魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》 作:ドラ丸2号
訓練が休みとなる土曜日の朝。
己の内ならケモノとの激闘?の果てに睡眠を手に入れたものの、睡眠時間と理性がゴッソリ減った黎牙は、いつもより少々遅れながら起床する。一言だけでは気が済まないため添い寝をしたラヴィニアに拳骨でも入れようとしたのだが、彼女はベッドにはおらず、イライラオーラを全開にしながら台所へ向かうと、自分以外の全員が既にいた。そして、彼はラヴィニアを発見するや否や、
「ふぁ、ファング!?痛い!?痛いのですぅぅぅ!!」
「……………(激怒)#####」ゴォォォォ!!
全力のアイアンクローで彼女を締め上げる。
「げ、限界!限界なのです!!ぎ、ギブ、本当にギブアップなのです!ファングゥ〜〜〜〜〜!!」
「……………(激怒)#######!」ゴオ゛ォォォォ!!!!
しばらくの間、ラヴィニアの悲鳴が早朝の台所に響き渡る。
ちなみに、その場にいた鳶雄、紗枝、夏梅、鋼生は今のブチギレた黎牙の迫力に当てられ、ラヴィニアを助ける勇気はなかった。また、ヴァーリはカップ麺が茹で上がる時間を測るのに集中しているので、どこの吹く風の如しで完全に無視である。
「うぅぅぅぅ!頭が痛いのですぅ」
「ご、ごめんね。ラヴィニアさん、助けてあげられなくて」
チームの皆で朝食を取りつつ、未だに目に涙を溜めたラヴィニアは隣にいる黎牙によるアイアンクローによって締め上げられた頭をさする。そんなラヴィニアに鳶雄は申し訳なさそうに謝罪を述べる。
「皆んな酷いのです。助けてくれないなんて」
「いや、なんと言うか……」
「ごめんなさい。流石に…アレは」
「あんなのに声かけるほど無謀じゃねぇー」
助けてもらえなかったことにふくれるラヴィニアに、夏梅、紗枝、鋼生の順にそれぞれの意見を述べる。そして、ラヴィニアを締め上げた張本人である黎牙は悪そうな笑みを浮かべたまま、まるで勝利の美酒でも味わうかのように鳶雄が作った朝食を食べて進めていく。加えて、ヴァーリはいつも子供扱いされているため、せめてもの仕返しと言わんばかりに悪ガキの様な笑みを浮かべ、カップ麺をすすっていく。ある意味で、似た者同士のドラゴンコンビでもある。
ドタバタした朝食の後、
鳶雄達は『
「おーおー役得だなぁ〜邪龍さま」
「………うるせぇ駄猫」
隙あらば何処へ逃げようとする黎牙を逃がさないラヴィニアの笑みに中には、今朝の仕返しが含まれているかは彼女のみぞ知ることである。加えて、今のラヴィニアの服装は、いつものとんがり帽子をかぶったまさしく魔法使いを思わせる装衣であるため周りの人間からは奇異の視線を向けられている。そんな視線を集める存在に腕を組んでいる?黎牙もまた、巻き込まれる様に奇異の視線を向けられる。しかし、今の黎牙は昨夜の死闘(笑)の際で少々寝不足なため目つきが悪く、夏梅にかけさせられた伊達眼鏡でも援和することが叶わず、悪人面がより一層酷くなっている。そのため、目があった者は全員目を逸らしている。
「今日は何をするのです?」
問いかけるラヴィニアに夏梅は指を突き付けて言う。
「まずはあなたよ、ラヴィニア!服!年若い女の子がこんな格好じゃ、ダメすぎるって!素材は最上級なんだから、オシャレしなきゃダメってもんよ!東条さんも手伝って!一緒にこの子をコーディネートするから!」
「えぇ?う、うん……」
夏梅の勢いに気圧されながらも紗枝は同意する。
「私は魔法使いなのだから、これでいいのです。この格好が一番魔法力を高めて、いざというときに———」
「あー、もういいからショップよ!ショッピング!!」
夏梅はラヴィニアの訴えなど退いて、繁華街の方を指さし向かっていく。
ショップを巡りながら女子3人組みは服を見てはキャッキャと年相応に嬉しそうにしている中、男子達4人組みは女子の買い物が終わるのを待っている状態だった。そして、黎牙は壁に寄りかかりながら仮眠を取ろうとしたが、
「あんら〜レイちゃんじゃな〜〜〜い♡♡♡
ひ・さ・し・ぶ・り・ネ♡♡♡」
自分が最も苦手とする人の声が耳に入ってしまう。
「て、店長……」
黎牙が顔を真っ青にし、何処か震えた様子に戸惑う鋼生と鳶雄とヴァーリは、目の前にいる人物に色んな意味で度肝抜かれる。
黎牙の身長を余裕に越すほどの高身長に加えて、服の上から判るほどの鍛え抜かれた屈強な肉体、そして頭につけたカチューシャで整えた腰まで伸びた黒紫色をした髪、最後に極め付けは化粧を施されたことで艶やかに輝くたらこ唇。それらの各パーツを兼ね備えつつ少々厳つい顔つきをした男性いえ、その身に女性のココロを兼ね備えたOKAMAが彼等の目の前にいた。
