りたいの?」

 

階段を早足で登りながらハーマイオニーが尋ねる。

 

「だってドラゴンだよ! 男のロマンだよ!」

「私にはよく分からないわ。そういえばあなた、子役の時もそういうファンタジックな映画には一回も出てなかったわよね。『はてしない物語』の主人公は絶対にあなたになると思ってたわ」

「そのオファーきたよ! 叔母さんと叔父さんが断ったんだ。魔法とかをあまり好まない方々だから」

「そうだったのね」

 

2人は図書館に到着した。

ハーマイオニーは迷いなく歩いていく。

 

「場所を暗記してるの?」

「そうね、大まかには」

 

ハーマイオニーの勤勉さには驚かされる。

 

「ほら、ここよ。ドラゴンに関する本がたくさんあるわ。『ドラゴンビジュアル図鑑』とかどうかしら?」

 

ハーマイオニーは分厚い本を取り出した。

 

「ウワーオ」

 

美しいドラゴンの写真がページいっぱいに貼られていた。卵や巣窟の写真もある。ドラゴンは時々口から火を吹いてハリー達を驚かせた。

 

「あ、この卵……」

 

ハリーはノルウェー・リッジバック種のページで手を止めた。

 

「どうしたの?」

 

ハーマイオニーは訝しんだ。

 

「何でもない。ただ、この卵だけ真っ黒だから何でだろうなあって」

「それは3年生から選択授業で魔法生物飼育学を取れば教えてもらえるわ。それかこの辺の本を読むことね」

「なーるほど」

 

ハリーは適当に本を取った。

 

「じゃあこれを借りてみるよ」

「あなたが勉強を始めてくれるなんてとっても嬉しいわ」

 

ハーマイオニーは満足げだった。

せっかく色々アドバイスしてくれたのに、読むふりだけするのは申し訳ない。めんどくさいが、この本はきちんと読むことにしよう。ハリーは決めた。

 

 

 

 

その夜、ハリーはどうしようか悩んでいた。

ハグリッドは違法行為をしようとしている。ハリーはハグリッドが好きだった。

友だちなら、止めなければならない。

 

「ねえロン。ドラゴンを育ててるってバレたらどれぐらいの罰が下されるの?」

「育てようと思ってるの!? やめたほうがいいよ! アズカバン行きになる!」

「アズカバン?」

「魔法使いの牢獄だ。吸魂鬼っていう魔法生物がいて、囚人たちの幸せを吸い取るんだ。一回パパが視察でアズカバンに行ったんだけど、帰ってきた時には死人みたいな顔してた。1日行っただけで!」

 

なんて非人道的な施設なんだ!

魔法界では一度道を誤ったら最後、社会復帰や更生などは全く考えられていない場所に追いやられてしまうのだ!

ハリーは震え上がった。

今すぐにでもハグリッドを止めないと!

 

「どうしたんだいハリー、顔が青ざめてるよ」

 

ハリーは寝室を見回した。ハリーとロン、ねずみのスキャバース以外には誰もいないし、入ってくる気配もない。

 

「……ハグリッドがドラゴンの卵を持ってるんだ」

「なんだって!?」

「卵が孵る前にどうにかしたいんだ。どうすればいいと思う?」

「……うーん……卵を壊すとか?」

「多分、それをしたらハグリッドはとても怒って二度とお茶会に呼んでくれなくなるよ」

「そうかー」

「……そういえば、君のお兄さんはドラゴンの研究してるんだよね?」

「そうだ! チャーリーに預ければいい! すぐ手紙書くよ!」

 

ロンはフクロウ小屋に走っていった。

 

 

 

3日後、ハリーはハグリッドのところに向かっていた。足取りは重かった。

ハグリッドはドラゴンを育てるのが夢だと言っていたから、きっとドラゴンを他の人に預けることに反対するに違いない。

しかしハリーはチャーリーからの手紙を持っていた。ハグリッドに読ませろ、と書かれていたものだ。

 

ドアをノックすると、ハグリッドはすぐに出てきた。ファングは寝ていた。黒い卵は相変わらず暖炉の横に置かれている。

 

「ハグリッド、言いたいことがあるんだ」

 

ロックケーキを噛みちぎり、一通りの世間話を終えたところでハリーは本題に入った。

 

「なんだ?」

 

ハグリッドはユニコーンのたてがみの手入れをしている。

 

「あの黒い卵、ドラゴンの卵だよね?」

「声を潜めとくれ。そうだ、ドラゴンの卵だ。ちょいと前にパブで賭けに勝ってもらったんだ。孵化させるには季節がよくないから、ああやって眠らせとるんだ」

「ハグリッド、ワーロック法って知ってる?」

「んー、まあなんだ、聞いたことはあるな」

「ドラゴンを飼うのは法律で禁止されてるんだ。見つかったら捕まってアズカバン送りにされるよ。それに何より、ドラゴンだってこんな狭い場所より自然の中で悠々と育ちたいと思うな。ドラゴンの成長スピードはすごく早いし、特にこの種類のドラゴンは火を吐き始める時期が早いんだ。ハグリッドがドラゴンを飼いたいっていう気持ちはよく分かるけど、ドラゴンのことを考えると専門家に育ててもらったほうがいいんじゃないかな」

