カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

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世界崩壊編、最終回。今回は文字数多めです。分かりにくい設定ばかり出てきますがお気になさらずに

そして滅茶苦茶お気に入りが増えてて、評価が増えてて、そして閲覧数が伸びてて驚いた?え?何新手の魔術?こないだまで少なかったのに…何故に急に伸びた?何が起こったの?

お気に入り登録と評価をしてくださった方々や読んで下さった方々には感謝しかしていません。本当にありがとうございます!



また会う日まで…

神の座へと至った少女の拳が大悪魔の顔面にめり込む。大悪魔は大きく吹き飛び、何度も地面をバウンドしクイーンブリタニア号へと激突。船腹に穴を開けながら船内へと姿を消した。誰もがその光景を見て声を押し殺す。目の前の光景が事実なのかと自らの目を疑うほどだ。

 

「…………やったか?」

 

そう呟いたのはアレイスターだった。彼は本当にコロンゾンが倒されたのかと不安だった。だがアレイスターの心配した事態にはならず、コロンゾンがクイーンブリタニア号の船腹の空いた穴から出てくる事はなかった。

 

「………やった、やったんだな……?」

 

ドラゴンの姿から人間の姿へと戻った上条がそう呟く。空中を覆うように存在したアイティエール・アバター達はいつの間にか消えていた。それは天使達の主人からの魔力供給が断たれたからで、それが意味するのは…コロンゾンが倒されたという事だ。

 

『う、うおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!』

 

静寂から一転、歓喜の悲鳴が周囲に轟く。騎士派の騎士達は高いを抱き合って喜び合う。キャーリサは当然だと言わんばかりにカーテナ=オリジナルを肩において笑みを浮かべ愛馬たるアレックスが嘶く。ステイルは嬉しさのあまり思わずインデックスを抱きしめ彼女を赤面させ、それを見た騎士団長(ナイトリーダー)はステイルに倣って神裂に抱きつき赤面した彼女にグーパンを食らった。

 

「す、ステイル!恥ずかしいからやめてよ!」

 

「嫌だ。暫く君の温もりを感じていたい」

 

「〜〜〜!!も、もうステイルは神父なのに肉欲に溢れ過ぎなんだよ///」

 

愛しい彼女の温もりを感じているステイル。そんな彼に離れてと口では言いつつもなんだかんや言って許すインデックス。

 

「やりましたねウィリアム!勝利を祝って明日私達の婚礼を行いましょう!」

 

「……ええ、そうであるな…て、第三王女!?いつの間に!?それに婚礼!?」

 

「ふふふ、言質はとりましたよ?聞きましたわよねお母様?」

 

「うむ、バッチリ録音したぞ。なあリメエア」

 

「ええ、バッチグーですお母様」

 

「は、謀られたのである!?」

 

ウィリアム=オルウェル、婚姻決定である。

 

「……………///」

 

「すみませんでした。つい興奮の余り衝動的にやっちゃって…許してくれませんか」

 

(((情けないっす、リーダー)))

 

「………」

 

顔を赤くして騎士団長から顔を背ける神裂、そんな神裂に土下座をする騎士団長。そんな情けないリーダーを傍目から見ている騎士達。キャーリサは騎士団長に冷たい視線を送る。

 

「ふん……やっと終わったか。なら早くじゃがバターを食べに学園都市に帰るぞ」

 

「やれやれ……最後の最後で足を引っ張ってしまって申し訳ないな」

 

オティヌスは主神の槍をしまいながらそうぼやき、脳幹は最後にA.A.A.をコロンゾンに操られてしまった事を申し訳なく思い俯いていた。

 

「…………終わったのか」

 

アレイスターはただ一言そう呟いた。その後爽やかな笑みを浮かべた。

 

「やったな帆風ちゃん!今回のVIPだ!」

 

「流石私の派閥の副官だわ!」

 

「垣根さんもナイスフォローよ!」

 

「やったじゃねェか帆風!ていとくンもな!」

 

「やるじゃねえかお前ら!」

 

「うおおおお!俺は今、猛烈に感動している!俺達の、皆の友情でコロンゾンを倒したんだ!」

 

上条達は帆風の元へと駆け出し、彼女の背をバシバシと叩く。コロンゾンを倒した彼女に賞賛の言葉を送る彼等彼女等に帆風は笑みを向ける。

 

「ええ、皆さんのお陰ですわ。本当にありがたいございます」

 

