FINAL FANTASY XV -EPISODE HOPE- 作:びゃこ
ハンターたちによる宿営地にたどり着くと、すでにコルはその場を発った後らしい。それだけの大事が起きていて、将軍が多忙だというのも事実なのだろうとはわかるが、こうも先に先にと進まれてはオレたちは現状の把握すらできないままだ。
そんな将軍からの次の伝言を託されていたのは、友人たち3人と同じく王都警護隊に所属するモニカだった。彼女はオレたちに、将軍とはこの先の王の墓で合流するようにと告げた。それに加えて、王都の状況についてもようやく詳しく聞くことができた。将軍には、王都の状況を詳しく伝えているような時間の余裕もないらしい。
「市民のほとんどは無事、レスタルムへ避難が完了しています」
「そいつはまた……随分と手際がいいんだな」
「いえ……我々だけでは大きな被害が出ていたかと。襲撃の際、2人の民間人が力になってくれたのです」
モニカ曰く、そのうちの一人はグラディオラスよりも大柄な男性であるらしい。拳銃を扱うもう1人の民間人と共に、手榴弾とその拳だけで辺りの帝国兵を昏倒させたかと思うと、着陸していた帝国の飛空艇を乗っ取って市民を逃していったのだという。全ての市民を飛空艇へ乗せると、その男はまだやることがあるといって王城の方へと駆けていったそうだ。
「確か、こう言っていました。ヒーロー参上と」
ヒーローという言葉に覚えがあった。ガーディナで出会った、ノラというグループのリーダーがそう呼ばれていたはずだ。王都で大仕事があるのだと言って出ていったというその男こそが、その民間人なのではないだろうか。オレたち王族関係者の存在を知り、その手助けをするよう言っていた男だ、何かしらの危機を察知して動いていたのだとすれば。
「それで、もう1人の方は?」
イグニスがそう問いかけ、モニカが答えようとしたところでそこに若い男が間に入り込んできた。その人の話なら俺がするよ、と男はへラリと笑った。
「その人、俺の先輩でよ。すっげえパイロットなんだ」
男は、シエロと名乗った。すごい昔の話だけどな、と付け足したシエロは、懐かしむように遠い空を眺めた。
「俺も昔は空を飛んだもんだ……っと、そうじゃなかったな。その先輩──サッズさんって言うんだけど、本当にすげえ人なんだ。逃げ遅れた民間人を乗せてこっちと王都を何往復もしてさ」
シエロはこの後レスタルムでその先輩と合流するつもりだと言うので、彼に礼を言っておいてほしいと告げる。シエロは、それは構わないけど、と続けた。
「でも、どうせなら直接言やあいいさ。会えばすぐに分かると思うし。髪型がアフロでさ、その中を気にいってる雛チョコボが住み着いてんの!同じ髪型した息子さんも連れてるだろうし」
「え、雛チョコボが?!頭に?」
チョコボ好きのプロンプトが、まず雛チョコボについて反応した。シエロは、そうそうなどと相槌を打ってから、その雛チョコボの名はチョコリーナというらしいと教えてくれる。
「それにしても、息子さんがいるのによく……」
「だろ?ほんとすげーよなぁ。俺じゃまだまだ到底かなわねえや」
シエロは、俺も空飛びたい! と叫んで駆け出していった。それからオレたちの方を振り返って、またねーなんて手を振っている。彼に対して軽く手を振り返すと、満足したのかシエロはそのまま走り去っていった。
モニカは、シエロからの話で大方の説明がついたのか、小さく頷いて王の墓所へ向かうようにと繰り返した。言われた通りに将軍との合流場所に向かいながら、3人と先ほどの話を聞いた2人の民間人についての話を続ける。
「ヒーローって、あのときの人たちのリーダーなのかな?」
「その可能性は大いにあると思うが……名前を確認しておけばよかったな」
「それより、さっきのシエロとサッズだっけか?何者だ?」
「そりゃ民間人だろ」
グラディオの問いに端的に答えると、グラディオはそうじゃねえよとオレを小突いた。だっておかしいだろ、と続ける。
「ルシスは魔法王国だ。あいつら、いつ空を飛んだって言うんだ?」
「あそっか、魔法障壁があるからインソムニアじゃ飛行機なんて飛ばないよね」
「そもそもシエロ、若かったよな。そんな昔があるように思えねえ」
「帝国出身という可能性もあるだろうが……。どちらにせよ助けられたことに違いない」
「まあ、そりゃ」
ひとまず根拠もなく疑うのはよそう、というイグニスの一言に従うこととなり、オレたちはさらに先を急ぐ。指定された墓所の中に入ると、将軍が来たか、と声をかけてきた。今度こそ、しっかり合流できたらしい。
「王都の状況についてはモニカから聞いた。親父はどうなったんだ!」
「落ち着け、ちゃんと説明はする。が、まずは為すべきことを為せ」
歴代王の力を手に入れるんだ、とコルは続けた。そのために、わざわざオレたちをここまで呼び出していたらしい。
墓に掲げられた武器に手をかざして、その力を得る。これでいいんだろ、とコルの方を見やれば、コルは深く息を吐いてから説明を始めた。
「陛下は、ルナフレーナ様を逃がすために自ら王城へ残ったと聞いている」
「ルーナだって?!なんでルーナがインソムニアにいるんだよ!」
「秘密裏でのことだった。ルナフレーナ様に指輪をお渡しする必要があったんだ」
「それじゃ、親父は……!」
親父はもう、武器召喚の力もほとんど使えなくなってしまっているのだと聞いている。そんな親父が指輪までも渡して、戦場に残ったのだとすればその結果は目に見えている。
「わからないんだ。少なくとも、陛下の遺体は見つかっていない。陛下がご存命の可能性も十二分にある」
だから王子、とコルはオレの両肩を力強く掴んだ。王の墓所を巡り、力をつけろと。
何がだからだ、と思った。王の墓所を巡るのは、オレに王としての力を得させるためだ。つまりそれは、親父は死んだ可能性が高いと暗に告げられているのと同じだった。
「ふざけんなよ……っ!笑って送り出しただろ!オレは……っ!」
こんな形で力を得たくなどなかった。こんな形で王を目指したくはなかった。
「……あの日は、王としてではなく父としてお前を送り出したかったんだそうだ」
コルは、静かにそう告げてから、いつまで守られる側でいるつもりだと問いかけた。それは問いの形をしていたものの、暗に覚悟を決めろと言われているのと同じであると理解できるものだ。
王の墓所を巡り、力を付ける。それがオレたちの旅の新たな目標となった。
今回登場しているシエロですが、彼はff13のアルティマニアオメガに掲載されている小説に登場している人物です。描写があまりに少ないキャラクターなので公式設定と異なる点もあるかもしれませんがご了承願います。
また以降、ff13からの出演キャラとしてこうした本編外の人物が登場することもございますのでご理解いただけますと幸いです。