魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》 作:ドラ丸2号
そして、正太郎さん、Hiroki1208さん、評価登録ありがとうございます。
これからも続けていきますのでよろしくお願いします
それでは第7話どうぞお楽しみください!!
「大丈夫…もう大丈夫なのです……」
「………………もうかんべんしてくれ」
ラヴィニアの前で子供の様に喚き散らしながら泣いてしまった事に羞恥心でいっぱいいっぱいとなり、真っ赤になった顔を手で隠しているが隙間から丸見えであった。
誰にも相談など出来るはずもなかった自分の恐怖を彼女は、会った時と変わらない笑みで受け入れてくれた。
拒絶せず、ココロの叫びを聴いてくれた。
気付いた時には長年あった胸のつかえがなくなっていた。
そして、自分でも気付かぬ内に笑みが浮かんでいたーーーーが、ラヴィニアも黎牙の始めて見せる笑みには気付けなかった。
『絶対大丈夫なのです』
この言葉は自然と自分の耳にしっかりと残り続けてくれており、安心感と心地良さと彼女の暖かさを黎牙に与え続けてくれていた。
まだ恥ずかしいのか、顔を手で隠しながら黎牙は口を開いた。
「俺は……俺は自分への恐怖を一生払拭しきれないと思う。でも……………お前の…お前らの事はキズつけたくはない。だから、もう暴走しないためにこれから俺にチカラを貸してくれるか?」
「もちろんなのです。私達はチームなのですから助け合うのは当たり前なのです」
恐る恐る尋ねる黎牙に笑顔で応えるラヴィニア。
「その………あ、あ……ありがとう」
そして、そんなラヴィニアに黎牙はさっきよりも顔を真っ赤に染めれながらも、出来る限りの感謝の言葉を贈った。
こんな自分でも受け入れてくれる人間もいるんだな、と思っていると、不意に頭を掴まれて引っ張られる。
ラヴィニアが自身の胸元に黎牙の頭を誘導させて抱きしめ、又もや頭を撫でてくる。
「辛い時、泣きたい時、寂しい時は私がいつでもこうしてあげるのです」
「わかった!わかったから!もう十分だ!頼むから離してくれ……」
豊満なその胸に顔一杯に包まれるのは年頃の男の子として色々大変なことになってしまう。
やっぱり
自分の容姿がどれほどいいのか知らずにこの前といい、今といい異性の前でこんなにも無防備なら別の意味で心配になってしまう。
しばらく落ち着いてから黎牙が切り出した。
「……その…頼みがあるんだか…」
「お願いなのですか?」
「オレに魔法を教えてほしい」
突然黎牙はラヴィニアに対し、魔法の指導を懇願してきた。ラヴィニアも、突然の黎牙の懇願に驚いたのか、目を見開いていた。
そんな黎牙に改めて冷静になり、その理由を聞いてみた。
「教えるのは構わないのです。でも、急にどうして……なのですか?」
「教えてほしい理由は、俺の剣ーーー
「なるほどなのです。確かにファングの
「頼んでおきながら、言うのも何だが、そんな簡単に憶えられるのか?」
率直な黎牙の疑問にラヴィニア頷きながら答えた。
「いいですか。魔法とは古代の偉大なる術師が、『悪魔』の魔力、『神』の起こす奇跡、超常現象などを独自の理論、方程式でできうる限り再現させた人工超常現象の様なものであるのです。そして、あらゆる現象に一定の法則があり、それを計測し、計算し、導き出して顕現させる技術こそが『魔法』になるのです」
手の平に魔法陣を出現させるラヴィニア。
「このように魔法陣はその超常現象を独自の方程式にして再現したものなのです」
「つまり、魔法陣とは計算式の答え。その答えに導きだすための方程式、自らの手で超常現象を再現するための途中式をどの様に構築できるかは術者たる自らの腕次第という訳か?」
「はいなのです。加えて、魔法陣を作り出すためには、自分にしか使えない公式、独自の計算式を作るのです。大事なのは、魔法を発現させる際に、どの様にすれば、こうなるのかという方程式の計算力と術式などの専門知識が必須なのです」
丁寧に魔法を知る為に必要不可欠の知識を伝えるラヴィニアにしっかりと聴く黎牙。
コレで戦闘時の戦法バリエーションは更に増える。
問題は素質があると言ってくれているがどこまで魔法を覚えられるかと言う事だ。しかし、それでも自分の
