孫堅から追われ街から出られなくなった京馬。
だがなんとしてでも元の世界に帰らなければと思いある覚悟を決めた。
日も落ちて空が暗くなった頃、京馬はあるところへ向かっていた。
しばらく歩くと、くぐろうと思っていた門が見えて程普の姿もあった。
京馬「程普さん」
程普「!・・・あ、雪村くん。さっきぶりだね」
京馬が声をかけると程普が振り向いて笑顔で返答した。
京馬「こんな時間まで仕事とはごくろうなことだな」
程普「まぁ大殿の命だからねぇ・・・それで?一体私に何の用?」
ただ会話をしにきただけではないと見抜いている程普は笑いながらも警戒を解かずに京馬を見ていた。
もしかしたら強行突破で街を抜け出す可能性もあるからだ。
そして京馬は一呼吸おいてこう言った。
京馬「あんたに頼みがある。孫堅さんに、伝言を伝えてほしい」
程普「伝言・・・?」
京馬「あぁ、内容は・・・」
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翌日、
京馬「・・・・・」
孫呉の屋敷の大きな門の前に京馬は立っていた。
腕を組みまだかまだかと右足をトントントントンと踏みながらあることを待っていた。
すると、
ギィィィィィ~・・・
門がゆっくりと開き、緑色の髪にメガネを掛けたどこかほのぼのしている印象がある女性が出迎えてくれた。
陸遜「お初お目にかかります。陸伯言と申します。雪村京馬さんですね?」
京馬「あぁ」
陸遜の言葉に京馬は軽く返した。
陸遜「お話は程普さんからお聞きしてますよ。ささっ、どうぞこちらへ~」
そう言って陸遜は歩いて行き京馬はその後ろをついて行った。
歩きながら京馬は呼吸を整えて自身の緊張を無理やり解こうとしていた。
陸遜「みなさ~ん!お連れして来ましたよ~!」
そうこうしていると学校の校庭くらい広い場所についた。
そこには木製の的が立てられたり、人型の木が並べられたり、ボクシングのリングくらいの広さに石畳が敷かれた闘技場のようなところがあった。
おそらくここは訓練場なのだろうと京馬は思った。
そしてそこには程普を始め数人の女性たちがいた。
花びらの髪止めをして孫堅の面影を感じさせる人、長い黒髪に眼鏡を掛けたいかにも真面目そうな人、薄紫の髪をポニーテールに纏め孫堅と同じように褐色の肌でおそらく同じ年齢の人、薄い緑色の髪に黒い羽織を着ている子供と同じくらい小柄な人と、まさに十人十色の人たちが京馬をジロジロと見ていた。
見られている京馬は少し不快な気分になるが堪えて陸遜と共に程普たちの元まで歩いた。
???「ふ~ん?あなたが母様の言ってた子か・・・顔は悪くないわねぇ」
最初に孫堅似の女性がまじまじと京馬の顔を見てクスクスと笑っていた。
京馬「・・・あんた、孫堅さんの娘さん?」
孫策「えぇ。孫伯符よ。こっちが軍師の周喩」
周喩「周公瑾だ。お前のことは、文台様からある程度の話は聞いている」
京馬「どーも」
孫堅の娘、孫策は母親とは正反対の性格で明るく京馬に接し、黒髪の女性、周喩は京馬に対して警戒心を高めて少し目付きが鋭くなっていた。
確かに孫堅が気に入っているとはいえ、得体の知れない男にそう簡単に隙を見せるわけにはいかないだろう。
孫策「それでこっちの2人が黄蓋と張昭よ」
黄蓋「黄公覆じゃ。大殿を二度も振り切るとはお主、中々やるのぉ」
張昭「・・・張子布じゃ。言うておくが、こう見えてもお主より年上じゃからな」
ポニーテールの女性、黄蓋は孫堅から逃げ切っている京馬をはっはっはっと笑いながら絶賛しており、小柄な女性、張昭は周喩と同じように目を鋭くしながら京馬を見ていた。
京馬は全員の名前を聞いて内心ではかなり動揺してしまうが表に出さないようにポーカーフェイスを維持していた。
京馬「・・・程普さん」
程普「何?」
京馬「俺は孫堅さんに伝言を伝えるように言ったよな?」
程普「ちゃんと伝えたけど?」
京馬「じゃあ何で孫呉の武将と軍師の方々まで来てんだよ?」
孫堅だけ来てくれれば京馬はよかったのだが、孫策や周喩を始めとする武将と軍師たちまで来ているため面倒なことになりそうだと思った。
程普「軍議の時に話しちゃったからねぇ。それで皆も同行するって話になったの」
京馬「余計なことを・・・」
軽く笑っている程普に京馬は頭を抱えてしまう。
そんな時、黙っていた張昭が口を開いた。
張昭「それにしてもじゃ、文台様にあのような申し出をするとは何様のつもりじゃ。文台様を含めここにおる儂ら孫呉は多忙なのじゃぞ」
張昭はジト目で京馬を睨みつけて正論を言った。
確かに孫呉は今、袁術にコキ使われている状況のため多忙である。
しかし京馬は、
京馬「じゃあそんな多忙にもかかわらず俺を追いかけ回していたのはどこの誰っすか?」
