現実とゲームの境目がわからなくなった一般人の話

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現実がソシャゲにしか見えなくなった藤丸の話

ぱちりと目を開けて起き上がり、頭を抱えた。

 

「やってくれたわ……マジでやってくれたわ…………ちょっとヒステリー入ってるし大丈夫かよと思ってたけどそれでも、それでも、…………知り合いになった人だったのに……」

「■=■■≡∃■?」

「ああうんありがとうダレイオスくん……正直何いってるのかぜんぜんわかんないけど召喚したばっかで護衛につかせてごめんね………」

「■■≡■!?」

「わかんないけどほらさっきのは心配してくれたのはわかったし……うんありがとう………」

 

案内されたマイルーム。明かりをおとした暗闇の中でも、ぼんやりとダレイオスくんの巨体がそこにあることはわかる。

 

冬木に落とされ、訳もわからないまま奔走し、マシュと所長と合流した。

 

マシュだけでは戦力が心もとないと、所長が持っていた石を渡され、召喚をすることになったのだ。

 

それこそ召喚とかそういうのすら意味がわからなかったけど、Dr.ロマンにお助けキャラを喚ぶ儀式のようなものだから、何が出てくるかはわからないけれどとりあえず十回分はあるみたいだから数撃ってこう!と説明されて、ふと腑に落ちたのだ。

 

何が出るかはわからない、回数の決まった召喚。

 

ようは、ガチャポンだ。

 

ガチャガチャするのだ。

 

命を懸けたガチャをすればよいのだ。何が出るかはわからないらしいけれど、初めてやったソシャゲのガチャとかだって大体そんなものだった。何も問題はない。

 

 

ただ、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

マシュの盾を元に作られた召喚サークルに石を40個ぶちこむ。あとは呪文を唱えて、祈るだけ。呪文もよくわからなかったし時間もなくて覚えられなかったので(所長がキレていた)、カンペを読み上げてのしまらない召喚になった。

 

最初に出たのは概念礼装と呼ばれるカードだった。

召喚システムが、英霊ではなくなにかしらの効果をもった概念を引っこ抜いて、カードの形に押し込めたもの。やけにはっきりした絵柄が描かれていて、裏を見ればその効果とどんな概念かが描かれている。

 

ご丁寧に出やすさでランク付けまでしてあって、本当にソシャゲのガチャみたいだな、と思った。

 

色違いの黒鍵がたくさんと(どう見ても剣だし色があるのに黒鍵ってどういうことだよと思った)、赤いスーツの髭のおじさんのカードに優雅たれと名付けられていたのには笑いそうになってしまったが、肝心の英霊の姿はない。

 

9回まで回して、ポンコツマスター……私はもうだめなんだわ……と所長が言い出したときには泣きそうになったが、最後の一回でやって来てくれたのがこのダレイオスくんだったのだ。真っ黒で白い入れ墨の入っている巨人。目も白目をむいているし、極めつけはバーサーカーとかで会話が通じない。

 

 

それでも、俺を助けに来てくれた英霊で。

 

 

正直ダレイオス三世と言われても全くわからなくてマシュに教えてはもらったけど、それでもよくわからなかった。

 

ペルシャって名前はきくけどどこにある国かなんて知るものか。世界地図を丸覚えするような頭は持っていなかった。

 

それでもなんとか意志疎通をはかろうとして、ダレイオスくんにそれが通じたのか、あの青いキャスターがくるまではダレイオスくんとマシュだよりの戦いだった。

 

ダレイオスくんはバーサーカー故にいうことを聞いてくれなくて、戦闘中にすぐに消えてしまうが、敵を倒すのも早かった。再召喚までの時間はドクターがなんとかしてくれたおかげで、戦闘中の復帰は無理だったが、その次の戦闘が始まる前には戻ってきてくれていた。

 

 

そして、戦って、その先は。

 

 

赤いカルデアスに沈んだ所長が、脳裏から離れない。

カルデアにつなげられて、カルデアで行われた出来事だ。所長がカルデアスに沈む瞬間は、きっと、ドクター達も見ていたろう。

 

祖父母も両親も、身近な存在の誰も他界したことのなかった藤丸にとって、それは顔見知りが死んだ初めての経験だった。

 

というか、人理が崩壊しているので、今現在祖父母も両親も、友達も顔を知ってるだけの知り合いも、すれ違ったことのあったりなかったりする他人も、TVでみていた有名人とかだって、皆死んでいるのも同然だった。

 

俺が頑張らなければ本当に死んでしまうし、俺も死んでしまう。

 

 

普通にしんどい。

 

 

「ていうかそもそも始まりからして幸先悪かったもんな……。ここ来た時点で機器のメンテナンスとかで入れなかったし………玄関はいってすぐのとこで3日待たされるから何かと思ったら18分とか2分とか開けてるときあったのになんで入ってこないの!?って知るかよ……アナウンスしろよ…トイレとかあってよかったけど……」

 

空調がきいていたので助かったものの、玄関ホールで籠城するはめになってしまったのはほんとに頭を抱えた。

案内してきた人は新人はこっちからね、アナウンスを待って、と玄関に案内してそれっきりだ。

 

いつまでたってもされないアナウンス、外は吹雪いていたので出たら死ぬ。一日めはそれこそいつアナウンスがくるかと緊張していたが、2日め辺りには腹の減り方が尋常ではなくそれどころではなかった。

 

3日めのアナウンスがどれだけ神の声に聞こえたか。なんせ、トイレの手を洗うとこから出る水と、長旅になるよと言われていたので持ち込んでいたお菓子と栄養バーで3日しのいだのである。

 

それで初期ミッションの開始ギリギリの滑り込みになって、しかもよくわからないシミュレータのせいでうとうとしてしまったので、正直怒られたことすら理不尽すぎて意味がわからなかった。

 

結果的に爆破からは逃れることができたので、助かったといえばそうだけれども。

 

「■■■……?」

 

若干おろおろとした気配を感じて、ダレイオスくんの方に目線を向けた。

 

「……大丈夫、大丈夫、だよ」

 

ああ、そうでも言わないとやっていられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

レフ教授とやらに盛大にカルデアの施設が爆破されたせいで、機械の調子がはちゃめちゃに悪いそうだ。当たり前だと思うけど。

 

最低限の保証が出来るまでには修繕したものの、精密機械は機嫌が悪く、何度もレイシフト寸前までいってはエラーを繰り返していた。その度にドクターと整備班が死んだ魚の目になっているらしい。

 

コフィンにいるのでその瞬間は見ていないし、ドクターに会う頃にはもう取り繕ってくれていたから、ただの伝聞なのだけれど。

 

ただ、五回目のメンテナンスが思ったよりも長引きそうだと呻いた彼は、お詫びにもならないけれど、とカルデアの資材からかき集めたという石を差し出してきた。

 

とりあえず召喚をして、サーヴァントと仲を深めて待っていてくれということらしかった。

 

魔術的にありがたくてすごい石を燃料としてくべることでどうたらこうたらといわれはしたが、もうその石というシステムがやっぱりソシャゲのガチャだった。

 

どれだけかき集めたのか、今度は84個もあった。

 

この前は慌てていたからちゃんと説明できなかったし、と改めて召喚について説明をうける。

 

必要なのは召喚サークルとマスターと聖晶石。

 

