魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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よし、今まで書きたかったアツいシリアス展開の話がようやく完成しました。
皆さん、シリアスさんに盛大に拍手を!!
それでは、どうぞ!!




第5話 二つの黒

黎牙と青龍の戦闘を止めた朱雀と呼ばれる少女は、五大宗家の一角である姫島家の次期当主であり、また、驚くことに鳶雄の『はとこ』でもあることが判明した。

青龍と朱雀と話し合いをする前に、黎牙は母親の魂が入っていた人形を火炎魔法によって塵にする。紗枝や夏梅は、黎牙に対して何か声を掛けようとするものの言葉が見つからなかず、その場にいるラヴィニアだけがそっと彼に寄り添い、血に染まった左手を優しく自分の手を重ねる様に包み込んだ。その後、返り血を浴びている黎牙は青龍達の話を全員で聴くために自分に魔法をかけ、返り血を落とし、元の深縹色のジャケットの下に白いTシャツに加えて、黒いズボンへと戻す。また、夏梅がかけさせた眼鏡は青龍との戦闘の際に破壊されたため無しである。

 

 

そして、場所は変わり、朱雀から話し合いの場としてオフィス街———その一角にそびえ立つ巨大かつ、彼女達が管理しているビルの屋上に設けられた庭園にあるペントハウス———和の趣が強い和室で鳶雄達と朱雀と青龍は対面するように腰を落ち着かせる。

 

朱雀はまず最初に一言告げる。

 

「先に言っておかねばなりません。先の『虚蝉機関』とのこと、彼らの暴走は私たち五つの家の過失です。あなた方を巻き込んだこと、あらためてお詫び致します」

 

深く頭を下げる朱雀。

その後ろに控えている青龍も頭を下げるが、どこか素っ気ない表情であるため鋼生も怒り心頭の様子だったが、前もってバラキエルが事前に抑えるように言い渡されている為に耐えている。

 

「グリゴリ同様、我々のほうでも『虚蝉機関』の残党と、その協力者たる魔法使いの集団———『オズ』を独自に追っています。彼らは我々の追跡を避けながら、追っているものがあると判明しました」

 

朱雀の話に対し、バラキエルが口を開く。

 

「……………残りの『四凶』だな?」

 

堕天使の幹部であるバラキエルの言葉に朱雀は静かに頷き返す。

 

「はい、とある県境の山間にある村に逃げ込んだとされる元陸空高校の生徒二名を、残党の機関員とオズの者たちが、追い詰めつつあると聞いています。現地に派遣している私どもの密偵の情報では、すでに双方の小競り合いを確認しています」

「「「「—————————ッ!?」」」

 

二人の会話に顔を見合わせる鳶雄達、元陸空高校の生徒。

 

「その密偵たちも先日、連絡が途絶えました。おそらくは………もう……」

 

目元を厳しくし、最悪の事態が起きている可能性があることを朱雀の表情から物語っている。そして、彼女の口から鳶雄達が知らない事実を聞くこととなる。

 

「おじさま、グリゴリに凶悪な部隊があったと聞いております。希少かつ凶暴な神器(セイクリッド・ギア)を有する者たちで構成された部隊……………『深淵に堕ちた者たち(ネフィリム・アビス)』。あなた方は『アビス・チーム』と呼ばれているそうですが?」

 

鳶雄達が初めて耳にする単語に訝しげな表情となり、バラキエルへ疑念の視線を向ける。

 

「……………バラキエル先生、初耳ですけど?」

「……………頃合いを見てから話せとアザゼルに言われていたものだからな。すまない、彼女の言う通り、我々を裏切った幹部であるサタナエルは、グリゴリを去る際にある部隊を引き連れていった。『深淵に堕ちた者たち(ネフィリム・アビス)』、その別名がアビス・チーム。彼らは……………サタナエルの教え子でもあり、その上、凶悪な神器(セイクリッド・ギア)所有者で構成されている。人間世界にいては悪影響を与えかねない危険な能力ばかりだ。それゆえ、我々グリゴリが保護下に置いていた」