 

ハリーは真剣に説得した。ハグリッドは目をそらした。

 

「でもドラゴンを育てるのは俺のちっちゃい頃からの夢だったんだ。それに俺なら見つからんよう大事に育てられる」

 

ハグリッドは胸を張った。

 

「ハグリッドは魔法生物に詳しいけど、物理的にドラゴンを隠すのは無理だと思うよ」

「でも、やってみんと分からんだろうが?」

「……ハグリッド。実はもうチャーリーにこのドラゴンのことを話したんだ。そしたら引き取ってくれるって」

 

ハリーはチャーリーからの手紙を渡した。

ハグリッドは見るからに不機嫌になった。

 

「ごめんなさいハグリッド。でもハグリッドとドラゴンのためなんだ」

「俺だって自分がどれぐらい出来るかの判断はある。無断でこんなこたぁして欲しくない」

 

ハグリッドは手紙を握りつぶした。巨体なだけに怒ると怖かった。

ハリーは一歩一歩下がりながらも、懸命にハグリッドを説得しようとした。

 

「何も言わずにしちゃったのは本当にごめんなさい。でも言えば、反対されると思ったんだ。ここは学校の敷地の一部だしドラゴンの飼育には向いてないよ。チャーリーに預けて、時々見に行ったり手紙とか写真で成長度合いを確認したりした方がみんなのためになると思ったんだ」

 

ハリーはビビりながらも必死に話した。ハグリッドはハリーを見た。

一瞬の沈黙の後、ハグリッドはワナワナ震えて頭を抱えて座り込んだ。

 

「すまねえハリー。おまえさんが全部正しいっちゅうのはわかっとる。俺とドラゴンのことを深ーく考えてくれてるのも伝わっとる。でも、ドラゴンを俺の手で育てるのは夢だったんだ」

 

ハグリッドはすすり泣いた。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。

ハリーは口を押さえた。

 

「ちょっと待っといてくれ」

 

ハリーはソファの陰に隠れた。

 

ハグリッドはドアを開けた。

白髭の魔法使いが微笑み顔で立っていた。

 

「だ、ダンブルドア先生様……」

「たまたま国際魔法使い連盟会議の打ち上げで最高級のロックケーキを頂いての。ハグリッドの好物だと思ったのじゃが、どうかね?」

「ありがとうございます! どうぞおあがりください」

 

ハグリッドは袖で涙と鼻水を拭い、キッチンの方に行った。

 

「おやハリー。こんにちは」

「こんにちは、ダンブルドア校長先生」

 

ハリーは初めて校長先生と話した。

ダンブルドアのオーラはどんな大御所俳優にも勝るとハリーは感じた。

 

ハグリッドがロックケーキを切って、3枚の皿に乗せた。

食べてみると、ハグリッドのお手製ロックケーキよりずっとずっと美味しかった。

 

「いやはや此処はいい家じゃ。そういえば、ニュートがホグワーツの黒い森を冒険したいと言っておった。近々来るかもしれんから、その時の案内はきみに頼んでもいいかね?」

「へい、もちろんです! そんな光栄な役割……ありがとうございます!」

「ニュートって、ニュート・スキャマンダーのことですか? あの3年生から使う教科書を書いた?」

「その通りじゃ。よく知っとるの」

「パーシーに見せてもらったんです」

「ふむ、彼は優秀な監督生じゃ」

 

ダンブルドアはハグリッドの口にロックケーキを運んだ。ハグリッドは恥ずかしそうに食べた。

毛むくじゃらのおっさんとお爺さんがあーんしている。

これが魔法界か!!

ハリーは衝撃を受けた。

そんなハリーに対しダンブルドアは悪戯っ子のような瞳で微笑みかけ、それから再びハグリッドの方を向いた。

 

「きみには昔から本当によく働いてもらっておる。ホグワーツの安全が保たれているのはきみの豊富な魔法生物への知識と愛が大きく貢献しているじゃろう」

「そんな……それほどじゃあございません」

「ここらで一度休みを取ってみてはどうかな? 例えばルーマニアの雄大な自然などは最高じゃ。特に冬から春にかけては見応えがあるらしい」

 

冬から春というのはドラゴンの卵を孵すのにちょうどいい時期だ。

それにルーマニアは、チャーリーがいる場所である。

ダンブルドアはハグリッドがドラゴンを育てたいと思っていることを悟って、合法にそうできるようにしてあげているのだとハリーは気づいた。

流石は偉大な魔法使い!

 

そして無事、ハグリッドはクリスマス休暇から2ヶ月の休みを取ってルーマニアに行き、チャーリーと共にドラゴンの成長を見守ることになった。

ハグリッドがホグワーツから居なくなるのは悲しいけれど、アズカバンに行ってしまうよりはずっといい。

 

嬉しそうにニコニコするハグリッドを、ハリーは心の底から祝福した。




〈朗報〉グリフィンドール、大量減点回避
    ハグリッド、ドラゴン観察できることに
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