自分一人ではコロンゾンには勝てなかっただろう。勝てたのも上条達の、アレイスター達の、キャーリサ達の、そして最愛の人(垣根)のお陰だ。

 

「よし!全員で胴上げだ!」

 

『賛成!』

 

「え!?ちょ…!?スカート捲れ……!」

 

「………全く、騒がしい奴らだぜ…まあ、嫌いじゃねえけどな」

 

垣根は胴上げされる帆風とわっしょいわっしょいする上条達を見て笑う。その光景を見れて嬉しそうだった。それはそれとして胴上げされてスカートが捲れて純白の下着を晒す帆風の醜態を携帯で撮影し記録に残すのだが。

 

「ふう……潤子はやっぱり白だな、この写真は永久保存しておかねえとな」

 

「いや消してくださいましぃぃぃぃ!!!」

 

清々しい笑顔で携帯で撮影した写真を眺める垣根と顔を羞恥で赤く染める帆風。そんな光景を見て全員が笑い合っていた、その時だ。

 

「ふ、ふ、ふ……ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

『!?』

 

突如響く狂った嗤い声、その声はクイーンブリタニア号の内部から響いた。

 

「今の声は……まさか!」

 

聞き間違えようがない、この狂気の嗤いの声の正体は…全員がその正体に気づいた瞬間。クイーンブリタニア号の甲板にあるヘリポート(祭壇)から極太の光の柱が天へと昇った。

 

「あ、あれは……!?」

 

そう呟いたのは誰だったか、あの光が一体何なのかは誰も分からない。どんな能力なのかどんな効果があるのか、どんな事を齎すのか…だが、これだけは言える。絶対にロクでもない事が起こると。

 

「始まった、始まったぞモ・アサイアの儀が!もう止められない!世界は滅びるのだ!」

 

そう叫びながらクイーンブリタニア号の空いた穴からボロボロになったベージュ色の修道服と傷だらけの身体となったコロンゾンが現れる。大悪魔はニヤッと邪悪な笑みを浮かべながら両手を広げる。

 

「やっとだ、これで世界は本来の正しい正常な世界へと生まれ変わる。私が愛した世界になる…長年の願いが漸く成就される…あは。やっと、やっと、やっと、やっと…願いが叶った」

 

そう言ってコロンゾンは微笑んだ。ローラ=スチュワートと言う名の麗しき女の女神の如き美顔で微笑んだのだ。もし、仮に目の前の存在が大悪魔と知らなければその微笑みに心を奪われていただろう。それくらいの魅力が今のコロンゾンの笑顔にあった。

 

「無駄だったんだよ貴様達の足掻きは。確かに帆風潤子は私を下した。それは凄い事だ。この大悪魔 コロンゾンを倒したのだからな、誇れ。だが、世界は滅ぼすぞ、それが我が使命、我が正義、我が願いなのだからな」

 

例え倒されようとも世界は滅ぼす、そして新たに誕生させる。今度は魔術や超能力など一切の不純物のない完璧な調和が取れた世界にする。それが絶対に正しい事なのだから。例え自分が愛し夢見たい世界に自分と言う名の悪性がいなくとも…コロンゾンはその願いを叶えたいのだ、自分自身を犠牲にしてでも。

 

「願え!次の世界にもお前達が産まれる事を!その世界には魔術も超能力も原石も魔神も原典も奇跡も幻想殺しもエイワスも私も何もない!あるのは正しい命のサイクルだけだ!」

 

これでいい、これでいいのだ。病原菌を除けば世界は元に戻る。これでいいのだ、例え自分がいなくなっても世界は終わらない。これでコロンゾンが愛した守るべきものは守られるのだから。

 

「……ふざけやがって」

 

だが大悪魔の願いに反抗する者がいた。垣根だ。彼は許せなかった、世界を滅ぼそうとしているコロンゾンではなく、世界を滅ぼすという方法でしか世界(・・・・・・・・・・・・・・・・)を救えないと思い込んでいるコロンゾンにだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「俺はそんな結末を認めない。そんなのお前が報わ(・・・・・)れない(・・・)。報われなさ過ぎる。世界中から敵対されて、自分が守るべきものの為に頑張って、その結果が自分と言う存在の消滅なんて認めない。お前がそれを幸せと思っても…そんなの俺は認めない。お前がその世界で存在して笑っていないのなら、俺にとってそんなのは最悪の結末(バッドエンド)なんだよ」

 

