魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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第二章最後の話です。
みなさんの感想の中には、チラホラと四年後の成人となった黎牙の姿を予想してくれていることが書かれているのを見て、「黎牙がここまで皆さんに愛されているなんて……」と泣きかけました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

それでは、第13話どうぞ!!


第13話 居場所

アウグスタを黎牙の助けを借りてとは言え、追い払ったラヴィニアは、そのまま眠りついた状態のままグリゴリの医療施設に運び込まれ、『灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)』の関係者が見守る中で、各種検査と治療を受けることとなった。その間に、アウグスタの魔法の影響が残らない措置を幾重にも受け続けていたのだが、十日間眠り続けていた彼女はようやく目を覚ました。

 

夏梅の指示の下で、ラヴィニア専用の病室の前で降ろされた黎牙は何とか受け身を取り、邪剣を取り出そうとしたのだが、いつのまにか紗枝が預かっている黎牙のデバイスに意識を移し替えたニヤニヤ顔のアジ達が遠隔で黎牙に干渉する。その結果、まだボロボロの黎牙は神器を展開できないようにされる。そして、早くラヴィニアがいる病室へ行くように夏梅と紗枝に言われる。内心ではラヴィニアが心配な黎牙は表面上は舌打ちをしつつも、言われた通り病室のドアを開けて入っていく。またその際には、鳶雄、鋼生、夏梅、紗枝、アザゼルが親指を立ていたことに黎牙がブチギレかけたのは余談である。

 

「ようやく起きたか。また、あの世界に引き篭もっていたのかと思ったぞ」

 

相変わらずの無愛想な物言いにもかかわらず、ラヴィニアは穏やか笑みを黎牙へ送る。

 

「ファングのおかげで……もう大丈夫なのです」

「よく言うぜ。あんなにビィービィー泣いていた癖」

 

「うぅ……そ、それは…ファングが抱き締めてくれるから…涙が出てしまっただけで…私は泣き虫では…ないのです」

 

精神世界での出来事を思い出してしまったのか、ラヴィニアは視線をキョロキョロとさせ、口元で指をツンツンと合わせ、言葉を濁す。

そんないつもと変わらない彼女の様子に黎牙は内心安心しつつも、ワザとらしい溜め息をついてベッドの近くに用意された椅子に座る。

 

「ヴァーリだけじゃなくアイツら全員、お前を心配していたぞ。後で、謝っておけよ」

「はいなのです。本当にありがとうございました。ファングのおかげで、今の私はこうして皆んなの所に……“今の私”の居場所に帰ることが出来ました」

 

「俺は勝手に乗っ取られたアホに自分の言いたいことを言いに行っただけだ。あのクソババァを追い払ったのは、お前自身だ」

 

闘っていた時と違い、あまり素直にはなりきれない黎牙にラヴィニアは柔和な笑みを送りつつも、首を横に振る。

 

「いいえ、あの時。お師匠さまの言葉を聴いて、何も分からなくなって、誰を信じていいのかも分からなくて、自分のココロを総て氷に閉ざしてしまった私に貴方は語りかけてくれました」

 

ずっと捜し続けていた恩師であり、育ての親でもグリンダからの痛烈とも言える拒絶の言葉を聴き、ショックのあまり敵であるアウグスタに隙を突かれ、肉体を乗っ取られ、黎牙を傷つけてしまった。

 

「でも、私はそんなファングを傷つけてしまった」

 

瞳からでも判るほどに深い哀しみを感情を露わにするラヴィニアはそっと、黎牙の包帯で巻かれた左手を自身の両手で包み込む。

 

「お前が気にする事じゃない。コレは弱かった俺が勝手にあのクソババァにやられただけだ」

「でも、私がやったことには…ムグッ!?」

 

今にも涙を流しそうになるほど悔いるラヴィニアの頬を黎牙は空いている右手を使って摘み上げる。

 

「うるさい。一々終わったことを蒸し返すな」

「いひゃい!いひゃいれぇす!!ファンフ!?」

 

「ぷっ!はっはははは!!ヤベェーおもしれぇ!」

 

アワアワと慌てながら、頬を引っ張られ続けるラヴィニアは黎牙に辞めるように言うものの上手く発音することが出来ず、きちんと伝わらない。そんな彼女の言動と慌てっぷりが滑稽に見えたのか、黎牙は噴き出してしまう。

 

「うぅ〜〜〜〜〜ファングはやっぱり意地悪なのです」

「はぁーはぁーはぁ…あ゛ぁぁ笑った笑った。今更だろ」

 

ラヴィニアは引っ張られた頬を摩りつつ涙目のまま黎牙を睨むものの迫力のはの字もなく、意地悪そうな顔をする黎牙には全く効果がない。そんな黎牙にはぁーと息を吐くものの、ラヴィニアの顔には何処か呆れつつも安心したような表情が浮かび上がる。

 

