孫呉の人間になった京馬は孫堅こと炎蓮たちと交流を深めるのだった。
粋玲「やぁぁっ!」
キィィィンッ!!
京馬「うおっ!?」
京馬が孫呉に来てさらに1週間が経過した。
京馬は今、訓練所にて粋玲と手合わせをしていた。
互いに剣を持ち距離を詰めたり離したりとジリジリと向かい合っていた。
何故このようなことになっているのかというと、粋玲から京馬に持ち掛けてきたからである。
粋玲曰く、特訓しといた方がいいということらしい。
まぁなんとかなるだろうと思っていたが、
粋玲「ほらほら京馬くん、休んでる暇なんかないわよ」
京馬「くっそ~!」
京馬は防戦一方に陥っていた。
粋玲は慣れた感覚で剣を握り余裕の表情をしていた。
孫堅とほぼ互角で殴りあったにも関わらず、なぜ粋玲と戦って押されているのかというと、
粋玲「思った通りね。京馬くん、武器の扱いに慣れてないでしょ?」
京馬「うっ・・・!」
粋玲から欠点を指摘されて京馬は図星を疲れた表情になってしまう。
京馬に限ったことではなく不良の世界では拳だけで戦闘を繰り広げていたため武器を持つことなどあまりなかった。
しかし、いざ武器を持つとなると木刀や竹刀とは比べ物にならない程重く扱うことは困難になる。
更に持っているのは本物の剣で人を簡単に殺してしまうため剣を握っている京馬の掌は汗で濡れていた。
粋玲「どうしたの京馬くん?炎蓮様と闘った時の勢いはどこに行ったの?もしかしてあの時のはまぐれ?」
一方粋玲は涼しい顔で京馬を挑発した。
孫呉の将軍というだけのこともあり戦い慣れている粋玲にとっては武器に関して素人同然の京馬の相手など赤子をあやす程の至極簡単なことなのだろう。
京馬「・・・武器扱えねぇからって、俺を嘗めないでくれませんかね?」
粋玲の軽い挑発に京馬は乗ってしまい剣を握る力を強めた。
しかし京馬には剣術のスキルがまったくないため粋玲とでは天と地の差がある。
粋玲は手加減しているがこのままでは負けてしまう。
京馬(ッ!そうだ!)
その時、京馬の脳に電撃が走った。
一か八かの勝負だがこれなら粋玲に勝てるかもしれないと。
京馬は剣を大きく振り上げて、
京馬「食らえっ!!」(ブンッ
なんと粋玲に向かって剣をぶん投げたのだ。
剣は粋玲目掛けて風車のように回転して飛んで行った。
粋玲「はぁっ!」
キィン!!
しかし粋玲は冷静に対処して向かってくる剣を弾いた。
その隙を京馬は逃さなかった。
ダッ!!
剣が弾かれた直後、京馬は駆け出して一気に粋玲との間合いを詰めた。
剣で粋玲とやり合っても勝てる訳がないため一瞬の隙をついて殴ろうと考えた。
京馬「貰ったぁ!」
京馬は右拳を握りしめ粋玲の腹にねじ込もうとした。
だが、
粋玲「そう来ると思った」
ザァッ!!
京馬「なっ!?」
粋玲は京馬の足を払い仰向けに転ばせた。
そして剣を突き立て京馬に目掛けて振り下ろした。
グサッ!!
