戦うことを選ばなかった凡人   作:ロック大佐

5 / 20
 四話の毒身怖いでしょうの後半部分を分割し、そこにカットした部分を付け足した第五話として新しくお話を投稿しました。
 改めて見てみると四話だけ異様に長いのと、一回目を書かないのは手抜き感が凄かったので。
 正直割り込み投稿をすると色々ずれたりして問題が少なからず起きそうだったのでどうするべきか悩んでいたのですが、最終的に投稿することにしました。すいません。

 ついでに一話から三話までのお話を微修正。こちらは気になった部分を手直しした感じです。
 ぶっちゃけ以前と違うところを探そうとすると間違い探しになるので、そちらは無理に読まずとも大丈夫です。設定変更等はありませんので。

 新たなお話は油断大敵を投稿後から近い内に投稿予定です。もう少しお待ちください。
 また、様々な理由で以前の分割前の方が良かった場合は報告お願いします。
 意見が多い場合は直ちに修正しますので。
 尚、上記の文は最新話投稿後、消滅します。


油断大敵

 ……ここはどこだろう。あたまがぼんやりする。

 かんがえがまとまらない。なんかふかふかする。

 おかしいな、たおれたのは確か廊下で──!?

 

「ひゃ!?」

 

 勢いよくベッドから上体を起こす。

 いきなり動いたせいか、少し頭がふらふらっとしたが、今はそれは問題ではない。

 自分の体をペタペタと触って状態を確かめる。

 心臓、動いてる。苦痛、どこにも感じない。体の不自由、特に感じない。

 ……俺は生きているのか? 静謐の毒を吸い込んで尚生きているのか?

 

「だ、大丈夫なの? 裕司?」

「死んで、ない?」

 

 先程から誰かの声が聞こえる気がするが、今の俺には気付く余裕がなかった。

 もう死んだと思った。二度目の人生も終わったと思った。

 だけど俺はこうして生きている。どんな治療を受けたかはわからないけど生きている。

 実感した途端、目から涙が溢れてきた。同時に鼻も詰まり始める。

 

「う……ぐぅう、ぅぁ……」

 

 涙が止まらない。鼻水も止まらない。泣き叫んでいないのが奇跡だ。

 生きていることの素晴らしさを今最大限に実感している。

 それと同時に恐怖が心へ徐々に押し寄せてきた。

 もしも治療されていなければ死んでいた事実。英霊を甘く見ていたことの愚かさ。

 様々な感情が溢れて爆発しそうだ。いっそのこと叫んでしまおうか。

 

「大丈夫、もう大丈夫だよ」

 

 ふわっと誰かに頭を抱きしめられる。頭を誰かに撫でられた。

 とても柔らかくて、とても安心して……昔感じた温かさだ。

 幼少期に情緒不安定で泣いていた時に感じた温もりだ。

 

「うあああぁぁ……あぁぁぁああああ!!」

 

 懐かしくて、嬉しくて、そのせいで涙が止まらない。

 泣き声まで出始めた。もう自分の意思では止められなくなった。

 なのに抱きしめてくれている相手はそれを許すと伝えるように包み込んでくれる。

 それがまた嬉しくて更に泣き叫んだ。抱擁してくれる相手を両腕で捕まえながら。

 

「……落ち着いた? 裕司」

「……うん、かなり落ち着いたよ立香」

 

 どれほどの時間が経っただろうか。気が付けば涙は止まっていた。

 立香は未だに俺の頭を抱きしめたままである。胸が当たってるんですが。

 しかし不思議とエッチな気分にはならず、寧ろずっとこのままで良くなってきた。

 もう立香がいればどうでもいいかなぁ……。

 

「初めまして! ちょっと失礼……おっとっと?」

 

 突如この部屋のドアが開く。そこから見覚えのあるドクターが入り込んできた。

 その瞬間俺は今の状況がどうなっているのかを思い出す。

 物凄く恥ずかしくなった俺は突き飛ばす勢いで立香を離れさした。

 こらそこ! あ……とか残念そうに聞こえる声を出すな! 俺だって超名残惜しいわ!

