ミアが地霊殿の門を開けようとすると、背後に強力な妖気を察知する。サードアイが背後の人物の思考を読み取り、回避行動をとる。
その人物の拳が命中した門は、バキバキと亀裂が入り、ガラガラと崩れ落ちた。
「おぉ、流石は『最強の覚り吸血鬼』。私の拳を簡単に避けるとは…やるねぇ、ミア」
「いえ、それほどでもありませんよ。他の方より少し敏感なだけですから」
ミアを奇襲したのは、ここ地底に住む鬼の四天王の一人、星熊 勇儀。昔、ミアがよく一緒に酒盛りをした鬼の一人だ。
長い金色の髪に、立派な赤い一本の角。体育着のような服に、半透明なスカートを履いている。
「よく言うよ。この私でさえアンタには勝てないんだ。いつか霊夢も倒しそうだな」
「霊夢……あぁ、なるほど。現在の博麗の巫女ですね。歴代最強ですか。戦えるのならば、戦ってみたいですね」
そう言うと、勇儀は呆れたような目でミアを見てきた。心の中では、ミアの事を「戦闘狂」と言っている。ミアは、「あなた達鬼だってそのようなモノなのに…」と思った。
そんな事を思っていると、ミアは背後に気配を感じた。もしやと思い、ミアが真後ろに手をかざし、きゅっと手を握る。すると、周りから霧が集まり、一人の少女が姿を現した。
「おっと、見つかっちゃったね。流石はミアだ」
「私は昔、あなたに触れています。それに、吸血鬼は…というか、レミリアが霧を操れますので」
若干残念そうに笑う少女は、勇儀同様鬼の四天王の一人である、伊吹 萃香だ。
長い茶髪を下の方で一つにまとめた髪形に、太い枝のような立派な二本の角。手足には鎖がついている少女だ。
「本当は勇儀がやられた直後に奇襲をしかけようとしたんだけどなぁ」
「あら、鬼はそのような行動が嫌いなのでは?」
「アンタと戦うんだもの、それくらいは必要でしょう?」
「それはそれは…鬼に強さを認められた、という解釈でよろしいのですね?」
「んー…まぁ、そうかな。……じゃあ勇儀、先にやっていいよ。私はこっちで見てるから」
少し後ろに下がった萃香。勇儀は戦闘態勢に入った。そして、何故かミアは首をかしげている。
「…ん? どうした、早く始めよう」
「いえ、一斉にかかってくればいいのになぁ…と。あ、鬼はそういうの嫌うんでしたっけ? まぁいいじゃないですか。一斉にかかってきてくださいよ」
そう言い放ったミアの雰囲気は、先程ののほほんとした雰囲気とは全く違うモノになっていた。
溢れ出る殺気、漏れ出る妖気と魔力による瘴気。瞳は鋭く、鈍く光り輝き、翼は自らの身長を上回る程大きく広がっている。
その姿に、ゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込む二人。ただ立っているだけなのに、その存在感と恐怖は底知れない。改めて、ミアは化け物だと悟った二人。
「そっちがこないなら、こっちから行くよ!ハァッ!!」
「鬼のパワーを、身体でとくと味わうがいい! ヤァッ!!」
ミアの前後にいた二人は、一斉にミアに殴りかかる。物凄いスピードで突っ込む二人。
ガァン! と、二人の拳がぶつかる音がした! しかし、ミアは瞬時にふた振りの剣を『創造』し、手を前でクロスさせて二人の拳を受け止めた。
鬼二人の拳を受け止めた剣は、少しヒビが入ったものの、壊れる事はなかった。
「おやおや、結構丈夫に創った筈なのですが…。鬼のパワーは底知れないですね」
余裕そうにそう言い、剣で二人を離れさせる。
先程の剣を捨て、新たな剣を『創造』するミア。炎を纏った長身の剣と、バチバチと帯電した短身の剣を持ち、構えるミア。
「ふん! そんな剣、すぐに壊してやるよ!! ハァァァッ!!!」
萃香の能力は、『密と疎を操る程度の能力』。あらゆるものの密度を操る能力だ。その能力を使い、身体を巨大化させた萃香が、巨大な拳をミアへ振り下ろした。
「ふむ…」
ミアは即座にふた振りの剣を巨大化し、クロスさせて萃香の拳を受け止めた。地面はボコボコにくぼみ、少し地響きがする。
「私も忘れてもらっちゃ困るよ!」
そこに、勇儀が突進してきた。凄いスピードでミアに殴りかかろうとし———
「っとぉ! ミアちゃんには指一本も触れさせないよッ!!」
