辺り一面に大地が広がる荒野。
植物も少ししか生えておらず木々も枯れているこの場所に1人の青年が仰向け倒れていた。
???「ガァァ、ガァァ・・・」
訂正しよう。
1人の青年がいびきを掻いて寝ていた。
青年の容姿は高校生より背が高く短い金髪。
格好は背中に『怒李威武奈威斗』と刺繍で書かれている紫の特攻服を着ているが前のボタンは閉じておらず黒のインナーが見える。
そしてインナーの下の脇腹には白いサラシを巻いていた。
何故この青年がこんな荒野で呑気に寝ていたのかは誰にも、この青年ですら分からない。
???「んぁ・・・?」
すると、青年が眠りから覚め瞼をゆっくりと開けた。
そして上半身を起こして思いっきり背伸びをした。
???「あぁ~よく寝たなぁ~・・・あ?」
青年が辺りを見渡すと辺りは荒野で自分はここに座っていた。
数秒間青年の思考が停止して、ハッと我に返り咄嗟に立ち上がり改めて辺りを見渡した。
そして次の瞬間、
???「何じゃこりゃあぁぁぁぁぁ!!??」
腹の底から驚きの叫び声を上げた。
ここでこの青年についての説明をしておこう。
青年の名前は雪村京馬《ゆきむらきょうま》。
神奈川県にある不良高校、早乙女高校の2年生で番長を名乗っている。
暴走族『怒李威武奈威斗《ドリームナイト》』というチームを作りよく他校の不良高とよく喧嘩を繰り広げていた。
京馬「待て待て待て!落ち着け俺!一体何が起こってんだ!?確か昨日はチームの全員でゲーセンで遊んで家帰ってメシ食ってすぐに部屋で寝てたよな!?なんでこんなところにいるんだ俺!?そもそもここ何処だよ!?」
京馬は焦りながらも昨日の出来事を思い出しながら何故自分がこんなところにいるのか考えたがまったく分からなかった。
京馬「これは夢か・・・!?それともテレビのドッキリ・・・!?いやテレビのドッキリにしても大掛かりすぎるし、それに夢にしてもリアルすぎる・・・!」
考えれば考える程ますます分からなかった。
そんな時、あることが京馬の脳裏をよぎった。
チームに漫画好きのメンバーが居るのだが、同じジャンルの漫画がかなり好きで京馬もよく読んでいた。
そのジャンルは、
京馬「まさか・・・異世界に来ちまったのか・・・?」
京馬は咄嗟に思い浮かんだワードを口に出した。
異世界にやって来た主人公の漫画を読んだ京馬にはこれしか考えられなかった。
京馬「・・・イヤイヤイヤイヤ!あり得ねぇよ!何言ってんだよ俺!?漫画の読みすぎだろ!?」
しかし冷静になって考えてそんな非現実的な出来事があるはずがないと断言した。
何の証拠もないのにそんな筈はないと何度も自分の心に言い聞かせた。
???「おい、そこのお前」
すると後ろから野太い声が聞こえてきたため京馬が振り向くと黄色いバンダナを頭に巻いた3人組が立っていた。
1人目は無精髭を生やした40代前半の男。
2人目は子供くらい背が低い小柄な男。
3人目は図体がとても大きい肥満体の男。
体型も年齢もバラバラな3人組だが、共通点があった。
まず目付きや雰囲気が悪人のようで腰に剣を下げている。
そして極めつけはまるでテレビの時代劇ドラマで見るような山賊の格好をしている。
3人組を見て京馬は思った。
京馬(・・・これ異世界転生じゃなくて、タイムスリップじゃね?)
