真・恋姫†無双 ~番長伝~   作:アニアス

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前回のあらすじ

黄巾党と戦を始めた孫呉。
京馬は半ば強引に炎蓮に敵の元へ連れて行かれてしまい対峙するも、自分の人間離れした力に唖然となってしまう。
更に追い討ちを掛けるように人が死ぬ光景を目の当たりにしてしまうのであった。


番長、腹を決めるとのこと

炎蓮と京馬が黄巾党の拠点へ乗り込んでいる頃、城壁の外では雪蓮たちが軍を率いて突撃していた。

 

「はぁ!」

 

城壁から放たれる矢の雨を雪蓮は馬を走らせながら剣で防いでいる。

それに続き他の兵たちも矢を避けながら進行していく。

 

「ふっ!」

 

祭も同じように馬を走らせ城壁にいる敵兵たちを次々に矢で貫いていく。

流石は弓の名手と呼ばれることもあり、的確に頭を狙っている。

 

矢の雨を掻い潜りながらようやく城門前にたどり着き兵たちは門を破るべく衝車の準備に取り掛かった。

城壁を見上げている雪蓮は傍にいる冥淋に愚痴を溢してしまう。

 

「もう!母様ったら1人で突っ走っちゃって!京馬はこれが初陣なのに!」

「過ぎたことは致し方あるまい。それにしても京馬を投げて城壁へ上らせるとは…相変わらず無茶苦茶なお方だ…」

 

戦に慣れていない京馬を連れて単騎で乗り込んでしまった炎蓮の行動は正直言って褒められたものではない。

そもそも何もしなくてもいいと言った本人がそれを無視しているため呆れて何も言えないのである。

 

「程普様!衝車の準備が整いました!」

「よし!一気に抉じ開けるわよ!突撃ィ!」

 

そうこうしていると衝車の準備が終わり粋玲の掛け声と共に兵たちは衝車を押して城門へぶつけた。

激しい衝撃音が鳴り響くも流石に一発では破れなかった。

続けざまに二発三発と衝車をぶつけるも強固な造りなのか一向に破れる様子がなかった。

 

「中々破れないわね…!」

「炎蓮様が造られた城門ですから…」

「そうなのよね~…」

 

敵の侵入を容易く許さない造りになっている城門の頑丈さに粋玲はため息をついてしまうも諦めずに打ち破ろうとする。

 

「もう一度よ!」

「は、はっ………!」

 

何度やっても破れない城門に兵たちは疲弊してしまうも粋玲の号令で気を取り直し再度衝車をぶつけようとした時だった。

 

突如城門が内側から開いたのだった。

 

「えっ?」

 

突然のことに粋玲が一瞬固まってしまうと、

 

「なんだお前ら、今ごろ来たのか?あまりにも遅かったから迎えに来てやったぞ」

 

城門から何もなかったかのように炎蓮が出てきたのであった。

城壁の上にいた敵兵たちを蹴散らした後、内側から門を開けたようである。

その炎蓮の行動に冥淋たちはおろか、味方全員が呆気に取られてしまっている。

しかし雪蓮は怒った様子で炎蓮の元へ詰め寄った。

 

「母様!勝手なことしないでよ!」

「たわけが!俺たちの城を好き勝手に食い尽くすイナゴ共を蹴散らしてやったまでだ!お前たちが遅すぎるのだ!」

「だからって………あれ?京馬は?」

 

悪びれる様子もない炎蓮に雪蓮が呆れていると、一緒に突撃した筈の京馬がいないことに気がつく。

 

「アイツなら…」

 

京馬がどこにいるのか炎蓮が言おうとした時だった。

 

『うわぁぁぁぁ!?』

 

『!?』

 

城壁へ上がる階段から黄巾党の敵兵たちが転がり落ちてきた。

敵兵たちは何故かボロボロで起き上がれる様子ではなかった。

 

「な、何が…?」

 

「おぉ雪蓮、もう来たのか」

 

雪蓮が唖然となっていると階段の上から聞き覚えのある声が聞こえ顔を上げると京馬が下りて来ていた。

どうやら城壁に残っていた敵兵たちと交戦していたようである。

 

「京馬!貴方こそ大丈夫だったの!?怪我はない!?」

「いや子供じゃあるまいし…」

 

階段を下り終えた京馬に雪蓮が駆け寄り怪我がないか心配するも、京馬は何事もなく返した。

 

「…その様子だと、心配はねぇみたいだな」

 

死体を見て茫然となっていた筈なのにいつも通りの様子の京馬に炎蓮も声を掛ける。

 

「まぁ、アレっすよ…兎に角もう、大丈夫なんで…」

 

京馬は死体を見続け無理に慣れようとしたが途中でふっ切れなんとか立ち直ることができたのであった。

 

「そうか………冥淋!祭!粋玲!何をボサッとしてやがる!門は開いたぞ!京馬は雪蓮と一緒に突撃しろ!」

「は、はい!」

「承知!」

「よし!全軍!突撃せよ!」

 

