ぺちゃ。
頬に生暖かい何かが落ちた。まぶたを透かして光を感じる。しかし、起きるのはつらい。混濁した意識は再び眠りにつこうとする。人肌より少し暖かめの柔らかい枕がそれを後押しする。
身体をごそごそと動かして横向きになる。するとまた生暖かい何かが首筋に落ちてきた。さすがに何が起こったのか確認しようと目を開けた。
原っぱとまばらに生えている木、青い空が見えた。ここは外のようだ。いつの間に外に出たのか。寝ぼけた頭では思い出せなかった。それに、特に曇っているふうでもなくむしろ晴れ渡った空で、雨が降りそうな気配でもない。だとしたら顔に落ちてくる生暖かい液体は何なのか。
強い光でぼやける目を擦りながら私は上を向いた。
可愛らしい顔が寝ていた。柔らかそうなほっぺたや、活発そうなくせっ毛を持った人物だった。と思ったが、頭頂部に大きなイヌ耳がくっついている。コスプレでなければフレンズだろう。
フレンズ?
なぜ私は特に疑問も無くフレンズだと思ったのだろう。それも友達の複数形という意味のフレンズではなく、動物がヒト化した存在としてのフレンズ。知識としてそれを知っている。知っているのは何ら問題は無い。違和感を覚えたのはいつ、どうやってそれを知ったのか分からないからだった。
腕を組む。フレンズの寝顔を眺めながら、知識のことと私がここで寝るまでの過程を思い出そうとして、彼女の唇に水滴が踏ん張っているのが見えた。
口腔内で分泌され、摂取した食物の分解を助けるもの。すなわち唾液である。
「うわ!」
私はほぼ反射的に起き上がった。自分の頬や首にかかったよだれを丈のあっていないぶかぶかの袖で拭き取る。持ち主が可愛いから良かったものの――いや良くない。可愛かろうがよだれはよだれである。
起き上がって気付いたが、私が枕だと思っていたのは彼女の太ももだったようだ。擦り傷や引っ搔き傷がついている。フレンズ同士でじゃれ合っていたのだろうか。
しかし、一体なぜ私は外で寝ていて、彼女に膝枕をされていたのだろう。起きたばかりで頭がしっかり働いていないのか思い出せない。
膝枕の彼女の口からよだれが太ももに落ちた。私は彼女に今の状況を聞きだそうと肩に触れて軽く揺する。というか随分大きな荷物を背負っている。
「おーい。ちょっと起きてくれないかな?」
ゆさゆさと身体を揺さぶってみるが中々起きない。聴覚の優れたイヌ科のフレンズに対して大きな声を出して起こすのは可哀想なので、もう少し強く揺さぶってみる。
「うぐ……」
反応が返ってきたが苦しそうだ。触れられたところが痛むのかびくりと身体を震わせた。思わず手を離す。じゃれ合ったというよりは喧嘩をしたのかもしれない。よく見ると顔にも傷がついていた。
まあ、すぐそこに危険が迫っているわけでも、それほど急ぐわけでもない。無理に起こさなくてもいいだろう。
そう思って肩に掛かっているかばんを解いて、そっと寝かせようとした。しかし先ほどの痛みが効いてしまったのか彼女のまぶたがぱっちりと開いた。瞳は綺麗な青と茶のオッドアイだった。
「あ、ごめん。起こしたみたいだね」
「……あ」
「どうしたのかな」
「無事だったんですね! 良かったぁ!」
がばっ、と身体を翻して抱きつこうとして途中で停止した。『しまった』という表情なのはどういうことだろうか。
「……あ、あ痛たたた」
突然彼女が左肩を抑えて地面に手をついた。
「大丈夫かい? なんだか傷だらけだけど……」
「い、いえ。心配には及びません! わたしよりもあなたですよ! どうしてあそこで大怪我をしていたんです!? ラッキーさんが来てくれなかったら――」
彼女は興奮した様子で矢継ぎ早に話す。
「ちょ、ちょっと待って。落ち着いて。私、何があったか全然覚えていないんだよ」
