魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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更新を再開して以降、増えていくお気に入り登録者数と感想にめちゃくちゃテンションが上がりっぱなしで、第3巻を読み直すよりも此方の方に時間を割いている自分に、かなり驚きです。
最近は、厄介な感染症が広がり続けていますので、皆さん体調管理を大切に!

それでは、どうぞ!


第11話 宣戦布告

時間は黎牙がラヴィニアの精神世界で、彼女のココロの傷を癒し終えるよりも少し前。

 

ギルバスによって創り出された結界内では、

 

 

『貴方は誰にも愛されてはいない!!魔王の血を引く貴方は、老い果てる彼等を置いて、永劫の時間を生きる!そして、強くなり続ける貴方は、かつての仲間から、世界から、その力を持つ故に拒絶される!!』

 

 

友である黎牙とラヴィニアを救う決意と紗枝の想いによって禁手を制御することに成功した鳶雄の(やいば)を全身に受けながら、同じく禁手による鎧を身に纏ったヴァーリにギルバスは怨嗟と狂気に満ちた呪いの言葉の刃を突きつける。他の者達とは、種族が違うことによって絶対に訪れるであろう『愛する者達の別れ』を悪意ある敵から改めて告げられてしまったことで、まだ幼いヴァーリのココロは嵐の様に酷く荒れ狂っていく。

 

 

 

『貴様を誠に愛する(・・・)存在など何処にもいない!!』

 

 

 

その言葉を最期に鳶雄達を嘲笑うかの様にギルバスは自らの身体を炎で燃やし、自滅する。

 

呪いの様な敵の言葉が頭に残り続けている中で、ヴァーリは表面上は鳶雄達に平静を装う。しかし、ココロまでは偽らず、彼のココロを敵の悪意が穢す。

 

鳶雄達がヴァーリを心配し、駆け寄ろうとするのだが、ギルバスが貼った結界崩れ落ち、ラヴィニア達の下へ光翼を広げ、ヴァーリが1人で急行してしまったため言葉すら懸けることが出来なかった。

 

そして、時間が少し流れていく中で、森を駆け抜けていくと鳶雄達は辺り一面が更地と化した場所に到着する。

 

だが、彼等の見たものは、

 

 

見たこともない“漆黒の鎧を纏う者”によって串刺しにされているラヴィニアの姿だった。

 

 

先に進んでいたヴァーリですら、余りの光景に動くことを止めるほどの衝撃を受けていた。しかし、鳶雄は咄嗟に“謎の鎧を纏った者”を敵と判断し、鎌を振り下ろそうとしたのだが、突然上空から現れた氷白の十字剣によって阻まれる。

援護として、鋼生が白砂による槍で別方向から攻撃を仕掛けようとするが、龍の首の形をした『影』によって槍ごと拘束される。更に、先程まで固まっていたヴァーリも激情に駆られたかの様に射殺さんと言わんばかりの鋭い眼差しで銀と黒のオーラが混じり合った拳を振り下ろす。

 

だが、コレももう一体の『影』で形成された龍と空中に展開された魔法陣から放たれた鎖によって不発に終わらせる。

 

『やれやれ、黎牙がまだ帰って来ていないから暇とは言え、こんな面倒くさい事態になるとはな』

『全く、ロクでもねぇーぜ!』

『全く、超有り得ねぇーぜ!』

「「「「「えぇっ!?」」」」」

 

聴き慣れた3つの声に全員が度肝抜かれたように間抜けな声を上げる。

 

『全員、落ち着くのだ。ラヴィニア・レーニの身体には何処にも外傷は無い。おそらく、彼女をあの魔女から取り戻すべく、阿道黎牙が自らの霊能力を利用し、彼女の魂に彼の意識を直接付加(ダイレクトエンチャント)させたのだろう』

『『『全部ネタバレするんじゃねぇー!!』』』

 

アルビオンの推察と、アジ・ダハーカの怒号によって、この場にいる全員が鎧を纏っているのが黎牙であることをようやく理解する。

 

そして、眠りについているかの様に瞳を閉じているラヴィニアに外傷どころか、怪我が全く見られないところを確認し、全員はほっと胸を撫で下ろしていると、

 

「………ったく、アジ以外にも煩いのが来た様だな」

 

