いろんな外来人   作:葉っぱの妖怪

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妖怪の山 ―料理人 晶―

 朝、目が覚めて真っ先に思い浮かぶ君のこと・・・なんて事は過去現在そしておそらく未来永劫ないだろう。生まれてこの方20年と数ヶ月。憧れだった料理人になったはいいものの長期の間、度重なるパワハラ等々に追い詰められどっかの山の中で骨埋めてやると謎の行動力を起こして山に登ったが運の尽き。ふと気づけば剣に盾を装備した犬耳の集団に囲まれてしまいましたとさ。

 

 連行されていった詰所でここがあの幻想郷の妖怪の山であると知り、自分が幻想入りしたことを聞かされ、うそーんとつい言葉に出てしまい鋭い眼光が一斉にこっち向いた時の恐怖度は味わったことのある人間にしかわからない。

 

 さてなんやかんやで詰所から解放された俺ですが、お天道様は既にさよならバイバイ。人間にはつらい時間だった。その時、射命丸文(めっちゃ美人さんだった)の口添えで一晩だけあの守谷神社でお世話になることに。

  

 突然、妖怪の山に意図せぬ形とはいえお世話ばかりされては男として廃ると夕食の調理を申し出たことが俺の今を作ったと言えよう。

 

 料理人としての知識と腕を駆使してご馳走した日本料理は口にあったようで、お誘いした文さんやここまで付き合わせてしまった椛さんも家主である加奈子様も諏訪子様も早苗さんもそれは満面の笑みを浮かべて召し上がってくれた。そして俺がいた現代の話を聞かせてくれと頼まれたので話した。楽しかったこと、辛かったこと、自殺しようとしたこと、いつかは自分の店を持ちたかったなと言ったことを話したり、逆に早苗さんのいた現代の話を聞いたり、神様関係の話を聞いたりしているうちに二人が帰ることになり、その帰り際に椛さんがボソッと口に出した一言が俺の運命を変えたと言えよう。

 

「また、食べたいな・・・」

 

 それになにやら悪い笑みを浮かべた文さんの提案を何も考えずに頷いたのが運の尽き。次の日には大天狗さまよりいろんな許可をもぎ取ってきた文さんは河童の皆さんの協力の上、1週間後には俺の店を山の麓に作ってしまった。いやまあ、俺もノリノリで設計に携わったんだけどさ。開店祝いには文さんや椛さんを始めとした天狗の皆さんにどこからか聞いて鬼である伊吹萃香さんまで来て天狗の皆さんがびっくり仰天したのは完全な余談だ。

 

 それから3カ月ほど、今では文さんの新聞による宣伝もあってかわざわざ人里から食いに来てくれる人も出てくるぐらいには盛り上がってる。個人的には低いとはいえ妖怪に襲われる危険を冒してまで食べに来てほしくないという本音はあるが来てくれたなら心を込めて料理を作ろう。

 

「晶さ~ん、いらっしゃいますか~?」

 

 と、外から俺の名を呼ぶ声が聞こえてくる。声からして椛さんだ。あれ、まだ店を開ける時間には早い気が・・・あっ、忘れてた。

 

「はいはーい、ちょっと待ってくださいね」

 

 そう言って大慌てで服を脱ぎ、こっちに来てから好んで着るようになった着物を着る。軽く寝癖を整えながら引き戸を急いで開けた。そこには哨戒時の装備ではなく白い着物を着た椛さんが立っていた。

 

「ごめんなさい、寝ぼけてて忘れてしまってて」

「いえ、私から頼んだことなので気にしないでください・・・」

 

 と慌てて料理場に急ぐ俺とそのあとをついてくる椛さん。だいたい一月前、大天狗様の名で白狼天狗から希望者数名を俺の店の手伝いとして派遣されることになった。理由としては天狗にとって俺の料理はなくてはならないものと大天狗さまが認めてくれた。だが、天狗全員とは言わないがかなりの人数を一人で作るのはかなりの負担がかかるからいくらか負担を軽減したいとのこと。その希望者の中の一人が椛さんだったとのことだ。

 ちなみに文さんからのタレコミで俺の負担を軽減すべきだと大天狗さまに意見具申した白狼天狗がいるらしい。それが彼女なのかはわからないが椛さんは料理をも手伝おうとこうやって速い時間から俺の技術を学ぼうと来ている。

 

「じゃあ、今回は――――」

「わかりました。では――――」

 

 椛さんは元々料理は他の白狼天狗よりも出来ていたので飲み込みが早くこちらも教えがいがあるというものだ。彼女も料理が楽しいのか尻尾をブンブン振るわせながら俺から学んでいる。それを言うと顔を赤くして尻尾を抑えるのでその姿は誠に眼福です本当にありがとうございます。

 

 ある程度下ごしらえが出来たころ、店の引き戸が開かれる。

 

「やってるかしら」

「あややや、椛もいましたか」

 

 もうそんな時間か。そう思って河童から提供された時計を見るとちょっぴり早い気もしなくともしない。文さんとはたてさんが来るときはもう少し遅い時なんだがな・・・。

 

「これから取材に行きますので少し早めにご飯を食べておこうかと思いましてね、あっ私〈い〉定食で」

「わたしは文に引っ張られて渋々ね、私〈に〉定食」

 

 と席に座りながら本人の口から答えを聞かされ、なるほどと思いながら、注文を承る横で椛さんがおしぼりとお冷を二人の前に置く。

 二人の世間話に相槌を打ちながらふと考える。もし椛さんの目に止まらず連行と言う名の保護をされてなかったら、もし文さんからの提案に頷かなかったら・・・色々なIFが思い浮かんでは消えていく。少なくともここで自分の店を開くことはなかったし、天狗の皆さんの意外な優しい一面や椛さんの可愛さを知らずにいたんだろう。

 ちらり、椛さんを見つめる。完璧とまではいかないが料理する手つきはかなりスムーズなものになってるし、調理の手順も間違いはない。なによりその顔は料理が楽しいと思っているような笑みを浮かべている。そしてその笑みから目を離せない自分がいる。

 

 ああやっぱり、俺は・・・椛さんのことが・・・・

 

「晶さん?」

 

 椛さんが俺の視線に気づく。なんでもないと答えた後、出来た料理を皿に盛り付けていく。いや、まだこの感情を表に出すのはやめよう。いろんな問題もあるし、なによりまだ俺はこの関係が心地良い。

 椛さんが最後の一品を皿に盛りつける。よし、皿を手に持ち、お二人の前に置く。

 

「「定食おまちどうさまです」」

 

 いただきますと箸を手に取り、料理を口に運ぶ二人を見つめる。彼女たちの感想はその満面の笑みで分かった。




名前   晶(あきら)

年齢   20歳

種族   人間

二つ名  天狗のための料理人

住処   妖怪の山麓

能力   無し
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