魔源の禁龍を宿し者《リメイク版》   作:ドラ丸2号

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第8話 魔王の血を継ぎし者

 

ヴァーリと名乗る少年と実戦形式の模擬戦をする黎牙。

屋上の壁際で、ヴァーリと黎牙の一戦を見守るのは、鳶雄、ラヴィニア、夏梅、鋼生の4人。

 

 

「それでは始めるとしようか?」

 

「あぁ」

『Enchant!』

 

無防備でいつでも来いかのように両手で広げるヴァーリ。

そんなヴァーリの出方を確かめる為に両脚に脚力強化の力を付加し、加速されたスピードでヴァーリに剣を振り下ろす。

振り下ろされた剣の軌道を先読みしているヴァーリは、難なく避ける。対する黎牙も避けられる事を承知の上であり、次は左から右へ横に一直線の薙ぎ払いを、その次は突きの連続攻撃を繰り出す。

ヴァーリは繰り出される剣撃による全く慌てず、余裕の表情で躱し続ける。そんなヴァーリに次なる一手として、

 

 

「この程度なのかい?」

 

「だったら試しみろよ?」

『Enchant!』

 

 

付加による強化された左脚よる蹴り上げを繰り出した。

しかし、ヴァーリは黎牙の蹴り上げを繰り出して来た左脚にタイミングよく乗り、回避の遠心力へと変えた。空中でクルクルと回転しながら、何処かカッコつけたかのようなポージングで着地した。そんなヴァーリに御構い無しと言わんばかりに体力を剣に吸収させ、

 

『Absorb!』

 

「放て神器(セイクリッド・ギア)!」

『Liberate!』

 

ある程度の体力が吸収した剣を振り下ろし、ヴァーリに剣から解放

されたエネルギー波を放った。

 

「ほぉ中々の攻撃だ」

 

迫り来るエネルギー波に関心するが、放たれたエネルギー波を銀色の輝きを纏った蹴りで消し飛ばした。

エネルギー波を消し飛ばしたヴァーリに追撃を加えようとしたが、目の前にヴァーリが居なくなっていた。

いなくなったヴァーリに驚き、周囲の気配を探るが、

 

「ここだよ」

 

「がぁっ!!」

 

 

突然消えていたヴァーリが眼前に現れた。

そして、突然現れたヴァーリの拳が黎牙の土手っ腹に入るーーーーが、ヴァーリはある違和感を覚えた。

 

 

「この感じ…まさか!?」

 

「そうさ!あのスパルタ魔女に教わった防御の魔法だ!」

 

 

ヴァーリが覚えた感覚は、まるで鉄板で殴ったかの様な感覚だったのだ。今度は、ヴァーリが驚愕する側となり、その出来た隙を逃さないため痛む腹に歯をくいしばりながらヴァーリの右腕を掴み、

 

「喰らいやがれ!!」

『Enchant!』

 

豪炎を付加させた剣を片腕でヴァーリに振り下ろしたーーーーが、ヴァーリは右腕を掴まれている状態にもかかわらず、先程と同じく銀色の輝きを纏った蹴りを振り下ろす剣を持っている右手に放ち、黎牙から剣を取りこぼさせた。

 

「しまっ!!」

 

「終わりだ!」

 

唯一の武器を失った事で作ってしまった隙に先程の拳よりも強力なヴァーリの蹴りを受けた。ヴァーリの蹴りを腹部にまともに喰らい、床を何度もバウンドしながら屋上の壁まで吹き飛ばされた。

 

「遠慮なしに攻撃を繰り出してくれた事、ダメージ覚悟で相手の隙を突く事、一晩で身体防御の魔法を覚えた事は中々のよかったよ。その応用さは及第点だ。だが、キミはまだ自分の神器(セイクリッド・ギア)の力を生かしきれてはいない。あの時、俺が消えた際に動体視力の強化の付加を行い、すぐにオレを見つけ、オレの拳を剣を盾にし防御し、オレの拳からチカラを吸えばよりもっといい闘いが出来た筈だ。それにもっとキミは付加を連発、または同時に使えばよりもっと戦法が広くなる」

 

「付加の同時はまだ出来ん」

 

「そうか、ならばこの数日で出来るようにするか、付加の連続のタイミングを見極める必要がある様だ。だが、一晩で防御の魔法を覚えるのはいい。覚えていなければ、オレの拳でノックアウトしていたのはキミ自身も分かっている筈だろ」