鬱陶しい気な声音で、ラヴィニアから半透明の劔を引き抜くのは、身体を預かっていたアジ・ダハーカでもなく、自らの欲望(やりたいこと)に従い、彼女のココロを救った黎牙であった。

 

「黎牙っ!!」

「おいおい、背中を護るどころか、攻撃しに来るとはどういう了見だ。コラ?」

 

「い、や…あ、あの……そ、それは……」

 

頭部の鎧を解き、いかにも悪そうな笑みを浮かべている黎牙は、数時間前に言った鳶雄の言動に対し、意地の悪い問い掛けを送る。黎牙の悪意を分かっているものの、動揺していて正体もわからないまま斬り掛かってしまったのは事実であるので、居心地が悪そうに口を噤む。

 

「ふっ、まぁ良い。とりあえず、攻撃を仕掛けて来た奴らは全員半殺しの刑の処すとして。アジ、そろそろアイツ(・・・)も戻ってくる頃だから、拘束を解除してくれ」

『『『めんどくさい。自分でやれ』』』

 

「はいはい、ったく。わがままな邪龍だよ」

『『『お前よりはマシだ』』』

 

うるせぇ…と反論しながらも、黎牙は『影』で拘束していた鋼生、ヴァーリを自力で解放し、鳶雄共々、先程までその場に崩れ落ちていた紗枝達の所に戻る様に促す。

 

「そろそろ、来るか」

 

そう言って黎牙はもう一度頭部を鎧で覆い、下を向き続けるラヴィニアから一歩離れる。すると、ラヴィニアを中心にあの時と同じ漆黒の魔法陣が展開され、彼女は苦しそうに身体を震わせ始めていく。

 

「……わ、私の…ココロ…から……出て行って下さい!」

 

全身を駆け巡る苦しみに耐え、意識を取り戻したラヴィニアは、自分の中にいる浅ましき魔女を追い出す。

 

そして、ラヴィニアの身体から光の球体が排出され、その光の球体の正体であるアウグスタを元の姿である老婆へと戻る。

 

「ば、馬鹿なっ!?」

 

アウグスタを追い出すことには成功したが、ラヴィニアは全ての力を出し尽くしたかのように、気を失いその場に倒れそうになる。しかし、すぐ近くにいる黎牙は優しく精神世界と同じようにラヴィニアを抱き留める。

 

そして、殺意の篭った瞳のまま吠える。

 

「やれ、永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)!!」

 

黎牙の問いに応えるかのように、氷白の十字剣——— 氷姫の天剣(ディマイズ・ディグナティ)は、それぞれの元の姿である氷姫と邪剣へと分離する。十字剣の正体にアウグスタ以外の全員が空いた口が塞がらないほどの驚愕する中で、冷徹な殺意と怨嗟に満ちた憎悪の眼差しで睨み付ける。

分離した氷姫は、黎牙と同じ深縹のオーラを纏い、彼の怒りに呼応するかのように、紅く光る6つの目を向け、自らの主を辱めた怨敵へ、その牙を抜く。

 

憑依が解かれた上に、ラヴィニアの抵抗に遭い精神的に、魔法力的にも消耗したアウグスタは、何とか転移魔法を展開させる————だが、怒れる氷姫によって、魔法陣諸共、顔だけを残して全身を凍り尽かされる。

 

「死ね」

 

ラヴィニアを右腕で優しく抱き締めながら、アウグスタへトドメを刺すべく左腕の手甲の照準を忌々しい魔女へと向ける。

 

「ま、まて!坊や、取り引「黙れ」っ!」

 

近づき続ける“死”に恐怖し、アウグスタは黎牙へと命乞いをするべく取り引きを持ちかけようとするが、目の前にいる“災禍の邪龍”の殺気によって言葉を発することが出来ないほどの重圧を受ける。

また、それは鳶雄達も例外ではなく真正面から受けているアウグスタほどでは無いが、今までにない黎牙の殺気に当てられ、ヴァーリ以外はその場に崩れ落ちかている。

 

 

「もうお前は、

 

 俺の逆鱗(・・・・)に触れたんだ

 

 お前程度の存在が、

 

 生きる希望を抱くことすらおこがましい

 

 お前の魂は、この場で跡形もなく消えるんだよ」

 

『EnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchantEnchant!!!!』

 

そして、全身に埋め込まれた宝玉から眩い光を発光させ、付加(エンチャント)による強化を止めど無く発生させる。先程まで、神器の中にいたアジ・ダハーカ達は、その意識をもう一度『影』へ移し替える。

