魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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今回も書き溜めた話を3話分ですが、連続で同じ時間に日にちごとに投稿していきます。
それでは、どうぞ!


第6話 七滝詩求子

残りの四凶を宿す元陸空高校である2人を助ける為に集まった鳶雄、鋼生、夏梅、黎牙、ラヴィニア、ヴァーリに加えて紗枝はバラキエルが運転するワゴン車に乗り出発した。戦闘能力が皆無な紗枝は、暴走する危険性を抱えた鳶雄の抑え役として同行することとなった。また、アザゼル自ら紗枝が同行する理由を話す際に、鳶雄を止めるのは紗枝が持つ鳶雄に対する『愛』であると称した。加えて、コレは黎牙にも当てはまることだとニヤニヤ顔を浮かべたためキレた黎牙がアザゼルに準備運動と称して斬りかかったのは余談である。

 

そして、鳶雄達はアザゼルから渡されたアビス・チームに関する資料に目を通していた。彼等の神器(セイクリッド・ギア)は多種多様の能力を持っており、それぞれが持つ異能は非常に厄介かつ、強力にして兇悪である。能力に必要となる条件が総て揃った時こそ彼等の神器(セイクリッド・ギア)の真価は発揮され、凶悪で残忍な牙が剥かれる。それらの能力の詳細が記された資料に目を通していく黎牙は、あまりの厄介性に舌打ちを打ってしまう。

 

自分達が闘うアビス・チームの能力は、一度食らってしまえば、どれも取り返しのつかない効果が持っている。そんな凶悪な敵にどう立ち向かうのか、鳶雄達は頭を捻らせていくことで緊張感が増す車内の中で、ラヴィニアが己の過去を打ち明けていく。

 

「目的の場所に行くまでに、少し私のお話をしようと思うのです」

 

この彼女からの言葉に皆が耳を傾けていく。

 

「……イタリアのとある海辺の街で私は生まれたのです」

 

ラヴィニア・レーニは霊能力を有してはいないが、黎牙たちと同じく一般家庭の出生で魔法の才を有してこの世に生を受けた。

しかし、彼女は生まれながらに異能を有していた。

幼少の頃から、彼女の傍には氷の人形———十三の神滅具(ロンギヌス)の一つである『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』を具現化していたのだ。

幼い頃はそれが何なのか知らず、自分以外には決して見えないその氷の姫君を彼女は「氷のオバケ」として恐れていた。

そして、九歳の時に両親を事故で亡くし、常々誰にも見ることの出来ない「氷のオバケ」を語る少女を親類縁者は薄気味悪がり、ラヴィニアの引き取り先探しは難航した。

 

「そのときの私は、自身のこれからよりも、パパとママを失ったことによる深い悲しみと———『氷のオバケ』への憎しみに包まれていたのです」

 

「氷のオバケ」を恨み、憎み、罵っても離れず、何も見えない人達から見れば、ラヴィニアは誰もいない空に向けて、大声をあげて暴れる厄介な娘にしか感じ取れなかっただろう。

その言葉に黎牙自身にも覚えがあった。誰にも見ることのできない魂だけとなった霊体たちに話す自分を君悪がる両親。それを思い出してしまったことで自分は改めて両親には憎しみしか抱いていないことを再確認する。

 

誰にも理解されなかった時にラヴィニアは彼女と出会った。

己の師である、南の魔女グリンダと。

心優しい恩師によって閉ざされていたラヴィニアの心は少しずつ氷解し、自らの異能の源である神器(セイクリッド・ギア)と魔法の扱い方を恩師から教わっていく。

森での質素な生活でも、ラヴィニアにとっては掛け替えのない幸せな一時だった。

彼女が十三歳になった頃、この世界の魔法使いとして生きるのであれば、他の魔法使いと交流を持った方がいいという恩師の判断に従い、ラヴィニアはメフィスト・フェレスが率いる『灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)』で研鑽を積んでいく。

 

それから数年後———ラヴィニアに凶報が届く。

 

第二の親とも言えるグリンダが、オズから来た魔女によって、襲撃を受けたという知らせが。

 

「その報告を受けた私は、第二の故郷であるあの森に戻ったのです。ですが———」

 

森の一軒家は、焼け落ちており、炭化した家の残骸を残すのみとなった。

グリンダの安否だけは不明だが、オズから来た魔法使いたちが関与していることだけは、その後の調査でわかった。

ラヴィニアはオズの魔法使いたちを追い、その中で、彼女は先日の『虚蝉機関』、『四凶計画』に関わることになったのだ。

 

「……お師匠さまの安否を問うために戦っているってこと?」

「……彼女たちは要領よく答えないのです。ですから、オズに直接乗り込むか、こちら側で彼女たちがしていることに首を突っ込むか、とにかく、徹底的に追うことに決めたのです。これは、私の事情ですから、皆さんは皆さんの目的を叶えてほしいのです。邪魔はしません。私は私だけでも、彼女たちを追うのです」

 