「あ……す、すみません」
彼女は正座してしゅんと小さくなる。上目にこちらを窺っていた。
「というか私大怪我してたの?」
「はい……肩から胸にかけての傷が一番大きかったと思います」
私は襟を引っ張って覗いてみる。確かに肩から胸にかけて新しい皮膚が盛り上がるように修復していた。いわゆるミミズ腫れのような感じだが、その大きさは自然治癒する前に死ぬんじゃないかと思うほどに広かった。ここでは医療施設なんてないし、あったとしてもこういう治療の仕方はできないだろう。
改めて自分の身に起きたことの特異さ、重大さを認識してきた。それに、私はこんなに小さかっただろうか。もっと正確にいえばこんなに幼い身体をしていただろうか。ぶかぶかの大人用のジャケットを眺めながらそんなことを思う。
だんだんと頭が痛くなってきた。
「あの、大丈夫ですか?」
心配そうな声。
「……ごめん。どうして私がここにいるのか教えてもらっても良いかな?」
彼女は頷いて説明してくれた。といっても私がどこから来たのかは知らないようで、彼女の話を聞くにどうやら乗り物に乗っていてその運転を誤り、大事故を起こしたようだった。
「…………」
自分のした取り返しのつかない事態に絶句する。
「本当に大丈夫ですか? 顔が青くなってます。どこか痛みますか?」
「ご、ごめんなさい。あなたの家を壊してしまったみたいで……しかもそれを覚えていないなんて」
「いえ、いいんです。あそこはわたししかいませんでしたし、あなたが無事で良かったです。そうだ! あなたのお名前を教えてくれませんか? わたしはイエイヌです」
「う、うん。私は――私の名前は――あれ? 私の名前……は?」
おかしいことに自分の名前が出てこない。若年性健忘症? そんな馬鹿な。他の知識は出てくる。イエイヌは人類がまだ獲得経済で生活していた時代から猟犬として家畜化された動物で、共に狩猟をし、共同生活をしていた。古代エジプトの壁画にも描かれているし、日本でも縄文時代から飼われていた。いや待て、なぜそんなことを知っている。思い出せない。私がどこから来て、何の目的でここにいるのか。親は? 友人は? 私はどこで生まれて、誰に育てられた? 誰と遊んだ? 誰にものごとをいつ教わった? その全てが綺麗さっぱりと頭から抜け落ちている。
「私は……誰? 誰なんだ?」
過去がない。自分を形成しているはずの今までの積み重ねが全て消去されていた。不安定な流氷に立っているような感覚に襲われる。何か自分を証明するものは無いか服のポケットを探す。乗り物に乗るには免許証がいる。それを確認しようと思ったのだが、胸ポケットから出てきたのはSKETCHBOOKと表紙に書かれた測量野帳だった。ボールペンのクリップが硬い表紙に挟んである。それを急いでめくる。何か手がかりがないか。名前でも何でもいい。それをとっかかりに思い出せるかもしれないという淡い期待にすがったが、野帳には格子状の罫線が印刷されているだけで何も書かれていなかった。
無駄だと分かっているのに焦って再び野帳を開く。隅々まで目を通すが結果は変わらない。憎たらしいほどに真っ白だ。そんな私の様子を見てかイエイヌは心配そうに声をかける。
「あの、ちょっと待っててください」
イエイヌの言葉で私は顔を上げた。彼女はかばんを開けてごそごそとしている。
「落ち着きたいときにヒトは葉っぱをお湯で戻したやつを飲むんです」
ティーセットをかばんから取り出し、茶葉をポットに入れた辺りではたと気付いた。
「あ、お湯がない……」
ポットをじっと見つめてから上目遣いに私を窺う。目が合って彼女は照れ隠しに、にへと笑う。
「ええと、他に落ち着くのは……」