召喚一回につき4個の石を消費する。一度に4個か、もしくは40個しかぶちこめないそうなので、はいはい十連だなぁと思った。

 

とりあえず、まずは一回からと4個ぶちこんで、マシュとダレイオスくんに見守られながらみたせみたせと詠唱をする。今度はつっかえながらではあったけれど、カンペなしで呪文が言えた。

 

 

「今度はランサーで呼んでくれって言ったじゃねぇか」

 

 

そんなことを言いながらあのときの青いキャスターが出てきた時には不覚にもちょっと泣きそうだった。あのときの救世主と縁があった、それだけで、なんだかこれからも頑張れそうな気がした。

 

後ろでダレイオスくんとマシュが喜んでいるなぁと思いながら、もう一度、今度は40個の石を投入する。

 

赤の黒鍵、赤の黒鍵、アゾット剣、青の黒鍵、優雅たれ、赤い宝石のようなもの、アゾット剣、赤の黒鍵、緑の黒鍵、なんかワカメみたいな髪の男の子の絵。

 

全部礼装で、サーヴァントはいない。後ろでマシュが励ましてくれているのだけ救いだった。マシュかわいい。

 

赤い宝石は凛のペンダント、ワカメは偽臣の書という名前だった。新しい礼装を手に入れただけましなのか。

 

黒鍵シリーズとまたもや出てきた優雅たれがなんともはやって感じである。十回分の石を突っ込むと、その十回重ねたほんのわずかな余剰分でいつもより出にくいものが引けるようになるとかいっていたけれども、今回その枠だったのはたぶん優雅たれだった。

 

まぁ、でも、まだ十連あるし。

 

もう一度祈りながら石を40個捧げる。文字通り溶けながら燃料となっていく様を見て、そういえばガチャとかで石を溶かすっていうなぁ、と思った。

 

緑の黒鍵。緑の黒鍵。アゾット剣。緑の黒鍵。魔導書。緑の黒鍵。優雅たれ。

 

ここまできて本格的に叫びそうになった。また優雅たれかよ!それでなんだその緑の黒鍵押しは!

と思った矢先にでた八枚目のカードは赤の黒鍵だった。せめて統一してほしかった。で、九枚目は緑の黒鍵。赤が出てしまったのが惜しい。

 

サーヴァントほんとにでるのこれ?

 

そんなことを思った瞬間、最後のカードはセイントグラフを表示した。

 

 

一度見たことがあるそれは、バーサーカー。

カードが光輝いた後には女の子がたっていた。

 

 

「我こそはタマモナインの一角、野生の狐タマモキャット! ご主人、よろしくな」

「んんんんんん!?」

 

タマモキャットは会話ができるバーサーカーだった。それはいい。

 

ただ、その格好が、あれだった。ソシャゲとかで和装キャラが着てそうなミニ着物みたいなのと、耳としっぽとケモノの手袋と靴。

それで、ご主人ときた。マスターと青いキャスターが俺を呼ぶのだってしっくりこなかったのに、ご主人って!

 

滅びかけた世界の救済とか。おあつらえ向きに俺しかマスターがいないとか。システムはゲームのようで、出てきた助けもやっぱりゲームのキャラのよう。

 

ああ、自分は、きっとゲームの主人公なのだ。死んだら終わりのサバイバルモードのゲームの主人公。

 

目標は世界を救うこと。なんてよくあるRPGの目標だろうか!

そうと決まればそれらしく、だ。主人公のようなロールプレイをしよう。幸いラノベもゲームも漫画もたくさん読んでいる。王道主人公らしく、そういうキャラになればいい。

 

そうでもなきゃ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ごめんね、びっくりしちゃった。オレは藤丸立香。よろしくね」

「うむ、ニンジンに釘付けになるのは野生の本能!しょうがないのだな!!」

「……うん!!!」

 

とりあえず笑顔で頷いておく。会話が出来てもバーサーカーだこれ!!!

 

マシュに二人のカルデアの案内を頼んで、自分は礼装を調べたいからとマイルームに戻る。後ろをドスドスとダレイオスくんが歩いてついてきた。

 

礼装をぼんやりと見る。『凛のペンダント』は、凛という人の名前らしきものが入っている。いや、凛とした、とか、そういう意味の凛だろうか。わからないけれど。

 

黒鍵シリーズはもう見飽きたと言ってもよかったのでその辺にばらまいて、今度は魔導書なる礼装を手に取る。

魔術の秘奥を記した書と説明があって、これもしかして今のオレに最も必要なものでは?と開こうとする。そもそもカードだから開けなかったが。アイテム化できないのかなこれ…。

 

 

そんな風に礼装を見比べていると、ダヴィンチちゃんから通信が入った。

 

理想の女になってみたかったから、なった、というレオナルド・ダヴィンチ。理由こそはっきりすれど、やっぱりソシャゲでよくある女体化だなぁとか思ってしまう。

 

アーサー王も女だったし、この世界はソシャゲとかエロゲだったのだろうか。ああ、でも、それを表に出したら、きっと嫌われてしまう。

 

それに、ほら、ね?主人公はそんなことを言わないだろう?ぶんぶんと首をふって考えを追い出した。

 

「石を使わない召喚?」

『そうそう!カルデアは今まさにノアの方舟と化してる訳だけどね?何か手がかりがないかとあちこち電波とか魔力波とか飛ばしてみたら、何かが返ってきたんだ』

「えっ、それって、」

『……ご期待通りの生存者、とかではなかったんだけど、なんというか、何かにあたって反響してきたものが思わぬ魔術資源を呼んだというか……』

「何かってなんです?」

『わからない。友好的なお友達であってほしいところだけど……。まぁ、その返ってきたものの資源としての活用価値は申し分ないよ。聖晶石ほどの燃料にはならなさそうだから、あまり維持コストが高かったり、喚びづらいサーヴァントとかはちょっと喚べないだろうけど、それでもサーヴァントも概念礼装も召喚できるはずだよ。ある程度溜まったから十回はできると思うし、もう一回召喚ルームにおいでよ』

「はーい!」

 

元気なお返事をしてマイルームをでる。たぶん、ルピとかゴールドとか、フレンドポイントとかの、無課金向け召喚システムみたいなものと考えればいいだろう。レアとかしかでないやつ。

 

せっかく縁があって助けに来てくれたサーヴァントとか、大人しく引っこ抜かれてくれた概念をレアとかSRとか、そんな風に考えてしまったら主人公的に絶対駄目だけれど。

 

魔術師が実はいっぱいいたらしいこの世界と、その魔術師が作った機関だ。すごーい魔術の使い手が、人の心を読めないわけがないだろう?漫画的に考えて。だからそんな考えはナイナイする。

 

よくわからないものを魔術資源にしてきたものがどんなサーヴァントかってちょっと怖くて仕方なかったりするけれど、ダヴィンチちゃんは大丈夫というから信じよう。

 

石で喚べたのは二人っきりだったから、次のフランスで人が足りなくて苦労するのは嫌だし、どんなものでも祈りながら溶かすしかないわけで。

 

で、来たのが佐々木小次郎。アサシンだった。佐々木小次郎はさすがに知ってる名前だったので思わずガッツポーズをしてしまう。

 

マシュに通信を入れて、キャスターとバーサーカーの案内が終わったら食堂で待っててほしい旨を伝え、佐々木を引き連れて、カルデアの案内にいざ出発だ!

