カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

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さあ、上里翔流との戦いはこれにて終わり…理想送り編完結…とはいきません。上里との戦いは終わりですが…まだ後日談が残っていますからね…むしろその後日談が大事になる…かもしれない

そして等々あいつらが登場、そして久しぶりにあのお二人が!怒涛の展開が続きますのでどうぞお楽しみください



光を掲げる者

夢を見た、まだくそったれな右手がなかった頃…自分が平凡な高校生だった頃の夢だ。幼馴染の獲冴と偶に会って軽口を言い合い、園芸部の暮亜を見て委員の仕事を頑張ってるなと思ったり、引きこもりだった絵恋を学校に連れ出したり、同じ図書委員の宛那と委員の仕事をしたり、義妹の去鳴とご飯を食べたり…平凡で代わり映えしない生活…でも充実した日々を送っていた

 

だがそんな日常は崩れ去った。あれは上里が中学三年生の頃だろうか…急に右手に違和感を感じた。今までとは何かが違う…そんな感じがした…そしてそれが気のせいではないと気づくのに時間はかからなかった

 

ある時、町の不良が上里にカツアゲしようと鉄パイプで彼を殴ったのだ。殴られた箇所は焼け付く様に痛かった。痛みに呻く上里を気にせず狂った様に鉄パイプで殴る不良…上里は苦し紛れに右手を不良へと伸ばし…触れてしまった

 

「や、めろ……やめてくれ!」

 

その一言が悪夢の始まりだった。その一言共に不良は右手に吸い込まれ始めたのだ

 

「………え?」

 

上里がそう呆けた声を出した瞬間、不良の悲鳴が轟く

 

「な、何だよこれ!?す、吸い込まれる!?な、何なんだよお前!?た、助けて…誰か助けてくれ!!」

 

不良の情けない叫び声が轟く、それを呆然と眺めるしかできない上里

 

「こ、この化け物!お、お前は化けも…」

 

その罵りと共に不良は世界から消失した

 

「あ、あ……」

 

その時は理想送り…そんな名前すらもない自分の恐ろしい右手を上里は一瞥する。不良を殺したのだと思った。自分が殺した…そう思うだけで上里は左手で口を押さえ吐き気を堪えた

 

 

この右手は何なのかと自問自答する日々が続いた、それに他にも問題の種があった…獲冴や宛那、暮亜と言った自分の知人達が変な力に目覚めたのだ

 

「大将…今日さ10円玉でコックリさんの真似事をして見たらさ…なんかマジモンの幽霊…みたいなもんが出てきたんだよ」

 

「上里君…最近私おかしいの…こんな黒い霧が何故か出てきちゃって…他にも物が突然石になったり蛇とか梟が暗闇から出てきたりするの…これ何なのかな?」

 

「あ、の…上里さん…実は…私の身体から…お花が生えてきたんです」

 

まるで上里の右手の異変に連動する様に変な力に目覚め始めた宛那達…まるで自分と同調する様に変な力に目覚めていく女の子達を見て上里はこれも自分のせいではないのかと考え始めた

 

 

そして何故か右手の異変と共に上里の周囲に事件が起き始めた。魔術師という変な連中に追われる女の子を助けたり、地縛霊を助けたり、科学者に追われる女を助けた…そして何故かその女の子達は上里に惹かれてしまうのだ

 

「……これも…この右手の仕業…なのか?」

 

 

気味が悪かった、自分を慕う女の子達が怖かった。この右手の所為ならこの右手を消して早く元に戻さないてはいけない…そう思う共に別の考えが上里の中にあった

 

(この右手がなくなれば…ぼくと彼女達の繋がりはどうなるんだ?)

