FINAL FANTASY XV -EPISODE HOPE- 作:びゃこ
レガリアを工場へ運び終えると、自然と思考はこれからの時間をどう潰すかという方面へ移っていく。かかる時間がどれほどなのかわからないが、整備が終わったら連絡を入れてくれるとの言葉もあったので、適当にのんびりと過ごしていれば良いだろう。ホテルなどはないものの、レストランやモービルキャビンなどは揃っている。
自由行動だな、などと言って真っ先に武器屋の側の女性に声をかけているグラディオは本当に相変わらずだ。そんなグラディオに付いていても仕方がない、とプロンプトの姿を探すと、ガレージ隣のショップへ入ろうとしている姿を目にする。真面目なイグニスはまだ確認事項があるようで、その場に立ち尽くしたまま考え事をしている様子だ。考えることに関してはイグニスに任せておくのが一番だろうから、オレは当初の予定通りプロンプトの後を追うことに決めたのだが。
「ノクト、ちょっといいか。整備費用の支払いでもう金がない。シドニーに相談しようと思う」
「まさかの一文無しかあ」
これではショップで買い物をしようにもそれすらできないとプロンプトが嘆いた。自分の金で買えよ、と声をかけてみると、通貨が違うんだって、と答えが返ってくる。同じルシス国内だというのに通貨が違うとはどういうことなのだろうか。チラとすぐ側の店内を覗き込んで見れば、そこにはギルという見慣れない通貨が書かれている。なにはともあれ、これではプロンプトの言った通り正真正銘の一文無しである。イグニスが口にしなければ、そんな事実すら知らずに旅を続けていたかもしれないと思うと恐ろしい話だ。
「だがよ、整備費にしちゃ高すぎねえか?」
いつの間にか女性との話を終えたらしいグラディオがそうぼやいた。唐突に人を貶した上に料金をぼったくるなんてひどい話もあったものだ。シドに声をかけたところでおそらく無駄だろうから、イグニスも口にした通りシドニーに声をかけることにする。
そうしてシドニーに整備代をまけてもらえないかと聞いてみれば、彼女は訳知り顔で頷いた。
「なるほど、じいじだね。外の世界の厳しさを教えるってこれかあ」
やはり、シドの仕業だったらしい。シドニー曰く、シドはオレたちに野獣退治で金を稼がせるつもりだったようだ。すでにそのための依頼まで用意されており、なんとも準備の良いことだろうかと思う。
「やるしかねえか……」
「だな」
一般人であるプロンプトに急遽戦闘訓練を受けてもらうことになったのは、こういう事態をあらかじめ想定していたからなのかもしれなかった。ついでにとシドニーが渡してくれた近辺の地図を見るとこの辺りに大きな町らしい町はないようで、主な仕事もハンターとしての野獣退治がほとんどらしいことが伺える。それにしたって、結婚式に出向く王子の旅の費用が自費というのもどうにも妙な話だとは思うが。
「野獣退治かぁ」
「討伐対象はトウテツだ。群れとなると厄介らしい。油断するなよ、ノクト」
「わかってるって」
結婚式に出るために出かければ金がなく、野獣退治をしてみれば大怪我をして帰ってきた。そんなことが現実になったらもはや笑い話にすらならないだろう。これまで戦闘の訓練を受けてはいるが、野獣相手に戦う機会はなかったから、イグニスの言う通り油断するつもりはない。
「そろそろ行くぞ」
3人にそう声をかけて、ハンマーヘッドを後にする。シドの思惑通りに動くのはどうにも癪な気分だったが、整備待ちの時間にやることができたのだからある意味では良かったのだろう。
3人それぞれの返答を耳にしながら、オレはターゲットのいる方角へと走り出した。
* * *
依頼書に記された通りの三箇所でトウテツの群れの討伐を終えると、シドニーから電話がかかってきた。タイミングよく整備が終わったんだな、と思いつつ電話に出ると要件は別件だったらしく、新たに人探しを依頼される。これだけあれば十分でしょうと前金を渡してくれたシドニーの頼みだ、何より整備が終わるまでハンマーヘッドを離れられないのだから、断る理由もない。
