魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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ヤバいヤバい。気がつけば、半年以上も休んでしまっていた。なんとか、書き留めていた分が完成したので、今日と同じく19時に、後2話分投稿します。大変、お待たせてして申し訳ありません。それでは、どうぞ!!



第2話 内ならケモノ

バラキエルと共にアジ・ダハーカの力を使わず自身の力のみで力を最低限しか引き出すことが出来ない木刀を使っての剣術の修練を終えた後、黎牙は息を切らし大の字で寝っ転がっている。そんな黎牙の近くにバラキエルはタオルとともにスポーツドリンクを彼に手渡す。

 

「君は日に日に私の剣術を吸収し、己が剣技をめざましく昇華させている。私自身も君との剣の修行は心躍るものだ」

「それは……はぁ…はぁ、どう…も。まだ、一度も……ぜぇ…勝てたこと…………ないがな」

 

「それは年季の差という奴だ。まだ君は自身の力に完全に御しきれてはいない。そのような未熟者に負けてしまえば、『雷光』と謳われる私の立場はない」

「言ってくれるな。その内、地べたにアンタの顔面を擦り付けやる」

 

「いずれ、な。これからの闘いにおいて、君の力を狙う者たちの中に必ず君の神器(セイクリッド・ギア)————禁龍主の邪剣(プロヒビット・ヘェリィシュ)の能力を無効化させくる相手は出てくる。そのためアジ・ダハーカの力を制御するだけでなく、君自身の成長が剣技、術、そして霊能力の修練を積まなければならない」

「無効化してくる敵には、あのクソゼルも含まれるから。俺としては、アンタ達に手の内を明かしたくはないんだがな」

 

ラヴィニアに自身を殺すように命じたアザゼルへの敵意を隠すことなく、黎牙はバラキエルに対して起き上がりながら皮肉を吐き捨てる。黎牙の嫌味に含まれている殺意にバラキエルは臆することも、逸らすこともせず、彼等を教える立場である大人として、そして、何処か自身を責める様な瞳で真っ直ぐ受け止める。

 

「君にそう思われても仕方ない。我々堕天使を信用などしなくていい……だが、彼らは君を仲間だと思っている。だからこそ、命を掛けて暴走して君を救おうとしたのだ。そんな風に君を心から信じている彼らをどうか護ってやってくれ。失ってからでは遅いのだ(・・・・・・・・・・・)

「…………ッち、皮肉も通じねぇーのかよ。クソジジィ」

 

「ふふ、そこまで元気なら、もうワンセット剣を交えようではないか」

「上等だ!ボロボロして、快感のあまり昇天させてやる!!」

『さっさと、そのドMを駆逐しろ』

『気持ち良すぎのあまりキショイ声を出させてやれ☆』

『いや、気持ち良すぎて声も出ないようにしてやれ☆』

 

「ふふふふふ、それは楽しみだ。さぁ来るがいい若き邪龍よ!」

『『『「上等だ!!腐れドM!!」』』』

 

ほとんど冗談ではあったのだが、黎牙たちの罵りによって別の意味で火がついてしまったバラキエルは両手を広げ、黎牙を迎え撃つ。

やがて、修練時間を過ぎているのに戻って来ないバラキエルを迎えに来たコカビエルだったのだが、彼自身も戦闘狂なため日頃のストレス解消として参加してしまう。そのため3人は直ぐに三つ巴となり、修練場は荒れまくってしまう。そして、堕天使陣営の中で最もまともかつ副総督であり、堕天使たちから影でオカンと言われているシェムハザによって3人揃って説教地獄へと移行したのは余談である。

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

時間はあっという間に過ぎ去り深夜。

シャムハザの説教タイムから漸く解放されたものの、これ以上の鍛錬の禁止を言い渡された黎牙は、1人黙々と自室で魔法に関する書物をラヴィニアから貰った翻訳メガネをかけて読み漁る。その理由は、今ある様々な術式と、アジ・ダハーカの知識から得た魔法を組み合わせて、新たなる魔法を創り出そうとしているのだ。アジ・ダハーカをその身に付加(エンチャント)させ、戦闘能力を飛躍的に向上させる邪龍礼装(マリシャス・ドライブ)は、あくまで禁じ手を使えない自分の切り札である。その切り札を早々使ってしまえば、後はバテるだけ。そんな自分の現状を変えるべく黎牙は、より一層効率の良い戦闘用魔法の研究に明け暮れていた。アジ・ダハーカの知識から得られた禁術級の魔法はどれもが強力であり、アジ・ダハーカ自身が創り出した物が多かった。しかし、それはアジ・ダハーカたちが使ってこそ真価を発揮する魔法。例え、アジ・ダハーカが自分の影に憑依していたとしても100%の力は発揮されない。そのため、数多くの書物や付加(エンチャント)して得た知識を組み合わせ、自分に合った魔法を見つけようと黎牙は虚蝉機関(うつせみきかん)との死闘後、ずっと研究を続けている。