そんなのは幸せな結末(ハッピーエンド)ではない。コロンゾンが救われない。だから垣根はそんな結末を否定する。だからこんなクソったれな計画は止める。コロンゾンを救う為に(・・・・)

 

「……聞こえているかメイザース」

 

アレイスターは自身の懐に入れたメイザース(タロットカード)に語りかける。

 

「お前なら出来るだろう?偉大なる魔術師 メイザース。初めてお前に頭を下げる。頼む、垣根帝督の…親友の願いを叶えてくれ。我等にとって憎き敵である大悪魔コロンゾンが生まれたこの世界を、壊さないでやってくれ」

 

そうタロットカード(メイザース)に語りかけるアレイスター。その瞬間タロットカードが黄金の光を輝かせた。

 

「魔術に身を捧げた魂の一つがこれより告げる。

『黄金』の魔術師よその矜持を示せ、もはや形はなくとも我らの真髄は消えず。そのカードを束ねて記号を並べ、邪なる力の流入をここに阻止せん」

 

黄金の輝きを放つタロットカード。その光は徐々に人の形を取り始め、その光の中から声が漏れる。その呪文は彼ら『黄金』の大悪魔に対する往復の一撃だった。自分達を利用しようとしていた大悪魔に対する復讐の鉄槌だ。

 

 

直後、学園都市に待機していたダイアンが、ウェストコットが、アニーが。ミナを除く黄金夜明のメンバーが黄金の光を纏い本来の姿であるタロットカードに戻っていく。そして世界中に人工衛星からでも確認できる程の量のタロットカードがスコットランドを覆った。

 

「我らは『黄金』。長らく続いてきた悪習を取り除き、神秘に対する誤解を解いて、真に豊かな叡智と生活を捧げる世界最大の魔術結社なり!!邪なる力にさらされし民が目に前にいる。真に自由で制限なき術式を組み立てるときがやってきた。私はここに皆を編む、誰もが想う身近な誰かを守れる術式the Hermetic Order of the Golden Dawnとなれ!」

 

火花、飛沫。それは魔術を使った代償だ。どんな者もこれからは逃れられない。それは大悪魔とて同じ、なんと皮肉な事か。自分の駒として作り出した者達にコロンゾンの悲願は絶たれたのだ。

 

 

「…私の作ったモノが、最後の最後に牙を剝くか」

 

コロンゾンは上を見上げながらそう呟いた。ヘリポートから放たれていた光の柱はメイザースの術式で解除・消滅してしまった。そしてタロットカードから放たれた黄金の光は消え、そこにはマフラーを巻いた軍服の上に外套を羽織った男が立っていた。

 

「……ふん、お前の頼み…叶えてやったぞアレイスター」

 

「…………感謝する」

 

メイザースはアレイスターから顔を背け、アレイスターはそんな彼に笑いかける。

 

「これで終わりだコロンゾン」

 

垣根はコロンゾンへと歩み寄る。コロンゾンはショックのあまり地面へと横たわっている。

 

「お前の幻想(願い)は終わった。敗北者であるお前に言う要求は三つだ。もう悪さをしないと誓う、その言葉に責任を持て、お前が仕出かした罪を償え。この三つの要求を飲んでもらうぞ」

 

「……………それだけか?たったのそれだけか?」

 

そうコロンゾンに三つの要求を突きつける垣根、その世界を滅ぼしかけた自分にそんな罰と言えるか不安な罰を与えるのかとコロンゾンは訝しんだ。

 

「ああ、潤子も言ってただろ?『一緒に世界をどう救うか考えませんか?』てな。コロンゾン、テメェはもう不幸(一人)じゃねえ。俺達と一緒にこの限界になった世界を救おうぜ」

 

そうコロンゾンに右手を差し出す垣根。それを唖然とした顔でコロンゾンは右手を見つめる。この距離ならばあらゆる術式が垣根に命中する。油断しきっている今の垣根なら殺せる。だが、コロンゾンはそれを実行しなかった。

 

(……ああ、そうか。アレイスターの理解者がこいつだった様に…オティヌスの理解者がこいつだった様に…フィアンマの理解者がこいつだった様に…私の、この大悪魔 コロンゾンの理解者も……)

 

目の前の男はありとあらゆる存在の理解者だ。この男の前では聖なる右を持つ男も、魔神も、『人間』も考えを改めた。恐らくコロンゾンにとっても目の前の存在は理解者と呼べる存在なのだろう。