張昭「ぬぅっ・・・!?そ、それは・・・」
正論に正論をぶつけて張昭を論破した。
自分の主が政務をほったらかして人を追いかけ回しているのだから張昭はぐうの音も出なかった。
孫策「それにしてもつれないわねぇ~。孫呉に仕えればこんな美人と一緒にいられるのになぁ~」
そう言いながら孫策は自分の服を掴み見えるか見えないかくらいのところで胸元をチラチラと京馬に見せつけた。
江東の麒麟児と呼ばれた武将がこのような行動を取ることに三國志好きの京馬はがっかりしてしまう。
京馬「・・・ところで孫堅さんは?」
孫策「ちょっとぉ!無視しないでよぉ!」
京馬は孫策をスルーして孫堅はどこかと辺りをキョロキョロと見渡した。
周喩「孫堅様ならもう少しでこちらに来られる。しばらく待っていろ」
陸遜「でもいいんですかぁ?あんなことを約束してしまってぇ?」
程普「伝言を聞いた時は流石に驚いたわ」
黄蓋「よほどの自身があるのか、それとも身の程知らずの阿呆か、どちらなのかのう?」
張昭「身の程知らずの阿呆じゃろ」
みんながワイワイ話していると、
孫堅「待たせたな!!」
訓練場へ堂々とした振舞いで孫堅が歩いて来た。
孫策たちは畏まり京馬はやっと来たかと頭を掻いた。
孫堅は京馬の元まで歩いて好戦的な笑みを浮かべた。
孫堅「程普から聞いたぞ。オレとお前で『たいまん』ってのをすりゃあいいんだろ?」
京馬「あぁ」
タイマン。
不良同士による1対1の喧嘩。
チーム同士による勢力争いでも度々行われていた。
京馬も何度もタイマンをしてきて怒李威武奈威斗の勢力を大きくしていった経験がある。
武器を使わずの殴る蹴るのタイマンなら孫堅に勝てると思い京馬はこれに賭けた。
京馬「俺が勝ったら、もう俺のこと諦めてくれるんすよね?」
孫堅「あぁ、オレは約束は守るぞ。だからお前も守れよ?」
京馬「分かってます。俺が負けたら孫堅さんに仕えますよ」
孫堅と京馬は共に石畳の闘技場へ行き互いに向かいあった。
孫堅はようやく京馬が手に入ると思いニヤリと笑ってしまい、京馬は指をポキポキと鳴らして引き締まった表情になっていた。
両者が睨み合う中、
京馬「んじゃあまぁ・・・先手必勝だ!!」
先に京馬が仕掛けた。
一気に間合いを詰めて孫堅の顔面目掛けて右拳を撃ち込もうとした。
バシッ!!
しかし、孫堅は余裕の表情で京馬の右拳を受け止めた。
孫堅「そんなもんか?」
京馬の拳を押し退けた孫堅は京馬と同じように右拳を大きく振りかざした。
そしてそのまま思いっきり京馬の顔目掛けて撃ち込むが、
バシッ!!
見え見えの拳を簡単に食らうまいと京馬は左手で受け止めた。
だが、
孫堅「うぉりゃぁ!!」
ズドォン!!
京馬「ぐはっ!?」
なんと防がれようがお構い無しに孫堅はそのまま力任せに拳をねじ込み京馬を殴った。
殴られた反動で京馬は二歩三歩と後退りしてしまうもなんとか体制を立て直した。
顔をさすると手に血がべっとりついておりおそらく鼻血が出ているのだろうと思った。
京馬(なんて怪力だよ!?ガードの上から力任せに殴るなんざボクサーくらいしか見たことねぇぞ!?それに・・・)
京馬は孫堅の拳を受け止めた左手を見た。
左手には殴られた感触がまだ残っておりジンジンと痛みが伝わっていくのが分かった。
あれをまともに食らえばと思うとゾッとしてしまう。
孫堅「何ぼけっとしてんだよっ!」
京馬「!!」
気を取られているのを逃さず孫堅は間合いを詰めて京馬に殴る蹴ると繰り出していった。
かろうじて攻撃を防げている京馬だが防いでいる箇所から痛みが走りやがて全身が痛みに覆われていった。
今まで相手にしてきた不良グループや番長たちとは比べものにならない力に京馬は少しだけ心が折れかけてしまう。
観戦していた孫策たちは、
孫策「母様ったら容赦ないわねぇ~」
張昭「あの方はそのような言葉は知りませぬ・・・」
周喩「はぁ・・・穏、医者の手配をしておけ」
陸遜「もう既にやってますよ」
程普「でも雪村くん凄いわねぇ。炎蓮様を相手にまだ立っているなんて・・・」
黄蓋「一応はやるようじゃのぅ」
孫堅の敗北など誰も信じてない様子だった。
それどころか京馬がまだ倒れていないことに少し感心していた。
京馬「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
そして京馬の顔は口と鼻から血が流れて腕もアザが浮かびあがっていた。
孫堅は好機と見るや、
孫堅「こいつでしめぇだ!!」
京馬の顔面目掛けて右フックを繰り出した。
孫策たちもこれで終わったなと思い京馬を介抱しようと動き出した。
だが、
京馬「・・・!!」(バッ
なんと京馬は体制を低くして孫堅の右フックを顔面ギリギリで避けて、
京馬「どらぁ!!」
ガッ!!
