それではどうぞ!
冬も本格的になり、クリスマスも近づく季節となってきたE03地区。
他の司令部と同じようにクリスマスの準備を進めており、クリスマスツリー用のモミの木...もちろんレプリカだが...を中心に、靴下やオーナメントなど色とりどりのアクセサリーを指揮官を中心とした所属している人員が総出で飾り付けていた。
ーふぅ〜、休憩休憩。流石に疲れたわ!
「お疲れ様です!指揮官!飲み物を用意してきました!」
はつらつとした口調で労うのは戦術人形のM14だった。彼女はE03地区発足から所属している古参の一人で、明るい性格でなおかつ指揮官への献身的な態度、かといって他の指揮官を好意的に見ている人形(過激派含め)とも仲良くやっているので、E03地区内だけに留まらず、噂を聞いた他の司令部からも評価が高い好人物である。
「はい、どうぞ! ってうわぁ!?」
ーうわっ!
バチャァァ!
何もないところでつまづいたM14が持ってきた飲み物を指揮官目がけて派手にぶちまけてしまったようだ。
「ごめんなさい、指揮官!大丈夫ですか!?」
あたふたと心配そうに気遣うM14。
ーああ、別に気にしてへんよ。持ってきてくれてありがとうな。
「いつもすみません...」
そう、M14は少しばかりそそっかしいのが難点なのだ。
いつもがいつもそんな感じではなく、基本はしっかりと仕事もこなせる優秀な人形なのだが、たま〜にちょっとしたヘマをやらかしてしまうのだ。
そのおかげでM14は他の指揮官達から、性格も気さくで仕事もしっかりこなしてくれるが、肝心な所でヘマをされてしまうのではないか。という疑念が生まれてしまっており、いざ自分たちの司令部へと来てくれとスカウトする段階までいかないのである。ただ、M14自身はE03地区司令部が自分の居るべき場所だと考えているので、スカウトなんかは九割九分受けないだろうが。
人間でも人形でも誰でもミスはやってしまうから余り気に止むことはないし、他の指揮官も考えすぎでしょ。と思いつつ、後始末をしているM14を手伝い終わった指揮官は、いつものようにクールな面持ちで広報誌を手に取り読み始めた。
「指揮官っていつも広報誌?を読むときだけカッコよくなるよね」
不思議そうに質問をするM14。
ーうるせ〜、人がどんな顔して読もうが勝手やろ〜
アッカンベーをしつつこのような事を言っている指揮官は、まるで大人に注意されて反抗する子どものようである。
<[S09地区司令部にて出火。原因はダイナゲートのショートか。]
先日、最前線基地の一つであるS09地区の司令部から出火が確認された。>
ーS09地区といえば、鉄血との小競り合いが激しい激戦区やんか。
<死者や全損した人形はいなかったものの、基地内が全焼。基地の職員や人形が用意していたクリスマスプレゼントが焼失したとのことだ。幸いにも弾薬庫などの兵器類にも影響は無かったようだ。>
ー全焼したのか。お〜、コワ
「まだ欠員が出なかっただけでも幸運ですね」
ーホンマやで。
<出火元は鉄血製のダイナゲート[通称『働き蟻』]で、現場検証と当時の関係者の証言から演算処理ユニットへの過負荷からの内部配線のショートが原因ではないかと推測されている。>
ーS09みたいな前線でもダイナゲートを改造して飼うのが流行っとるんか。
「ウチでも何体か飼ってますしねぇ。なんか可愛いんですよ!」
ー確かに分かるけどなー。
<当時、S09地区の前線基地はクリスマスパーティー開催中で、人形たちと関係者で賑わっていたようだ。その関係からか、一部の人形がプレゼントの掠奪を考案し、実行しようとした結果が出火に繋がったのではないか。という説が囁かれていたり、鉄血がダイナゲートを操作し放火したのではないか。といったトンデモ説など、真偽は定かではないようだ。>
ーう〜ん、だいぶ混乱してるって感じやな。
「プレゼントを独り占めしようっていうのは感心しないですねー」
ー鉄血がダイナゲートをラジコンみたいに自由自在に操れるもんなのかねぇ。
「出来るって聞いたことはありますけど、鉄血独自の電波が出るはずなんですぐにバレると思いますよ」
ーそうよなぁ。鉄血も電波を撹乱できる技術を持ってたら上手く紛れ込めるかもしれんけどね。
<当該基地の指揮官は外出中で、帰投時に事件が発覚。鎮火は既にされていたものの、事件発生報告が遅れてしまったことも真実があやふやになっている要因ともいえよう。>
ーまだ誰もおらへん中での出火じゃなくてよかったけどなぁ。
「でも、帰ってきた指揮官は焼け落ちた司令部を見て見間違いだと思ったでしょうね」
ー違いない。
<被害総額に関しては詳しい金額こそ不明なものの、かなりの損害が出た模様で火災保険が降りるのかどうか注目される。
これからはクリスマスパーティーを開催する際も消火器を欠かさずに設置し、避難経路を確保してから楽しむようにしよう。>
ーこの調子だと見たこともないような桁数の修繕費がかかるやろうな。
「ココの指揮官、払えるでしょうか?」
ーS09ぐらいの指揮官なら時間はかかるやろうけど払えるんと違うかな?
「そうだといいんですが...」
一通り広報誌を読み終えた指揮官は、M14とクリスマスについての話をしていた。
ーウチの司令部も同じようにデコレーションとかしてる以上、事故がないように気をつけんとな。
「そうですね!気をつけます!」
ー高所で作業するときは安全帯を付けて、付けたときも指差し呼称をして作業を行うようにしような。
「了解です!指揮官!早速みんなにも伝えてきますね!」
...
......
.........
次の日から、E03地区の司令部ではクリスマスの準備が終わるまで
「安全帯ヨシ!」
「足元ヨシ!」
「ご安全に!」
などの建設現場で毎朝開かれる安全朝礼の如く、人形たちの掛け声が響いていたという......
(補足:現場の朝礼とは朝八時から始まり、ラジオ体操の後おおよそ十分から十五分ほど工事内容や安全に関する留意事項を確認し、安全で円滑に現場の工程を進めるために行うものです。〇〇ヨシ!は、いわゆる指差し呼称の際の掛け声です。)
今回のクリスマスイベント、きちんとストーリーもあっていい感じでしたね!こういうのも定期的にやって欲しいところ。
それではまた!