イエイヌは膝立ちで近づいて、私の側頭部を両手で挟んだ。そのまま柔らかい手を動かしてわしゃわしゃと撫でてくる。私はあっけにとられてされるがままだったが、不思議なもので焦っていた気持ちが和らいでいく。ヒトよりも少し高めの体温が心地よい。
それに何よりイエイヌが可愛い。
一旦焦っていた思考が中断されたことで少し冷静になった。
「ど、どうでしょう?」
恐らくは彼女がされて嬉しいことなのだろう。イエイヌのフレンズだから、彼女はヒトと共に暮らしていたはずで、良くこうやって撫でられていたのかもしれない。
「ありがとう。落ち着いたよ」
「それは良かった」
すっ、と手が頭から離れる。少し名残惜しい気もした。
「イエイヌさん。私を見つけたところに案内してくれないかな?」
もしかするとそこに何か手がかりがあるかもしれない。
「はい! いいですよ! それで……なんとお呼びすればいいですか?」
確かに名前がないと色々と不便だろう。とはいえ自分で自分の名前を考えるのは恥ずかしいし……イエイヌに決めてもらおう。
「イエイヌさんが決めてよ」
「ええ!? わたしがですか?」
うーんうーんと腕を組んで唸っている。そういう仕草はヒトっぽいんだなととりとめも無いことを思った。
「じゃあ……それは何なんですか?」
イエイヌは測量野帳の文字を指差した。後から思えばそれは偶然で、文字ではなく野帳それ自体を差していたんだろうと思う。
「これ? スケッチブックだよ」
「すけっちぶっく……す、すけ……けっち……ちぶっく……」
彼女の様子から、そこから名前を付けようとしているのは私でも分かる。
「チブックはやめてね」
私の感覚だとそれは語感が間抜けすぎる。
「それなら……すけっちさんでどうでしょう?」
「スケッチ。スケッチか……いいね! いい名前だよ。ありがとう」
なんだかあだ名のような響きで可愛らしいと思う。果たしてそれが私に似合うかはさておいて。
「いえいえ。それじゃあ案内しますね」
なぜか彼女のほうが嬉しそうな顔をしてそういった。
「うん。よろしくね」
「といってもすぐそこなんですけどね」
彼女は私の後ろを指差す。それにつられて私も後ろを向いた。少し遠くに何本かの狼煙のような細い煙が立ち上っている。
「よいしょっと」
彼女のかけ声で再び振り返る。出していたティーセットを大きなかばんに戻して背負い直していた。一瞬辛そうに表情を歪めたのを見て、そういえば起こそうと肩に触れたときに痛がっていたのを思い出す。
「もしかして肩を怪我してるんじゃ?」
「えっ……いえ、気にしないでください」
「気にしないわけにはいかないよ。ほら、ちょっと貸して」
私は彼女が意見を述べるより先にかばんを降ろさせ、代わりに私が背負う……というよりこれは担ぐといった方がいいかもしれない。
「そんな、ヒトに荷物を持たせるなんて悪いですよ!」
「重……」
「ほら。無理ですって!」
私の上半身より大きなだけあって、中には大量の荷物が入っている。十代前半の私の身体には文字通り荷が重すぎた。しかし、こんなに重いものを彼女に背負わせて負傷しているであろう肩に負担をかけるのはもっとまずい。
「じゃあ、こうしよう。私が背負うから下から支えてよ」
自分から背負っておいて格好悪いことこの上ないけれども、現時点ではこの方法が最良ではないだろうか。なんとなく、荷物をここに置いていくという考えは切り捨てていた。
イエイヌはうー、とすこし唸りながら迷っていたが、荷物がふっ、と軽くなったので支えてくれているのだろう。
「すみません。ご迷惑をかけて」
「いやまあ。私がイエイヌさんの家を壊しちゃったからこうなった訳で……謝るのは私のほうだよ」
そういいながら私たちはゆっくり歩いていった。
イエイヌが住んでいたというそこは、近くで見るとより具体的に無惨な現状を晒していた。