「凶悪と言えば、禁龍主である彼はもっと危険だけどね」

「言ってくれるな。青蛇如きが」

 

朱雀の話を素っ気ない感じで聞き流していた青龍であったのだが、バラキエルの話に含まれる凶悪という部分に続くように好戦的な笑みを浮かべ、黎牙を挑発する。対する黎牙も自分たち邪龍が危険であることは重々承知しているが、額に血管が浮かび上がるほど気分を害している。そのため黎牙は青龍の挑発に対し、彼のみに猛烈な殺気を放つ。

 

「事実だからね。それとその呼び方は不快だよ」

「なら、今のうちに殺し合っておくか?」

 

そんな高まる2人の戦意と殺意を鎮める者がそれぞれの側にいる。

 

「………………青龍?」

 

青龍へ振り返った朱雀は、名を呼びつつ何故か微笑む。

しかし、彼女の眼は全く笑ってはおらず、炎の使い手にも関わらず、寧ろその瞳には絶対零度の冷たさを放っている。

 

 

「………………………………………ハイ」

 

対にする黎牙は、

 

「ファング、大人しくしてくれないとまたオシオキするのですよ!!」

 

隣に座るラヴィニアが頬をフグみたいに膨らませつつも、その眼にある本気度が伝わって来たことに加えて、先ほどの感触を思い出してしまう。

 

「……………分かったから、構えるな」

 

そのため少々赤くなっていく顔を手で隠しつつ殺意と戦意を鎮火させていく。

 

 

そして、漸く話は戻り、初めて聞く情報に鳶雄達は頭を捻らせていく。

本来ならば、グリゴリは制御できない強力な神器(セイクリッド・ギア)は処分してもおかしくはないはずなのだが、組織としても一枚岩ではないことも事実である。加えて、残された最後の四凶とされている饕餮、混沌を持つ少年と少女。彼等の名は、七滝詩求子と古賀雹介。

どちらも陸空高校では有名だった生徒達である。

朱雀はそこまで話して本題へ移る。

 

「一時的に共同戦線を張りませんか?」

 

その提案に驚く鳶雄達に朱雀は続ける。

 

「私たちが最優先すべきことは、機関の残党を捕縛することです。現状、彼らに関与した四凶やオズの魔法使いについては、こちらに敵対するのであれば対処するという立場を取ることにしています」

 

互いの目的の為に共同戦線を張ることに提案し、鳶雄達も残りの元陸空高校の生徒達が助けられるのならと、その提案に頷いていく中でただ1人反対の意見を出す者がいた。

それは、

 

「俺は反対だ。お前らが、オズの奴らとの戦闘の最中に裏切り、事件の当事者である俺達の口封じとして殺さない確証は何処にもない。よって、お前らは信用に値しない」

 

人一倍警戒心の強い黎牙である。

 

「だよね。キミは反対するだろうと思っていたよ」

 

黎牙の反対の意思が来ることは青龍自身も分かっていたか、何処か黎牙を小馬鹿にした様に相槌を打つ。そんな態度の青龍にとうとう我慢の限界が来たのか、鋼生が身を乗り出し彼に喰ってかかる。

 

「おい!テメェ、さっきから好き放題ウチのツンデレ邪龍のことをグチグチ言ってくれるじゃねぇーか。喧嘩売ってんのか?」

「事実を述べたまでさ。それに君達は、虐待を受けていたとは言え、何の躊躇もなく母親の魂を握りつぶすことのできる彼に対して、よくそんな風に接せられるね?」

「青龍、しつこいですよ」

 

「止めないでくれるかな。ここではっきりさせておいた方がいいだろ。まだ御し切れてはいないとは言え、他者の魂を直接破壊できるほどの霊能力を持つ彼は危険すぎる。それに、彼は君達を心から信頼していない。その証拠に、援護に入ろうとした君達を彼は拒絶した。そんな風に、他者を否定する彼を君達は「うるさいよ」…口を挟まないでくれるかな、幾瀬鳶雄くん?」