 

 

 

 

 

 

 

人が死んでいた。ワイバーンにむさぼり食われて死んでいた。地面で死体を食っているワイバーンがいれば、まだ生きている人を投げあげて、もてあそんで、血と腕が飛んでいったところで飽きたのか、頭から噛み砕いて食い散らかしているのもいた。食われる瞬間のあの人と目があったような気がして、まだあの光景が忘れられない。

 

ワイバーンが通りすぎた街は街で地獄だった。街のそこかしこが燃えていて、それにはたぶん、生き物の燃える臭いも混じっていた。

 

やっと見つけた人間のどす黒く染まった肌はどう見ても腐っていて、眼窩からは元目玉だったであろう何かが流れ出ていた。

 

生々しいゾンビは、それでも立って、動いていた。冬木はまだ骨だったから現実感のなさで指揮のようなものができたけど、フランスのあの生々しさはダメだった。

 

吐いた。

もう、全力で吐いたし、指示と一緒にゲロも飛ばした。口をゆすいでいる暇が惜しかった。ただ、立ち止まることだけは意地でもやめない。

 

こんな、こんな序盤で立ち止まるのは、主人公じゃないだろう?マシュが背中をさすってくれたときの暖かさだけ、やけに印象に残っている。

 

ソシャゲの世界、まるで魔法少女かのように換装するマシュ。

 

でも、あの崩壊するカルデアの中で握った手は、本物だったから。だから、マシュと、どうしても()()()()()()()()()ドクターだけは藤丸の中での現実だった。

 

道中でかき集めた石を使って召喚をして、優雅たれ地獄の中青いランサーと竜の姫を呼び寄せた。その後にあそこにいた清姫とエリザベートに出会ったのは笑うしかなかったけれど。

 

青いキャスターは何故かワイバーンに相性が悪くて大変よく殺されてしまうわ攻撃はあまり通らないわでずっと頼っていた彼を控えに入れなくてはならず、変わりに活躍したのがタマモキャットダレイオスくん清姫のバーサーカートリオだった。

 

まあ、ちょっとばかり消えやすいトリオではあったけど、話は簡単だ。

 

殺される前に殺せばよい。

 

ジャンヌ・オルタにもその戦法は通じた。万が一3人とも殺されてしまったら、控えのアサシン佐々木小次郎が余った敵をばったばったとなぎ倒していた。というかバーサーカートリオは最早前座で、オルレアン救ったのは小次郎では…?と言わんばかりの活躍だったかもしれない。

 

オレたちの救世主は小次郎だった。間違いない。

 

それに、カルデアも戦闘後のサーヴァント即時復帰が出来るようになっていたから、一回の戦闘が終わるまでに誰かが生き延びていたらよかった。そう思えば、冬木よりはましだったのかもしれない。まぁ、索敵がどうしようもなくて、しょっちゅうワイバーンに襲われていたけれども。

 

 

それでも、ほら、オレたちは世界を救う一歩を踏み出せたのだ。訳もわからず巻き込まれた冬木とは違う、明確に世界を救うと決めた戦いで、勝った。アームストロングも言ってたじゃないか。人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩であるってさ!

 

 

そんな感じでなんとか修復して、帰って来て一息ついたとき、これ、よかったら、と職員に差し出されたのは赤くてつやつやした玉が描かれたカードがいくつかだった。

 

概念礼装といえば概念礼装なのはわかるけれど、なんだか微妙に違う気がする。

 

「………?いくらか何かですか?」

「言われてみればいくらだなこれ……やっべ食いたくなっちゃったよ」

 

レイシフト先で鮭がとれればワンチャン?などと雑談をして笑いあった後、実はね、と切り出された話は結構衝撃的なやつだった。

 

「サーヴァントを本来の力で召喚できてない!?」

「時期とか運とか縁とかあれば、概念でも英霊でもなんでも召喚出来るわけだけど、その代償としてサーヴァントも礼装も本来の力で召喚できないんだよね、あれ」

「えっ……つまり皆レベル1で出陣していたようなもの……??」

「ゲームっぽく例えちゃうとそうなるね……いやごめん、それを解消する方法はもちろん開発されてるんだけど、その区画をサルベージするのに手間取っちゃって」

「いえ、むしろサルベージ良くできましたね…?」

「そりゃあこれからの生命線だしね!頑張ったよ!!」

 

朗らかに笑ったその職員は心なしかあちこち煤けていたけど、笑顔でまたカードを差し出してきた。

 

「ってわけでこれ!詳しいことは省くけど、腕っていう魔術生物の核を加工して概念礼装にしたのがこの種火なんだ。量はいるけど、こいつをサーヴァントに与えてくれれば本来の力を取り戻していくはずだよ」

 

腕の形をした魔術生物だから、種火の腕と呼んでいるけど、と続けられて、そのまんまだなぁと笑う。

 

つまりは経験値かぁ、戦闘ごとに経験値貯めてく方式じゃなくてなんか与えないとレベル上がんないソシャゲかぁ。そんなことを考えるも表には出さず、口は素直にお礼をいっていた。

 

「それと、申し訳ないんだけど、一つお願いをしてもいいかい?」

「なんでしょう?」

「その、種火の元になってる腕なんだけど、実はちょっと狂暴でね」

「狂暴」

「それくらいの大きさの核のやつだったら僕らでもなんとかなるんだけど、大きく育ってきたやつとかだとちょっと……手に負えなくて………」

 

遠い目をした職員の後頭部がチリチリになっているのが見えて合点がいった。煤けてるのはあれか、その腕とやらとバトッたのか。

 

「大きいやつの方が質のいい礼装になるのはわかってるんだけど、僕らじゃちょっと……その……燃えそうで………。申し訳ないんだけど、サーヴァントと一緒に種火の腕狩り的なものを手伝ってもらえると嬉しいんだ……」

「わかりました!戦闘指揮の練習にもなりそうですし、是非やらせてください!」

「あっほんとに??そしたら修練場とかもお願いしていい?マスターが訓練できるようなシミュレータも用意しとくからさ」

 

一つのお願いじゃないじゃん!!

 

ともあれ、日々の日課に三騎士との対決やその他との対決(モニュメントとかピースの素を埋め込んだ疑似サーヴァントと戦うことでクラスとしての概念をモニュメントやピースに定着させ加工する云々とか言われたがよくわからないので暇なときに回ることにした)とか、種火周回(金色の核が一番育成効率がよいのだが、なかなかそこまで育つものがないため銀色の核をとりあえず回収している)が追加になった。

 

力を取り戻させる、とはいうものの、実際のところレベルをあげて成長させるのと全くやっていることは変わらず、種火を摂取してもらうと目に見えて戦闘シミュレータでの動きが良くなった。

 

レベルだ、レベルを上げなければならない。レベルを上げて物理で殴る。相性?気にするな。それを上回る力で殴れば敵は死ぬって誰かが言っていた。

 

週に一度、マスターとしての指揮訓練を行って、自分自身のレベル上げもするようになる。育成っていうのはRPGで何よりも大切な要素なのだ。命がかかっていることもあって、集中力は上がっていたように思う。

 

日課に振り回されなくなってきた頃、第二特異点が発見された。

 

 

 

 

 

 

 

 

はーどっこい、レフは突然まっぷたつだし、実は女の子でしたがもーりもり、やっぱり現実はソシャゲなのでは……?