 

「……100年」

 

「あん?」

 

だが、悲しい事に、コロンゾンはその手を掴み、垣根の言葉を承諾する事はなかった。

 

「100年早くお前と出会っていれば…こんな結末にはならずに済んだだろうに…いや、最初に出会った時に…いや、それは過ぎ去った事…もう、手遅れなんだよ垣根帝督。私が手を出す出さない以前にな」

 

「……お前何言って……」

 

悲しげな笑みを浮かべるコロンゾン。垣根がそれを見て何か言おうとしたその矢先、世界全体に亀裂が(・・・・・・・・)走った(・・・)

 

『ーーーー!?』

 

何が起こったのか垣根達には理解できなかった。モ・アサイアの儀は停止した筈だ。ならばこれは一体どういう事なのか?アレイスターはコロンゾンに向かって声を荒げる。

 

「何をしたコロンゾン!?」

 

「……何もしていない。言っただろう?もう手遅れだと。もう遅かったんだよ」

 

そうコロンゾンはひび割れる世界を見上げ悲しげに呟く。

 

「……ま、さか…これがコロンゾンさんの言っていた世界の限界…?」

 

「そうだ帆風潤子。もう世界は限界点を既に超えていた。それを私のモ・アサイアの儀が早めた、攻めてこの様な悲惨な光景を見て生き地獄を味わう前に世界を終わらそうとしていたのに…全部台無しだ」

 

モ・アサイアの儀を止めた所で無駄だった。何せ世界はもう臨界点を超えていたのだから。モ・アサイアの儀はそれを早めただけ。決定打は既に決められていたのだ。

 

「これを止める手立てはないのですか?」

 

「ない。あったら既にやっている。これは空間が割れてるとかそういう次元じゃない。世界がひび割れているんだ。位相も例外なく…な」

 

騎士派の何人かが魔術を行使してみる。だが、うまく発動しない。これも恐らくコロンゾンが言った通り位相も破壊されているのだろう。魔術は位相に干渉し発動するもの。位相こそ魔術の源。故に位相が破壊されれば魔術も発動しない。

 

「終わりだよ、これで。世界はただ終わるだけ。新しく世界が生まれる事もない。…は、やっぱり私はどうしようもない悪性(クソ野郎)だ。守りたかった世界すら…守れないとは」

 

そう枯れた笑いをするコロンゾン。これ程頑張って努力した結果がこれか、やはり自分には世界を救うなど大それた事は出来なかったのか…そうコロンゾンは涙を流した。そして走馬灯の様に永遠と感じた自分の生涯を思い出す。そして最後に思い出したのは…人が魔術を作り出す以前。科学も魔術もまだ何もなかった時代、人間が人間らしく過ごしていた時代だ。

 

「ああ、そうか」

 

コロンゾンは魔術が嫌いだ、人間がその魔術を使った際に生まれる火花、飛沫で苦しむから。コロンゾンは科学が嫌いだ、科学はいずれ人類を滅ぼす可能性があるアポトーシスだから。結局、コロンゾンは世界だけでなく、その世界に住む人間達も好きだったのだろう。

 

思えば10万3,000冊の魔道書を頭の中に記憶するインデックスを幽閉せずに可能な限り自由にしておいたのは…メイザースの契約を破る為とはいえ善行を行っていたのは…世界だけでなく人類を、人を愛していたからではないのか?ならばコロンゾンが守りたかったものとは世界だけでなく…

 

「…………何故、今それを理解してしまったのだ。コロンゾン()

 

人間を守りたかったのだ。そう気づくのは…あまりにも遅過ぎた。遅過ぎたのだ。もうその事実に気づいたとしても手遅れだ。もう世界は滅びる。そしてコロンゾンは自分の存在が消えるその時まで自分が行った事を後悔し続けるのだ。

 

「………まだ、終わってねえ」

 

「ええ、まだ終わってはいませんわ」

 

そんな絶望が漂う中、垣根と帆風はそう呟いた。

 

「来いコロンゾン。まだ終わった訳じゃない。まだこの悲劇を回避する事が出来るかもしれない」

 

「無理だ……もう終わっんだ。世界は滅び…」

 

滅びる、そう言いかけたコロンゾンの襟首を垣根は強く掴んだ。

 

「巫山戯てんじゃねえぞコロンゾン。お前は世界を守りたかったんだろ?なら最後まで諦めんな!守りたいのなら最後まで守り通せ!どうせ死ぬなら最後まで意思を貫いてから死ね!」