しかし剣の先は京馬の顔の右へと向かい地面に突き刺さった。
京馬は殺されるかもしれないという恐怖よりも、一瞬であらゆることが起きて思考が追い付かず対処できなかったことを悔やむ気持ちが大きかった。
京馬「・・・俺が殴りかかってくるって予想してたんすか?」
粋玲「まぁね。京馬くんなら絶対こうしてくるだろうなって思ったから」
そう言って粋玲は地面から剣を引き抜いて京馬に手を伸ばした。
京馬は粋玲の手を取りそのまま引き上げられた。
服の埃をパンパンと払い落ちている剣を拾った。
京馬「やっぱ剣なんて俺には要らないっすよ。扱い慣れてないんで」
粋玲「だからこそ訓練をしとかないと。それに剣を持つ相手にも馴れないといけないしね」
京馬は片手で剣を軽くブンブンと振り自分には必要ないと言うものの、粋玲はそれでも訓練を続けさせようとした。
京馬の実力は孫堅とのタイマンで確認済のため、次の戦では出陣させる予定になっている。
戦では剣はもちろん槍や弓を使う兵がほとんどのため京馬のように素手で戦う相手など滅多にいない。
だからこそ、京馬には武器を使う相手との戦いに馴れさせなければならない。
粋玲「じゃあ続きをやるわよ。言っとくけど、もう一回剣を離したりしたら・・・分かるわよね?」
京馬「・・・はい」
笑顔なのだが目がまったく笑っておらず、次剣を投げ捨てようものなら命の保証はないと悟った京馬は身を引き締めた。
訓練の続きが始まろうとしたその時だった。
炎蓮「そこまでだ!」
訓練場に一喝学校響き京馬と粋玲が声の方に振り向くとそこには炎蓮と雷火がいた。
粋玲「炎蓮様・・・?」
京馬「雷火さんまで、どうしたんすか・・・?」
炎蓮と雷火の登場に京馬と粋玲は何事だろうと面食らってしまう。
雷火「これから軍議じゃ。2人ともすぐに来い」
炎蓮の代わりに雷火が事情を言って軍議があることを教えた。
粋玲「ッ!はっ!」
京馬「りょ、了解っす!」
京馬は何かあったのかと思いながらも返事をしたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらくして、京馬は謁見の間と呼ばれる所へと入り椅子に座っていた。
軍議ということもあり、雪蓮や冥琳を始めとした宿将、重臣たちが勢揃いだった。
炎蓮の姿はまだない。
京馬(・・・俺完全に浮いてるな)
炎蓮とタイマンした噂が広まっているせいか、重臣たちは京馬を見ながらヒソヒソと何かを話している。
明らかに自分は場違いだと思った。
ポン・・・
冥琳「気にするな、肩の力を抜け」
すると、隣に座っている冥琳が京馬の肩に手を置いて緊張を解こうとした。
京馬「んなこと言われても軍議なんざ初めてなんだぜ?何すりゃいいかわかんねぇよ」
冥琳「気になったことは遠慮なく発言するだけでいい。簡単だろ?」
京馬「そんな気楽に言われてもなぁ~・・・」
そう言いながらも京馬の肩の力が抜けて緊張も解けていった。
そうしていると、
ギィィィィ
炎蓮「よし、全員揃ってるな」
炎蓮が入って来て椅子に座った。
炎蓮が来たことによりみんな姿勢がよくなり空気がピリッとなった。
炎蓮「これより軍議を始める。既に知っている者もあるかもしれんが、黄巾党の一軍が呉郡北部に侵入し、複数の村で略奪を行った」
雪蓮「ッ!!いよいよ呉にまで来たのね!」
黄巾党が孫呉に進行していることを知った雪蓮たちは揃って顔が険しくなった。
各地で黄巾党が暴れているのは知っていたがとうとう孫呉にまでもその手が伸びてしまった。
聞いていた京馬も自分がいかに危険な世界にいるのかと改めて再認識した。
祭「して、賊の数は?」
冥琳「私がご説明致します。進行している黄巾党は初めは千でしたが、今や五千にまで膨れ上がってるとのことです」
祭「五千か・・・!」