「でも、本当に私は、ファングに助けて貰ったのです。あの時、前へ踏み出す為に必要な一歩を踏み出せないでいた私に勇気をくれたのは、紛れもなく貴方なのです」

「………それは………勘違いだろ」

 

何処か照れ隠しなのか、ラヴィニアの視線から逃げようとする黎牙の手をもう一度包み込み、自分の胸元へと持っていく。

 

「本当に私は嬉しかったのです。氷に包まれていった“私の世界”を貴方は、この暖かさで溶かしてくれた。あの時、私はファングの想いを感じ取ることができた。その想いが、私を助けてくれた」

「……………………………」

 

先程までの有理であったはずの黎牙はもう存在せず、彼女の話を黙って聴くしかできなくなっていく。

 

「そして、私の居場所が、ファングやヴァーくん、トビー、シャーク、夏梅、シャーエ、皆んながいる“ここ”がもう私の居場所なのだと気づかせてくれました。でも、やっぱり私は…………彼女に逢いたい。逢って真実を知りたい。でも、やっぱりコワイのです」

 

何処か震えているラヴィニアの瞳には不安と恐怖が存在していた。その瞳のまま、ラヴィニアは先程から黙り続けている黎牙を見据える。

 

「本当に…………信じて、いいのですか?」

「そんな目で見えるな。ったく、どっかの手のひら返しばかりする邪龍とは俺は違う」

 

ハッキリと言えないのか、黎牙は何処かはぐらかしてしまう。

 

「ちゃんと……言葉にして聴かせてください」

 

氷の世界にいた時の様に弱々しく、声を不安で震わせるラヴィニアを見かねてしまい、黎牙はデカイ溜め息を吐く様に、根気負けしたかの様に、不安気な彼女に視線を戻す。

 

「誰も信じられないなら、オレを信じろ。オマエを信じたオレを信じろ。邪龍として契約を果たすオレを信じろ。そして、こんなオレを信じているアイツらを……仲間を信じろ、ラヴィニア」

 

何とか黎牙はきちんと最後まで言い切ったが、言い終えた瞬間、頬を赤く染め彼女から逃げるように視線を外してしまう。自分から逃げるようにあらぬ方向へ視線を向ける黎牙の言葉を聴き、ココロから安心したように暖かみを感じさせる笑みを送る。

 

「ありがとうございます。そ、その、できれば……真実を知るための闘いでは、ファングにも側に……いてほしいの…です」

「………なんで俺が」

 

「だ、だってファングは、あんなにも……私を抱き締めてくれた………のに…ダメなの…です……か?」

 

さっきとは打って変わり、又もや不安気な表情になるラヴィニアに対し、黎牙は計画的にやっているのかと疑うものの、それほど繊細なことを出来る彼女ではないので、もう一度大きな溜め息を吐く。

 

「わかったわかった!また、勝手に乗っ取られて戻すのもメンドクサイからついて行ってやる!コレでいいだろ!!」

「はい、本当にありがとうございます。ファングはやっぱり、とっても優しい邪龍なのです」

 

素直に側にいるとはまだ言えない黎牙の言葉にラヴィニアは、先程よりも柔和な笑顔を溢れさせる。

 

 

「……もうオマエは、俺にとって拠り所(必要な存在)なんだ。だから、もういなくなられたら困るんだ。いてほしいなら、お前も俺から離れるな」

「えっ?」

 

 

ラヴィニア自身は流石に予想していなかったのか、自分の耳を疑いかけるが、黎牙が真剣に言葉にして伝えてきてくれていることに驚いてしまう。

 

 

「………………あの時、俺はお前のあの言葉に安心させられたし、ギルバスの奴に暴走させられそうになった時、チカラを貰ったんだ。だから、その借り…いや、お前が助けてくれた恩を返させろ」

 

 

大好きな母から教わった言葉によって自分の知らない所で黎牙の助けになっていたことに嬉しく思う—————だが、黎牙のココロから伝えて来てくれている一言一言が自分のココロにも深く響いていくことに困惑する。

 

「は、はぃ…////」

 

そして、気付いたときには自分まで顔だけでなく耳まで赤く染まってしまったため慌てて、黎牙から逃げるように視線を逸らしてしまう。互いに照れているのか、2人とも頬を朱色に染めて視線を合わせないが、互いに繋いだ手は離さない。

 

言葉を発さず、静かな時間が2人の空間に流れようとしたのだが、

 

「…ちょっと!押さないでよ!?」

「ば、バレちゃうよ…」

 

夏梅と紗枝の騒ぐ声が黎牙の耳に入ってしまった。

 

 

ブチっ!!