炎蓮の掛け声と共に呆気に取られていた粋玲たちは兵たちに号令を出して場内へ突撃していった。

それを見送っている京馬の後ろから雪蓮が優しく肩に手を置いた。

 

「雪蓮…?」

「無理しなくていいのよ。手、震えてるわよ」

 

雪蓮に言われて自分の手を見てみると小刻みに震えていた。

いくらふっ切れたとはいえ完全に立ち直ってはいないことを見抜かれてしまい京馬は落ち着かせるべく深く深呼吸をする。

 

「ふぅ~………悪いな、心配かけて」

「大丈夫よ。言ったでしょ、何かあったら私が守るって」

 

戦に慣れているのかこんな状況でも励ましてくれている雪蓮に京馬は軽く笑みを浮かべてしまう。

それと同時に手の震えも止まり落ち着きを取り戻したのだった。

 

「うしっ!んじゃあ行くか!」

「えぇ!」

 

そして炎蓮たちの突撃の遅れを取ってしまった2人はその後を追うべく駆け出すのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

炎蓮たちに追いつこうと京馬と雪蓮が走っていると、道中には無数の死体が転がり落ちていた。

ある者は首を斬られ、ある者は矢が頭に突き刺さり、またある者は手足を斬られたりと、人間からただの肉塊となり血の水溜もできており、まさに地獄のような光景が広がっていた。

京馬もこれらを見て顔を歪ませてしまうも足を止めずに辺りを見渡す。

 

「もしかして、これって炎蓮さんが全部やったのか…」

「母様ならあり得るわ。けど祭たちも負けずに奮闘したみたいだけど」

 

死体の状況から炎蓮を先頭に黄巾党たちを一掃したと雪蓮が推測した時だった。

 

「こっちにいたぞ!」

「たった2人だ!取り囲んでしまえ!」

 

正面から黄巾党の兵たちが武器を持って京馬と雪蓮へ向かって来ていた。

圧倒的に敵の数が多く多勢に無勢とは正にこのこと。

しかし2人は不利な状況にも拘わらず走ることをやめず、それどこか更に加速して黄巾党との距離を縮めていく。

 

「邪魔よ!」

「そこどけぇ!」

 

雪蓮は剣を抜刀し敵の胴を斬り裂き、京馬は厚い靴底を敵の顔面にめり込ませた。

そしてそのまま2人は黄巾党と交戦を始める。

 

「はぁ!」

「ぎゃっ…!」

 

雪蓮は次々に襲い掛かって来る敵を怯むことなく斬り裂いていく。

剣を巧みに扱う雪蓮の前では敵は小さな悲鳴を上げて絶命するしかなかった。

 

「うぉらぁ!」

「ぐほぉっ!?」

 

対して京馬は豪快に拳を振るい敵を殴り飛ばしていっている。

城壁で交戦した影響で身体が温まり更に動きに磨きがかかっている。

 

すると京馬の視界に雪蓮の後ろから斬り掛かろうとしている敵が映り込んだ。

 

「雪蓮しゃがめ!」

「!」

 

咄嗟に叫んだ京馬の声が雪蓮の耳に入り、雪蓮は反射的に身を屈めた。

それと同時に動き出してした京馬は雪蓮の後ろにいた敵目掛けて拳を叩き込んだ。

 

「んぐぅぁぁぁ!?」

 

そして敵はそのまま空き家の壁を壊しながら勢いよく殴り飛ばされていった。

 

「っ!?また…!?」

 

それを見た京馬は目を見開いてしまう。

 

確かに勢いよく殴ったが壁を壊す力など持ち合わせている訳がない。

にも拘らず、敵ごと壁を壊してしまった。

先程城壁で巨漢のデブを宙高く殴り飛ばした時のように腕に掛かる負担は軽かった。

人間離れしている自分の力に唖然となっていると後ろから雪蓮の声が聞こえた。

 

「京馬!ボサッとしないで!」

「!」

 

ハッと我に返った京馬が振り向くと、既に残りの敵兵たちを斬り捨てた雪蓮がいた。

辺りは死体が転がっており誰もが目を背けたくなる光景が広がっていたが京馬は気にすることなく雪蓮に謝った。

 

「わりぃ、少し油断してた…」

「もう!戦場じゃ一瞬の油断が命取りなのよ!」

「…あぁ」

「それにしても驚いたわ…!京馬がこんな力を隠してたなんて…!」

 

そう言いながら雪蓮は壊れた壁でぐったりと倒れている敵を見ながら驚嘆する。

炎蓮とのタイマンから京馬の実力は理解していたつもりだったが、まだ力を隠していると雪蓮は解釈をしてしまう。

 

「いや、俺にも何が何だか…」

「って感心してる場合じゃないわね!早く母様たちと合流しないと!行くわよ京馬!」

 