 

そう力強く叫ぶ垣根。コロンゾンはその言葉を聞いて僅かに目を見開いた。

 

「……行くぞ潤子。俺達にやれる事はないかやってみるぞ」

 

「………はい」

 

二人は翼を展開しクイーンブリタニア号の甲板へと向かう。それを眺めているだけのコロンゾン。

 

「………俺達も行くぞ。何にも役に立てないかもしれねえけど、このままここでジッとしてるよりはマシだ」

 

上条達も垣根と帆風の後を追いクイーンブリタニア号の内部へと入って行く。

 

「私達も行くぞ、若者達だけでは心配だからね」

 

アレイスターも脳幹とオティヌス、メイザースを連れて彼等の後に続く。それを見ていたエリザードもカーテナ=セカンドを掲げ娘達と騎士達に向けて声を出す。

 

「私達も行くぞお前達!最早事態は英国だけに留まらない!学園都市と共にこの世界の危機を救う!分かったか!」

 

エリザード達は自分達で出来る事をやる為にクイーンブリタニア号ではなく、他の国と連絡を取る為に通信霊装で各国に協力要請を出す。

 

インデックス達もアウレオルスも世界崩壊を防ぐ為に自分達で出来る事をやっていく。それをただ呆然とコロンゾンは見ていた。

 

「……何故、何故諦めない?何故人は…滅ぶのを諦めない?」

 

そんなコロンゾンの問いに、ある人物が答えた。

 

「それが人間だからだよコロンゾン」

 

「………娘々、それにクトゥルフ」

 

先程倒した筈の娘々とクトゥルフがコロンゾンを見下ろしていた。

 

「人間て生き物はさコロンゾン、生き汚いんだ。自分が生きる為に何でもする。それは確かに汚いかもしれない…でも、それが人間の証明なんだよ」

 

「……人間の、証明」

 

「……そうだ、どんなに命の瀬戸際に追い込まれても決して諦めない。渋とく自らが生き残る道を考える…それが、人間だ」

 

人間は生に醜い程しがみつく、だがそれこそが人間なのだ。そう二人は語る。

 

「見なよコロンゾン。あの人間達の団結力…国も所属してる世界も違うのに皆頑張って世界崩壊を止めようとしてる…凄い事だと思わない?」

 

誰もが皆、共通の目的を前に一致団結し世界が滅ぶのを阻止しようとしている。その光景を見て娘々は微笑む。そしてコロンゾンへと視線を戻す。

 

「ねえ、アンタは世界を守る為にこれまでやってきたんでしょ?こんな所でボーとしてていいの?」

 

娘々はそうコロンゾンに呟く。こんな所で何もせずに見ているだけでいいのかと。

 

「アンタだって守るべき何かがあるんでしょ?アンタだって譲れない何かがあるんでしょ?なら立ち上がれよクソ悪魔。アンタはアンタの為すべき事やれよバーカ」

 

煽っているのか励ましているのか分からない様な言葉をコロンゾンに言う娘々。

 

「…………………」

 

コロンゾンはゆっくりと立ち上がる、そして幽鬼の如くクイーンブリタニア号へと向かっていく。ただその目だけは静かに、激しく燃えていた。

 

「さーてと、ワタシ達はどうする?ワタシがコロンゾンに倒された時、使い魔を世界各地に送って見てた映像だと僧正とネフティスは学園都市と英国、バチカン、ロシア、フランス、アメリカ以外の各国を天使達から守ってたみたいだけど…ワタシらも神様らしい事しとく?」

 

そう相方のクトゥルフに問いかける娘々。クトゥルフはジィーと娘々を見つめた後、踵を返して立ち去ろうとする。

 

「ちょっと、どこ行く気?」

 

「……………寝る」

 

クトゥルフはそう言って海がある方角まで目指す。娘々はそれを見て溜息を吐く。

 

「はぁ〜海の深淵に潜って昼寝する気?本当それ好きだな〜ま、いいか。人間達がなんとかしてくれるでしょ。神様なんていなくてもなんとかなるさ」

 

娘々はそう言ってその場から消えたのだった。

 

 

クイーンブリタニア号甲板にて、アレイスター達はヘリポートに置かれたオナーズオブスコットランドの解析を行い、少しでもこの事態に対抗出来ないか探り、インデックスは頭の中の10万3,000冊の魔道書の知識からこんな事態に対応する文献はないか探る 。