——ミアにそっくりな中性的な少女が、ふた振りの刀を用いて勇儀の拳を受け止めた。
長く白い髪を一つに縛り、ミア同様紅と黒のオッドアイに大きな漆黒の翼。服は紺色のタキシードを着用しており、シャツの一番上のボタンは外している。
「アンタは確か……」
「そ! 俺はミアちゃんの分身の、レイヤだぜ! 刀使うから、怪我しないようにね?」
「ふん、面白い…! ミアより弱い分身が、私敵う筈がないッ!! ハァッッ!!!」
レイヤと勇儀が戦闘を始め、ミアも動きを見せた。
剣をぐっと強く握り、少しずつ萃香の拳を持ち上げていく。
「ッ…!? 馬鹿力にも程があるだろ!!」
「その言葉、そっくりそのままお返しします!」
両腕を大きく広げ、その反動で拳を跳ね返し、更に剣で拳を斬ったミア。炎と電気を纏った剣は、萃香の拳を燃やし、腕を痺れさせた。
だが、それもほんの一瞬で、すぐに体制を整える萃香。
しかし、その一瞬で、形勢が逆転する。
「ぁ———ッ!」
天狗のスピードで萃香に近付き、鬼のパワーで剣を振るうミア。
右上からの剣を、一瞬遅れて回避する萃香。その振り下ろした剣を瞬時に振り上げ、斬撃を飛ばしつつ掠るミア。能力を使う隙は一切与えない。
「ぐッ…!!」
斬撃が見事にあたり、少しふらつく萃香。そこを、ミアは見逃さなかった。
一瞬。たった一瞬で萃香の懐に潜り込み、ふた振りの剣で斬る。
「がッ…!? ……まだ、まだァ…ッ!!」
ゴフッ、と血を吐くも、鬼の我慢強さで耐える萃香。そして、先程同様巨大化する。
「大きくなればなる程、的が大きくなるのですよ? 力などねじ伏せてしまえは良い。さぁ、くらいなさい!!」
スッと飛び上がり、密度の高い弾幕を発射するミア。しかし、そこは鬼の四天王である萃香。自分を霧にして、全て避けてしまう。
(吸血鬼の弱点は流水だ。霧の密度を増して水にすれば…!)
その考えを、すぐさま行動に移す萃香。霧を全体にばら撒きつつ、ミアの頭上に霧を貯めていく。
(今だッ!!)
「———レイヒン」
ミアの頭上に水の塊が落ちてくる。その塊がミアに当たる寸前に、霧となって分散した。
「…!? なんで——…ッ! お前か…!!」
一瞬困惑したものの、すぐに一つの人影の方を睨む萃香。
「えぇ、ご名答。私の名はレイヒン。ミアの分身の一人よ」
にっこりと胡散臭い笑みを浮かべるポニーテールの少女———レイヒンは、ミアの隣に移動して微笑んだ。
白色の髪をポニーテールにした髪型に、紅と黒のオッドアイ。服は、深紅のワンピースを着用しており、背には漆黒の翼が生えている。
「……さて、そろそろ決着をつけるとしましょうか」
そう言い、闇をまとった剣を一振り『創造』したミア。萃香も構える。
「「………」」
二人の間に重い沈黙が訪れる。ピリピリとした空気の中、先に動いたのは萃香だった。
「ハァァァァッ!!!」
ダァン、と地を蹴りミアへ突進する萃香。ミアはそれを横に移動して避け、萃香の背後を狙う。
剣が振り下ろされる前にミアの方へ向き、手首についた鉄の輪でそれを受ける。ギリギリと音が鳴り響く。その状態が数秒続き、剣と鉄の輪がギィンと火花を散らしながら離れる。
鉄の輪から剣を離した反動で、大きくよろけるミア。そこがチャンスだと思い、地を蹴りミアの懐へ潜り込もうとする。
しかし、その反動を利用して萃香を剣で斬りつけるミア。萃香は吹き飛ばされ、近くの建物にぶつかった。
土煙を、自身に乗っかっていた瓦礫を吹き飛ばして晴らす萃香。まだ立ってはいるが、もうフラフラで傷だらけだ。
対してミアは、かすり傷こそあるものの、そこまで目立った外傷はない。
萃香の元へ歩いていき、剣を萃香へ向けるミア。
「……チェックメイトです」
———それを大きく振り上げ、萃香へ振り下ろした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!!
今回、初の戦闘回でしたが、どうだったでしょうか?戦闘は描写が難しく、でも書いていて楽しい。そんな感じでした。まだまだ拙い文章ですが、これから精進していきますので、どうかよろしくおねがいします!