何かおかしいと言おうとするも雪蓮は一刻も早く炎蓮と合流するべく駆け出していったのだった。

自分の人間離れしている力も気になるが雪蓮を見失う訳にもいかないためその後を追うべく駆け出すのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

しばらく走っていると孫呉の軍が見えようやく追いつくことができた。

するとそれに気がついた冥淋が2人を見て安堵の息をついてしまう。

 

「遅かったじゃないか。やはりそっちにも黄巾党が?」

「えぇ、なんとか切り抜けられたわ。そっちは?」

「…見ての通りだ」

 

冥淋が争いの声がする中央広場へ顔を向けたため京馬と雪蓮も吊られて見ると、

 

「うらぁぁぁ!!」

 

炎蓮が次々に黄巾党を血祭りに上げている光景が広がっていた。

たった1人で大勢の相手をしているにも拘らずその勢いは止まらず死体の数が増えていく。

前に祭から炎蓮は戦の化身と聞いたことがありピンと来ていなかったが、今の炎蓮を見て京馬は納得してしまう。

 

「……………」

「京馬?どうしたの?」

「いや…今思えば、俺ってとんでもない人と殴り合ったなぁって…」

「あぁ~…」

 

今の炎蓮を見てあの時の自分は怖いもの知らずだったなと口にしてしまう。

 

そして炎蓮は粗方敵を斬り終え残りは数える程となっていた。

 

「ふーっ、ふーっ、ふーっ…」

 

まだ斬り足りないのか肩で息をしている炎蓮は早く来いと言わんばかりに残りの敵を睨み付けている。

明らかに戦いを楽しんでいる様子で最早誰にも止めることなどできそうにない。

狂気とは正にこのことだろうと思った時だった。

 

「ま、待ってくれ!」

「降伏する!もう俺たちの負けでいい!」

「だから命だけは…!」

 

今さらになって生き残った黄巾党たちが武器を捨てて地面に頭を擦り付け降伏を願い出た。

次々に殺される仲間を見て流石に勝てないと理解したのであろうが、京馬は皆殺しにされるだろうと察する。

これ以上は見ていられないと顔を背けた時、想定外のことが起きた。

 

「………降伏を認める」

「えっ?」

「冥淋、後の始末は任せる」

「はっ!」

 

なんと炎蓮は彼らの降伏を認め血を振り払い剣を収めて立ち去っていった。

それを見た黄巾党は安堵のあまりにその場に座り込んでしまう。

まだ興奮している様子であったが、まさか降伏を認めるとは思わず京馬は唖然となってしまう。

 

「この戦、炎蓮様の勝利ね」

「うむ。もの共!勝鬨を挙げよ!」

 

『うぉぉぉぉぉ!!』

 

戦の勝利が確定すると孫呉の兵たちは勝利を喜ばんとするばかりに一斉に声を上げる。

未だに唖然となっている京馬に雪蓮が声を掛ける。

 

「京馬、大丈夫?」

「あぁ…にしても驚いたな。まさか炎蓮が降伏を認めるなんて」

「相手が戦意を失ってしまったから、熱が冷めちゃったのよ」

 

これには雪蓮も予想外だったらしく立ち去っていく炎蓮の背中を見ている。

あんなに狂気に満ちていても冷静さは失っていない炎蓮に京馬が感心していると、急に膝から崩れ落ちその場に座り込んでしまう。

 

「京馬…!?」

「あ、あれ…?」

 

突然のことに京馬は立ち上がろうとするも何故か足に力が入らず立ち上がることができなかった。

 

「どうしたの?」

「分かんねぇ…足に力が…」

「…きっと疲れたのよ。今日は色々ありすぎたから身体に限界が来ちゃったみたいね」

 

初めての戦に放り出され人の死ぬ光景を目の当たりにした影響で無意識に身体が言うことを聞かなくなったようである。

 

「取り敢えず陣地へ戻りましょ」

「あ、あぁ…」

 

そう言って雪蓮は京馬の腕を自分の肩に回しもう片方の手を腰に沿えて京馬を運び出す。

足をズルズルと引き摺られながら京馬は雪蓮と今日のことについて話し始める。

 

「初陣を終えた感想はどう?」

「…正直言って、混乱したな。俺のいた世界はそこまで治安も悪くなかったし、人が死ぬのなんて初めて見たしよ」

「そう…」

「けど、1つ分かったことがある」

「?」

「俺には、殺される覚悟はあるが、殺す度胸がねぇ…」

 

黄巾党と対峙した時は殺されると実感した上で戦うことができていたが、自分が殺そうとすると心のどこかでブレーキが掛かってしまいどうしても命を奪うことができなかった。

つまり自分には人間を殺すことはできないということ。

 

「…それでいいのよ。京馬は京馬なんだから、私たちの真似をしなくていいの」

「…ありがとな」

 

雪蓮から励まされ京馬は笑顔になった。

 

こうして京馬は炎蓮たちと共に初陣を果たし黄巾党を退けたのであった。

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