 

「くそ……魔神の力といえど位相を操る力だからもうこの状態では何の役にも立たねえ!」

 

「ーーーーッ!!!」

 

垣根と帆風ですら現在の状況をどうすればいいのか分からない。神ですらこの終わる世界をどうすることも出来ないのだ。まさに打つ手なし、徐々に世界は亀裂が大きくなり世界全体へと広がっている。

 

「……私にも出来る事はないか?」

 

「……よお、待ってたぜ」

 

コロンゾンが二人の背後から声をかける。垣根はコロンゾンの姿を見て笑みを浮かべる。帆風も微笑みながらコロンゾンを見ていた。

 

「……垣根帝督、お前にはこの状況を打破する考えはないのか?いつも私の予想を超えてきたお前だ、それくらいの考えはありそうなものだが」

 

「ご生憎様ねえよ…まあ、お前がやろうとしていたモ・アサイアの儀の正反対なやり方は知ってるけどな」

 

「正反対なやり方…?」

 

帆風が垣根が言ったモ・アサイアの儀の正反対なやり方と言う言葉に首を傾げる。

 

「その正反対なやり方てのは『プロジェクト=ベツレヘム』。かつてフィアンマが行おうとしていたやり方でな、大規模術式により世界の歪みを直し、正常にする計画…なんだが、これにはガブリエルの天体制御と聖なる右、ベツレヘムの星ていう巨大浮遊要塞が必要だ。ガブリエルと聖なる右は簡単に手に入るがベツレヘムの星を製造している時間はねえ、だから無理だ」

 

「……聖なる右もガブリエルも本来はそう易々と手に入る物ではないワンメイク物なのだがな」

 

そう呆れるコロンゾン、聖なる右を複製出来る未元物質やガブリエルの天使の力をその身に降ろし天使の権能を扱う天使崇拝がおかしいだけで、どれもそう簡単に手に入れる事は出来ねえよとツッコむ。

 

「今から世界の歪みを直す?いや遅過ぎる。なら新しく世界を作り直す?位相操作できねえし、なんの解決にもならない…クソどうしたらいい?」

 

垣根は第一位としての頭脳を働かせ思考するが解決策は見つからない。樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)と一方通行の演算能力を持つカブトムシ数百体と脳波を接続してあらゆる考えを模索するがどれも成功する可能性が0だった。

 

「くそ…!いい方法はねえのか!?このままじゃ世界が…!」

 

打つ手なしか、そう垣根が諦めかけたその時。

 

「いいえまだあるわよ」

 

『!?』

 

いつの間にか甲板に一人の少女と天使が船の柵の上に座っていた。

 

「だ、誰だお前ら…?」

 

上条は驚きを隠せていない声でそう呟いた。アレイスターは少女と天使の正体を知っているからなのか怒りで身体を震わせていた。

 

「エイ、ワス!それに貴様はアンナ=シュプレンゲル!何しにここに来た!?」

 

「煩いわねアレイスター。わらわ達が親切心でどうやったら世界が救えるか教えに来てやったというのに…教える気がなくなっちゃうじゃない」

 

「………何?」

 

世界を救う方法を教えに来た、そう確かに彼女はそう言った。その言葉に誰もが耳を疑う。

 

「それは本当ですかアンナさん?」

 

「ええ本当よ。わらわにとって世界がなくなるなんてどーでもいいんだけど、ここでわらわのお気に入りが消えるのは嫌だし、教えてあげるわ…ただし、それを実行するかどうかは貴方達次第よ垣根帝督、帆風潤子」

 

そうアンナは赤みの強い金髪縦ロールの先をくるくると弄びながら薔薇色の瞳で二人を見つめた。

 

「何を巫山戯た事を…」

 

「巫山戯てなどいないわ」

 

そうアレイスターの言葉を遮るアンナ、アンナは柵から降りて垣根と帆風へと歩み寄る。

 

「耳を貸しなさいわらわのお気に入り。わらわの解決策を教えてあげる」

 

そう二人だけに世界を救う術を教えるアンナ。それを聞いた二人は目を見開く。

 

「おい、何を教えたんだアンナ=シュプレンゲル」

 

「さあね?さあ、二人に聞くわ。貴方達が選べる選択肢は三つ。このまま世界が滅びるのを指を咥えて見ているか、この世界と友人知人を見捨てて貴方達だけわらわ達と一緒になるか、それとも新たな世界(・・・・・)の為の生贄となるか(・・・・・・・・・)。さあどれを選ぶのかしら?」