「頼むラヴィニア、俺に魔法を教えてくれ……」
もう一度黎牙は頭を下げてラヴィニアに懇願した。
「任されたのです!」
ラヴィニアはそれを笑顔で応じ、手の平に小型の転移魔法陣を展開させて、数冊の辞典のように分厚い本を数冊取り出し、
「これは今のファングにとって必要なことが記されているはずなのです」
全てを黎牙に手渡した。
改めて本1冊1冊の分厚さに口元を引きつかせて少し開くと、文字がびっしりと刻まれていたのを見て、黎牙は石の様に硬直した。
「すまんが、読めない文字はどうすればいいんだ?」
なんとか硬直から脱したが改めて別の問題に頭を抱えそうになるが、ラヴィニアはそんな黎牙を予期していたかのように丸メガネをかけさせてきた。
「このメガネは、設定した言葉に合わせて解らない文字を見るとその設定した言葉に翻訳される魔法道具なのです。なので、これでファングは様々な文字を読めるのです!これで魔法の勉強も大丈夫なのです!」
「取り敢えず、時間もないので、基礎術式、魔法力の発現、基礎知識、初級魔法の構築式を学んだ後に実戦で使うための肉体強化の為の防御魔法を明日まで覚えて欲しいのです!」
パアーーッ!という眩しい笑みを浮かべながら、かなりスパルタな事を口走るラヴィニアに顔をひきつりながら、その日黎牙は眠れぬ夜を過ごした。
* * * * * * * * * * * * * *
「あ、頭が割れそうだ………」
太陽の光がカーテンの隙間から見える。つまり、もう朝日が昇ったという証拠だ。一夜づけとは言え、膨大にも程がある魔法に関する知識を詰め込むのにはかなり骨が折れた。
最初の二、三冊は魔法を知る上で大切な基礎中の基礎だった。残りの数冊は、1冊1冊が、それぞれ一つの魔法を構築する為の方程式、魔法力の操作が事細かに書かれていた。全て一晩で何とか読み終え、一つの魔法は習得する事には成功した。
「まぁ、なんとか1つは物に出来たか」
そう言って、改めて覚えた魔法陣を左手な展開してみせた。すると、全身に力が巡るような感覚を感じた。最初として、覚えた魔法は防御魔法のお陰で身体のダメージカバーは少しはマシになったと言える。
やっとの思いで成功した始めての魔法に安堵の息を吐いて、椅子に寄り掛かって脱力する。そして、改めてラヴィニアの腕が一流であると痛感させられた。彼女は年が近いにもかかわらず、あれ程の膨大な魔法を難なく使えている。それは、彼女……ラヴィニアが産まれた時、もしくは幼い頃から魔法と共に触れて生きて来たという事になる。ラヴィニアに今までどんな人生を送って来たのかは分からない。しかし、生半可な人生を今まで送って来た訳ではない事は確かだ。
そんな彼女に自分はわがままを聴いて貰えない子供の様に怒鳴ったり、突き放したりした。でも、彼女はオレに怒るどころか、俺の叫びを聴き、俺に寄り添ってくれた。それだけでも彼女がどれだけ優しいのかも分かった。いや、出逢った時から彼女が優しい人間だと言う事には気付いていたのだろう。でも、それを無意識に抑え込み、拒絶される事を恐れて分かっていないフリをしていた。
改めて自分が幼稚な人間だと呆れながら、眉間を抑え、覚えたての膨大な魔法に関する知識を復習していく。
そんな黎牙の部屋の床には大量の計算式が記述された紙がばら撒かれている。1枚1枚には、スペースをギューギューに詰めて計算式を書いいた。それが何十枚も床にばら撒かれており、たった一晩とは言え、魔法1つを憶えるのに黎牙がどれ程に必死で頑張っていたのかが物語っている。
「そろそろ顔を洗うか……」
「では、ファングもみんなと一緒にご飯を食べるのです」
「え!?」
突如背後から声をかけられたことによって驚きの声を上げてしまう。
振り返ると自分の部屋で寝ていたため、黎牙の部屋にいなかった筈のラヴィニアがいた。
「お前!いつからいた!?」
「集中していたファングが魔法を成功させた所からなのです。ですから落ち着くまで声をかけてるのを待っていたのです」
昨日から変わらない笑みを浮かべ、床にばら撒かれていた紙の計算式を観て、黎牙の頭を撫でる。
「全く気付かなかった…………」
「それほどファングが頑張り屋さんのいい子なのです」