 

旅の途中マシュとドクターの説明にふんふん相槌は打っていたものの、元から全然知らなかったアルテラとネロ。

 

仲間だったり敵だったりしたのでそれなりに人となりのようなものはわかったものの、やっぱりどう伝わってたのかなーとかは気になる。

 

それで調べてみたら、後世に残る絵画はひげ面のおっさんばっかりだった。むしろよくあのかわいい二人をおっさんに性転換して絵画にできたものである。男装してるぞ!と言ってはいたけど、あれほんとに男装か?まだアーサー王の方が少年といっても誤魔化せ……誤魔化せ……てたか…?

 

知りたくなかった世界の真実を暴いているような気がしながらもりもり種火を駆逐する。

ほんとに駆逐してしまったら今後サーヴァントを育成する手段がなくなってしまうのでダメだけど。

 

まだまだ苦戦しながらの核の収穫は需要に全く追いついておらず、育成は中途半端なものが多かった。

 

だが、セプテムを乗り越えてわかったことがある。

 

キャットだ。とりあえずタマモキャットだ。

 

タマモキャットは現状唯一の星4つのレア度を誇るサーヴァントである。ようは来にくいサーヴァント。

まぁ、来づらいだけあって、耐久とか瞬発力とかは清姫とかダレイオスくんよりすごい。

 

つまり、育てればもっとつおい。

 

なので重点的に種火を差し上げている。

 

後は回避能力がすごい青いランサーとか青いキャスター(それでも第一特異点ではよく死んでいたが)とか、フレンドポイント(ある一定の電波をカルデア外に送ると一番効率がよく謎の魔術資源が貯まることまで判明した辺りで、ダヴインチちゃん達はそれを謎の友達からの贈り物と呼び出した。じゃあフレンドポイントだな、と思ったので藤丸はそう呼ぶことにしている)で出た回復できるアンデルセンとかにもそれなりに多めに種火を渡している。種火の数に限りがある以上、優先順位をつけないとどうしようもなかった。

 

幸い、サーヴァントの皆は理解を示してくれたのでよかったけれど。

 

そんな感じで伸び伸びキャットを育成していたところ、とある区画の隅っこで膝を抱えていたセイバーリリィを発見することとなった。これで金色のカードのサーヴァントは二人だ。

 

リリィは、どうも聞いた感じオルレアンに突貫する前からシステムフェイトの誤作動で召喚されていたようなのだが、召喚された区画が陸の孤島というかカルデアの孤立区域というかなんというか。爆破されたせいで通路が崩れていけなくなっていた区画だったのだ。

 

やっと区画が開通したと思ったらサーヴァントがいると一時期大騒ぎになったが、今では心強いメンバーの一人だ。

 

それでもまあ、戦争だし、手数はたっぷり欲しくって。全然今いるメンバーだけじゃ足りなくって。

次の特異点が見つからないとひいこらいっている間にかき集めた石でガチャを回すもだーれも来やしない。今日も優雅たれ優雅たれ、ワインでも飲みたいくらいだ。飲めないけど。

 

ある日かっとなって枕元に優雅たれをばらまいて寝たらすごい金色の鎧きた人が夢に出てきてびっくりした。

 

出会った途端に大爆笑されたのはなんだったんだろう、あれ。偉そうというかなんか王様っぽいというか、王気というのか、それっぽいものがあったので黙って笑い声を聴き続けていたが、結構しんどかった。

 

落ち着いたところで、貴様が余りにも哀れだからサーヴァントとの縁をくれてやろうというものだから、じゃあ、世界を救う正義の味方を、俺なんかの偽物じゃなくて本当の主人公をくださいと言ったら、何か、こう、形容しがたい表情をして、めちゃくちゃ長いこと沈黙して、百合の王女とか祈りの聖女とか、ギリシャ神話の英雄とか、もっといい縁はあるがほんっっっとにそれでいいのかとしつこく確認された。

 

えっ、つまりいるのそんな英霊!正義の味方が英霊やってるとは思ってなかったし、どうせ夢だしと思って出た本音だったけれど。

 

ロビンフッドとかそれっぽい物語あるけどそれだろうか。それとも戦隊ヒーローの集合体とか?どっちにしろ、いるなら来て欲しいと思ったので、それでもやっぱり正義の味方を下さい!といったら、盛大にため息を吐かれた後、ものすっっっっごい嫌な顔で、とある概念礼装をもって召喚してみろと言われた。

 

そのへんで飛び起きた。

 

まぁ、夢は夢だったろうな、と思うけど、やけに鮮明な夢だったのが気になった。

 

ほどよくダヴィンチちゃんが、石の代わりになる燃料を試作してみたからと呼符というものを渡してきたのもあって、その言われた概念礼装──『凛のペンダント』を握りしめて、システムフェイトに札をぶん投げた。

 

ら、召喚したときの輝きがいつもと違う。金色にばちばちと輝いて、その、え……?

 

「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ、参上した」

 

喚べたのは真っ赤な外套のアーチャーだった。どこかで我の采配で縁を結んでやれるのは一回きりだというに!そんなのに使いおって!と嘆いている声が聞こえた気がする。

 

マテリアルを見れば、顔のない正義の代表者とある!本当に、正義の味方が来てくれたんだ!

それを言ったらとても渋い顔をされたけど。

 

でも、ほら、オレなんかより主人公っぽくって、いかにも強そうな筋肉で(実際☆4だし)、それに、まともなサーヴァントだった。別に青い二人がまともじゃないとか他のサーヴァントがまともじゃないとかいうつもりはなかったけれど、感性がとてもまともで、藤丸に近かった。

 

それだけでも、なんだか救われた気がしたのだ。

 

ちなみにその後続けて召喚したら、ローマにいたブーディカまで来てくれた。キャットとブーディカと赤いアーチャーのエミヤの三人が揃って、カルデアのご飯事情はかなり改善されたのも嬉しかった。

 

 

ほんのちょっとずつだけど、生活に余裕が出てきて。そしたら、皆自然と笑顔で世界を救ってやろうって言い出した。

 

そうしたら、黒幕も悔しいだろうって。こっちはこんなに楽しくて、こんなに笑顔で、貴様らが成功したのなんて最初だけで、後は余裕のよっちゃんで、ほら!しゃくしゃくお気楽なくらいに世界を救っちゃおうぜって。

 

 

俺たちが。

俺たちだけが、今を生きる人類だから。

 

 

そんな決意を誰ともなく語り合って、それなら戦いだけじゃなくて、文化も色んなものも、取りこぼさずにいこうって、自然とそう決まった。だって、戦うだけが人間じゃない。

 

その、初めての催しがお月見だった。

まぁ、お月見に決まった時は、イベント…?と首をかしげたものだったけど。時期的にできるイベントは?って探して出たのがお月見だったし、まだ忙しいことには変わりなかったので、月っぽいものを見ながらお団子を食べるだけのお手軽さがちょうどよかった。

 

そのお月見が事件になってしまったのは少しばかり残念だった。

大規模な特異点でなく微少な特異点だったのが災いして、カルデアの機器が特異点を追いきれず、レイシフトできない時期が続いたのもあんまりよくなかった。

ソシャゲだったら運営メンテいい加減にしろと叫んでいたところだろう。ただこれは現実のソシャゲなので、大人しくマイルームでマシュと膝を抱えていた。

 