 それと俺を無償の愛を与える母のような目で見てくるのをやめなさい。辛いです。

 

「後遺症がないかチェックしに来たんだけど……お邪魔だったかな!」

「死ねぇ!」

 

 思わず俺は手元にあった枕をドクター・ロマンに投げつけた。

 枕は丁度ロマンの顔面にクリティカルヒット! 我ながらすげぇコントロール。

 突然枕を投げつけられたロマンは一瞬驚き戸惑ったが、すぐに笑みを取り戻した。

 

「ごめんごめん! 凄く仲良さげだったからそういう関係かと!」

「ちょ、ロマン!? 違うから! まだそういう関係じゃないから!」

 

 確かにあれだけ熱烈に抱きしめていたら勘違いするかもだけど……。

 でも流石に立香の反応を見ればわかるやろ。顔こそ赤いけど首振って否定してるぞ。

 これがラブコメなら照れ隠しと取れるけど、人の心はそんな簡単じゃないわい。

 ……立香が俺をどう思ってるかはさておき、恋人関係じゃないのは事実だしな。

 

「おっと、自己紹介が遅れたね。僕はロマニ・アーキマンだ」

「え? えっと、先程はついカッとなってしまいました。すいません……藤原裕司です」

「裕司くんだね。君は静謐ちゃん……君が運んでいた少女の毒で倒れたんだけど、体調はなんともないかな?」

「あ、はい」

 

 突然の自己紹介からの突然の健康診断である。

 でもまぁ、自己紹介は大事だからね。突然でも仕方ないね。

 体の方も特に怠いとか辛いとかはなし。寝起きだからか少し眠いくらい。

 

「静謐ちゃんの体液には毒があってね。我々の配慮不足で君を危険な目に合わせてしまった。本当に申し訳ない」

「いや、こっちも知らなかったんで……」

「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃあ一つ質問いいかな?」

 

 突然の自己紹介からの突然の健康診断からの突然の質問である。

 断る理由も特にないので、ちゃっちゃとロマンからの質問に答えよう。

 あんまりやばい質問とかしてこなければいいけど。

 

「倒れていた静謐ちゃんを医務室まで運んでくれたことには感謝するけど、どうして布団でグルグル巻きにして運んでたんだい?」

 

 ロマンはかなり真剣そうな表情で問いかけてきた。

 ……確かに気になるよね。まるで触ったら死ぬのを知ってたかのようだもんね。

 事実俺は知っているわけだが、流石にまだそれを教えるわけにはいかない。

 今の段階で明かしたらどうなるかわからんからな……。

 だから上手く誤魔化す必要がある。一応誤魔化す為の文句は用意してあるんだぜ。

 

「最近はちょっと触っただけで訴えられることも多いからね……それに俺の筋力じゃ抱えて運べないし。だから廊下を滑れるようにああするしかなかった」

「……そうなんですか?」

「うわ!?」

 

 突然立香とは反対の方向から声が聞こえた。予期せぬ声の方に驚いて振り向く。

 そこには眉毛をハの字にした、申し訳なさそうな静謐ちゃんがいた。

 貴方はいつからそこにいたの? まさか最初からじゃないよね?

 

「う~ん……気持ちはわかるが、普通そこまでやる?」

「童貞のヘタレ度を舐めんな」

 

 小さくそう呟くと、流石のロマンもピシッと固まってしまった。

 そりゃ出会ったばかりの人から童貞なんて言われたら固まるよな……。

 俺も羞恥心が刺激されまくってるけど、これで言い逃れできるのなら後悔はない。

 密かに満足していると、静謐ちゃんが話しかけてきた。

 

「あの、私を医務室まで運んでくださり、ありがとうございました。それと、本当にすいませんでした。私の毒が貴方を苦しめてしまった……」

 

 頭を深く下げながら感謝と謝罪をしてきた。

 感謝されるのは実に気分が良くなるよね。いいことしたわってね。

 それと謝罪の件だけど……正直あまり気にしてない。

 俺が毒に侵された原因を作ったのは他ならぬ俺自身じゃないの。

 それに運が良かったのか、毒で倒れる寸前の時も実は苦しくはあっても痛みはなかったしね。

 

「私の全身は毒に塗れていますから、分泌される汗も危険なんです。だから、その……これからは私に近付かないようにしてください」

「静謐ちゃん……」

 

 こちらの身を案じてか、静謐ちゃんは自分の体質のことも告げてきた。

 同時にもう近寄らないように、と言うその姿は……どこか寂しそうだ。

 いや、実際寂しそうではなく寂しいのだろう。彼女に触れられる人は限られているのだから。

 数少ない触れられる相手である立香も、触れられないロマンもどこか悲しそうだった。

 やっぱり仲間が悩んだり苦しんだりするのは辛いのだろう。気持ちはわかる。

 

「静謐さん。貴方の言い分はよく理解しました……が、それはそれとして提案があります」

「……はい」

 

「例え触れられなくても、友達として仲良くなってはくれますか?」

 

 言葉が届いた瞬間、静謐ちゃんは驚きで目を見開いた。

 恐らく信じられなかったのだろう。自分のせいで死に掛かった奴がそんなことを言うなんて。

 まあこちらとしては寧ろこれからを考えると仲良くなっとかないとまずいってのもあるが。

 

「俺の名は藤原裕司。君の名は?」

 

 しかし解除不可能な毒に彼女自身苦しんでいるのを知ってるからなぁ。

 例え打算を抜きにしたとしても、苦しんでる女性を邪険にはできんよ。

 ……さて、静謐ちゃんの答えは?