 

「やはり、呪術系統と霊能力を利用した敵の魂を直接破壊するための術式はまだまだ未完成な点が多いな」

『それは仕方のないことだ。霊能力とは、人間だけが持つ力だ。俺たちの様な異形者達とは異なるものだ。早々に術式として組み込めるものではない。それにお前はまだ霊能力が完全に目醒め切れてはいない。あくまで、他の魂に呼びかけ、その者達から力を借りることしかできん』

『全然ダメダメだぜ☆』

『まだまだ弱弱だぜ☆』

 

もはや特等席と化した俺の頭に居座るアジたちの手痛いダメ出しが降り注ぐ。

 

「やっぱりか。そうなると、9割がた完成している『敵の細胞を焼き尽くし続けることで敵から生命エネルギーを喰らい続ける』半永続的攻撃魔法の完成を急ぐか」

『そうなるな』

『スゲーエゲツない魔法を思いつくぜ☆』

『中々おもしれぇー魔法を考えつくぜ☆』

 

「もう一踏ん張りと行くか」

 

アジ・ダハーカの意識が入った黒いぬいぐるみ龍型のデバイスを頭に乗せた状態のまま黎牙は作業を進めていく。そして、数時間で術式を完成させ、掌に魔法陣を展開させる。

 

「よし、これで完成だ」

「やっぱりファングは凄いのです」

 

「またか」

 

眉間にしわを寄せながら、声のする方へ振り返ると案の定ラヴィニアが興味深そうに此方を見ていた。

 

「何のようだ?」

「ファングとお話がしたくなったのです」

 

「話すことはない。帰れ」

「むぅ、ファングは意地悪なのです」

 

露骨に頬をフグのように膨らませながら、黎牙を机から引っ張り出しベッドに座らせる。黎牙も黎牙で、魔法の研究で疲れていたのか、抵抗するのが面倒になりなされるがままとなる。

 

「で、今度は何だ?」

 

余程疲れが出ていたのか、眉間を軽くマッサージを施しながらラヴィニアへ視線を向けると、まるで何かに恐怖を抱いているかのように彼女は顔を伏せている。

 

「………ファングは……自分のチカラが怖く……ないのですか?」

 

突然投げかけられた言葉に含まれる真意を図れずにはいるが、あの時自分の叫びを聴いてくれた時とは違う彼女がナニカに恐れ、嫌悪を抱いていることは察知する。

 

「…アジたちと対話を交わす前の俺は、確かにアジたちを恐れていた。だが、今はコイツらは、俺の一部だと断言できる」

「…………自分の身体を狙っているのにですか?」

 

何処か怯えても見える彼女に黎牙は嘘を一切交えず、本心を伝える。

 

「アジたちはドラゴンだ。ドラゴンは欲望のままにチカラを、闘争を求める。そのドラゴンたちの中でも邪龍は、頭のネジが外れた奴らだ。そして、そんなクレイジーなドラゴンを宿す俺も、殺人に対して全く嫌悪を持たないクソ野郎だ。だが、いつまでも自分にビビっていたら、また暴走するのだが関の山だ」

 

何か言いたげなラヴィニアを分かっていながらもワザと気にする素振りを見せず黎牙は話を続けることとする。

 

「アジたちのチカラを使いこなすには、以前までのビビリの俺は邪魔だ。だからこそ、今の俺は今までの弱い俺を殺し、邪龍として自分の欲望のまま敵を喰らい殺すことにした。この身体は、例え俺の一部であるアジたちだろうと渡さねぇ。アジたちが欲望のままに俺を喰らうと言うなら、俺はこれでもかって言うほど抗ってやる。そして、世界がオレを否定すると言うなら、神だろうが、魔王だろうが、殺し尽くすだけだ」

 

 

「世界の秩序のため?危険人物だから?知るか!!俺はオレのままに生きる。俺を殺しに来ると言うのなら、総ての敵を滅ぼすだげだ。それが俺の……邪龍として生きると決めた阿道黎牙の生き様だ」

 

 

黎牙の言葉を最後まで聴いて何を思ったのか、ラヴィニアはただ静かに頭を傾けながら、黎牙の肩へ頭を預ける。そして、眼を伏せながら黎牙の掌に自分の掌を重ねる。いつもとは違う弱弱しい彼女に何処か、幼い頃の自分の面影を重ねてしまったため何も言い出せない。