なんとかお月見も、お月見に関連した騒動も終わって一息ついたころ。

 

種火周回もだんだんはかどるようになってきたというのに、限界が生じることとなった。特に、エミヤ。

 

どうしても本来の力の大体25%ごとに成長の限界とも呼べるようなものがやってきてしまうから、何かしらの触媒を使って壁を取っ払ってやらないといけないことが判明してはいた。その触媒にはモニュメントとかピースが最適なのだそうだが、それにプラスして特殊な素材が触媒として必要なのだという。ご丁寧にサーヴァントごとに素材は違うというから、あーはいはいソシャゲソシャゲと考えたところまではよかったが。

 

エミヤには無間の歯車が必要だった。8個も。今までで手にいれることが出来たのはわずかに3個。いずれも取引で手にいれたものだ。

 

歯車を落とすであろうと目されるエネミーは、現状存在していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オケアノスは海だった。潮風で髪も肌もべたべたになって、日の光は容赦なく体を焼く。船に長時間乗ったこと自体が初めてだったし、それも帆船に乗るなんていうのも、本来だったら一生体験できなかったことかもしれない。

 

マシュは、これが海なのですね!と喜んでいたけれども。はーマシュかわいい。

 

基本的にオケアノスは順調な旅をして終えることが出来た。

 

育成に力をいれたのはもちろんだけど、冬木とは雲泥の差じゃない?ってくらい、自分の対応力も上がってる気がする。

 

ヘラクレスとのおっかけっこが終わった辺りで集まった石でガチャを回したら、ヘラクレスを引き当てて思わず真顔になる事件なんかはあったけど、無事に攻略することができたし、帰還後にはなんと星5つのヴラド三世を引き当てた。初めての星5つ!

 

それもバーサーカー。金レア枠のバーサーカーが三人になったことになる。もうこれで方針は決まった。つまりは破壊だ。バーサーカーバーサーカーバーサーカーで破壊してバスターするのだ。

 

とかいってたらエリザベートのハロウィンとかぐだぐだしまくりの本能寺とかサンタオルタの特異点とかそういうのが立て続けにきたので……もしや……これは………世界が狂った………??

 

まぁ滅びた時点で世界は狂ってるかー、と思いつつ種火を狩ってがんがん周回する。最近はそんなに時間がかからずに種火から核を収穫できるようになってきていた。カルデアの技術も向上しつつあって、種火の腕を大きく育てることが出来るようにもなってきていた。つまりは金の種火の割合が増えているので、早く成長限界に達してしまうということでもあった。

 

元から触媒素材を確保する見通しがないサーヴァントはもうどうしようもないので、限界まで育ててそのまま戦力に。そもそも収集率が高くないこともあって、触媒素材は万年枯渇状態だった。

 

サーヴァントの力の強さはカルデアの生命線だ。現実はソシャゲだけど、一回死んだら終わりのサバイバルモードなソシャゲなので、もう必死にかき集めて力を取り戻してもらわねばならない。

 

素材がとれそうなところにレイシフトしたり(その過程で新たな狩場を見つけたり、石を見つけたりもするので、修正が終わった特異点であっても隅々まで見て回るようになった)、素材になりそうな核をシミュレータのエネミーに埋め込んで、エネミー同士で戦わせたり、こちらから戦いにいって経験を積ませることで素材へと育てたりしてなんとか回収していた。

 

それを嗅ぎ付けたらしいエリちゃんとかノッブとかオルタさんが、じゃあこっちも必要なものがあるからそれ集めてきてくれたら素材と交換してやるよ!と言ってくれたことで、交換アイテム集めまですることになったけど。

 

一部の概念礼装がそれぞれの微少特異点だとアイテムを引き寄せやすいとかで、そういうのもはいはいソシャゲソシャゲと納得した。

 

まぁ、相変わらず微少特異点への接続不良は解決しなかったので、一番しんどかったのは設備のメンテナンス班かもしれないが。

 

レア度星5つ、しかもこれからの成長も結構な伸び幅が期待されたヴラド三世は召喚した中で一番理性的なバーサーカーだったことも相成って、集中的に育成されることとなった。

 

ダレイオスくんとヘラクレスは喋れないし、キャットと清姫は喋れても会話が通じない。

 

その点ヴラド三世は、自分についてまわる吸血鬼としての伝説を消し去りたいが、吸血鬼であることを許容しているという異常性でバーサーカー認定されているだけで、それ以外の点は普通に頭のキレる領主様だった。マスターのことも適度にたててくれる。

 

「人としての生を、人間という一種族を、今まで紡いできた歴史の、世界の全てを侵略されたのだ。侵略者は許すべからず、敵は尽く串刺しにすべきである」

「うんうん、ですよね!」

 

敵は笑顔でぶち倒し、世界を救って日常に帰るのだ。そうしたら、もう主人公をしなくてもいい。人間がマシュとドクターだけで、後は全員ゲームのキャラとかNPCとかにしか見えなくなるような、そんなソシャゲの主人公をしなくていい。

 

はー、救世主ってやつはどうしてこうもしんどいのだろうか!

 

 

 

 

 

 

なんかもう色々ありすぎてよくわからなかった。ロンドンでのラスボスラッシュからの黒幕、やっと歯車を落とす敵が出てきたこと、マスターが着れる礼装の増加、初めてカルデアで迎えた年越し、人の暗黒面を暴き出すマンション、リリィに師匠がついたり、それから、バレンタインのイベントをやってみたりとか、色々、ほんとに色々。

 

カルデアの召喚システムが大分調整され、十連して礼装だけということも優雅たれ地獄もなくなってから(それでも優雅たれが出てくると反射的に落ち込む癖はついてしまった)、仲間も結構増えた。その分召喚事故のようなものも増えたけれど。

 

正月の早朝、体調を崩してお手洗いにこもることになった時の事件なんかは秀逸だった。体調をスキャンしていたドクターがあわてて駆けつけてくれたものの、しばらくお手洗いから出ることができずに呻いていたのだが、どうも体調不良時の誤作動で遠隔で召喚サークルに繋がってしまったらしく、お手洗いで吐いたと同時に召喚を行ってしまったのだ。それでジャンヌを呼び寄せたので怪我の功名といえば功名だったが。尚、バレンタインでは熱を出している最中に天草を引いたのでルーラーは体調不良の時に来る説が藤丸の中で定着している。

 

調整後のシステムフェイトは何かが緩くなってしまったらしく、最近は召喚した覚えのないサーヴァントがちらほら闊歩しているのが見える。特にノッブの部屋に沖田さんが入り浸っているのはよく見かけた。時期が合わないとそもそも縁が引き寄せられないとかで沖田さんは召喚出来なかったのだが、結構姿を見かける。時期があわないとはなんだったのか。

 

他のサーヴァントも似たようなノリでいるらしく、実際召喚したわけではないのでこちらの依頼では戦ってくれないものの、本人達が気まぐれにあっ戦いたいなーと思ったときとかにサポートしてくれたり、縁があればそのうち!といってくれたり、珍しいお土産なんかを持参で来てくれたりするので、その辺は深く考えないようにしている。深く考えると何故召喚には応じてくれないのにカルデアにはきてるんだちくしょうと呪詛をはいてしまいそうになるので。

 