 

「まぁな。それと、お前のいうドラゴンというのは、夢で聴こえる3つの声の事か?」

 

「それはキミ自身で確かめることだ。だが、一度暴走したとは言え、これからキミはかなり面白くなりそうだ」

 

 

結果としてヴァーリは無傷で、自分は完敗となった。

そして、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべながら黎牙の闘いについての感想を述べた終えた。

 

 

「キミ、名前は?」

 

 

不敵な笑みが一転して楽しげな笑みへと変え尋ねる

対する黎牙は負けたのが悔しかったのか、ちょっと不機嫌な顔を作っている。

 

「さっき自分で言っていただろ」

 

「改めて聴きたい」

 

「…………阿道黎牙だ」

 

改めて名前を教える黎牙にヴァーリは手を広げて自信満々に名乗った。

 

「俺はヴァーリ。魔王ルシファーの血を引きながらも伝説のドラゴン―――《白い龍(バニシング・ドラゴン)》をこの身に宿した唯一無二の存在さ」

 

予想外の名乗り方に目を見開きながらも怪訝する。

 

「ルシファーだと?それは黎明の子のことか、それとも明けの明星のことを言っているということか?それに白い龍だと。つまりはウェールズの伝説に登場する竜の傍のことか?」

 

黎牙の返しの言葉にヴァーリは感嘆した。

 

「ほう、ついこの間まで一般人だったキミが、この領域レベルの話についてこれるとは。なかなかじゃないか」

 

「昔、趣味として神話に関する知識を興味本位で集めただけだ。戦闘の役には立たない」

 

「それは謙遜さ。情報は武器だ。事前に知っていれば敵の分析を戦闘中にも行える」

 

こんな歳なのだ。そういう設定をしていたとしても不思議ではないが、この裏側の世界はそう言った神話の存在がいる。目の前の少年が世界にとってどんな存在なのかは、いまいち把握はしきれない。

だが、朝食の時に見せたラヴィニアに対する年相応の反応から見て、まだまだ歳下の子供である事は納得していた。

そんな黎牙達に鳶雄達が駆け寄ってきていた。

 

「大丈夫か黎牙?かなり吹っ飛んだけど?」

 

「中々の吹っ飛びっぶりだったぞ、阿道?」

 

「ちょっと大丈夫!黎牙!ていうか、本当に魔法を一晩で覚えたの!?」

 

「ヴァーくん。いい子いい子なのです」

 

「ええい!何度も言っているだろ!撫でるな!俺は子供ではないんだぞ!!」

 

「うるさいのがもう1人増えたか……」

 

 

「おい、幾瀬、鮫島、皆川」

 

「え?何?突然?」

 

「あぁ、どうした?」

 

「何処か痛むのか?」

 

声を上げながら何処かやたらとテンションが高い夏梅、突然の黎牙の切り出しに首を傾げる鋼生と鳶雄。そんな3人に何処か視線を別方向へ変え、目を合わせず、

 

 

「暴走した時は……そ…の…………助けてくれたお前達には感謝してる」

 

 

感謝の言葉を述べた。

 

 

 

「「「……………………」」」

 

 

 

「あの時、命がけで俺を止めようとしてくれた事には本当に感謝している…………ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黎牙がデレたぁぁぁ!!!!」

 

「うるせぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

6人には何処か穏やか時が流れた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

鳶雄達との神器(セイクリッド・ギア)の訓練を行い、何とか『付加』の能力の連発のタイムラグなど様々な面を知ることが出来たおかげでかなり自分の戦法が固まってきた。

 

そして、廃業したデパートでの戦いから3日目の朝、話にあった『総督』によるビデオを見た例の部屋にて、鳶雄と共に朝食を作った。

今日の献立は、目玉焼きにウィンナーとソテーしたほうれん草を添えたもの、焼いた鮭の切り身、色とりどりのサラダ、味噌汁、ブルスケッタと言ったメニューだ。ブルスケッタはイタリア軽食の1つであるためヴァーリ以外は、全員黎牙を見る。しかし、前と同じ様に黎牙は「材料が余っただけ」と言って逃げる。

そして、無言で箸を進めるヴァーリの姿を見て、夏梅がイタズラな表情を浮かべる。

 

