魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》 作:ドラ丸2号
まだまだ第3章は出来上がってはいませんが、構想は頭に入っていますのでひょっこり更新していきます。
後、堕天の狗神コミックはやっぱり面白いですね!
第1話 狂気の兆候
カノ者ハ眼醒メ
無ノ森羅万象ヲ齎ス
五ノ断片満チシ刻
ココロ弱キ者狂気ヘ誘ワレル
心アル者ハ皆等シク狂気ヘ堕チル
総テハ名モナキ王ノ導キノママニ
「総ては、我らガ王の盟約のままに」
「さて、そろそろ彼を泳がせておくのに既に十分すぎますからね。貴方が我らが王の元へ来る日を我らが王も待ち望んでいますよ、阿道黎牙」
「
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『オズの魔法使い』の幹部の1人である東の魔女ことアウグスタを倒してから数ヶ月の月日が流れたことにより季節はガラリと変わった。
激しい闘いを終えた現在の鳶雄達バラキエル教室の面々は、深夜の郊外で任務に当たっていた。
任務として、サタナエルが従えている
アビス・チームが持つ
「さっさと投降しろ」
何処かめんどくさそうにしつつも一切の油断のなく黎牙は相手に最後の警告する。追い詰められた相手である女性は己の異能を解き放つ。
「誰がお前達の言うことなんて聞くわけないでしょ!」
彼女の隣から現れたのは後ろから見れば、一見かわいい熊の縫ぐるみに見えるが、正面から見てしまえば、その考えは間違えであることに気付かされる。熊の口元には、ギラギラと輝く鋭利な牙に加えておびただしいほどの血がベッタリと付着している。さらに、その腹からは臓物が飛び出ているというかなりグロテスクな見た目をしている。
彼女の持つ独立具現型の
その能力とは、裂けている腹を飛び出ている臓物を自らで傷つけることで、吹き出る血飛沫から無数の分身体を生み出し、敵を喰らい尽くすまで分身体を生み出し続ける増殖系の力を有している。また、本体の熊も普通の人間では到底太刀打ちできない怪力を持っている。
自らの腹を抉り、分身体を数十体も創り出す
「……………………はっ?」
あまりにも一瞬の出来事で脳の理解力が追いつかず、置いてきぼりになっている彼女の間合いへ黎牙はすぐさま踏み込むと同時に邪剣の柄頭で強烈な衝撃を与え、彼女の意識を刈り取った。そして、意識を失った彼女に特殊な拘束の術が施された手錠を嵌めていると、
「やはり、俺の出番はなかったか」
「どんな敵だろうとオマエの手は借りん」
彼の背後から戦えなかったことに不満そうに口にするヴァーリがいた。そんなヴァーリに相変わらずの素っ気無い言葉を送りつつも、同じドラゴンを宿す者としてリスペクトしている部分がお互いにあるため2人の間には亀裂は全く見受けられない。
「目標を捕縛した」
『わかりました。鳶雄君たちの方も戦闘を終えた所なので、そのまま合流して下さい』
「了解した」
『そ、それから…お疲れ様、阿道くん』
「別に疲れていない。大したことないのザコだ」
『そう……なんだ』
後方支援役を担っている七滝詩求子から連絡を取り、捕縛した彼女を雑に抱えて黎牙はヴァーリと共に移動する。
場所は変わり廃墟の外で合流する鳶雄たち。
黎牙andヴァーリ組のほかに、鳶雄and夏梅組、鮫島andラヴィニア組がそれぞれ顔を合わせ、今回のターゲットであったアビス・チームの構成員に異能を発揮させないように施してから、転移型の魔法陣で本部に送り届ける。
オズの魔法使いやギルバスという謎の多き霊能力者との戦いの後、鳶雄たちは以前よりも入念なバラキエルの師事によって基礎から鍛え直し貰うことで、あの頃よりまた一つ強くなった。
その為、現在バラキエル教室での実力序列は、 禁じ手を使える阿道黎牙と幾瀬鳶雄がトップである。現在の黎牙は霊能力を意図的に行使することはまだ不完全であるため鳶雄と同列扱いとされている。