 

右手によって彼女達が惹かれ慕っているとすれば…この右手がなくなれば自分には価値がないのだと上里は考えてしまった。だから怖かった。この右手が自分の全てな気がして、誰も本当の自分を見ていないのだと錯覚し始めた

 

「そんな事ないよお兄ちゃん、癪だけど皆お兄ちゃんの内面に惹かれて慕ってるんだよ…私と同じでね(ボソッ)」

 

義妹(サロメ)はそう言うが上里には信じられなかった、右手で繋がれた歪な偽りな繋がり…とても気持ち悪く上里は思った。そんな関係を早く断ち切りたい…でも断ち切れば彼女達との繋がりはなくなる…そんな気持ちの板挟みに上里は苦しんだ

 

 

「貴方が理想送りでありけるのね」

 

「……貴方は?」

 

上里は一人の女と出会った、黄金をとかして髪にした様な長い金髪にサファイヤの如く煌めく碧眼、ピンク色の修道服…可笑しな格好に変な口調な女だった

 

「私はローラ=スチュワート。イギリス清教の最大主教なりけるのよ」

 

「……イギリス清教?」

 

「貴方は知りたいのでしょう、その右手について…私が教えてあげてもよくってよ」

 

上里はローラから全てを聞かされた。その右手に宿った能力は理想送り(ワールドリジェクター)。本来は幻想送りと呼ばれる上里の対となる能力を自分達の救済として見ていた魔神と呼ばれる存在が今代の幻想送りに垣根帝督と呼ばれる男が接触したせいで方向性が変わりそれを魔神達は失望したのだと言う

 

そして魔神達は「幻想殺しにすがり続けても安心は得られない」と無意識に思った事により、理想送りと呼ばれる幻想殺しに変わる力が出現しそれが上里の右手に宿ったのだという

 

「……ふ、ざけるな…巫山戯るな!その魔神とかそんな巫山戯た存在の勝手でぼくの…ぼくらの人生が変わったのか!?」

 

上里は激怒した、高々個人達の勝手な考えに自分達は振り回されているのかと。巫山戯るな。自分達は魔神とやらこ道具ではないのだ

 

「元凶は魔神、だがきっかけは学園都市に住まう垣根帝督とアレイスター=クロウリーなりけりよ…さあどうする上里翔流?貴様はこの話を聞いて何がしたい?」

 

ローラの囁きは正しく悪魔の囁きだった、上里の激情が全体に流れ怒りに支配される…そして重々しく口を開く

 

「復讐…してやる…」

 

「ぼくらを勝手に巻き込んだ魔神も!きっかけを作った垣根帝督も!学園都市を作ったアレイスター=クロウリーも!全部ぼくの右手で復讐してやる!」

 

ニヤリとローラが笑った、全て計画通りだと…そんな事を知らない上里はただ悪魔の掌で踊るのだ…踊らされていると知らずに、ただただ大悪魔の傀儡となり踊り続けるのだ…背後で悪魔が笑みを浮かべているのに気づかずに

 

 

「………ぁ」

 

「目が覚めた?お兄ちゃん」

 

上里は目をゆっくりと開ける、視界に映ったのは自分を見下ろしている去鳴だった。頭に生暖かく心地よい感触があった…何かを枕にしている様だ…すぐに分かった。自分は去鳴に膝枕されているのだと

 

「……何をしているんだ去鳴?」

 

「お兄ちゃんに膝枕してる」

 

「……いやそういう事じゃなくて」

 

上里はふっと思う、去鳴と兄弟らしい会話をしたのはいつぶりかと…ローラと関わった時以来だろうか…だが自分が先程まで上条と戦っていたことを思い出しハッとした顔で上里が起き上がる

 

「上条当麻は!?ぼくはあいつに負けた筈だ!?あいつは今どうしている!?」

 

上里は自分は上条に負けた、自分を倒した上条は何処にいると去鳴に尋ねると去鳴は困った様な顔をする

 

「えっとね……あそこ」

 

去鳴が指を指した場所を上里が首を動かして見る、彼の目に映った光景は……

 

「おら!テメェの犯した罪の重さが分かったか!もっと火の勢いを激しくしろアー君にむぎのん!」

 

「おゥ!薪を火の中に入れてェ、火力を上昇、上昇ゥ!」

 

「お前らが熱くて苦しもうが関係ねえよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!お前らが熱つかろうが、火傷になろうが!私には一切カァンケイなィィィんだよ!」

 

『助けてぇぇぇぇ!!!』

 

「……えぇ」

 