 

「……静謐のハサンです。私で良ければ喜んで!」

 

 毒の耐性を持っていない人に友達になろうなんて、今まで言われたことがなかったんだろう。

 静謐ちゃんは心底嬉しそうに無意識に差し出していた俺の手と握手をした。

 吐血しながら意識が遠のいたのは、握手されてすぐのことだった。

 

「あ」

「あ!」

「え!?」

「ぐべぶぉぉぁあああ!?」

 

 しまった! 静謐ちゃん相手なのに無意識に手を差し出していた……ぐふっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで二度目の起床……から数分後。

 流石に二度目ということもあってか、一度目程の動揺はなかった。

 人間は慣れる生き物だから? それとも一度助かってるから危機感薄れてる?

 とりあえず二度も気絶したんだ。そろそろ状況を確認したい。

 そう考えながら立香がいた方へ振り向こうとした時だった。

 

「初めまして、ますたぁのご友人様」

 

 隣から声が聞こえる。しかしこの声は立香のものではない。

 この声はこっちへ転生してから初めて聞く。しかし聞き覚えのある声だ。

 その幼く、しかしねっとりとマスターと呼ぶこの声は……!

 思わず俺は横へゆっくりと振り向いてしまった。

 

「わたくしは清姫。ますたぁとはとっても親密な関係ですのよ?」

「そ、そうなんですか……俺は藤原裕司。よろしくです」

 

 まるで牽制するかのように立香との親密アピールをしてきた。

 ああ、遂にこの時がやってきてしまったか……カルデア最高の嘘発見器よ。

 最初の挨拶の時からいつかはこの日が来るんじゃないかと思っていた。

 でも早すぎじゃねー? もっと遅く来てくれてもいいじゃん。

 結果的に溶岩水泳部の一人と早い段階で仲良くなれたと思ったらこれかよ。

 試練の連続だぁ……もうギブアップしたい……。

 

「……ご友人様、一つお尋ねしてもよろしいですか?」

「な、何でしょう? 答えられる質問ならなんでも答えるけど?」

「ふふふ、では嘘偽りなく答えてくださいませ」

 

 清姫は嘘を吐いたら殺すと言わんばかりにこちらをじーっと見つめてくる。

 ……仕方がない。こんな状況だと逃げられないだろうし、こうなりゃやけくそよ!

 さあ清姫! 何が聞きたいんだ! 立香と俺の関係か? 立香の女の好みか?

 どんなことでも聞いてこいやゴルァ! どんな質問をされても正直に答えてやろうじゃないか!

 立香(ますたぁ)がいる以上どれくらい仲良くなれるかはわからんが、絶対に仲良くなってやろう!

 そう、毒耐性は持ってなかったのに少しは絆を結ぶことができたあの静謐ちゃんのようになぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は、安珍様の生まれ変わりですか?」

 

 なんで?




 Q.なんできよひーそう思ったんや……。
 A.ちゃんと理由はありまっせー。次回明かされるかはわかりませんが。

 Q.なんだぁ? 静謐ちゃんときよひーはハーレム入り確定かぁ?
 A.まず好感度上げないとやばいんだよなぁ……つまりハーレムをさせるかはまだ未定。というかラブコメをするかどうかすらまだ決めてないという。

 Q.主人公死なないの? 実質不死身?
 A.裕司以外はそう言えるかもしれない。でも裕司は条件を満たすと死ぬ。決して安全ではない。

 Q.結局なんで静謐ちゃんは倒れてたの? 叫んだ時に誰も来なかったのはなんで? そもそも運搬中になんで誰とも遭遇しないんだよ! ご都合主義がすぎねぇか作者ァ!?










 A.ヒント1:花。

この小説を書く際に気をつけていることがあります。それは極力☆や♡などの記号は使わないことです。でも完全に使わないってなるとカンダーラ☆ブホテルみたいなネタが使えないんですよね……仕方ないと言えば仕方ないですが。そこでアンケを取ります。記号はやっぱり使わないで欲しいです?

  • この調子で一切使わないで(切実)
  • 本文以外の場所、前書きとかなら大丈夫
  • ネタとして使う分にはOK(ネタ以外は嫌)
  • あってもなくても特に気にしない
  • これから毎回使っちゃおうぜ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。