 

青龍の容赦のない言動はどれも当てはまっており、黎牙が仮ものとは言え母親を殺した事実に対して、完全には受け入れ切れていない紗枝と夏梅は反論するための言葉が見つからず、俯いてしまう。そして、青龍の話に割って入るように青龍を憤怒の形相で睨みつけ、戦意を出す鳶雄に、この場にいる全員が驚きを露わにする。

 

「黙るのはそっちだ。危険なチカラを持っているから何ですか?凶悪な邪龍を宿しているから何ですか?そんなものは、黎牙の存在すべてを否定する理由には何一つとしてならない。それに、人を殺したというのなら、憎悪のまま敵を斬った俺も同類です」

「聴いていたかい?彼は実の両親を惨殺しても、平気でいられる異常者だよ?」

 

「例え、実の両親を手にかけたという取り返しのつかない過去があっても、今の黎牙は俺達にとってかけがえのない仲間です。それに、あなた方は黎牙が命をかけて、暴走した俺を止めてくれる程に仲間想いな奴であることを知っていますか?俺の軽はずみな判断の際で暴走させしまったとは言え、俺達を殺そうとするもう1人の自分からボロボロになりながらでも護ってくれる程強い人間であることを知っていますか?口では憎まれ口を叩きつつも、俺達の身を案じてくれる程に黎牙が優しい奴だってことを知っていますか?そんなこともろくに知りもしない癖に、黎牙の総てを知っている風に語らないでくれませんか?」

「さっき彼は、君達を拒絶した事実をどう捉える気だい?これは君達を信頼していない行為だよ」

 

朱雀自身も鳶雄から湧き出る青龍に対する怒りを感じ取り、自分が口を挟めば余計に話を拗れさせてしまうため静観をする。それに加えて彼女は、鳶雄自身が黎牙をどう思っているのかも知るため彼等の話を見守ることとする。

また、バラキエルも今の黎牙には自分などではなく、ラヴィニアの他に鳶雄も必要であることを以前から感じていたため、鳶雄の黎牙に対する親愛をすべて吐き出させる機会であるとして聞き手に回る。

 

「例え、黎牙が俺達を信用するのにまだ抵抗があるとしても、俺は黎牙に仲間として背中を預けるともう決めています」

「おい、ふざけるなよ駄犬。何で俺がお前のガラッガラな背中を護らないといけない。自分の命くらい自分で守れ」

 

「その代わり俺達も黎牙の背中を護るよ」

「何で、お前はそんなにまで俺に構う!何故、お前はアイツらの様に俺を否定しない!!」

 

真っ直ぐな瞳をする鳶雄に対し、黎牙は自身でも抑え切れない止めどなく溢れる怒りのままに鳶雄に向けて邪剣を呼び出し、突きつける。咄嗟に紗枝と夏梅が黎牙を止めに入るため立ち上がろうとするのだが、バラキエルが2人を止め、黎牙と鳶雄を見守らせるように伝える。加えて、鋼生とヴァーリは青龍に対して邪魔をすれば、容赦はしないと戦意のある眼差しを向け、警告している。そして、朱雀もはとこである鳶雄を護るべく立ち上がろうとするのだが、ラヴィニアから今の2人を見守ってほしい気持ちを汲み取り、鳶雄に黎牙を任せることとする。

 

「そんな決まっているだろ……」

 

止めどのない怒りが溢れ続ける黎牙から突きつけられる邪剣の切っ先に鳶雄は恐怖を抱くこともなく、ただ静かに黎牙と真正面から向き合う。そして、ギルバスとの会合後から決めていたある決意を自分に再確認させる。

 

「俺は黎牙のことを仲間で、友達だと思っているから」

 

「————ッ」

 

自分の邪龍として生きると決めたのとは、異なる覚悟を鳶雄から垣間見た黎牙は酷く狼狽始める。

 