いい子…いい子と頭を撫でてくるラヴィニアを払いのけてそっぽを向く。
「ガキ扱いするな」
「朝ご飯の時間なのです。皆で食べるのでファングを迎えに来たのです」
呼ぶついでとしてどれ程出来たのか様子見をしにラヴィニアが来たのか、と納得する。
「わかった。これらを片付けたらすぐに行く」
「私もお手伝いするのです」
部屋を出た2人は鳶雄達が集まるリビングへ足を運んだ。
朝食の準備をしていた鳶雄は黎牙を見つけると何処か浮かない顔をしていた。
「その……身体は大丈夫なのか?」
「問題ない。もう身体の痛みは引いている。お前が気にする事じゃない」
「ごめん。黎牙があれ程忠告してくれていたのに俺は無闇に突っ込んでお前に死にかける原因を作った」
「はぁ、あの時俺はお前を止めなかった。その結果、ギルバスによる奇襲を許し、暴走し、お前達を殺そうとした」
「でも、本来なら黎牙1人でも逃げる事が出来た筈なのに、俺達を守る為に力を使って殺されかけ、暴走する原因を作ったんだ。本当にごめん」
「守った覚えは無い。俺達が協力関係である以上、貴重な戦力を減らされる訳にはいかなかっただけだ」
それが当たり前のように言う黎牙に苦笑する鳶雄。
本人は気付いていないのかもしれない。いや、実際には気付いているが、気付いていないフリをしているのだろう。
誰かを守るという行動が当たり前のようにしているということを。
それは暴走時にラヴィニアや自分達を殺そうとした自分から必死に護ってくれた事が何よりの証拠だ。
「彼が暴走して死にかけていた阿道黎牙か?」
ふいに第三者の声が屋上に響いた。
声の出先を探れば、屋上の壁に背中を預ける人影が一つ。
夏場なのに首にはマフラーを巻き、下は短パンというミスマッチの出で立ち、右肩には白いドラゴンを乗せていた。
小学校の高学年ほどの銀髪の少年に鳶雄は苦笑しながら頬を掻く。
「誰だ?このガキは」
「ああ、この子はヴァーリ。俺達と同じこのマンションの住人だよ」
怪訝する黎牙にヴァーリを紹介する飛雄。
ヴァーリは黎牙を見上げながら不敵に訊いてくる。
「朝食後に俺と一戦交えないか?」
子供とは思えない程の好戦的な物言いと、戦意を感じさせられる。
「待ってくれヴァーリ。黎牙はまだ身体が治り切っていないんだぞ。戦うのは無理だ」
黎牙の身を案じて制止を促す鳶雄だが、ヴァーリは不敵な笑みを続ける。
「だが、彼は既にどの様に俺と……いやこれからの闘いをどう戦うのか、策を練っているぞ。中々の戦意だ。同じドラゴンを宿す身として、彼がどれ程の実力なのかをぜひとも知りたい」
黎牙と視線をまじ合わせながら、ヴァーリは黎牙の考えを読んでいる。そんなヴァーリの言葉に気になるワードが出ていた。
「何?ドラゴンだと、どう言う事だ」
「成る程。キミはまだ自分のドラゴンと対話を行なっていないのなら、オレの口から言うのは早いな。忘れてくれ」
「話す気は無いか。なら、今の俺にできる範囲のところを確認したい。実戦形式でその挑戦を受けるついでに、話して貰うぞ」
黎牙の言葉にヴァーリは愉快そうに口の端を上げる。
「いいじゃないか。いいオーラをまとい始めた。キミにもまだ視認できないだろうけど、体からいい色合いの戦意が立ち上がっているよ」
2人の戦意がリビングでせめぎ合っていると、
ぐうぅぅぅぅぅぅうぅぅぅ〜〜〜〜〜っ!!
2人の腹から空腹の音が鳴り響き、リビングを静寂が支配した。
そんな状況の中で、2人を静観していたラヴィニアが入って来た。
「ヴァー君も、ファングもお腹がペコペコなので食べてからなのです。みんなでトビーのご飯を食べてから特訓なのです。だから、ヴァー君、特訓はもう少しおわずけなのです」
出鼻を挫かられたヴァーリの頭を撫でるラヴィニア。
そんなラヴィニアに年相応の顔をしながら払いのけようとするヴァーリ。
しばらくして、リビングに入って来た鮫島、皆川から身体の調子を聴かれるが、問題ないと答え、集まった6人で幾瀬が作った料理を食べる。
朝食後
見学と称する皆川、鮫島、幾瀬。
危険になったり、ケガをしたら治療すると称するラヴィニア。
と共にヴァーリと実戦形式の模擬戦をする為に屋上へと上がっていく黎牙。
これから病み上がりの黎牙とヴァーリによる邪龍と白龍による闘いが始まろうとしていた。