そして、黒幕。魔術王ソロモンが人理を滅ぼそうとしている黒幕なのだという。なんか、漫画とかで魔法使いとかがよくソロモンと名乗っている気がするから、元ネタの人なのだろう。

 

父親のダビデがちょうどカルデアにいるのでどんな人物か改めて聞いてみたら適当な返事しか帰ってこず、それどころかマシュにやはりアビジャグ?とか言い出したのでこりゃだめだわと首をふった。

 

ソロモンとの出会いから大分時間が経った今ならあれのことをなんとでも言える気がする。今度あったら、お前のとーちゃんダービーデー!とか、モードレットに見習って小便王とか呼んでやろう。

 

そうしておけば、どれだけやばくてすごいことをしてこられても、えっでもお前の父ちゃんダビデだろ…?って思えば動ける気がするから。

 

後は、礼装だろうか。爆破で礼装保管庫がやられていたそうなのだが(マスターの武器とも呼べるのだから、狙われるのは当然と言えば当然か)、その中でも比較的無事なものを修復していたのが完成したとかで、何種類ももらうことができた。

 

ついでに腕試ししてけよ!と一着ごとにシミュレータのプログラム担当が手慰みに作っていた模擬エネミーを倒すことになりはしたものの、全部すごい効果のものばかりで、パーティーの組み方にあわせてこちらも礼装を選んでいったり、目的にあわせて着替えたりということが必要になってきそうだと思った。令呪も含めて、戦略がかなり広がる。

 

本当はもう少し前に修復が終わっていたそうなのだが、魔術礼装カルデアの効果もまだ使いきれていないマスターに渡すのは時期尚早だろうと引っ込めていたらしい。マスター訓練も必要なくなってきた今のマスターなら任せられるだろうと預けてくれることになったのだそうだ。期待に応えねばならない。

 

清姫チョコ等の衝撃のバレンタインを乗り越え、そんなことを改めて決意していたときに招待されたのが監獄塔だった。

 

敵は攻略の難しいサーヴァントばかりで、早速礼装が役に立ったのは勿論、エドモンに出会えたのは何よりの僥倖だったとおもう。

 

なんだよあいつ、散々勿体ぶって悪役ムーヴするなと思ってたら、悪役のふりしてオレを救うだなんて!全く、酷いやつだった。

 

なんかエドモンと会える気がするとめちゃくちゃガチャを回したが、全くこなくてそっちの意味でも酷いやつだった。

 

いつかメルセデスとも会う日がくる気がする。

 

それが、すぐだとは当時は思ってもいなかったけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ大陸はひどいなんてものではなかった。なんだあのインドとケルト。後何度も出てきて恥ずかしくないのかエリちゃん。

 

攻撃力やばい神話を何故あれだけ一ヶ所に集めてしまったのだろう。アメリカが試される大地ってレベルではない。

 

クーフーリンが敵に回ってしまったことも衝撃だった。

 

冬木から世話になっていたサーヴァントだったし、キャスターはもちろん、ランサーにも随分と世話になって、兄貴と呼んでいたくらいだったのに。

 

今までも味方が敵として召喚されて出てくることはあったけれど、今回の衝撃はひとしおだった。

 

いつも敵に向けられる冷徹な瞳がこちらに向けられるだけで息ができなくなる。頼もしい味方が反転するとあれほどやっかいな敵になるとは思ってもいなかった。

 

衝撃といえばメルセデスもといナイチンゲールもやばかったが。最近ヴラド三世に甘やかされ過ぎていたせいで忘れていたが、そう、バーサーカーってこわいんだった。

 

何かを貫き通せる人間はすごい。だが、貫きすぎるのは、もはや狂っている。それを、改めて理解した。

 

色々とヤバさの極みの連続だったけれど、それでもなんとか乗り越えて、帰って来た藤丸を迎えたのはカルデア技術部の革新だった。

 

「今回はお疲れ様!そんな頑張り屋さんのマスターに朗報だぜ!」

「なんでしょう?」

「ほら、召喚にはいつもこの聖晶石を燃料にしてるわけだがな?増産は全く見通しがたってないし、天然物を見つけてくるにしても藤丸が召喚するペースに全く釣り合ってない」

「いつもすみません」

「だから、いっそのことシステムフェイトの方を改良しちゃえばいいんじゃないかと思ってな?燃費をよくして、石の消費が4個から3個でいいようにしました!」

「ヒャッホウ!!」

 

その瞬間の藤丸の顔といったら、後にマシュはあれだけ喜んでいる先輩は初めてみたといったくらいだった。

 

最近は召喚の際にこうすればよいご縁が結べる気がすると、サーヴァントに種火を与えた時にいつもより力が取り戻せたらガチャ、半裸で駆け回ってガチャ、謎の舞をしてガチャ、どこからか見つけてきた禿頭サングラスの男の写真に祈ってガチャ、祭壇のようなものを作ってガチャ、深夜2時にガチャ、インドを呼びたい?ならインドカレーだ!と謎の触媒を用意してガチャ、などと奇行を繰り返していたくらいなので、よほど嬉しかったのであろう。

 

尚、これらの奇行は全て、ドクターの「なんか……数値見てると……ストレス発散になってるみたい……」の一言でそっと放置されている。

 

陸の孤島どころか世界の孤島カルデアの娯楽はそんなになかったから、召喚という戦力を呼ぶ行為がそのままマスターの娯楽になっているのであれば止める理由はないよね、ということである。

 

「おや、それだけだと思った?これもね、出来たからよかったら使ってくれたまえ」

 

喜び狂っている藤丸に、職員に付き添っていたダヴィンチちゃんがそっと差し出したのは何やら虹色の呼符。

 

「なんかご利益ありそう…!」

「ものすごーく貴重な素材と、時期と、色々な幸運が噛み合って出来たものだと前置きしておくよ。……なんと!これ一枚で!十回召喚ができます!!後星5相当のサーヴァントを必ず呼ぶことができます!!」

 

後にマシュは先輩があれだけ絶叫したのは初めて聞いたと語った。

 

「すぐに使っていいですか!!!」

「いいとも!」

 

で、いつもの数倍高いテンションで、最近のブームだという舞をひたすら舞った。舞いに舞った。遥か昔、神話の時代、アマテラス大神をアマノウズメは舞いで誘きだしたという。ならばめったに出会えぬ彼らだって、舞えば興味を持ってくれるのではないか……?そんな気持ちでひたすら舞った。最後の辺りはマシュどころか暇していたサーヴァントや職員も巻き込んでよくわからない謎のお祭りが開催されていたくらいだった。

 

「これが!オレの!祈り!!!!オレを!どうか!助けてくださいぃいいいい!!!!」

 

祭りの興奮が最高潮になったところで藤丸が絶叫しながら虹色の呼符をシステムフェイトに叩き込む。

 

そして。

 

「ハァイ!私はアルテミ……じゃなかった、オリオンよ!よろしくね!」

 

太陽の神ではなく月の女神がいらっしゃっちゃったかー!

 

お月見の時の悲しみはあるものの、オケアノスではお世話になった女神様であるし。貴重な戦力だ、全力で育成だ!