訳がわからない。

不条理的すぎる。

そんな物が何になる。

倫理にかなっていない。

 

様々な思考を巡らせ、鳶雄の言葉を否定しようとするのだが、何故か言葉を発することのできない自分に戸惑いの念を抱く。

 

「だからこそ、友達の存在すべてを否定するというのなら、俺は絶対に許さない。例え、それが神さまや魔王であろうとも」

「傲慢だね」

 

戸惑い続ける黎牙から一旦視線を外し、黎牙に対しての罵倒の言葉を発する青龍を睨みつけるように鳶雄は、自身の決意をこの場にいる全員に表明してみせる。

 

「それが人間だ。貴方だって当てはまることだ」

「ふっ、面白いね。流石は朱雀のはとこなだけあるね」

 

参りましたと言わんばかりに青龍は両手を上げる。

 

「(どうやら、歴代の者達は明らかに違うほどにキミは仲間に恵まれたようだな)」

 

鳶雄の覚悟を聞き、自分が心配するまでもないほどに黎牙には頼もしい仲間がいることに改めてバラキエルは鳶雄によって理解させられる。そして、鳶雄はもう一度黎牙へと視線を戻し、彼に向けて手を差し伸べる。

 

「だから、改めてお願いする。黎牙、彼女達と俺達に協力してくれ。もしもの時は、俺達が黎牙を護るから」

 

その言葉に対して、黎牙は顔を俯かせつつ手を鳶雄へ差し向けると思いきや、握り拳を作り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ、気色の悪いことを口走るな」

「アダッ!?」 ゴツン!!

 

苦虫を噛み潰したような表情で鳶雄の頭をぶん殴った。

 

「「「「「「えぇ—————!!!!」」」」」」

 

和解する流れの様に思えていたため、朱雀、鋼生、ラヴィニア、紗枝、夏梅は揃って驚愕する。青龍は青龍で、何処か予想していたのか、やっぱり…と小さく呟きつつも何処か呆れた様子でもある。また、ヴァーリも同様に予想は出来ていたのだが、2人の反応が面白かったのか珍しく噴き出していた。

 

「ヴァーカ、俺はお前程度に護ってもらう程弱くねぇ。ったく、こんな甘ちゃんに心配されるとか、邪龍として屈辱だ」

「でも、殴ることはないだろ」

 

「うるせぇ。おい、青蛇に赤鳥、協力はしてやる。オズのババァどもとの戦闘中に俺に攻撃して来てみろ。どんなことをしてでも、俺はお前らの家の奴らを皆殺しにすることを肝に命じておけ」

「あ、赤鳥!?……い、いいでしょう。ですが、此方も貴方が私達に刃を向けた時は…分かっているでしょうね?」

 

「お前らが、俺の獲物であるギルバスのクソ野郎を取らない限りはある程度目を瞑ってやる」

「分かりました。ご協力、感謝します」

「ちぇー龍対決は、また今度かぁ〜」

 

まるで駄々っ子に様にする青龍をもう一度朱雀は睨みつけ黙らせた後、バラキエルがいくつかのやり取りをした後で、この場の話し合いは無事に終わりを告げた。

 

また、その過程で何処までも素直にはなり切れない黎牙を夏梅や鋼生、紗枝がからかいつつも、鳶雄の決意表明によって先程まで黎牙と自分達に生じて溝が狭まったのを感じ、各々がいつもと変わらぬ様子で黎牙に絡んで行くのであった。ちなみに、以上に絡み続ける鋼生をウザく思ったのか、黎牙を彼の溝に付加(エンチャント)で強化した拳を撃つのであった。加えて、その時の黎牙はいつもよりも悪人面が似合う様な悪そうな笑みを浮かべたためラヴィニアにオシオキされてしまったのは余談である。




クソー最後の最後に油断した隙を天然さんに突かれたぁぁぁぁ!!
行動力ありすぎでしょ、あの天然さん。
どうやったら、シリアスさんは彼女に勝てるんでしょうかね。
諦めるしかないのか………………。
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