普段の時は違う、冷徹な様相を見せる。

ラヴィニアの目的が分かり、鳶雄、夏梅、鋼生、紗枝は協力してくれたラヴィニアの目的に対して協力し合うと告げ、元々、事情を知っているヴァーリも力を貸すと言う。そんな中で、1人だけ黙々と資料を読み続けている黎牙へと運転席にいるバラキエル以外の視線が集まる。

 

「一つだけ聴かせろ。お前がよく口にするあの言葉は誰の言葉だ?」

 

視線を鬱陶しく思っているのか、少々不機嫌そうな表情をしつつもラヴィニアに問いかける。黎牙の問いかけの意味がよく分からない鳶雄達は、頭を傾ける中で、ラヴィニアはニッコリと彼に微笑みかける。

 

「ママの言葉なのです。どんなに辛くても、苦しくて、前を向くための最強の呪文なのです」

「けっ、随分と何処かの誰かさんに似て、頭の中は花畑の様だな」

「ちょっと!そう言う言い方はないでしょ!!というか、黎牙はラヴィニアさんに協力してくれるの?」

 

「協力なんてするわけないだろ。俺は邪龍だぞ?」

「なっ!?」

 

黎牙のあまりの返答に後ろの席にいる夏梅が彼に飛びかかろうとするのだが、何処か呆れた様な形相で言葉を発していく。

 

「だが、俺はあのババァが持つ『神滅具(ロンギヌス)』の聖炎に、興味がある。あのババァが命乞いをする際に、お前の里親のことをゲロった際にはついでとして伝えてやる」

『あの炎は中々喰いごたえがある』

『炎を喰われた時のババァの顔がどうなるのか、楽しみだぜ☆』

『ご自慢の武器を奪われました奴の顔はどれも堪んねぇーぜ☆』

「それでも十分なのです」

 

「あくまでついでだ。ついで」

 

その言葉を聞いたことで誰もが頬を緩ませていく。ラヴィニアの返しの言葉に対して、溜め息を交えながら受け答えた後、再び黎牙は資料へ目を通していく。

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * *

 

 

時間は流れ、

人気のない森の中、車のハイビームで暗闇の道を照らすが、少し先は暗黒の世界。

深夜の森の中で進むワゴン車。目的の場所までもうすぐのところで、

 

「前!!」

 

紗枝が叫び、ヘッドライトが前方の道に人影らしきものを映し出す。

バラキエルは急ブレーキをかけて、車を緊急停止させる。そして、鋼生は後方の席から身を乗り出す様に訊く。

 

「なんだ!?」

「人よ! 人みたいなのが前にいたのよ!」

 

その鋼生の問いに夏梅が答え、突然の事にバラキエルはシートベルトを外し、車から飛び出て、周囲を探る。しかし、周辺を調べるも人影、人らしきものは一向に現れない。

 

「どこにもいないわよ」

「いや、いる。おい隠れていないで出てこい」

 

見間違いと思う夏梅に対し、霊能力を持つ黎牙は否定の言葉を述べ一旦車から降りる。バラキエルは車から降りることを静止させるよりも前に、周囲に彷徨う霊から直接聴いた黎牙はそのことをバラキエルへ伝える。そして、隣にいるバラキエルからライトを貰い、ある一点に光を当てる。

 

すると、そこにいたのは必至な形相をした一人の少女であった。

 

西欧人と思わせる顔立ちに暗めの色合いであるブロンドに特徴的なオッドアイ。右目が青く、左目が黒。

眉目麗しい少女は陸空高校の中でも一番の美少女とされた七滝詩求子(ななだるシグネ)であった。

彼女は命懸けで逃げてきたかのように制服は所々破け、顔も泥が着いているが、知り合いである黎牙を視認したため目を見開く。

 

「………あ、阿道くん?」

「そうだ」

 

先程まで警戒していた詩求子であったのだが、黎牙の後から続く様に車を降りて来た鳶雄達に驚き、その場にへたり込んでしまう。

 

「ちょちょちょ! 大丈夫!?」

「安心して、七滝さん」

 

座り込んでしまう詩求子に夏梅と紗枝が駆けより、やさしく手を伸ばしていた。同時に降りてきた鳶雄と鋼生も、残る同級生が無事だったことを受けて、緊張をいくらか解けて軽く笑みをこぼしていく。

 

「黎牙って七滝さんと知り合いだったのか?」

「バイト先が同じだったからな」

「「あーアレか…」」

 

同じく陸空高校出身である詩求子と黎牙は互いにバイト先が同じなこともあり、クラスは違うが顔見知りである。黎牙のバイト先という言葉に、鳶雄と鋼生は数時間前にあった珍獣とも言えるOKAMAを思い出してしまう。その際か、彼等はどこか苦虫を噛み潰したような表情になっていた。コレは割と失礼である。

 

「……あれが、七滝の神器(セイクリッド・ギア)か?」

 

そう言う鋼生と共に、鳶雄と黎牙の視線が詩求子の両腕に向けられる。彼女の両腕には、仮面のようなものを顔につけた小型の四肢動物を抱えられていた。その頭部には二本の角が生え、仮面のほうには饕餮文という四凶の饕餮について表した文様が施されていた。