 

バーサーカーバーサーカーバーサーカーで種火を全力でぶん殴る。力尽きたり、テンション上がりすぎてしまったりするサーヴァントの介護はエミヤに任せて(正義の味方だから、いてくれた方が戦うときに負けない気がするので連れ回している。後単純に面倒見がいいので助かる)、色んな礼装の使い心地を確かめる。

 

まぁ、そのハイテンションで謎の変化を遂げていた冬木に突っ込んだら酷いめにあったのだけども。アイリさんが仲間になったし結果はトントンだったと思おう。何故かエミヤが死んだ魚の目で後をついてきていたのが印象的だったが。

 

問題だったのは羅生門かもしれない。初めて派手にパーティを壊滅させた。高笑いする茨木童子から何回ほうほうのていで逃げ出しただろうか。対茨木童子のために、今までのパーティを根本的に見直す必要があった。

 

「オッケー乗り越えてやる!」

「先輩…!はい、その意気です!」

 

マシュが魔酒魔酒していて可愛かったのもあって、やる気もどんどん上がっていく。

 

茨木童子のために新たなサーヴァントを育て直して、色んなパーティと礼装を試して試して、ついに茨木童子を倒せたときの感動といったら!このときから、今までよりも、もっと戦略を練ることを意識するようになった。

 

そして。

ダビデがぶひぶひしたり、モードレットがひたすらかわいそうだったりした天竺を乗り越え、モノになり始めていた指揮能力が役に立った鬼ヶ島も越えて。

 

不安定に次ぐ不安定で、一度は観測を間違えたのではとまで言われたそこへ。キャメロットに、挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

初っぱなからくじけそうになった。

 

なんだあの、今までとは段違いの強さの敵は!さすがにここまでくればカルデアのレーダーは随分と高性能になっていて(召喚した発明家達の協力もあったし)事前にどんな敵がくるかをある程度察知出来るようになっていたのだけれど、それでもめちゃくちゃ苦戦したのだ。

 

ここまで色々と乗り越えてきて、指揮能力も向上したことだし、主人公だもの大丈夫だろうと思っていたのがいけなかったのか。慢心したらいけない。

 

後、あちこち駆け回ることになったのもそうだけれど、とても、とても濃い時間を過ごした特異点だった。

 

溶けそうなくらいの砂漠の風、穏やかな時が流れていた山の村、そして、つめたく研ぎ澄まされたキャメロット城。

 

騎士をたくさん相手にした。トリスタン、モードレット、ランスロット、そしてガウェイン。最初の遭遇でのガウェインがどれだけ絶望的に感じたことか。最後の相対では、オリオンとエウリュアレを育てていたことが功をそうして乗り越えることが出来たけれど。あの時オリオンを呼び寄せることができた縁に感謝したかった。

 

そうして、最後。間違えた自分を止めなければならないとリリィが走り、手強い敵なら私が凪ぎ払いましょうと天草が微笑んで、ヴラド三世はいつも通りに戦えばよいと笑い、マシュはお任せ下さいと新たな姿で盾を構え、ヘラクレスはただ猛々しく吠えた。本当に最後の最後、どこか寂しそうな顔でエミヤが彼の女神を見つめていたのが、やけに印象に残っている。

 

帰還してベディを仲間に加えて喜んだのもつかの間、スカサハせんせいによる水着祭りが開催されたときはさすがに温度差で風邪をひきそうになったけども。神性のある、ということの意味を久々に強く感じた気がする。うりぼうは最初は可愛かったんだけれどなぁ…。

 

水着姿のマシュが、本当に可愛くて、その姿を見れたことがどれだけ嬉しかったか!どうせならお前も着とけよ、と職員の皆さんに差し出された水着は護身もあってやっぱり礼装だったけれど、とっても、とても、楽しかった。

 

ドクターですら、いそいそと甚兵衛を引っ張り出してきて、気分だけでも夏に浸る!と言っていたくらいだったし。

 

その後も魔法少女事件とか何度も出てきて恥ずかしくないのかエリちゃん事件とか、事件を最初に聞いたときは、誰に叫べばいいのかわからないけどいい加減にしろよ!?って叫びたくなったジャンヌ・オルタ・ サンタ・リリィ……ジャンヌサンタオルタリリィだっけ?あれ?とサンタアイランド仮面とか、たくさん、たくさん、思い出が積み重なっていって。

 

この旅の終わりが迫っている。

 

残すところは後ひとつ。恐らくは、今年中に終わらせなければ、本当に世界が終わってしまう。

 

でも、ほら。逆に考えてみようってどこかの漫画でもいっていた。

 

今年で何もかもが終わる。来年からは明るい未来が待っていて、マシュなんかオガワマンションの案件の時でもはしゃいでいたくらいなんだ、実際に今の町に連れ出したらどんな顔をしてくれるだろう?ドクターも一緒だといいな、一緒にアイドルのCDを見に行きたい。なんだかんだで、一回も好きだというネットアイドルの曲を聞いたことがないのだし。

 

サーヴァントの皆とはことが終わったらどうなるかわからないけれど、サーヴァントの皆とも外で、敵に怯えることも特異点の解決だと焦ることもないような平和な外で、のんびり観光なんかをしてみたい。

 

許してもらえるかな、でもほら、その頃には世界を救ってるんだから、それくらいのワガママくらいなら、許してくれないかな。

 

やたらとキャラの濃かった職員の皆さんとも、いっぱい、いっぱい、話がしたい。

 

そんな、先のことを考えていた矢先。

 

マシュが、倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マシュの話を聞いた。どうしてそんな、と思った。でも、飲み込むしかなくて。尚更早くこの旅を終えなければと思った。

 

だって、早く終われば、それだけ長くマシュは世界をみられる。この旅が終わったら、マシュと旅に出よう。

 

世界の中心で愛を!とまでは、恥ずかしくていえないけど、もっと、もっと色んなものを見て。悲しい思い出より、楽しい思い出を積み上げて、そうして、笑顔で、見送れるように、しなきゃって。

 

 

覚悟の古代バビロニアで、ウルクという街を見た。そして、そう、オレたちは、人間を見た。

 

王様は、強くて(過労死してたけど)。

民も、兵も強くて。

 

あの人たちと戦えたことが嬉しい。それに、あの人たちの後に続いた歴史が、オレたちのところにまで届いたことが、誇らしい。

 

ラフム。あれほど怖くて哀しいものをオレは知らない。一匹だけ攻撃してこないラフムがいて、その意味に後から気づいて吐いた。彼女は、あの人は、なにをおもっただろう?

 

最後まで抗って抗って、負けるかと、負けてたまるもんかと戦って。そうしたら、今までの縁が形になって、繋がって。

 

聖杯の七つ目が手に入った。

 

最後だ。本当に、次が最後になる。

 

全部が終わってカルデアに帰ってきた後、ソロモンとの対決が始まる前に、じゃあ、きっと最後だし、と景気付けに召喚したら、召喚陣に誰も出てこないから何かと思えば、召喚ルームの入り口で徒歩できたよ!と胸をはるマーリンがいるとかいう召喚事故が起きて大笑いもして。

 

 

で、いざ乗り込んでみたら。

 

オレたちの旅が無駄ではなかったって、意味があったって、あれだけ実感出来る光景はなかっただろう!

 

召喚されてはくれなかったけど、カルデアで遊んでいた勢はもちろん、あの旅で出会った皆が皆、駆けつけてくれて。それがどれだけ、オレの心を強くしてくれただろう。

 

ねぇ、今のオレはさ、主人公でいいよね?演じてなくても、オレは主人公だからって言い聞かせて見栄をはらなくっても、それでも、これだけの光景を起こせた奇跡を、誇らなくてなんといえばいい?