 

「生、贄…だと?」

 

アレイスターはその三つの選択肢の内、生贄になるか、それに反応した。それはどういう意味なのかと問いかける前にアンナが口を開く。

 

「生贄…人身御供。神への最上級の奉仕として捧げ物として人間を殺し与える事。または聖書では不満、憎悪、責任を転嫁する贖罪の山羊(スケープゴート)。または日本神話における死体から食べ物が産まれたウケモチ、ヴェマーレ族に伝わる神話 ココナツの花から生まれ、死して五穀を産んだハイヌウェレ。死してその死体から最高の武器 天叢雲剣をスサノオに残した八岐大蛇、ペルセウスに討たれその首が武器となり後に盾に組み込まれたメデューサ。時に神は生贄となり勝利、繁栄、豊穣などを祝福する。ならば、目の前の二柱の神を世界への生贄とすれば世界の歪みは元に戻る」

 

そう長々と小難しい話をするアンナ。上条達には半分も内容が飲み込めない。だがアンナが言わんとしている事は分かる。つまり、世界を救う為に垣根と帆風を生贄として捧げろ。つまり二人に死ね(・・)と言っているようなものなのだ。

 

「………いい加減にしろ、クソ女」

 

アレイスターが口を開いた、右手に衝撃の杖を持ちアンナを睨む。

 

「お前はまた私から奪うのか!エイワスを使ってリリスを奪い、垣根帝督の右腕を奪い、そして今度は我が親友とその女を奪うと!?巫山戯んのもいい加減にしろクソ女が!」

 

アレイスターは怒り、アンナへと魔術を放とうとする。そんなにアレイスターに垣根は一瞬で背後に回り手刀を首に叩き込み意識を刈り取った。

 

「が、ぁ?」

 

「……悪ぃなアレイスター」

 

「か、き……い、とく…?」

 

ドサリと船の床に倒れるアレイスター、それを見て唖然とする上条達。

 

「か、きね…?おま、何して……」

 

「悪いなお前ら。これしか方法がねえんだわ」

 

そう簡潔に垣根は言った。

 

「……そう、貴方は、いえ貴方達は生贄になる道を選ぶのね。ああ、残念だわ。わらわと共に来ればわらわの椅子とテーブルにしてあげるのに」

 

「それは願い下げだ馬鹿」

 

「丁重にお断りしますわ」

 

『まあ、そうだろうな』

 

二人に同意したエイワスにアンナは腹パンを放ち、エイワスの腹に穴を開けた。

 

「でも言ったはずよ?生贄になれば貴方達はもう二度と誰とも干渉できない。未来永劫途切れることのない世界を一生見続けることになると。それでもいいの?」

 

「ああ、それで世界が滅びねえなら安いもんだ」

 

「わたくしも同意見ですわ」

 

「……………そう」

 

アンナはその答えをどこか面白くなさげに聞くと、エイワスの元へと戻りそのまま現れた時同様唐突に消えていった。

 

「……さて、行くか潤子」

 

「……はい、何処までも御伴しますわ帝督さん」

 

二人はクイーンブリタニア号の近くに出現した大きな亀裂へと歩み始める。上条達は何となく二人が何をしようとしているの察する。

 

「おい!何しようとしてんだ垣根ッ!」

 

「………当麻」

 

二人の行く道を上条達が塞いだ。そんな真似は絶対にさせないと。自分達が阻止して見せると。

 

「そこを退いて来れませんか?」

 

「嫌だ!どうしても退いて欲しかったら俺達を倒してから……」

 

「なら、そうさせてもらう」

 

上条が言い終わる前に垣根が右手の人差し指を上条達に向ける。上条達が人差し指を見た瞬間、意識が遠のいていくのが分かった。

 

「こ、れは……操祈の…心理掌握?」

 

そう呟いたのは美琴。これは食蜂の心理掌握だと見抜いた。だが能力の強度が桁違いだ。電磁バリアに守られている美琴や反射が使える一方通行、幻想殺しで効果を無効化する上条。それらの守りを突き抜けて六人の意識を刈り落としたのだ。

 

「か、き………………ね…………………」

 

そう薄れゆく意識の中上条が垣根へと手を伸ばす。それを見た垣根は上条に優しく微笑んでこう呟くのだった。

 

「………またな(・・・)

 