そして、アビス・チームの下位構成員掃討の任務を正式に与えられるほどになってから、鳶雄達はより実戦を積んで飛躍的に実力を伸ばしていく。そんな中で、詩求子が自身の
「やっぱり、夏梅ちゃんたちってすごい。私なんて連絡役がせいぜいで………………………」
彼女は短期間で戦闘までこなすようになっていく同級生に敬意を払っていた。
「自分のペットの手綱を握れない奴が戦場に来ても足手まといだ」
「ちょっと黎牙!なんで、いつもそういう言い方しかできないのよ!!」
アウグスタとの戦闘から鳶雄達のことを仲間と呼んでいたのだが、どういう訳かまだ彼らに対して冷たい言葉は変わらず、そんな態度の黎牙に夏梅は声を荒げるも、冷静に返す。
「事実だ。四凶の中でも饕餮の力は凶悪だ。覚醒した饕餮が暴走して宿主すら喰われた記録もある。そんなアジ達ほどではないにしろ、いつ爆発するかわからん爆弾を近くに置いておくほどバカでは無い。使えん力を振るうよりも、現状の連絡役を全うできてからにしろ」
最後にそれだけ告げると、黎牙は一人転移魔法で一足先に帰ってしまった。黎牙の言葉に思う所がある詩求子はポッくんを強く抱きしめる。しかし、その表情には僅かばかりの影が落ちていた。
「もう!どうしてあんな言い方するのよ!!」
「まぁまぁ阿道くんのアレはいつものことだよ」
落ち込む詩求子を見て、改めて黎牙の態度に憤る夏梅を紗枝は宥める。アウグスタの一件から鳶雄達のことを仲間と称すほどに距離が縮まったと思っていたのだが、黎牙はまだ鳶雄たちのことを完全に対して素直にはなり切れない部分がある。ラヴィニアのおかげで人嫌いが緩和されても根っこの部分はまだ変わらず、こうして冷たい態度と発言をしてしまうことがしばしばある。
「シグネ、元気出すのですよ。ファングはきっとシグネを気遣って言っているのです。無理して戦うよりも自分のできることを頑張ってほしいとファングは言いたかったと思うのです」
「………うん。それはわかるけど…やっぱり……」
ラヴィニアの励ましに小さく頷きつつも力に慣れない現状を誰よりも重く見ている詩求子の反応に見て、鳶雄は思わず思ったことを口に出してしまう。
「七滝さんって、もしかして黎牙のことが…」
途中ではあるものの、そこまで言うと詩求子の顔は赤く染まり、饕餮であるポッくんで顔を隠すも完全にバレバレであった。
「ケケケ、どっかの誰かさんと一緒で、あいつも隅におけねぇ〜なぁ〜」
「えぇ!?そ、そうなんだ…………セーフ」
意地悪そうな笑みを浮かべつつ楽し気に言う綱生から視線を向けられていつつも、意外な事実に目を丸くするほどの衝撃でそれどころではない紗枝。
「えぇ!?マジ!?そうだったの!あの黎牙のどこがよかったの!?やっぱり、あのツンからデレのギャップにキュンってきたの!?」
「………キュン??」
年頃の女子高校生故に恋話に盛り上がる夏梅だが、恋愛のれの字も理解していない現代魔女っ子ことラヴィニアはよくわかっておらず首を傾げる。
「えっと、その、前にも話したと思うけど、私と阿道君は同じバイト先だったんだけど、私が接客で阿道君はキッチンだったから話したことは一度もなかったの」
人とは決して関わらず霊体たちですら最低限の交流をする黎牙はいつも一人でいた。そんな黎牙をバイト先の店長クルたんが気に入っていたが、詩求子は関わることは殆どなく、まだ異性として意識したわけではなかった。
「でも、お店が忙しい時に私が慌てているとソッと分かりやすく、お料理を分けてくれていたりとか、お料理を持っていく時も手伝ってくれたりとかしてくれたんだ」
お店が忙しく何処からどう手をつけていいのか分からず、詩求子が慌てていると分かりやすく時間が経ちかけている料理を分かりやすい位置や指示を黎牙は的確に出してくれていたおかげで、お客様を待たせずに済んだことも多々あったのだ。
「それで阿道君、お礼を言おうと思ったら『店に迷惑をかけないためだ』って言ってすぐに帰っちゃって…………」
「「「「「ツンデレだ(なのです)」」」」」