「あ〜ら、ヴァーくんったら〜随分と夢中になって食べているじゃな〜い?カップ麺さえあれば食事なんてどうでもよかったんじゃないの〜?」

 

「……勘違いするな。この食事から得られる栄養分に興味があっただけだ」

 

「栄養分ときましたか。まったく、どっかの誰かさんと一緒で素直じゃないんだから」

 

カラカラと笑いながら黎牙とヴァーリに意味深な視線を向ける夏梅。黎牙は全くの無言で、ヴァーリは文句を言いながら、2人は箸を止めなかった。

 

「やれやれ、ルシドラ先生は生意気盛りだからな〜」

 

「むっ、鮫島鋼生。そのルシドラとはなんだ?俺のことか?」

 

「ああ〜ルシファーでドラゴンなんだろ?なら、略してルシドラでいいじゃねえか」

 

鋼生の言葉に機嫌を損なったのか、不機嫌となったヴァーリは口をへの字に曲げる。

 

「むむっ、違うぞ。俺は魔王ルシファーの血を引きつつも、伝説のドラゴン《白い龍(バニシング・ドラゴン)》をこの身に宿すという唯ぃーーーーー」

 

「あーはいはい。ルシドラルシドラ」

 

ヴァーリの『設定』を軽く流してしまう鋼生に少年もついに異を唱える。

 

「むむむっ、阿道黎牙。この不遜な鮫島鋼生に俺の貴重性をキッチリと言ってやってくれ」

 

「食事中に騒ぐなよ」

 

一々、ヴァーリの事を説明するのが面倒くさいのか、適当な理由でヴァーリに構わなかった。しかし、明らかに顔には完全に面倒くさいと物語っていた。

 

「ヴァーくんはいい子いい子なのです」

 

「だから、俺の頭をなでるな! 子供じゃないんだぞ!」

 

不機嫌なヴァーリの頭を撫でるラヴィニアに年相応の顔を見せる。

このようにヴァーリはクールぶってはいるが、少しからかうだけで年相応の顔となる。こんな非日常の中でも、この賑やかな食事風景は黎牙にとってラヴィニアが与えてくれた暖かさとは違う暖かさがある事に危うく笑みを浮かべそうになったが、飲み物を飲んだため口を隠す事に成功したためバレなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後のミーティングにより、本日の方針は決まった。

鳶雄、鋼生、夏梅、黎牙、ラヴィニアの5人は同級生の遺族ーーーーーつまりウツセミとなった同級生の家族が、一斉に謎の引越しをし、姿を消した者達の動向や痕跡を探るために鳶雄の幼馴染みである東城紗枝の自宅へ足を運ぶ事となった。

罠を貼られている可能性を考慮し、前回よりも慎重に行動し、危険と判断した場合は即座に撤退するという事にはなっているーーーーが、最低でもなんらかの手掛かりが残っていると踏んで黎牙たちは行動していた。ヴァーリは、人としてちょっと難がある『総督』の個人的な頼みによりチームから離れている。

空蝉機関は鋼生と鳶雄の友人と幼馴染の名前を確かに口にしていた。よって、空蝉機関も口に出た者達関連のところから鳶雄たちは顔を出すかもしれないと予想を立てているはずである。情報が少なすぎる自分達では、このように敵の罠が貼られている巣に飛び込むという命のリスクを犯してでも情報を得なければならない。

考えている内に東城紗枝の自宅前に着いていた。まずはここから敵の痕跡を調べていく。おそらく激しい戦闘になる事は間違いなかった。

 

 

 

これから始まる空蝉機関との苛烈の戦いは、

 

 

 

 

鳶雄の《狗》と黎牙の《邪龍》の力を

 

 

 

 

より強く引き出す事になる。

 

 

 

 

しかし、それが2人とって

 

 

 

吉と出るか、凶とでるか、

 

 

 

 

わからない。

 

 

 

 

2人の運命の歯車はもう動き出している

 

 

 

 

戦わなければ生き残れない

 

 

 




『オレ達の出番はまだなのか?』
『いつになるんだ!コラァァァァ!!』
『早くしろやァァァァァァ!!!』

すいません。お3人の出番はもう少し先です。
少々お待ちを。

『『『ぶっ殺す』』』

すいませんでしたァァァ!!!

次回《消し去られし神滅具(ロスト・ロンギヌス)
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