その一言を聞いて上条の意識は完全に途切れた。それを黙って見つめるオティヌス、脳幹。倒れたアレイスターを肩に担いで持ち上げているメイザース。三人の方を向いて垣根は言葉を放つ。

 

「じゃあな、オティちゃんも脳幹先生もメイザースも、三人に会えて楽しかったぜ」

 

「……私もだよ。理解者(盟友)と出会えてよかった。さらばだ」

 

「……君に迷惑は何度もかれられたが…まあ、嫌ではなかったよ」

 

「…………ふん、精々自己犠牲の偽善に酔いしれるがいい」

 

三人に別れを告げ、次に垣根はコロンゾンの方へと向き直る。

 

「コロンゾン、お前に突きつけた三つの要求はやっぱ無しだ。代わりにお前には罰を与えてやる」

 

「………罰?」

 

垣根は一呼吸置いてコロンゾンにこう宣告した。

 

「生きろ、新しい世界で大悪魔としてではなく、単なる定命の命としてな。それがお前に与える罰だ」

 

「!?私に…生きろというのか?」

 

新しい世界で生きろ、それが罰と知り眼を見開くコロンゾン。そんな大悪魔から眼を離し二人は大きな亀裂の前に立つ。

 

「……怖くないか?」

 

「怖くなどありませんわ。貴方と一緒ですもの」

 

「……俺一人だけ生贄になってもいいんだぜ?」

 

「帝督さん一人だけなんて、そんなの絶対にさせませんわよ」

 

「……本当にいいのか?」

 

「いい加減にしないと怒りますわよ?」

 

亀裂の前でそう言い合う二人、帆風は垣根の手を握り彼に微笑んだ。

 

「わたくしは貴方と一緒じゃないとダメなんです。わたくしだけでも帝督さんだけでもダメ。わたくし達は二人で一人、最高のパートナーなのですから、だからどんな時も一緒です。ずっとずっとずっと…わたくし達はもう二度と離れたりしませんわ」

 

「………そうか、そうだな」

 

彼女の笑みを見て垣根も微笑んだ。

 

「帝督さんこそやり残した事はないんですか?」

 

「……やり残した事、ねえ」

 

垣根は瞼を閉じて思い出す。今までの人生を。上条と美琴、食蜂のカップリング写真を撮った。麦野と浜面の写真を撮った。一方通行と打ち止め、エステルの写真を撮った。削板とアリサの写真を撮った。アレイスターがリリスと共に笑い合う写真を撮った。自分が今まで撮影してきた写真を脳裏で思い出し垣根はくすりと笑った。

 

「ねえな。満月の様に満ち足りた充実した幸せな人生だったよ」

 

「わたくしもです。辛い事は確かにありましたが…帝督さん(あなた)と出会えた。それだけでわたくしは幸せですから」

 

そう笑い合って、二人は亀裂の中へと飛び込んだ。それは世界へ自らを捧げる贄だった。二人は亀裂の先にある空間に落ちていく。無限とも言えるその亀裂の先の闇へと、落ちる落ちる落ちる。そして二人の姿が見えなくなる。

 

そして、亀裂から光が溢れる。それは希望の光。地球だけに留まらず宇宙にも無数に空いた亀裂から光が漏れる。光は亀裂から無限に放射され世界を包み込んでいく。それは歪みを直す為に、世界を正常にする為に、コロンゾンが願っていた通りに世界があるべき姿に戻っていく。

 

「…そうか、漸く分かったぞ垣根帝督。お前の正体(・・)が」

 

コロンゾンは光に包まれて漸く気づいた。垣根帝督の正体に、彼はこの世界におけるイレギュラーだった。異なる魂を持つ者だった。だがそんな彼が何故この世界に現れたのかコロンゾンはずっと考えていた。その答えに漸く今気づいたのだ。彼の正体は、そして誰が彼をこの世界に呼んだのか。

 

「垣根帝督、貴様はこの星が、この世界が、この宇宙が呼んだ抑止力(・・・)だったんだな」

 

その呟きと共に、世界は光に包まれ新しく生まれ変わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品を書き始めた頃からこんな終わり方にするて決めてました。ていとくんの正体はこの星が宇宙が選んだ抑止力でした(どこのFateだ)。ちょっと御都合主義感がおるけど気にしないでください

次回最終回、少し投稿が遅れるかもですがお許しを…作者もリアルでは面接練習に追われ自由時間がない学生ですから(泣)

次回もお楽しみに!
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