「シドニーから電話?」
「デイブってハンターと連絡が取れないらしい。すぐ近くの小屋にいるって」
「ああ、じゃああそこだね」
辺りを見渡すと、この近くには二軒の小屋があるようだ。デイブがいるとしたら、この二軒のうちのどちらかだろう。途中で野獣に襲われたりといったことはあったが、問題なくデイブを見つけ出すことができた。足を挫いてしまって動けずにいたらしい。それならば尚更連絡を入れておくべきだろうに。そう口にしてみれば、デイブはその通りだな、と頷いた。
「この近くにもう一軒小屋があっただろう。初めはあそこに潜伏していたんだが、野獣に見つかってしまってね。慌てて逃げ出してこちらにきたんだが、気が動転していたようだ。面目ない」
「その野獣ならさっき倒してきた」
「そうか、後始末まで感謝する。……君たちはハンターではないようだが、あの小屋に入ったのならば見ただろう。この先にデュアルホーンの変異種が出ていてね。よければ討伐を頼みたい」
未だにシドニーからの連絡は入っていない。この様子ではデイブは動けないだろうし、他のハンターが見つかるまでに何かが起こっては遅い。仕方なし、とオレは頷いた。このまま戦闘の経験を積んでおくのも悪くはないだろう。
「わかったよ、行ってくる」
「すまない、助かる」
デイブから詳細を聞いて、デュアルホーンの討伐へ向かう。いい判断じゃねえか、とグラディオが上機嫌そうに肩を叩いてきた。ついで、イグニスが少し休んで行かないかと提案する。するとプロンプトがパッと表情を輝かせて賛成と叫んだ。口にはしないものの、疲労が溜まっていたのかもしれない。普段であれば野外なんてと口にしていたのかもしれないが、存外気分が高揚しているようである。キャンプと聞いて、元々そうしたことが趣味のグラディオも心なしか嬉しそうだ。
「んじゃ、そうするか」
標には巫女の力が宿っており、そのおかげで夜でもシガイに襲われることもないらしい。標がどういうものなのか、そもそもシガイとはなんなのか。それが解明されているのかすら知らないが、外でもこうして安全に過ごせる場所があるというのはありがたいことだ。
グラディオがキャンプ用品を組み立てて、イグニスは料理の準備を。オレとプロンプトは準備を手伝いながらも、道中撮っていた写真を確認する。
「今日は撮ってる余裕あんまりなかったけどね〜」
「そりゃ、レガリア押してきたしな」
「おまけに野獣退治でしょ〜?そりゃ疲れるって」
「だな」
テントの用意も終えて大方の写真も見終わると、ちょうどイグニスも料理の準備を終えた。イグニスの装っている料理を覗き込むと、さらには野菜がたっぷりのシチューが盛られている。
「げ……野菜かよ」
「金がないせいで手持ちの食料も心もとないんだ。今日はこれで我慢してくれ」
「好き嫌いすんじゃねえぞー王子」
「ほんとほんと。イグニスのご飯美味しいじゃん!」
あ〜幸せ!なんて口にするプロンプトは早速シチューを頬張っている。ここで食べなければ苦しいのは自分だと分かりきっているし、食材が心もとないのも事実なのだろう。オレは、意を決して野菜たっぷりのシチューを口にした。
「ほんっと偏食だよね」
「人のこと言えないだろうが」
「オレはちゃんと野菜だって食べてます〜」
「オレだって食ってんだろ」
こうして話していると、高校時代に泊まりで遊んだりした時のことを思い出す。ゲーセンで遊んで帰ったら、イグニスが飯を用意してくれてて、気がつくとグラディオまで顔を出していることすらあった。それからイグニスとグラディオを巻き込んで、4人でキングスナイトをプレイしたことも。
「なープロンプト、食い終わったらキングスナイトしようぜ」
「え?いいけど……。うーん……けどここ電波入んのかなー」
「駄目なら駄目でそんときだろ」
「ん、わかったよノクト」
「明日は例の野獣退治だ。あまり夜更かしはするなよ」
こうして4人で過ごしていると、王都にいた頃とまるで変わらない。口にはしないけれど、3人がこうして付いてきてくれていることに感謝した。