それでは、ご覧ください。
ある日のE03地区の昼下がりのこと。
午前中の業務を済ませ、昼食を食べ終わった指揮官が副官のPP-90と共に社内広報誌を読んでいた。
---ナインティ、なんか気になる記事見つけたで。とびきりのヤツ。
「なになに?どんな内容?」
---ほら、これだよ、このページ。
<[戦術人形 FAL、Five-seveNなど数種類が生産縮小。新衣装やスキンは絶望的か。]>
「ふーん、生産縮小かぁ。でも人形の生産を絞るなんてよくあることじゃないの?」
---ただ単に生産を縮小するだけやだけやないようや。続きを見ていこか。
<グリフィン所属の指揮官たちにとってハイエンドな戦術人形は羨望の的である。その中でもIOPが誇る人気戦術人形のFALやFive-seveN(以下 57)を含む数種類の戦術人形の生産を縮小することが、関係者への取材で明らかになった。
縮小の理由としては、IOP内部のゴタゴタが主であるとのこと。>
「え、IOP内部のゴタゴタ?」
---なんや込み入った事情でもあったんか?ちょっと興味が湧いてきたな...
<詳しく説明すると、IOPの戦術人形開発部門は何個かの部署に分かれており、新型の戦術人形を開発する際は各部署から何人かを選出し、専門のチームを組んでから取り掛かるのが一般的だ。
騒動の発端はFAL、57などの傑作人形を担当したチームのデザイン担当メンバーの不満であった。>
---まあ、チーム内部の不満ってのはありがちな理由やなぁ…
<デザイナーの(仮名)K氏は、戦術人形開発総括チーフであった(仮名)U氏が関係する戦術人形開発文書コピペ事件(*外部情報サイトをそっくりそのまま写して資料を作成し、提出した開発担当メンバーをU氏が当該人物を担当から外した事件)に対して、U氏の振る舞いに落胆し、次第に不満や不信感を募らせるようになっていった。>
---いや、コピペはあかんやろ。
「そうなの...?」
---いやいやいや、だってお前、情報元が身内なら兎も角、言うてみたら関係の無いところから情報をそっくりコピペするって企業としてどうなん?ってなるやろ。
「そんなもんなのかなぁ...?」
---指揮官として書類仕事をしとるから余計にそう考えるだけかもしれんけど、勝手にパクってるんだから、辞めさされても文句は言えんでしょ。落胆するのは筋違いだと思うなぁ...
<そんな中、K氏は「部署の空気は最悪で、もう疲れた。来週には辞めることになるだろう」とSNSに投稿。そこからの経緯について上記の内容を含めた物を続けざまに暴露したのだ。>
---おおこわ。今の時代、SNSがあるから簡単に内部告発出来てまうからなぁ...
「怖いよね。SNSに詳しい人形とか怒らせたら速攻悪い噂が広まりそう...」
---一部おるもんなぁ、そういう奴...私も気ぃつけんとなぁ...
<それに応じる形で、U氏がすぐさま「私が出張でいない間に何してくれちゃってんの? 正面切って啖呵切る度胸もないのか」と反論。「怒りの矛先を私に向ける前に自分が何回遅刻して、何回無断欠勤したのかよく思い返したらどうだ」とU氏の立場からK氏のだらしなさを暴露する事となり、事態は泥沼に陥りつつある。>
「Uさん、激おこだね」
---そりゃそうだろうなぁ。言ってしまえば、身内から裏切られたも同然やろうし...
<当該SNS上では、自称関係者や自称K氏を名乗るアカウントが乱立。デマや誹謗中傷の応酬とさながら地獄絵図となりつつある。>
「あちゃー、やっぱりそうなったかぁ...」
---半世紀以上前から変わらないネットの暗部と言ったところやなぁ...どうにかならんもんかねぇ...
「面白がる人がいる以上無くならないんだろうなぁ」
---それこそデマの言葉自体、扇動政治家を意味する『デマゴーゴス』から取られたもんやし、人間の歴史とともに歩んできたといっても過言ではない。実際にデマが元でモノや国が衰退してしもた例は数知れずや。無くなるのは難しいやろなぁ...
<そのような騒動に引っ張られる形となり、一連の騒動へ対する自粛ということで生産縮小が決定したようだ。
また、新衣装やスキンは基本的に元となる戦術人形を担当したデザイナーがデザインするため、必然的に当該人形の新衣装、スキンの発表は絶望的となっている。後任等も未定とのことだ。
終わりの見えない論争に終止符を打てるのか。今は静かに見守ろう。>
---騒動に関連したモノや作品の販売自粛とか多いなぁ...
「確かにイメージダウンとかもあるだろうけど、敏感になりすぎって気もするわね」
---それにかこつけて輩(*イチャモンの事)言う奴も居るし、企業としても火消し対応を楽にしたいんやろうな。
「戦術人形のアタシにとっても他人事じゃないだけにね...」
---品薄に便乗したプレミアがついて他の司令部が混乱しない事を祈るのみやね。
記事の大体を読み終わった指揮官が軽く伸びをし、こう呟いた。
---やっぱ他人同士が仕事をする以上、大なり小なりの対立は避けられへんもんやけど、どんだけ上手く折り合いをつけてやっていけるかが肝になるって事やな。これは人間だけやなくてナインティとか人形達にも当てはまるもんや。いがみ合うだけでは何も生まれんからな。
「うん。そうだね、指揮官!」
---さあて、そろそろエエ時間や。仕事の続きでもするかぁ!
今日もE03地区司令部は平和である...
本SSはフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。(予防線)
指揮官の喋っている内容の前『---』や、記事の『<>』は分かりやすくなるようにつけたものです。登場人物の掛け合い時に、誰がどう喋っているか分かりやすく書ける自信が無かったんでね...
そして指揮官は関西弁を操ることが判明しましたが、深い意味はありません。何となくです。性別に関しては特に決めていません。読み手の方々が思い浮かべた姿が正解です。
編集部(書き手)に取材依頼は歓迎ですので、こんなヤツでよろしければどうぞ。
それではまた、ごきげんよう!