「…なんで、ここにいるのよ?」
「なんでと言われましても……なんとなく?」
古明地姉妹の妹か、紫はそう思った。一応、ミアは古明地姉妹の姉という立場にいる。血の繋がりがあるかは分からないらしいが、覚り妖怪の生き残り同士だからだろう。
「外の世界で何をやっていたのかしら?」
「外の世界…というか、別次元にいましたが、中々楽しかったですね」
「別次元…?」
何百年も会っていなかった為、天然さが増したように思えた紫。別次元には、“スキマ”を使えば楽に行けるだろう。
「あぁそうだ。“あの子達”はどうしていますか?」
「……一応、元気にやっているわよ。スカーレット姉妹は、こっちで散々やらかしたけれど」
紫から散々やらかしたと聞き、その散々な出来事を読心するミア。その異変の数々に、あの子らしいと思ったミア。
「とりあえず、会いに行きましょうか」
ミアがパチンと指を鳴らすと、真っ赤な屋敷が目の前に現れた。
「瞬間移動です。魔力には自信があるので」
そういう彼女の瞳には光がない。おまけに表情筋も動いておらず、完全に無表情だ。
何度も言うが、ミアには感情がない。過去に色々あり、感情を失ってしまったのだ。その色々な出来事は後ほど説明する。
「美鈴…は、いましたね」
トコトコと門の前の少女に歩み寄り、チョンチョンと肩をつつくミア。
寝ていた少女は、うっすらと目を開けミアをじーっと見つめる。やがて意識がはっきりしてくると、顔から血の気がサーっと引いていき、目を丸くして驚いた。
「み、みみ……ミア様!?!?」
大きな少女の声は、屋敷周辺に響き渡る。
少女の名は紅 美鈴。ここ、紅魔館の門番をしている妖怪で、紅魔館の主にしてミアの妹である吸血鬼、レミリア・スカーレットに仕える従者の一人だ。
「えぇ、私ですよ。久しぶりですね、美鈴」
「お、お久しぶりです…ミア様! 一体、どこへ行っていたんですか? お嬢様も心配していましたよ!」
嬉しさ半分、驚き半分といった顔でミアを見る美鈴。
その時、屋敷の扉が勢いよく開かれた。
「どうやら、来たようですね」
青みがかった銀色のセミロングに、深紅の瞳。十歳前後の見た目に反し、背にはミア同様大きな漆黒の翼を生やしている少女だ。大きめの日傘をさしながら走ってきた。
「レミリア、久しぶりですね。フランドールはどこですか?」
この少女の名は、レミリア・スカーレット。先程も言ったが、ミアの妹にして紅魔館の主である吸血鬼だ。
「お姉様! 一体、今までどこに行っていたの!? 四百年くらい消息不明だったわよね!?」
「あぁ、実はですね、“これ”を作る為に色々と次元を渡り歩きましてね? 研究とか凄くめんd…大変だったので、こんなに時間がかかってしまったのですよ」
「今面倒って言わなかった?」
「気のせいですよ」
長い髪をかき分け、耳についたイヤリングを見せるミア。なんの変哲もない鉄のイヤリングだが、何か仕掛けがあるようだった。
「これはですね、“日除け魔法”を付与したイヤリングなんです。ただの日除け魔法ではありませんよ。約四百年間、様々な次元の魔法を研究・改良して出来た、とっておきの日除け魔法です」
「あぁ、だから日傘をさしてなかったのね。そんなに効くの? その日除け魔法」
「覚りの血も混じっている私だからかもしれませんが、効果は絶大ですね。良かったらつけてみます?」
そう言ってイヤリングを外したミア。すると、ミアの翼がチリチリと音を立て、煙を出し始めた。
「み、ミア様!? 翼が…!」
「お姉様!?」
「ありゃりゃ…でもまぁ、効果はある事が分かりましたね」
能天気なセリフを言いながら、またイヤリングをつけるミア。つけた途端、チリチリという音も、煙も出なくなった。
「あぁ、そうだ。フランドールは? あの子にも会いたいのですが」
「フランなら、多分地下室にいるわよ。最近はよく出歩くから、絶対に地下室にいるってわけじゃないけど」
「そうですか。ありがとう、レミリア」
そう言いながら、レミリアの頭を撫でるミア。レミリアが驚いた時には、もうミアの姿は見えなくなった。
「相変わらず、自由なヒトね…」
「えぇ、そうね。…私は帰るわ。じゃあね」
今まで空気だった紫は、そう言い残してスキマの中へ消えていった。
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ここは地下空間。紅魔館の大図書館よりも更に地下にある空間だ。
完全な暗闇なのだが、吸血鬼は暗闇も見える。ミアは、スイスイと進んでいき、ある部屋の前にたどり着く。その部屋の中からは、ブツブツと何かを呟く声が聞こえてくる。
間違いない、そう確信したミアは、部屋の扉を開けた。
「見つけましたよ、フランドール」
「…お姉さま…? お姉さまなの?」
部屋のベッドに座り、人形遊びをしていた一人の少女がミアの方を向く。
濃い黄色の髪をサイドテールにし、全体的に赤っぽい服を着た少女は、レミリアとはまた違う、七色の宝石を枝につけたような翼を生やしていた。
彼女の名はフランドール・スカーレット。レミリアとミアの妹だ。
「えぇ、私ですよ」
「お姉さま…! 今までどこに行ってたの? 私、寂しかったのよ…」
きゅっとスカートの裾を握りしめ、表情を曇らせ俯くフランドール。
そんなフランドールの目線に合わせ、ミアはしゃがみこむ。そして、そっと抱きしめた。
「ごめんなさい、フランドール。もうどこにも行きませんよ」
「本当…?」
顔を上げ、目に涙を浮かべながら問うフランドール。その問いに、深く頷くミア。
途端にフランドールの表情は明るさを取り戻していく。
「やった♪ ミアお姉さま大好き!」
「ふふ、よしよし」
ニコニコしながらミアに抱きつくフランドール。ミアも、一瞬だけ笑ったように見えた。
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「では、地霊殿に行ってきます」
「唐突ね。さとり達に会いに行くんでしょう?」
「えぇ。夕飯には……帰らないかもしれませんが、とりあえず行ってきますね」
ビシっと敬礼モドキをし、スキマに消えるミア。
それを見届けたレミリアとその従者、十六夜 咲夜。
咲夜は、紅魔館唯一の人間で、この屋敷のメイド長を務めている。
「………何か、嫌な予感がするわ」
レミリアがティーカップを置き、そう呟く。それまで目を閉じていた咲夜が、パチっと目を開ける。
この『嫌な予感』は、ただのカンではない。レミリアの能力は、『運命を操る程度の能力』。つまり、未来を少しだけ覗ける能力なのだ。簡単な事なら運命を変えられるらしいが、実際に使った所は誰も見ていないので分からない。
「今日の夜は、満月かしらね。……予感が当たらないといいけど」
「そうですね」
その頃ミアは……
「おいおい、久しぶりに会ったんだ。少しくらい付き合ってくれよ?」
「アンタには私の能力があまり効かない…でも! 所詮は吸血鬼と覚り妖怪の混血! 鬼には遠く及ばない!!」
「あらあら……楽しくなってきましたね。いいでしょう! この四百年間、鍛えに鍛えた私の能力! 存分に発揮してさしあげますよ!!」
……喧嘩をふっかけられていた。
結構無理矢理です…。作者は原作未プレイなので、まだまだ分からない事だらけなんです…。
次回、戦闘回になります。初の戦闘シーンですが、頑張って描写していこうと思います!ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!