FINAL FANTASY XV -EPISODE HOPE-   作:びゃこ

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Chapter1.旅立ち
Chapter1.旅立ち①


「旅の行程と日取りは了承した。ノクティス王子の出発を認める」

「ありがとうございます、陛下」

 

 プロンプトは、親友とその父とのやり取りをどこか落ち着かない気分で見守っていた。落ち着かない気分でいたというだけであればノクティスの旅に同行することが決まったその日からであったと言えるのだが、この時この瞬間の落ち着かなさというのはまるで別のものだった。

 思えば、プロンプトがこうして王城に足を踏み入れたのはこれが初めてになる。高校でノクティスとの友人関係になったときには既にノクティスは王都内の高層マンションで1人暮らしを始めていたし、ノクティスの言う『俺ん家来いよ』の行き先が王城を指したこともなかった。それでも、ノクティスと友人関係にあるならばいずれこういった機会も来るかもしれないとそれなりに覚悟はしていたのだ。ただ予想外だったのは、一般人に過ぎないプロンプトが正真正銘国王陛下の前に並ばされているということ。

 そんな気分をどうにか鎮めようと、プロンプトは目の前で軽く頭を下げている親友の姿を見やった。たった一人の父親と息子の間でありながら、そのやり取りはあまりにも機械的であるように感じられる。王族同士というのはこうなってしまうものなのだろうか。しかし、これまでにプロンプトが当のノクティスから聞き及んでいた”親父”の話からはどうにもかけ離れている。

 

「旅の無事を祈る。下がってよい」

「はい」

 

 グラディオラスは、父の言葉に対しあまりにも簡潔な答えを返した後にすぐさま踵を返したノクティスの後ろ姿を見やった。あの態度の割にノクティスがレギスのことを好いているのはよく理解していた。だからこそ咎める気もなかったし、ある意味素直でないこの親子同士の一時の別れにしては”らしい”のだろうと感じていた。

 グラディオラス自身とノクティスとの間の関係とイグニスやプロンプトとの間のそれが異なるように、親子の関係性にしても人それぞれだ。いずれにせよ重要な旅を前にした態度にしてはどうにも緊張感が欠けている。そのことに対しては後ほど存分に文句を口にさせてもらうつもりでいながらも、グラディオラスはレギスに向けて軽く一礼した。ノクティスや、その友人であるイグニスやプロンプトのことはどうか任せて欲しい、そんな思いを込めて。それが、王の盾たる自身の役割であろうと、グラディオラスは認識していた。

 

「まあ、王子なんだろうけどさぁ」

「予想はしていたが」

「ビシッとしろよ。ああいうときくらい」

 

 イグニスは、王城を出ていくらか和らいだ態度となった友人たちの言葉に軽く相槌を打ちながらも、その様子を最後尾から見守っていた。後方から同じく王家に仕えているドラットーがノクティスを呼び止める声を耳にしながら階段を下っていくが、ドラットーのやってくる後方からカツンと杖のつく音を耳にして慌てて後ろを振り返った。イグニスの想像通り、振り返った先にはドラットーのみならずレギスの姿もある。

 いろいろと言い忘れてな。そう前置きしたレギスの言葉は先刻と異なり、ただ一人の父としての言葉であることがイグニスにはひしと感じられた。その声音が、表情が、何よりそれを物語っている。本当に不器用な親子だ。彼らをよく知るイグニスだからこそ、そう素直に感じる。

 

「大事な友人たちに迷惑をかけないように」

「んなこと、わざわざ」

 

 ノクティスは、父の思惑を理解していた。玉座に座る父は王としての振る舞いを求められる。それ故に、自身もまた王子としての返答をした。それがわかっているからこそ見送りだって不要だった。魔法障壁を展開し続けている影響で、父の体力は年々衰えてしまっている。そんな状態で、わざわざこうして出てくる必要だってない。

 今生の別れでもないだろうに、こうして父として改めて見送りをするということは、未だ父にとってノクティスは子どもでしかないであろうことの表れだった。国王としてでなく、父として接してくれるレギスのことがノクティスは好きだった。だからこそ、この見送りを嬉しくも、それでいて悔しいとも感じていた。そしてそれ以上に、友人たちの前でこうしたやり取りをするのが気恥ずかしいという思いも大きかった。そういうところが子どもなのだ、と、グラディオラスならば口にしたかもしれない。

 

「知っての通り、頼りない息子だが。……どうか、よろしく頼む」

 

 レギスは、その内心で、深々と頭を下げた。国王であるレギスが頭を下げるということがどれほどの意味を持つか、それを考えれば実際の行動に出ることができないのは至極当然のことであった。

 これから、この王城は戦禍の炎に包まれることとなるだろう。もちろん帝国に負けるつもりはなかったが、これが息子との最後の邂逅となる可能性だって存在している。だからこそ、こうして最後は父としての見送りをしたかった。それが、ノクティスからしては鬱陶しいものに違いないと理解しながらも。

 友人たちへ、未来の奥方へ、そしてノクティス自身へ。レギスがそのそれぞれを口にしたのは、ただ一人の息子に伝えられる限りのことを伝えたいという思い故だ。これが最後となってしまったらと、少しでも長く息子と共に過ごす時間を作りたいという思いもあったのかもしれない。

 決して、これを最後にはすまい。そう決意を込めて、レギスはノクティスを送り出す。

 

「ルシス王家の人間として。このレギスの息子として。……常に、胸を張れ」

 

 

   FINAL FANTASY XV -EPISODE HOPE-

 

 

 これは、真の王が、仲間と共に星を救う物語である。

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