とある銀河のとある星の海へと不時着した一隻の宇宙船。船を動かす為の管制室は血に染まり通路には二足歩行の形を取る異形の……蛆の沸いた死骸が散乱していた。そんな酷く荒れ果てている内部には唯一穢れていない部屋が在る。そこは薄暗い『冷凍睡眠室』だ。ただ一つ存在する機械仕掛けの寝床には窓が備え付けられており寝ているのは裸の子供だった。凍り付いていたその子供は閉じていた瞼を開く。
「……」
子供は辺りを見渡した。“彼”は自分の置かれている状況を理解すると先ず身体を動かそうとした。しかし骨の芯まで凍りついており僅かでも動かせない。暫くした彼は自分の意識が有る事に今気付き、自分が普通の生き物では無い事を悟る。しかしどうする事も出来ない彼は五分ほど途方に暮れていた。
「!」
彼は不意に訪れた野生の勘に従い藻搔いてみた。すると凍りついた一本の腕が溶け出してしまった。彼は目を見開き大変驚くが次の出来事がもっと驚く事となる。何と溶けた腕は赤黒い液体となりそれが不規則に蠢き始めたのだ。瞬時に彼はそれは生きており自分の意思によって遠隔操作を行える事を頭で理解した。そして試してみたら正しかった。念じたら液体は寄り集まり生身の腕となったのだから。しかもその腕の断面からは新鮮な血液が流れ出ておりそれは内部に溢れる冷気によって瞬時にして凍て付いていった。このまま溶ける事を理解した彼は再び腕を溶かし維持する方へ方向性を変えた。紆余曲折の末、腕には虎の掌と鷹の爪……口元からは徳が高そうな長い髭が生えた。氷が溶け自由の身となった彼はそのまま鷹の爪を窓に突き立てた。先端は響を残しそのまま掌を押し出すとけたたましい音を部屋中に響かせ窓が割れた。彼は寝床から逃れそのまま床に落ちた。
「……!」
落ちた反動か彼は頭痛に苛まれる事となる。余りの痛さにのたうち回っていると次第に憶えのない記憶が鮮明に蘇ってきた。
◇◇◇
只々広いメトロポリスだった。そこには元来住んでいる筈の住民は居らずその空には一輪の小さな光が浮遊しているだけだった。……光は“目”を光らせた。するとこの空間に居る筈のない白衣の者達がその先に立っているのが見えた。
「……!?」
白い者達は慌ただしくその場から離れようとする。それを理解した光は眩い輪を出現させる。するとそこから熱線が放たれその先に居た一部の白い者達を焼き切る事となった。罅が入った空間は割れる音と共に彼を元の場所へと戻す。