 

何か切れるような音が鳴るのだが、黎牙は気にもせずラヴィニアと繋いでいた手を離し、邪剣を無理矢理自分の中から呼び出す。頬をまだ染めているラヴィニアは離されてしまった手を物欲しそうな目で眺めつつ、残っている“ぬくもり”をもう一度感じ取りたいのか、繋いでいた手を胸元まで持っていき、もう片方の手で包み込む。

 

そして、あふれ出る『闇』を出している黎牙は、問答無用で扉をバラバラに斬り裂く。

 

「「「きゃっ!?」」」

 

紗枝と夏梅以外にも詩求子までもが、斬り捨てられた扉から雪なだれようになだれ込んできた。

その他にも彼女たちよ背後には、

何処か嬉しそうな表情をする鳶雄、

ニヤニヤ顔をしながら卑猥な表現を指でする鋼生、

何処か不満げなヴァーリ、

顎髭を触りつつ悪オヤジ風のニヤニヤ顔をするアザゼル、

鳶雄の頭の上で腹を抱えて嗤い続けているアジたち、

といったメンバー全員が勢揃いしていた。

要は、全員でさっきの会話を盗み聞きしていたのだ。

 

「……………」ゴォォォ

 

そのことに気づいた完全なる無の表情となる黎牙か、無言でまるで何かの準備運動をするかのように腕をパキポキと音を鳴らしていく。

 

「ち、違うの!コレは偶々というか、ちょっと聴こえてしまったと言うか……とにかく違うから!!」

 

慌てて弁明する夏梅。

 

「その、阿道くん。もう少し、気持ち伝えれないの?」

 

こんな状況でも何処か残念そうに素直にはなれない黎牙を指摘する紗枝。

 

「う、うらやま…ごごごごめんなさい阿道君!!」

 

危うく恋する乙女としての本音がバレかけるが、慌てて謝罪する詩求子。

 

「……黎牙、俺は嬉しいよ。俺たちのこと……『仲間』って言ってくれて!!」

 

黎牙の口から自分たちを認めてくれている事実を聞けたことに対して、嬉しさのあまり黎牙の殺気が分からなくなっている鳶雄。

 

「いやーイイもん見れたぜ。邪龍さま?」

 

ケッケッケッと言いたげな笑みをする鋼生。

 

「いや〜青春してるなぁーオジサンは嬉しいぞぉ〜」

 

先程よりもニヤニヤ度を上げ、いやらしい笑みを出すアザゼル。

 

「阿道黎牙、君の禁じ手と俺の禁じ手をどちらが上が白黒ハッキリつけようじゃないか?」

 

まるで姉に男の影ができたことを不服に思う弟のような不満げな表情をするものの、強くなった黎牙に挑戦を申し込むヴァーリ。

 

「……おい、アジ。どちらに着くか1秒で決めろ」

『『『ふっ、仕方ない。(死にたくないから)当然オマエについてやる』』』

 

ハイライトが消えている黎牙の言動にずっと神器の中でヘソを曲げていたアジたちだが、一瞬にして定位置である黎牙の頭の上に避難する。

 

「弁明も謝罪もいらん。全員…………今すぐに俺の手で

地獄に叩き落としてやらァァァァァ!

 

 

『『『「禁手化(バランス・ブレイク)!!」』』』

 

 

 

Diabolism Thousand Dragon

Balance Breaker!!

 

 

「「「「「それはシャレになってない!!」」」」」

「死に晒せェェェェェェェェェェ!!!!」

 

 

翼を広げて一目散に逃げているアザゼルと、アザゼルに首根っこを掴まれてしまっているヴァーリを置いて、廊下には、ダッシュで走る鋼生、鳶雄、夏梅、紗枝、詩求子の5人の叫が響き渡るのであった。

 

 

まだ、病み上がりでもあるためか、1分と待たずに禁手(バランス・ブレイカー)は解かれてしまったが、一日中鳶雄たちは目が座っているガチの黎牙と追いかげっこをすることとなる。そして、バラキエル、頭にタンコブをいくつも作ったアザゼルを引き摺ってきたシェムハザなどのグリゴリの大幹部たちによって色んな意味で暴走している黎牙を鎮圧するのであった。後日、鳶雄、鋼生は半殺しに遭い、紗枝、夏梅、詩求子は身体中の水分が抜けるのではと錯覚するほどの激辛地獄を、ヴァーリには残りの『正典』を一時渡すように言いつつも模擬戦を半日ほど付き合い、アザゼルには持っている酒をアジ達に樽クラスで渡すように要求しつつも、仕事をサボっていたことをシェムハザにバラしたのであった。

 

ちなみに、ラヴィニアは自分の未知なる感情に戸惑いつつも、黎牙に握られていた手の感触を検査に来る職員に話しかけられるまで感じ続けていたのであった。




《オマケ》

「待てやゴラァァァァァァァァァァ!!」
「「「「「死ぬ死ぬ死ぬ絶対死ぬ!!」」」」」

「おい、貴様ら何を!?」GAME OVER

『『『巻き添えを喰らったコカビエルであった』』』

「コカビエルさんが死んだぁ!?」
「「「「この人でなし!!」」」」
「俺たちは邪龍だ!ゴラァァァァァ!!」
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