私の胸ほどの高さの塀は爆発したという乗り物の破片で所々崩れており、入り口だったはずの門は柱が折れて通れない。ドーム型の家……恐らくはパークの宿泊施設と思われるそれは爆風と熱波に煽られて焼け落ち、炭化して黒くなっていた。
それらの後処理というか実況見分を十数体のラッキービーストが行っている。目から緑色の光線を出して走査しているのだ。
「…………」
救いようがないのがこの光景を作った元凶が私であるということだ。恐らくは事故の衝撃で記憶喪失になってしまったのだろうが、そんなことは関係ない。幸いにも被害者はいなかったようだが、もしここに人間やフレンズが利用していたと考えると背筋が凍る。
「ラッキーさんがこんなに……」
イエイヌが呟いた。
それに、ここは彼女の大切な場所だったのではないか。この大荷物は彼女が危険を冒し、怪我をした痛みをおしてまで確保したかったものではないのか。肩に掛かる荷物が少し重く感じる。
ぴょこぴょこと独特の足音が聞こえる。一体のラッキービーストが私たちを見つけて寄ってきたのだ。イエイヌにいって、一旦荷物を降ろすことにした。
「このラッキーさんが助けてくれたんですよ」
イエイヌはあまりこの惨状を気にした風もなく、しゃがんでそういった。
「え? 違いが分かるの?」
「ええ。匂いで」
「へえ。ありがとうね」
「ボクハラッキービーストダヨ。ヨロシクネ」
パークをガイドする機能を持っているので私に反応したのだろう。ちなみにフレンズに対しては基本的に応答しない。彼らがフレンズの生態環境に影響を及ぼさないようにする為だ。
丸みを帯びたボディと大きな耳と尻尾は愛嬌があり、パーク内ではヒトに作られたロボットに分類されるが生物のような仕草には親近感を覚える。
「あれ? そんなにシャイじゃないのかな……」
イエイヌはラッキービーストの反応に首を傾げる。フレンズに干渉しないことをシャイだからだと思っているようだった。
「キミノ名前ハ?」
「私はスケッチだよ」
「スケッチ。身体ノスキャンヲ行ウヨ」
私は頷いて許可を出した。簡易の生体検査をしてくれるのだ。こういう知識のみ保持しているというのは気味が悪いが、全く何も覚えていないという状況よりはマシだろう。
彼はさっきの見分に使っていたのと同じ光を私に当て、頭のてっぺんから足の先までくぐらせる。
「検査中……検査中……」
ピピピと電子音を出しながらデータを解析している。大怪我が治っている理由も分かるかもしれない。
「バイタル正常。……ヒトニハ見ラレナイ回復力、メインサーバニ接続、原因ヲ過去事例カラ照合」
そう思っていたのだが、
「アクセス不能。リトライ、ケ、ケ、検索中……アワ、アワワワワ」
急に彼はコテンと横に倒れてしまった。何かオーバーフローでも起こしてしまったのか。
「わー! ラッキーさん!?」
イエイヌが停止したラッキービーストに驚いて持ち上げる。
「大丈夫さ。しばらくすれば自己――元気になるよ」
「本当ですか?」
心配そうにラッキービーストを見つめる。彼女は優しいフレンズなのだなとつくづく思う。
だが、私の身体をスキャンしてラッキービーストが停止してしまうというのはどういうことだろうか。不安と恐怖を感じて、それを振り払うようにしてイエイヌに語りかけた。
「イエイヌさんの家ってどこだったの?」
「こちらです」
門だった瓦礫がある辺りからすぐ近くだった。しかし、彼女に案内されなければ絶対に分からなかっただろう。
「この辺りですよ」
イエイヌは片腕で気絶(?)したラッキービーストを抱えて、空いた手でその空間を指差し円を描くような仕草をする。つまり、彼女の家は綺麗さっぱり、跡形もなくなっていたのだ。乗り物は爆発炎上したと聞いていたからそれに巻き込まれて吹き飛んでしまったのだろう。それはこの辺りの地面が特に抉れていることからも爆心地である事は容易に理解できた。焦げ臭い匂いもこの辺りが一番きついように思う。
