FINAL FANTASY XV -EPISODE HOPE-   作:びゃこ

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Chapter1.旅立ち②

 なんだってこんなことになったんだ。そう頭を抱えながら、オレは出発から何度目かすら分からない溜息をついた。乗り物であるはずのレガリアを人力で押すだなんて、それこそ馬鹿げている。しかし、動かないものは如何しようもない。そもそもこんなことになったのだって、インソムニアの外に出ることなんてなかったオレとプロンプトがふたりで盛り上がっていたことが要因となったのであって、自業自得なのもわかっている。初めから運転に慣れているイグニスに任せていればこんなことにはならなかったはずだ。

 この状況を生み出した張本人であるプロンプトは、疲れ切ったと言わんばかりに路上に寝転んでいる。オレのせいだから、と長らくレガリアを押し続けていたのだからわけないだろう。まだまだ体力に余力のアリそうなグラディオは、路上を走る他の自動車に助けを求めているが案の定助けは見つからない様子で、こいつが外の厳しさか、などとしみじみ呟いていた。そんなグラディオに対し、仕方がないと答えを返したのが運転席に座るイグニスである。3人が押して、1人が休んで。そうしてこれまで進んできて、今はイグニスが席で休むターンだった。

 そう、そもそもレガリアを押すのが交代制なこと自体変な話だ。仮にも王子である俺に車を運ばせるなんてことをさせるのはそれこそこいつらくらいのものだと思う。しかし、こいつらが身分を気にせず対等に接してくれていることは素直に嬉しいことでもある。

 

「さあて、また押してくしかねえな」

「はあ?オレもう喉かわいて死にそう」

 

 ある程度の戦闘訓練を受けたとはいえ一般人で出であるプロンプトは、もう体力も限界なのだろう。オレのせいだから、などとしおらしく言っていた当初と打って変わって文句を口にしている。そんなプロンプトの文句にオレも同意だった。

 グラディオは、座り込んでいるオレに起きろと、倒れこむプロンプトに働けとそれぞれ声を掛けてくる。ここで立ち止まっていようと結局車を押していくしか道はないのだ。仕方なしと立ち上がりながらも、オレとプロンプトはそれぞれに文句を口にする。自業自得だとはわかっていても、これくらいは許してほしいものだ。

 

「ていうかさ、おかしくない?ハンマーヘッド、もっと近いでしょ」

「さっきの地図のとおりだが」

「すげー近所だったよな」

「ああ、かなりね」

「世界地図で見りゃあな」

 

 現在故障中の車、レガリアは親父の愛車であり、いうまでもなく高級車だ。そんじょそこらの整備士では整備すらままならないらしく、旅の行程でもまずはハンマーヘッドへ向かうようにと指示されている。ハンマーヘッドの工場でなら、レガリアのメンテナンスも可能ならしい。先程から運転席に座ったイグニスがハンマーヘッドへ電話をかけているのだが、繋がる様子もない。あとどれ程の距離でハンマーヘッドNIたどり着くのか想像すらできず、オレは最大限の悪態をついた。

 

「……はぁ、世界広いわ」

 

 これまでのオレがどれほど狭い世界で生きていたのか、身をもって実感できる。そしてこれから、この広すぎる世界を旅するのだ。そう思うと、途方もないようにも、それでいて楽しみだとも思う。

 親父のレガリアと、3人の友人たちと。これから始まる旅は、きっと一生忘れられないものになるだろう。そんな予感がしていた。

 

 

   *   *   *

 

 

 やっとの思いでハンマーヘッドへたどり着くと、おーい、と軽快な様子で声をかけてくる人物がいた。かしこまる様子もなくどれが王子、なんて問いかけてきたことからして、彼女がレガリアの整備をしてくれるのだろうか。通常の整備士には扱えない、などと言われる割に随分と若そうなのが気がかりであるが。

 彼女の視線に入るように立ち上がると、こちらに目を向けた彼女はレガリア越しに近づいてくる。

 

「初めまして、王子。結婚おめでとう」

 

 オレの王子としての知名度がインソムニアの外では低いということは前々から耳にしていた。何より、それ故にこのお忍びの旅が成り立っているのだ。それはそれとしても、初対面で、しかも王子相手にしては随分とフランクすぎはしないだろうか。オレ自身としてはこの方がやりやすいし特段文句はないのだが、外の世界では王子という身分すら本当に意味がないのだと痛感させられる。

 

「いや、まだだから」

 

簡潔に、そう事実だけを答えると、変わらずレガリア越しに見定めるかのような目線を向けられる。君がルナフレーナ様の結婚相手かぁ、などという言葉付きだ。オレのことは君呼ばわりのくせ、ルーナのことは様付けらしい。そんな様子に戸惑っていると、イグニスが彼女へ声をかけた。

 

「遅くなって申し訳ない」

「あっちでじいじが待ちくたびれてるよ」

 

レガリアの状態を確認しているであろう彼女に、今度はグラディオが声をかけた。一般的に彼女もなかなかの美人に区分されるだろうし、グラディオのことだ、すでに狙いを定めているのかもしれない。

 

「あんたは?」

「シドニー。……シド・ソフィアの孫娘。ここの整備士」

 

 やはり、彼女もまた整備士であるらしい。若くともそう名乗っているということは、それなりの腕も持ち合わせているのだろう。そう納得していると、遠方から老人が声をかけてくる。おそらく、その老人こそがシドニーの祖父のシド・ソフィアだろう。

 

「親父は大事に使えって言わなかったのか。そいつは繊細なんだぞ」

 

そんな小言を並べながら、シドもまたレガリアの様子を確認している。そのままレガリアの外周を回りながら近づいてきたかと思えば、オレの顔を見やってノクティス王子か、とつぶやきを漏らした。

 

「フン、親父の威厳をそっくり拭き取ったような顔だな」

「はぁ?」

「いろいろ控えた大事な旅なんだろ。もっと締まった顔できねえもんかね」

 

突然貶されて思わず抗議の声が口をついて出た。そもそもまだ王子でしかないオレに、親父のような威厳があるはずがないというのに。

 それにしても、この口ぶりからしてシドは親父の知り合いなのだろうか。少なくとも、親父からはそんな話は聞いていなかったように思う。ただ、レガリアの整備をできるのはごく一部の技師のみという話だから、その関係で知り合いなのかもしれない。

 

「こいつはすぐにはできねえぞ。中に運んだら適当に遊んでな」

 

 すぐさま仕事の話へと戻したシドは、それだけ言ってガレージの方へと戻っていく。そんなシドの様子を見て軽くため息をついたシドニーは、重ねてレガリアを運ぶように告げた。

 

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