京馬はどうしたものかと考えるが取り敢えず情報を聞き出そうと3人組に話しかけた。
京馬「えぇっと・・・?俺になんか用ッスか?」
髭の男「おめぇ中々珍しい格好してんな?俺たちちょっと金に困ってんだよ。なぁチビ、デブ」
小柄な男「アニキ!こいつの持ち物と身ぐるみ剥がしてしまいましょうぜ!」
肥満体の男「そ、それがいいんだな」
アニキと呼ばれた髭の男はチビとデブと呼んだ2人と一緒にニヤニヤと笑いながら京馬に詰めよっていた。
京馬はすぐにこいつらが自分から身ぐるみを剥がそうとしていると理解した。
京馬「やめたほうがいいッスよ。俺金目の物なんて何にも持ってないんで」
アニキ「おいおい、俺たちを馬鹿にすんなよ?」
チビ「そんな嘘がばれねぇとでも思ってんのか!?やっちまえデブ!」
デブ「おう、大人しくするんだな」
京馬は本当のことしか言っていないのだが、3人組はその言葉を信じず京馬から身ぐるみを剥がそうとした。
そしてデブが京馬の特攻服を掴もうと手を伸ばすと、
ガシッ
デブ「んぉ・・・?」
京馬がデブの手首を掴んだ。
デブはすぐに京馬の腕を振り払おうとするがまるで固定させたかのように振り払えずそれどころか、
グググググッ
デブ「ぐぁぁぁぁ!?」
京馬の掴む力に苦痛の声を上げて膝をついてしまう。
アニキ「デ、デブ!?」
チビ「どうした!?」
見ていたアニキとチビも何が起きているか分からなかった。
デブの手首を掴んでいた京馬は、
京馬「テメェの汗まみれのきたねぇ手でこれに触ろうとすんじゃねぇよ・・・!」
声のトーンを低くして目付きを鋭くしてデブを睨んでいた。
京馬の着ている特攻服は怒李威武奈威斗の結成時に作ったもので、言わば京馬の誇りと魂の結晶である。
その特攻服に勝手に触ろうとしたデブに京馬は怒りが込み上げてきた。
京馬は右拳を振りかざし、
京馬「取り敢えずくたばってろ!」
ズドンッ!!
デブ「ぐはぁ!?」
思いっきりデブの顔面にぶちこんだ。
デブは殴られた反動で数メートル後方へ吹き飛んだ。
チビ「テ、テメェ!よくもデブを!」(ジャキン
仲間のデブがやられたことに怒ったチビは腰の剣を抜いて京馬に斬りかかった。
ヒョイッ
しかし、京馬は簡単に剣を避けて、
京馬「おせぇよ」
ズバンッ!!
チビ「グヘッ!?」
チビの顎目掛けて蹴りを繰り出しぶっ飛ばした。
喧嘩慣れしている京馬にとってはデブのような体格の相手とやり合っているためこの程度は大したことはない。
チビが剣を抜いた時は京馬も流石に不味いと思ったが振り下ろしが遅かったためあっさり避けることができた。
アニキ「チビ・・・!?デブ・・・!?」
チビとデブがやられたことによりアニキはガタガタと震えて後悔してしまった。
自分は狙う相手を間違えてしまったと。
京馬「おい髭」
アニキ「は、はいっ!?」
完全に立場が逆転してまったアニキは京馬の呼び掛けにかしこまってしまった。
京馬「俺の質問に答えろ。この近くに街か集落はあるか?」
こいつらから情報を聞き出しても録な情報しか得られなさそうと判断した京馬は近くの街へ行き情報収集をしようとした。
アニキ「そ、それなら!この先を行くと街がありまっせ!孫堅が治めてる街でさぁ!」
京馬「・・・孫、堅?」
アニキの口から出た人物に京馬は唖然となってしまった。
孫堅と言えば三國志に出てくる武人の1人で『江東の虎』と呼ばれた猛者である。
京馬「ということはここは、三國志の時代ってことかよ・・・!?」
自分が今置かれている状況がとんでもないことだと理解した京馬は焦りを顔に出してしまう。
京馬「ん?あっ・・・!?」
京馬が我に返るといつの間にか3人組が居なくなっていた。
京馬「逃げたか・・・まぁいいか、街の場所を聞き出せただけでもよしとするか・・・お?」
取り逃がしたことをどうでもいいかと口から溢すと袋が落ちていることに気がついた。
おそらくさっきの3人組が落として行ったのだろう。
何か入っていないかと京馬が袋の中を確認すると、中にはなんと金貨やら宝石などの財宝がザクザク入っていた。
京馬「アイツら結構持ってんじゃねぇか・・・!」
こんなに財宝を持っていたにも関わらず欲張って自分からも金目の物を奪おうとした3人組に京馬はますます怒りが汲み上げてきた。
京馬「って、怒ってても何も始まんねぇよな・・・うし!じゃあ行くか!」
京馬は財宝が入った袋を担いでアニキが教えてくれた方向へ歩き出した。
これは後に、この時代に大きな影響をもたらさんとする男の始まりの話である。