 

「君の人生だから、君が主人公なのは当たり前だと思うけどね?君があの子の手をとった時から、とっくの昔に君は本物だったよ!」

 

マーリンは、キャスターだ。千里眼も持っている。さらには夢魔でもあるから、オレの心を読める。ああ、やってしまった。それだけは、悟らせないようにって、頑張ってナイナイしてきたのに。感動してしまったから、どうしても余所にやれなかった。

 

「マーリン、何を、」

 

自分でもわかるくらいに声が震えていた。でも、見上げたマーリンはにっこりと笑っていた。

 

「君を見ていたよ。ずっと、ずーっとね。でも、読めてる人は何人もいただろうに、誰も言わないんだもの。

 

だからこのキングメイカー、英雄を山ほど見てきたこのマーリンが言ってあげよう。

 

君は、間違いなく主人公(えいゆう)だ」

「っ……!」

 

泣きそうだった。今泣いたらマシュが振り返る。せっかくヴラド三世が気を引いてくれてるのに。色んなものを振り切って、走る。

 

一本目の魔神柱を倒して、素材が落ちる。ちょっと指示が乱暴だったろうか。でも、そんなに苦労しなかったこともあって、なんとか気づかれずにすんだ。ほっとしているうちに魔神柱が蘇ったので、あわててまた倒す。素材が落ちる。甦る。倒す。素材が落ちる。甦る。

 

「あれ、これ素材取り放題……?戦いながら育成可能……?」

 

魔神柱が信じられない、と言う顔をした気がする。心なしか後ずさられたような。

 

「時間がないのわかってるか!?」

「でも!最終決戦だし!!出来る限り準備したいし!!!」

『オオ……オ………』

「ほらバルバトスだってもったないって言ってるし!」

「言ってないと思うがな!!!」

「もっと寄越せよバルバトス!!!素材置いてけ!!!!!!!」

「■■■■■!!!」

「ヘラクレスさんもダメだこれと仰ってます!」

「ええい頭を冷やさんか!!」

 

ヴラド三世にぶん殴られて正気に戻った……危なかった……なんて卑劣な罠なんだ、魔神柱、許せん。

 

気を取り直してあちこちをめぐって、助けてくれた皆にお礼を言って、駆け抜ける。

 

 

 

そうして。ソロモン……いや、ゲーティアのところにたどり着いて。

宝具が、放たれて。

 

 

「マシュ、マシュ、あ、ああ、ああああああ、あああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

盾しか残らなかった。隣で戦ってくれていたサーヴァントもいない。

衝動のまま、盾に近寄る。何もない。痕跡もない。這いつくばって何かないかと探す。吹き飛ばされていないかと辺りを見回す。

 

ねぇ、マシュがいない。いないんだ、なんで、なんで?なんで、なんでなんでなんでなんで、どうして!!ねぇ!!!

 

「なんで、あんなこといって、オレ、ずっと助けてもらったのに、恩を返せてないだなんて、なんで、オレ、オレは、」

「終わりだ」

「っ、」

 

そのゲーティアの声に息をのむ。

 

「貴様はわたしに殴りかかる権利がある。その拳をもって、命の終わりにするがいい」

 

一瞬で頭が沸騰した。なんて、なんて小馬鹿にして!

 

「上等だコラァアアアア!!!!」

「待っ、待った待った、君はほんとにテンションがあがると強いな!?」

 

その人に腕を押さえられて頭が真っ白になった。

 

なんで、ここにいる。あなたは、ここにいちゃいけない。そうだろう?なのに、なんで……?

 

「ドクター……?」

「ここからは、僕の仕事だからね」

 

そこからは、見ているしか出来なくて。ただ、愛と希望の物語という言葉が、ひたすらに突き刺さって。それで。

 

 

ドクターも、いなくなった。

 

 

「っ、う、…」

「この、この、おお、おおおおお!私が、ほどけていく…!」

 

歯を食い縛る。まだ終わってない。まだ、ゲーティアがいる。そうだ、令呪だって残ってる。

 

マシュの盾を見上げて、そっと持ち上げる。あれだけ重そうで、実際、一度ためしに持たせてもらったときはすごい重たかったのに。何故か、今、軽々と持ち上がった。後ろからマシュの手が添えられている気がする。

 

ゲーティアの目なんてわからないのに、それが見開かれた気がする。

 

「…まだ、抗うのか…?お前、ただの人間だろう?なのに、何故、」

 

迫ってくるゲーティアに、付け焼き刃にしかならないだろうよ、と言われながらも教わっていた魔術を投げつける。ゲーティアは止まらない。その体に、盾を叩きつける。一度、二度、叩きつけて、途中で思い出して令呪でサーヴァント達を呼び戻す。

 

後ろで誰かが叫ぶ声が聞こえた気がした。三度目。体ごと盾でぶつかっていって、ゲーティアを弾き飛ばして。

 

「どうして、お前は、そこまで……!」

 

唸るゲーティアに、主人公とか、英雄とか、そういうのにすがって、覆い隠してきたおれの本音が漏れた。

 

「決まってる、生きたいからだ!!」

「は………、」

「生きたいからだよ!死にたくない!訳もわかんないまま戦ってきて!駆け抜けて!そうしたら壮大すぎるわけわかんない術が目的ときた!そんなよくわかんないものに巻き込まれて死ぬなんてまっぴらごめんだ!!」

 

もう一発殴ったところで誰かが抱えてゲーティアから引き離してくれる。かわりにオレのサーヴァント達がゲーティアに向かっていくのが見える。それでも。溢れる思いは止まらなくて。叫ぶ。叫ぶ!

 

「今生きてて!ここに到達したオレが言ってやる!マシュだけが人間みたいなこといいやがって!このオレが、人間がいってやる!人間(オレ)は無駄なんかじゃない!無価値でもあるもんか!人間(オレ)がここにきた!オレが!」

 

息を吸い込む。

 

 

「お前を!倒す!」

 

 

啖呵をきった。

 

 

 

 

 

 

 

マシュと、青空を見た。

過去の空じゃなくて、今の、現代の青空を。

終わったのだ。全部終わった。

 

還ってこなくなってしまった人がいる。自分もそうなるところだった。でも、助かった。マシュも。それが、どれだけ、どれだけ、得難い奇跡だったろう。

 

今、カルデアにはよくわからないお友達とやらではなく、ちゃんとした人間からの連絡がじゃんじゃん来ているのだという。

 

その通話をとった第一声で、泣き出してしまった職員も多かったらしく、混乱もあってなかなか通信が進んでいないらしいけれど、それでも、世界は元に戻った。

 

「…………マシュ」

「先輩?」

 

首をかしげて見上げてくるマシュがいる。ああ、ダメだ、オレも泣きそうだ。

 

「全部、終わったんだよな」

「……ええ、終わりました」

「じゃあ、オレたち、明日を始められるんだよな」

「……!はい!だって、私たち、未来を取り戻せたんですから!」

 

その時、やっと、オレの中で非現実(ソシャゲ)は終わりを告げた。

 

 

 

 




まぁ、綺麗に終わらないのが人生ですけれど。(1.5部と2部を眺めながら)
自分のプレイ履歴をモデルにしつつ、一部時系列組み換えたりなんだりしました。

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