孫堅「ぐっ!?」
孫堅の顎目掛けて右アッパーを食らわした。
その拍子に孫堅の首は跳ね上がり血飛沫が宙に舞い散った。
そのまま京馬はすかさず孫堅から距離を取った。
孫策「母様!?」
孫策たちも孫堅がモロに殴られた光景を見て自分たちの目を疑ってしまった。
孫堅は首を正面に戻し口に溜まっている血をペッと吐き捨てた。
吐き捨てた場所は血で赤く染まっていた。
孫堅はしばらく黙り京馬を見ると、
孫堅「・・・ふはははっ!!オレに拳をぶち込ませるたぁやるじゃねぇか!!どうやらテメェに手加減する必要はもうなさそうだな!!」
孫堅は再び好戦的な笑みを浮かべるが京馬は戦慄してしまった。
今まで見てきた笑みとは違い、頬も今まで以上に上がり目も完全に相手を確実に仕留める血に飢えた獣の目付きだった。
しかし京馬は深呼吸をして落ち着くと、
京馬「ぐだぐた喋ってねぇで、さっさと終わらせようぜ・・・」(バサッ
目付きを鋭くして特攻コートを脱ぎ捨てた。
インナーを着ていたがその下から筋肉が露になっていた。
孫堅「生意気なガキだな・・・後で侘びてもおせぇからなぁ!!」
京馬「テメェこそ後で泣くんじゃねぇぞ!!」
孫堅と京馬は互いに飛び出して決着をつけようとした。
ドカッ!! バキッ!! ドスッ!! ガンッ!!
孫堅は今まで以上の力で容赦なく京馬を痛め突けていき、京馬も孫堅の攻撃を避けながらボディブローなどで孫堅を圧していった。
ノーガードのインファイトで両者は相手を追い詰めていった。
孫策「まさか母様がまともに殴られるなんて・・・!?」
周喩「一体何者だ・・・?」
穏「なんで炎蓮様の攻撃をかわせるようになったのですか~!?」
孫策たちは孫堅を殴り攻撃をかわしている京馬に驚いてしまった。
最初は一方的にやられていたにも関わらず急に人が変わったかのように攻撃をかわしてきたのだから何がなんだか分からなかった。
しかし、長い間孫堅に仕え尚且老将と言われている程普と黄蓋、張昭には理解できた。
黄蓋「予測じゃ」
孫策「えっ?」
孫策は思わず黄蓋の方を見てしまう。
黄蓋「おそらくあの小僧は炎蓮様の攻撃をわざと受けて攻撃の間合いやクセを見抜いたのじゃろう。其れ故に攻撃を予測できたのじゃ」
程普「でもまさか、こんな短時間で間合いやクセを見抜くなんてね・・・」
張昭「よほど喧嘩慣れをしてなければできん芸当じゃ」
黄蓋の言葉を繋げて程普と張昭も分かりやすく解説をした。
そして、
京馬・孫堅『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・』
殴り合いの末、京馬と孫堅は互いにボロボロで血塗れになっていた。
2人ともダメージと疲労の影響で肩で息をしていた。
京馬「俺には・・・!帰らなきゃならねぇ場所があるんだ・・・!」
孫堅「あぁ・・・?」
京馬は痛いのを堪えて口を動かした。
京馬の脳裏には、怒李威武奈威斗のメンバーが浮かんでいた。
京馬「みんなが・・・!俺の帰りを、待ってんだよ・・・!だから・・・!」
京馬はキッと孫堅を睨み、
京馬「だから!!俺の邪魔をすんじゃねぇよ孫堅!!そこをどけぇぇぇぇぇぇ!!!!」
孫堅へ駆け出して右拳を振りかざした。
孫堅「うぉぉりやぁぁぁ!!!!」
孫堅も向かって来る京馬に右拳を振りかざした。
互いの拳が相手へと迫り、そして、
ズドゴォォォォォォン!!!!
互いの拳が炸裂した。