 

 

『『『「消えろ、この世の総てから」』』』

 

 

『ディアボリック・ディストピア!』

 

 

手甲に集約させたエネルギーを、影で形成されたアジ・ダハーカ達と共にアウグスタへと放つ。

 

黎牙とアジ・ダハーカ達が放った4つのレーザーによって、凍り尽かされていて身動き一つ取れないアウグスタは断末魔を上げる間もなく、一瞬にして跡形もなく身体を消し飛ばされる。

そして、黎牙の霊能力が付加(エンチャント)された攻撃によって、アウグスタの魂は輪廻の輪に入るどころか、結びついていた肉体諸共、滅却される。やがて、彼女がいたという事実だけが残り、彼女の魂の痕跡は完全に消え去る。彼女が、何を感じ、何を考え、何を知ったのかも、魂を管理する冥府の神ハーデスでさえも知ることは永劫にできない。黎牙(禁龍主)によって完全に滅ぼされた魂は、どんなことをしても戻ることは永遠に無かった。

 

 

 

 

そして、アウグスタがいた場所を中心にクレーターを作り出した黎牙であったのだが、纏っていた鎧に次々とヒビが入り、数秒と待たずに光の粒子となって消滅する。

禁手(バランス・ブレイカー)が完全に解けた黎牙は、ギルバスとアウグスタによって待たされた無数の傷を負ったことに加えて、ボロボロの状態で無理にアジ・ダハーカの力だけでなく、完全な制御ができていない霊能力を乱用したため、瞳、鼻、口、耳と言った顔中の穴という穴から血を流し始める。

 

「れ、黎牙!大丈夫なのか?」

「うるさい。一々騒ぐな」

 

心配気に鳶雄達が駆け寄ってくるが、黎牙は胸の中で眠っているラヴィニアをヴァーリと共に一旦横に寝かせると、ヴァーリのデバイスを通してアザゼルの声が会話に入る。

 

『おい、お前ら。喜ぶのもいいが誰か、アウグスタの紫炎を早く確保しろ。それは、主を渡り歩く神器(セイクリッド・ギア)でな。見逃すな』

「渡り歩く?」

 

初めて聞く情報に皆が眉をひそめていると、アウグスタがいた場所に見覚えのあるゴシック調の衣装を着た少女—————ヴァルブルガが現れる。雹介と闘っていた筈の彼女は、アウグスタがやられたことを察知し、他の魔法使いたちに雹介の足止めを命令し、自分は疲弊している黎牙達に気づかれない様に様子を伺っていたのだ。そして、隠れていたヴァルブルガの手には紫色の火が灯っていた。

 

『―――――――っ!』

 

その光景に一息吐いていた面々は驚くしかなく、咄嗟に黎牙は邪剣を呼び出し駆け出そうとする————だが、度重なる怪我と疲労によって足が思う様に動かず、その場に崩れ落ちてしまう。しかし、倒れる前に詩求子が黎牙の右側から何とか支えることに成功する。そんな彼らにヴァルブルガはイタズラな笑みを見せて言った。

 

「んふふ♪この炎はあげないわよん!回収回収ってね!」

 

言うなり、ヴァルブルガは素早く去って行く途中、一度振り返り、

 

「ごめんあそばせ〜勇ましき邪龍しゃま♡」

「あ゛あ゛ぁ?」

 

最後にとんでもない爆弾を置いていく。

ワザとらしいほどのウィンクとともに投げキッスを放ち、ヴァルブルガは転移魔法で離脱する。

 

「おい、手を離せ、七滝。あのクソビ◯チをブチ殺しに行かせろ」

「だ、ダメ!阿道くん、酷い怪我してるのに!」

 

1人。完全にブチギレた黎牙は、青筋を血塗れの額にいくつも浮かび上がらせ、ヴァルブルガを追うとする。慌てて、鳶雄と紗枝は黎牙を何とか怒りを鎮めることには成功するが、代償として鳶雄は腹に一撃を黎牙に喰らわされる。完全な八つ当たりである。理不尽。

 

『くそっ、手の速いことだ。仕方ない。お前達はバラキエルと合流後、すぐに撤収しろ。あとのことはこちらでどうにかする。五大宗家と一悶着あるのは面倒だからな』

 