これだけ爆発の威力が強いようでは手がかりになるものも吹き飛んでしまっている。私が乗っていたという乗り物など見る影もない。それに、爆発の規模やイエイヌの説明からしてどうやら自動車のような地上を移動するものではないようだと確信した。これほどの爆発が起こるとなると、かなりの量の燃料が必要になってくる。イエイヌの証言からして、私が乗っていたものは流線型のフォルムをしており、気密性が高いことから小型の航空機ではないかと思われる。エリマキトカゲのエリマキ――つまり噴射口があった事実からかなりの速度を出せる機体だったようだ。もしかすると民間機ではなく軍用機だったのかもしれない。
「どうですか?」
「いや……この状況じゃ多分手がかりは見込めないだろうね」
「そうですか……」
ピンと立っていた耳がしゅんとしおれる。私よりもがっかりしていた。自然と笑みがこぼれる。
「さて、これからどうしようか……」
ここで手がかりが見込めない以上、私自身が記憶を取り戻す方法といえば時間経過によるものしかない。そうなるとしばらくの間滞在するための場所が必要になってくる。食糧はジャパリまんがあるからいいとしても、人間の管理から離れて久しいこのパークではどこにどんな危険が潜んでいるか分からないし、分かっているだけでもセルリアンという脅威がある。
そして恐らく、私はこのジャパリパークの関係者ではない。ジャパリパークという施設やフレンズが存在する事は知っていても、このパークの全容を知識として持っていないのだ。アフリカにサバンナがあってそこにキリンやシマウマが生息していることを知っていても、そのサバンナがアフリカのどこにあって、どこの国が管理しどのくらいの広さであるのかは知らないといったところだろうか。
「どこかに滞在できる場所があればいいんだけど」
さすがに宿泊施設がここにだけしかないということはないだろうが、管理されていない施設というのは案外すぐに朽ちていくものだ。ここはイエイヌが住んでおり、結果的に彼女が管理していたから存続していたようなもので、他の施設は恐らく使用不可かそれに近い状態になっているだろう。
「あのう……」
イエイヌがおずおずと私に尋ねる。
「なんだい?」
「私もついていっても……いいでしょうか?」
その提案は願ったり叶ったりだった。私としても独りでは心細いし、とてもありがたい。断るデメリットこそあれ、メリットなど一つも無かった。だが、
「もちろんそれはこちらからお願いしたいくらいだけど……君はいいのかい? この辺りに友達がいたりとか」
「私はずっと独りでしたし……さっき独りになっちゃいましたし」
彼女はラッキービーストの目を見て話す。
「さっき……?」
「ええ、まあ。お家がなくなってしまいましたから。私がここにいる理由もないので」
少し悲しそうに笑った。答えになっていない答えを追求することができず、なぜか私はその表情から目を離せなかった。
私は笑みを浮かべて握手しようと手を差し出した。なんとなく、そうするのが正解であり、私がそうしたいと思い、そうするのが義務のような気がしたからだ。
「それじゃあ、よろしくね」
イエイヌは差し出された手と私の顔を交互に見比べた。少し手を出しかけて、引っ込める。眉をハの字にしてチラチラとこちらを窺う。なんだか迷っているようだった。しかし、意を決して、
「その……お願いします」
イエイヌは握手を知らず、自分の手をグーにして私の手のひらにそっと遠慮がちに当てた。変則的な『お手』である。私は苦笑して彼女の握った拳を包んだ。