それではどうぞ!
E03地区のある日の昼のこと。
連日続く激務で忙しい指揮官は、息抜きに広報誌を読んでいた。しばらく読み進めるうち、指揮官はとある記事に目が止まったようだ。
<[グリフィンの軍事車両入れ替え進む]>
<グリフィンの前線基地で働く皆様にお知らせです。一年に一回の軍事車両の入れ替えの時期がやってまいりました。>
ーそうか、もうこんな時期かぁ。
先ほど広報誌にあったようにグリフィンの前線基地では、不慮の事態での故障を防ぐために定期的に車両の入れ替えを行なっている。任意で強制ではないので、入れ替えの見送りもできるが、大抵の司令官は入れ替えを希望することが多い。やっぱりみんな新しいのが欲しいからね。
基本的にはグリフィンが入れ替えの際の代金を持ってくれるのだが、カスタマイズや追加で車両が欲しい場合は当該司令部がいくらか負担しないといけない仕組みである。
また、激戦区にある司令部であったり、司令部の戦果やグリフィンへの貢献度諸々も数値として換算され、その数値が高いほど良い物が貰える。よって、どこの司令部もXデイの為にこぞって戦果をあげようとしているのだ。
<今回はIOPが今年に発表した新型軽装甲装輪装甲車に小型軍用車両を中心とした車両が各司令部へと配備される予定になっております>
ーほうほう、これは嬉しいなぁ。
指揮官が嬉しそうにしているのも無理はない。
現在のE03地区の車両は二十年前の旧式の軽装甲車(しかもボロボロ)に日本製小型ピックアップトラックをベースにしたテクニカルが数台である。テクニカルに関してはもはや小型軍用車両というよりゲリラ部隊のようであり、指揮官を始めとしたE03地区所属の人員からは不満が出ていた。
かといって自前で車両を調達するのは、常に資金繰りが厳しいE03地区の財政状況から考えると難しい。ここ一週間前も416が顔色を青くしたり赤くしたりしつつ胃薬を手に財政状況をチェックしていた。というより、人形に胃薬は効くのだろうか。謎である。
<特に今年の新型モデルは悪路走行性を前モデルよりも25%アップさせ、より過酷な道路状況でも走行可能になりました。更に鉄板装甲の厚みを0.5mmアップすることで、銃弾貫通率もかなり抑えられるので、生存確率も飛躍的に向上しました。>
ー銃弾の貫通率が抑えられるとは、これで戦場も安心やな!
防弾率は重要な要素の一つではある。しかし、E03地区では襲撃は滅多になく、車両も使用することは滅多にないため絶対必要かどうかは正直微妙である。
<エンジンはIOP製の新型6.2ℓディーゼルターボエンジンを搭載。従来品と比較すると耐久性は1.2倍、行動距離はなんと1.7倍も向上しています。最高速度も舗装路なら160km/h、オフロードなら100km/h(理論値)を達成。迅速な任務遂行の手助けとなります。>
ー160km/hも出せるんか!めっちゃ速いんちゃうの?
そう。軍用車両にしては最高速度160km/hは速い。しかし、よく見てほしい。あくまで理論値なのである。理論上出せるというだけで、実際に出せるかどうかは保証していない。実際に速度の下りについては詳しく触れられてはいないようなので、そこまでは速度が出ないのであろうと推測される。
<変速機はIOP製の最新トランスミッションで、5速MTまたは5速ATから選択できますので、配備箇所に応じて最善の組み合わせが選べるでしょう。MTはギアボックスとクラッチ板の耐久性を向上させ、ATはMTに匹敵するパワーとMT以上の静粛性をも実現しました。>
ー絶対狙うならATやな、コレは!
指揮官はMTが大の苦手でマトモに発進すらできないのだ。おかげでE03地区所有のMTの車両は全部ボコボコのヘコミだらけである。
こんな有様であるので、人形たちから運転を止められる羽目になったのは言うまでもないだろう...
<装着可能な兵装は以前と同じ軽機関銃とグレネードランチャーですが、新型では軽機関銃や銃火器等該当するスティグマがインストールされていない戦術人形でも軽機関銃やグレネードランチャーが扱えるようプログラムがされています。それにより人員が確保しにくい司令部でも使いこなせる機会が増えることが期待できます。
IOPが誇る数多の兵装の中から選んで取り付けることも可能ですので、是非ご検討ください。>
ーうんうん、兵装はどうしよか?軽機関銃もええけどグレネードランチャーもええなぁ。う〜ん、悩ましいわぁ〜...
配備が決まっているわけでもないのに取り付けの算段をする。これがいわゆる取らぬ狸の皮算用である。
<小型軍用車両は車体自体は以前と同じものになりますが、今回の入れ替えからエアコンなどの快適装備が追加されました。半世紀前の軍用車両には搭載されていたようです。しかし、第三次世界大戦以降の車両には様々な理由により採用は見送られてきましたが、今回で念願の復活となりました。>
ーエアコンはこれからの時代必須やで〜!
エアコンの有無は重要な要素である。しかし、E03地区では(以下略)
<その他の変更点としては、標準搭載されている通信機材の性能がワンランク格上げされ、通信可能範囲とジャミング対策が強化されています。もちろん変速機はATで標準装備となっています。まだ物足りない方にはIOPによるカスタマイズも行っておりますので、是非ご相談ください。>
一通り目を通し終わった指揮官は、目を輝かせながらつぶやいた。
ー今回の車両入れ替えはかなり期待できそうやなぁ〜!ウチの地区に来るのが楽しみやで〜!
タイミングの良いことに通信端末へ連絡が入った。どうやら車両が輸送されてきたらしい。
喜び勇んで実物を見に行った指揮官が目にしたのは、
...
......
.........
機銃が後ろに取り付けられた3t積みのダンプトラックであった。塗装は綺麗なものの、所々ヘコミが見受けられるところを見るに、恐らく中古車両なのであろう。
ー...え?ナニコレ?
呆然とする指揮官の横へ416がやってきてこう告げた。
「指揮官、E03地区は比較的安全な地区で目立った戦績が無いとのことで新しい車両は割り当てできなかったらしいの。私も出来る限り粘ったんだけど、コレが精一杯。」
どうやら、最初は続投の話で終わる予定だった。しかし、416が必死に交渉した結果[前の日本産のピックアップの銃座を日本製のダンプトラックの荷台へ付け替え]条件を引き出した。ピックアップトラックよりは整備されていて良いだろうとの上層部の判断により、これ以上の要求は却下されたようだ...
ーここにもじがかいてあるけどなんてかいてるの?
ショックの余りに言葉づかいが子どもに戻りつつある指揮官である。
「一〇〇式に聞いたんだけど、『G&K建設』って書いてるらしいわよ」
ー何やそれ、土建屋出身の車やないか!
ーうわ〜ん!そんなのってないよぉ〜!!!
指揮官の悲痛な叫びが虚空へとこだまするE03地区は、今日も平和である。
ネットサーフィン(死語)中にたまたまテクニカルを見かけて、「あの世界の軍用車両とかどうなんだろう」とか思いながらまとめた回でした。
軽装甲車はロシア製のものをベースにかなり空想コミコミで書いてますので、おかしいところがあっても笑って許してください。
それではまた!