アザゼルの命令を聞き、鳶雄たちは携帯電話でバラキエルと連絡を取り付ける。撤収状況になったとき、離れた所で黎牙達を傍観していた返り血を浴びた雹介だけは自身の神器(セイクリッド・ギア)————ブリッツと共に森の奥へと姿を消した。

 

そして、バラキエルとの合流地点へ行く中で、鳶雄は雹介を保護することが出来なかったため気落ちしていると、突然最後尾にいる血塗れの黎牙に蹴りを入られたり、ボロボロの黎牙の頭の上をアジ・ダハーカとポッくんが取り合ったりといった悶着を含みながら、歩を進めていく。因みに、最前列がラヴィニアを背負った鋼生、夏梅で、その後に紗枝、鳶雄、詩求子で、最後尾がヴァーリと黎牙という配置になっている。しかし、黎牙は自身に肩を貸そうとした詩求子と鳶雄の善意を黎牙は拒絶したため、今にも倒れそうなフラフラな足取りをしている。

 

そんな中で、

 

「お前が何を悩んでいるのかは、知らんし。興味もない」

「……………………」

 

視線を合わせず、鋼生が背負っているラヴィニアを心配気に見ている黎牙は、何処か表情に影を落としているヴァーリにだけ聴こえるように、ぶっきらぼうながら話かける。

 

「だがな、俺が超えたいと思っている“男”がウジウジした顔をするな。お前が、いつまでもそんな顔をしていると……ラヴィニア(アイツ)が哀しむぞ」

「—————っ!?」

 

この黎牙の言葉によって、頭に強い衝撃を受けたかのような感覚をヴァーリは受ける。

 

「それにいつの日か、俺は…いや、俺達はお前たちを超える。負けたくないのなら、いつもみたいに堂々としていろ。それが、俺が超えたいと思わせてくれた過去未来において、最強となる白龍皇ヴァーリ・ルシファーだろ?」

「ふっ、それは宣戦布告と受け取っていいのかい?

阿道黎牙(禁龍主)よ」

 

続く黎牙の言葉によって、ヴァーリは先程までココロに残り続けていた曇りが嘘のように晴れ、いつも以上に好戦的な笑みを浮かべ始める。ヴァーリから高まる戦意を感じとり、同様に好戦的な笑みを黎牙は送り返す。

 

「当たり前だ。俺は死ぬまで、お前に挑み続ける。覚悟しておけ、ヴァーリ・ルシファー(白龍皇)

 

互いが互いを“超えるべき存在”であることを認知した2人には、まるで本当の兄弟の様な笑みが浮かび上がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんな2人にあの男の凶刃が迫る。

 

 

「実に美しい“ドラゴン同士の友情”ですね———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————————反吐が出そうだ」

 

 

 

警戒心を解いていたヴァーリは振り返るのだが遅く、目の前には聖なる波動を纏った剣が飛来してきていた。

 

 

 

そして、彼の視界は飛び散る血飛沫によって赤く染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の奇襲に数瞬遅れて、鳶雄、鋼生、夏梅、紗枝、詩求子が振り返るとそこには、

 

 

 

 

 

 

「ゴイ゛ヅは……はっ…はっ!……オレの獲物だぁ!!」

 

 

 

 

ヴァーリを庇い、無数の剣に貫かれた邪龍(黎牙)がいた。

 

 

「オ゛マ゛エ゛……程度の、はぁっ!はぁっ……存在が、手を出すんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

『Over The Liberate!!』

 

瀕死の身体にも関わらず黎牙は、邪剣を呼び出し、刀身にいつもより強い穢れを持つ『闇』を纏わせ、目の前に現れた怨敵(ギルバス)に向けて、三つの黒い龍を形どる衝撃波を放つ。

 

凄まじい衝撃波によって目の前は、土煙に包まれてしまい敵を見失ってしまった黎牙は背後から決死の形相で駆け寄ってくる鳶雄達の声を聞き取れないまま倒れてしまう。

 

 

「(くそっ………マジで、コレは死ぬなぁ)」

 

 

自身に近づいてくる“死”を感じながら、黎牙の意識は闇へと落ちていく。

 

 




もう後、1、2話で二章は終わります。
その後、第3巻を読み直したり、リアルでのゴタゴタを片付ける必要があるので、たぶん数ヶ月くらいはお休みします。
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