紗枝たちに介抱されている詩求子だったが、少しだけ緩ませていた気をすぐに戻して、鳶雄たち血気迫る勢いで言う。

 

「ここから離れたほうがいいわ! 変な技を使う人たちと———」

 

そこまで言いかけた詩求子だったが、鳶雄の横に現れた刃が唸り声をあげたため遮られる。暗がりの道に向けて威嚇する刃に鳶雄たちは身構えると、いつの間にか虫の鳴く音が消え、じわりじわりと肌に敵意と殺意だけが伝わる。

 

「ふっ、明らかな殺意だ。おもしろい」

「……………この気配、魔法の術式ではないのです」

「……霊体たちの気配も消えたか」

 

ヴァーリとラヴィニアも車から出て臨戦態勢を取った時、コッコッコッ、と奇妙な乾いた音が一定のリズムで前方から消えてくる。

 

そして、鳶雄達の前にそよ姿を見せたのは五十センチほどの一本足の不気味な石像であった。背中に小さい翼を生やし、頭部には一本の角、一つ目であろう目は閉じている。

黎牙は資料に出ていたアビス・チームが所有する神器(セイクリッド・ギア)の能力を思い出したのと同時にバラキエルは皆に叫ぶ。

 

「目を閉じろっ!」

「ちっ!」

『Enchant!』

 

突然震え出す石像。全員がバラキエルの指示のもと、目を閉じ、さらに腕で両目全体を覆う。

 

「…こ、コレは一体!?」

 

しかし、いつまで経っても何も起こらないことに不審に思い、鳶雄達は各々が目を開けた時、自分たちが漆黒の空間———影の結界によって包まれていることに気づかされる。

 

「光に対抗するのなら、影だ。俺の影に一時的とは言え、外部からの光を完全に遮断する効果を付加(エンチャント)させた」

「助かったよ、黎牙!」

 

「あくまで、コレは外部から身を護るものだ。加えて、今結界より外がどうなっているかは不明だ。全員失明をしたく無ければ気を抜くな」

 

鳶雄からの礼対しても相変わらずの態度で接しつつも、全員の身を護りなおかつより一層警戒を促す黎牙に内心で感謝の言葉を全員が送る。

 

「アレは輝失の呪像(ブライン・シャイン・スタチュー)。放つ光をまともに浴びると徐々に視力を奪われ、状況次第では完全に見えなくなる神器(セイクリッド・ギア)だ。阿道の咄嗟の行動は、正しい判断だ。彼が防いでいなければ最悪の場合、目蓋の隙間から光が入り、失明をしていた恐れもあるからな」

 

バラキエルの言葉から改めてアビス・チームの構成員の恐ろしさを痛感していると、

 

「ぷぷぷ、うぷぷぷ」

 

不快な笑い声を上げながら、鳶雄達の前に姿を現したのは自分たちと同じ『堕ちてきた者たち(ネフィリム)』の制服と似たものを着た痩せ型の男だ。

そして、その男の足元には先程の石像も鎮座している。

 

「……目がどんどん見えなくなってほしい……目が見えなくなっていく感想を聞かせてほしい………」

 

男は不気味な言葉を発し、足元にいる石像の目を開かせようとするが、

 

「スラッシュ!」

「行け!」

「伸ばせ!」

 

黙って攻撃をさせる鳶雄、鋼生、夏梅ではなく、反撃の狼煙をあげられる。自分が攻撃されていると言うのに、不気味な笑みを絶やさない男を不審に思っていると、

 

「阿道くん、石像は二体いるよ!」

「っ!ヴァーリ!」

「承知した!!」

 

その一声にヴァーリと黎牙は同時に振り返り、手元から銀色のオーラ、邪剣に漆黒のオーラをそれぞれ纏わせ、背後にいる目を開こうとする二体の石像をそれぞれ破壊する。

 

「ラヴィニア!」

 

そして、バラキエルがラヴィニアの名を叫ぶと、彼女は魔法陣を展開させ、相手の男に炎による攻撃魔法を放つが、ダメージはなかった。ラヴィニアの攻撃を受けてもノーダメの男に警告として、バラキエルは掌に雷光を顕現させつつ威嚇する。

 

「これ以上、私たちを相手にするほど、そちらも愚かではないだろう?」

 

数百年近くも生きる堕天使の組織———グルゴリの最高幹部であり、武闘派でもあるバラキエルの言葉に男は不気味な笑みを絶やすことなく、闇の中へと消えていく。

男が消えたことで、虫の鳴き声が再開され、殺意もなくるなると、鳶雄達は戦闘を終えて汗を手で拭う。息をつく鳶雄達チームに詩求子は思い出したかのように皆に切迫した様子で言う。

 

「古閑くん!皆、古閑くんが…………っ!あっちにある村の先で戦ってるの!」

 

この言葉によって、この場にいる全員がこれから起こるであろう戦闘に対し、より一層警戒心を上げてゆく。

 

この森での彼等の闘いは、まだ始まったに過ぎない。

 

そして、この闘いの中で黎牙に眠る“災禍の力”も

 

目醒めの鼓動を大きくさせ続けてゆく。




次回も17時00分に投稿しますので、よろしくお願いします!
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