黎牙がいないことをいいことにヴァーリ以外の全員が声を揃えて黎牙をツンデレだと答えた。ちなみに黎牙がこの場に居れば、アジ・ダハーカも3つ首揃えてツンデレと答えに違いない。
「でも、一番助かったのは、怖い人達から助けてくれた時なんだ」
それはまだ陵空高校の学生で一年生の頃、店先でのストーカーに悩まされていた詩求子はある日、無理矢理襲われそうになった時、何故かザリガニが一杯入ったバケツを手に持った黎牙が偶々近くにいたおかげで助かったのだ。
自分もそれなりの怪我を負いながらも必死に守ってくれたものの黎牙は、夜食用のザリガニを持って、詩求子からのお礼も受け取らずに去って行った時の後ろ姿を彼女は今でも鮮明に憶えている。
後日、学校で礼を言っても『ウザいからボコっただけだ』としか答えなかった。それから詩求子は、次第に時折見せる黎牙の優しさに惹かれていったのだ。今思えば、このめぐり合わせもまた
「なるほどね〜。要するに、詩求子にとって黎牙は白馬に乗った王子様ってわけね〜。まぁ、乗っている邪龍で、本人は王子様どころか暗黒卿みたい奴だけどね〜」
所々黎牙への不満が溜まっているのか、毒のある物言いをする夏梅の言葉に恋する乙女である詩求子は恥ずかしそうに小さく首を縦に振った。
「それにまた助けてくれたのに、お礼もきちんとしたいの………」
「今の阿道くんなら……アレ…どうなんだろう?」
「ん〜ん、難しいわね。アレはツンデレ大王なんだし」
助けて貰ってばかりで少しもお礼をしていない詩求子はこれまで助けて貰った礼をきちんとしたかった。だけど、それを本人が受け取るかはわからないが、あるいは……と鳶雄達は思っている。何せ、彼は自分たちのことをハッキリと『仲間』と言ってくれたのだから。
「あー、盛り上がるのもいいがそろそろ本拠地に戻ろうぜ」
「そうだね。続きは帰ってからで」
綱生や鳶雄たちは撤収の準備を始める。そんな中で、夏梅が白い息を吐きながら、暗天の夜空を眺める。
「もう年明け寸前だもんね………なんだか、早かったわね」
自身が持つ異能の力を覚醒させてから、
初めての年越しを迎えようとしていた。
だが、コレは恐ろしい宴の幕開けが
近づこうとしていたことには、
誰もが思いもしなかった。
その結果、彼らはミテしまう。
狂気の波動を持つ者の恐ろしさを。
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第3章《狂龍の回帰》
「はじめまして、私の愛おしい
相対するのは、世界から否定され続けられる邪龍を討ち取った英雄の子孫。
「あぁ、愛おしい愛おしいわ…同じモノを持ちながら、貴方の邪龍の力と、私の竜殺しの力は互いに相反する!コレ程、素晴らしい運命はないわ!!」
「ごちゃごちゃ、うるせぇ女だ。とっとオマエの竜殺しを俺達に喰わせろ!」
自分にとって毒でしかない相手に、黎牙はさらなる進化を貪欲なまでに求める。
「おんし達の狂気はおんし達自身で決着をつけねばならぬ。儂やあのギルバスのようにのぉ」
五大宗家に座する同じ波動を持ちし者を前に、漆黒の狗と龍の刃を意図せず混じり合っていく。
「オマエは……ッ!!」
「やっと…やっとコレでオマエを壊せるぜ!阿道ぉ!!」
そして、迫りくる妖たちの中にかつての怨敵が現れる。自らに異常な執着を見せる狂人を前に、彼の魂は摩耗していく。
「ヒャハァハハハハハハハハハハハハ!!久しぶりだぜ!オレが表に出て来れるなんてよぉ〜やっぱり表はたまんねぇーぜ!!なぁ、お前もそう思うだろ俺の黎牙ぁ!!」
摩耗をした彼を糧に、もう1人の彼が仲間達に牙を抜く。
「私は……私は黎牙くんが好きです!!だから、返して貰います!!皆んなを大切にする優しい彼を!!」
果たしない狂気を前に、すべてを喰らうモノを宿す少女は燃えるほどの
「いくぞ、黎牙……俺と一緒に戦ってくれ!!」
万物を斬り裂く狗神は、与えられた邪龍の断片と共に新たな刃を研ぎ澄ませ、新たな鎧をその身に纏う。
ちょいとネタバレですが、鳶雄が亜種化します!
どんな姿になるのか乞うご期待下さい!!
それでは、また次回にて!