 

 

「私は、私のお人形が………氷の姫君が怖いのです。どれだけ強くなっても、多くの魔法を覚えても私は、姫君への不安と恐怖を消せないのです」

「………………」

 

「まるで私自身が、姫君の操り人形ではないのか…と思ってしまうのです」

「それは違うだろ」

 

絞り出すようにラヴィニアが告げた言葉を黎牙は、一刀両断に否定する。話した彼女も黎牙が、即座に否定してくれるとは思ってもいなかったのか、飛び起きるように彼の顔を覗き込む。

 

「俺の部屋に勝手に侵入したり、勝手に暴走した阿呆を命がけで止める様な馬鹿な指示をあの氷の塊が、すると思ってんのか?」

「なっ!?」

 

あまりの失礼な物言いにラヴィニアは一言文句を言うとする。しかし、彼女の口から抗議の言葉は出ることはなかった。

 

なぜなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにお前は、あの時自分に怯えていた俺に

『絶対大丈夫』。そう言ってくれたんだぞ」

 

 

 

一緒に行動するようになって、初めて見た黎牙の穏やかな笑みに何を話そうとしたのか忘れてしまうほど眼を奪われていたのだ。

 

 

 

 

「だから、お前も何とかなるだろ。もしもの時は、何でもぶった斬る犬っころがいるからな。お前を操る糸もぶった斬ってくれるだろ」

 

「…………その、トビー任せなのはどうかと思うのですが」

 

頬を僅かに赤く染めていくラヴィニアは、まるで厄介ごとを押し付ける様な言動の黎牙に困惑気味ながらも答える。すると、さっきまでの穏やかな笑みが吹き飛ぶ様な悪そうな笑みを浮かべ、カラカラと嗤いながら何処かにいる当人がいないのをいいことに言葉を続ける。

 

「知らん。お前の面倒なんか見切れるか。俺は邪龍だぞ、人助けなんて絶対にしない」

「むぅ、ファングはやっぱり意地悪さんなのです」

 

「はっ、邪龍はどいつもコイツもイカれてんだよヴァーカ」

 

さっさと帰れと付け加え、腫れ物でも扱う様にラヴィニアに向けてシッシッと手を振る。

 

「…えいなのです!」

「ちょっ!?」

 

黎牙が自分を露骨なメンド臭そうに見ることに少しでも仕返しをしおうと考えたラヴィニアは、両手を広げ黎牙の首へと素早く回す。咄嗟の反撃に驚いて行動に移すのが遅れた黎牙に追撃とばかりにラヴィニアは、抱きついた勢いを殺すことなく、自分の全体重を乗せ、彼をベッドへと押し倒す。

 

「おい!?どういうつもりだ!!」

「ふっふっふ、今日はファングを抱き枕にして一緒に寝るのです!!」

 

「ふざけんな!!お前の格好といい、身体といい色んな意味で俺にとっては毒なんだよ!!さっさと自分の部屋でも、ヴァーリの部屋にでも戻れ!!このポンコツ魔女!」

「聞こえまないのでーす。では、おやすみなさいなのでーす、優しい邪龍のファング♪」

 

ギャーギャーと怒る黎牙の胸の中で、相変わらずの白シャツ1着のままのラヴィニアは、露出している艶やかな美脚をそっと黎牙の足へ絡め、より一層密着していく。そして、怒っている黎牙の声が本当に心地よいのか気持ち良さげな笑みを浮かべながら、眠りについていく。このため今度は、黎牙自身が、別の意味とは言え、ラヴィニアが密着して来たことで形を変え潰れてゆく男性にはない感触に耳まで真っ赤に染め上げてしまう。また、ラヴィニアに抱き枕にされた黎牙は諦めて眠りにつくため湧き上がってしまう健全な内なら獣と闘うことになってしまう。

 

加えて、己の一部であるアジ・ダハーカは黎牙がラヴィニアに抵抗できないように、魔法力や神器(セイクリッド・ギア)の展開を阻害しつつ、黎牙の慌てっぷりに笑い死にかけるのは余談である。




「……むにゃ、ファングゥ〜」ムニュッ 
「(■■■■■■■■■■!!!!)」
(呼んだ?)

『『『ギィヒャハハハ…ヴォッへぇ!ゲホゲホ!!、は、はは腹が!腹が捻れる切れるぅぅぅぅぅ!!!!
ギィヒャハハハハハハハハ!!』』』
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