「「え゛ぇ!?」」
「……全く気配を感じなかった!?まさか、仙術使いか!?」
「もぉー店長だなんて他人行儀ネェ。いつも言ってるでしょ。アタシの事はクルたんって呼びなさいって」
「「「く、クルたん!?」」」
あまりの言動に鳶雄達どころか、あのヴァーリまでもが聞き返してしまうほどのキャラの濃い人物こそが、ラヴィニア以上に黎牙が苦手としている
「あら、あららららら???貴方達はもしかして………レ、レレレレイちゃんのお友達なのネ!!よかったわン!レイちゃんね、私以外に中々人付き合いが出来なかったから貴方達みたいなカワユイ子達が、お友達できてオネェさん嬉しいワン♪」
「(いえ、俺はアンタが1番苦手です)」
『『『(相変わらずスラエータオナの奴よりオーラがヤベェーなコイツ)』』』
「「「(このオーラ、怪物級か!?)」」」
クルたんの人情を元から知っている黎牙や黎牙の中にいた時から感じ取っていたアジたちは兎も角、生意気なヴァーリ、ヤンキーの鋼生に加えて人当たりの良い鳶雄ですら、こんな感想を抱いてしまうほどのキャラを出す彼女?にこの場にいる全員が硬直する。
「レイちゃんともっと色々話したいことはあるけど、お友達との時間を邪魔しちゃーだめネ♡ 」
バァーイ♡と言いながら、ヴァーリ、鳶雄、鋼生、黎牙の4人へそれぞれ投げキッスを送り、潤んだ瞳に涙が溜めながらクルたんは嵐の様に人混みの中へ消えていった。身長2メートルもあるのにも関わらず、ヴァーリですら見失うほどの実力者?であった。
「…………その…中々、イイ人?だったな?」
「何も言うな」
「……お前よく、あんなのがいる所で働いていたな」
「だまれ」
「アレほどのオーラを持ちながら、一瞬で消える…………アレがニンジャという者なのか!?」
「違う」
男子たち全員が全員、疲れた表情を浮かべているいたことに女子3人組みは疑問に思うものの、4人とも目を逸らしはぐらかし続けるため聞くことを諦めるのであった。
時間は流れ、ヴァーリお気に入りのラーメン屋にて昼食を取り近くにある公園へ一行が歩き出していた所で異変は起きてしまう。
外部から弾き出されたように突然、周りにいた人はまるで最初からいなかったように消え、周囲の風景が何もない真っ白な殺風景なもの空間となる。誰よりも早くにこれは何者かによる結界で外部と遮断された空間だと理解したヴァーリは、自身の
「どうやら、何者かの結界に閉じ込められたようだぞ!」
その一言によって漸く、鳶雄は紗枝を庇うように背中へ隠し、夏梅、鋼生はそれぞれ自身の相棒であるグリフォン、白砂を警戒態勢を強いるのだが、
「ファングが何処にもいないのです!!」
ラヴィニアの一言によって事態はより一層緊急事態へと一変してしまう。
ラヴィニアの言葉に鳶雄達は目を白黒させつつも、周囲に視線を配るが黎牙の姿だけは確認することが叶わない。そして、最悪の事態を予測する鳶雄達の前へ、魔法陣が展開される。
「彼のことなら、どうぞご安心ください。今の彼は
その魔法陣から現れた人物こそ、虚蟬機関の本部で黎牙と対決した2つの
「黎牙を何処へやった!!」
紗枝を背後に護りつつ、ギルバスへ威嚇する刃とともに影で創り出した大鎌の切っ先を構える鳶雄は、黎牙の所在を聞き出そうとする。しかし、ギルバスは自分への敵意が心底堪らないかのように、醜悪な笑みを浮かべながら向かってこようとする鋼生たちへ手を向ける。
「ですから、彼はお取り込み中であると申し上げているでしょう。もう少し待っていただけないでしょうか?」
「貴方が考えることはどれもロクでもないのです!」
「おやおや、言ってくれますね。彼を騙していた貴女がよく言えますね?」
「ファングは、私なんかよりずっと強い子なのです。だから、誰かにファングを殺されることになる様な未来は絶対にないのです!!」
「黎牙はお前たちの仲間だ!俺たちの仲間を返して貰うぞ!」
鳶雄の言葉を活気に、翼を広げたヴァーリ、白砂による槍で突撃をかける鋼生にギルバスはこことは違う何処かを見ているかのような口ぶりでそれぞれの攻撃を避けていく。
「おやおや、どうやら彼の選択が決定したようですね。コレはイイタイミングです。さて、最後に皆さまに断言してさせあげましょう」
ヴァーリとラヴィニアの魔法攻撃をゆるりと避け、空中で逆さに立ったギルバスは、口上をより一層上げた笑みを浮かべる。
「キヒヒ、いずれは、あなた方と彼は闘うことになるでしょう」
それでは…と言い残しながら霧の様に身体を消し、ギルバスは撤退していく。そして、続くように周囲の結界にヒビが入り、音を立てて崩れさると同時に周囲の景色は切り替わる。
すると、目の前にはいたのは、
見知らぬ女性の頸を
憤怒と怨嗟に満ちた形相をした黎牙がいた。