粋玲「結構な数ね・・・」
黄巾党の一軍の人数を聞いて祭と粋玲は驚いてしまう。
雪蓮「何で千が五千にまで膨れてるのよ?」
穏「黄巾党は襲った村の農民たちを吸収してどんどん兵力を増やすんですよぉ」
京馬「略奪に飽きたらず農民に無理やり戦わせてんのかよ・・・!?」
黄巾党の兵力の増やし方を聞いて京馬は少し呆れてしまう。
軍議で初めて口を開いた京馬の発言は確かに的を得ているが冥琳は直ぐに訂正した。
冥琳「だが今回の略奪ではほとんどの民は加わることなく南へ逃れたそうだ」
雷火「当然じゃ。孫呉の民はかような乱に加わる程愚かではないからのう」
雷火の発言を聞いて孫呉の民は忠誠心が高いのかと感心してしまう。
炎蓮の忠誠心がが民にまで浸透しているのだろうと。
雪蓮「じゃあ何で増えてるのよ?」
冥琳「襲撃の成功後、戦果の拡大を狙い徐州廣陵軍から次々に援軍が送り込まれてるそうだ」
祭「やはり背後には乱を指揮する者がおるか、何者か分からんのか?」
冥琳「申し訳ありません、指導者の正体は未だ不明です。ただ、時を同じくして豫州や荊州でも大規模な攻撃が始まっているそうです」
軍議を聞きながら京馬はあることを考えていた。
京馬(ま、指導者の正体は張角だろ・・・それよりも、こうやって軍議を見てると、完全に俺場違いだな)
今ここにいる人たちは三國志の武将たち。
国のために侵略する輩、これから出会うであろう曹操と劉備たちと戦わなければならない。
果たして自分はこの人たちの役に立てるのだろうかと。
炎蓮「まぁ敵の狙いがなんであれ、オレの庭での狼藉を見過ごす訳にはいかねぇな」
そんなことを考えていると、いつの間にか軍議が進んでおり炎蓮が笑みを浮かべていた。
その笑みは京馬が初めて会った時に見せた好戦的な笑みだった。
雪蓮「えぇ!戦ね母様!」
雪蓮も雪蓮で炎蓮と同じ笑みを浮かべていた。
血気盛んな所は親子だなと思わず笑ってしまう。
炎蓮「応!イナゴ共を踏み潰してくれる!冥琳、ただちに出陣の準備を整えよ!」
冥琳「承知しました!」
炎蓮「雷火と穏は留守居役だ!」
雷火「ハッ!」
穏「お任せ下さい~」
炎蓮の的確な指示に冥琳たちははっきりと返事をした。
炎蓮「あと京馬、お前も初陣だ」
京馬「え!?お、俺もっすか・・・!?」
炎蓮に名前を呼ばれて京馬は自分のことなのかと自身を指を差した。
炎蓮「次の戦で出陣させるって言ってただろ?」
京馬「いや、確かに言ってたましたけど・・・」
いざ初陣と言われると緊張が込み上げてしまう。
これから自分が行くところは生きるか死ぬかの戦場のため喧嘩とは訳が違う。
炎蓮「案ずるな、今回の戦でお前は何もしなくてもいい。オレたちの戦ぶりをよく見ておくだけでいい」
言い換えれば『まずは戦場の空気に馴れておけ』ということ。
右も左も分からない京馬をいきなり前線で戦わせる程炎蓮は無茶苦茶ではない。
ポン・・・
雪蓮「大丈夫よ」
京馬「雪蓮・・・」
戸惑っている京馬の肩を雪蓮が優しく置いた。
雪蓮「母様も言ってたけど、京馬は無理に戦わなくていい。何かあったら私が守ってあげるから」
先程までの好戦的な笑みなど消えて優しい笑みを浮かべて子供に話しかけるように京馬を安心させた。
京馬「あ、あぁ・・・」
雪蓮「だけどね京馬、戦っていうのは何が起こるか分からない。最悪、私や母様が死ぬかもしれない。その時は、覚悟していてね」
しかし現実はそう甘くないことも伝えて京馬に身を引き締めさせようとした。
聞いていた京馬も正にその通りだと思い、
京馬「ッ!!」(パンッ
両手で自らの頬を叩いて気合いを入れ直した。
これから自分が行くところは人が大勢死ぬ所なのだから何が起きてもおかしくないと。
京馬「あぁ分かった!」
ヒリヒリしている頬の痛みを感じながら炎蓮と雪蓮の期待に答えようと決めた。