獲冴、絵恋、琉華、府蘭、冥亜、暮亜の六人が釜茹での刑にされていた、一方通行が薪を入れながら大気を操り釜の火力を上げる。麦野が薪を割って一方通行の近くに置く。そして垣根は片手に鞭を持ちながらブーメランパンツ一丁にパピヨンマスクをつけた垣根が獲冴達に蜂蜜をかけていた

 

「こ、の……垣根、帝督!テメェ変態か!いや変態だな!」

 

「俺は変態じゃねえ、そして俺の名は垣根帝督じゃねえ…俺の名は鳥人メルヘンだ」

 

「いや変態じゃねえか!何が鳥人メルヘンだ!」

 

「ノン ノン、メル♡ヘン。もっと愛を込めて」

 

「「「「「「込めるか!」」」」」」

 

垣根改め鳥人メルヘン…一体彼の正体は一体…?

 

「……何故私は釜茹でにされない」

 

「お前は根性あるからな!俺が見逃す様に帝督に言ったんだ!」

 

「……感謝しよう。流石にあの刑罰は…堪えられないからな」

 

「あはは…確かに釜茹での刑にされたくないですものね」

 

「いや、それ以前に貴様は第一位があの様な格好をしていて何も思わないのか?」

 

「……垣根さん、いい身体してるなぁーとしか思いませんわね」

 

「……イかれてる、イかれているな貴方は」

 

宛那は巻き込まれなくてよかった…と息を漏らすと共に帆風はおかしいと彼女は思った

 

「…何があったんだ去鳴」

 

「垣根帝督達がお兄ちゃんが倒された直後にこの場にエントリー、獲冴達を簀巻きにしてた、釜を持ってきてその中に獲冴達と絵恋を入れる、火炙りの刑。オッケー?」

 

「……成る程、さっぱり分からない」

 

要約すると垣根達が獲冴達を簀巻きにして引きずって連れて来た(宛那は普通に歩いてやって来た)。そして絵恋も簀巻きにして釜で獲冴達を火炙りにする。そして垣根はメルヘン仮面というわけだ

 

「おーい、サーシャて子を見つけて来たぞ」

 

「あ、ガム食べる?」

 

「クッキーもあるわよぉ」

 

「第一の解答ですが私はガムは嫌いなのでいりません、第二の解答ですがクッキーはいただきます」

 

上条達がガブリエル召喚の為の触媒になっていたサーシャを見つけ連れて来た。食蜂のクッキーを小動物の様に咀嚼するサーシャ。美琴は悲しそうな顔でガムを噛む

 

「お、目が覚めたのか上里。タピオカ飲むか?つぶつぶだぞ」

 

「いやブーメランパンツ一丁で何をやっているんだい垣根帝督」

 

「俺は垣根帝督じゃねえ、鳥人メルヘ…もうこのキャラ付けいいや。そーです。私が垣根帝督です」

 

「最後までキャラを貫けよ」

 

垣根はバタフライマスクを投げ捨てワインレッドのスーツを着用する。下着も着ずに素肌にスーツだ。誰もツッコまない

 

「で、ぼくをどうする気だ?拷問でもするのか?」

 

「拷問がお望みなのか?なら俺の知り合いが働いているオカマバーの人達にフレンチキスをしてもらうとかどうだ?」

 

「それはガチで嫌だな、やめてくれ。いやほんとお願いします。初めては普通に女の子がいい」

 

割とガチ目に土下座する上里、オカマとのキスがファーストキスだなんて普通に死ねる

 

「……て、おい。なんだこの展開は…ギャグ漫画か?ぼくは敵だぞ、罵るなり殴るなりそう言ったアクションがあるんじゃないのか」

 

「あ、もしかしてお前ドM?殴られたいとかそういう性癖ですか?」

 

「違う、ぼくはそんな性癖なんかない」

 

あくまで巫山戯続ける垣根に上里は少し苛立つ、だがふと垣根は真顔になり口を開いた

 

「俺らは別にお前らを殺したいわけじゃねえ。お前も魔神の被害者だからな。だが学園都市を滅ぼそうてのは納得いかなかったらカチコミに来た、でも命までは奪う気はねえよ」

 

「俺も見当外れな復讐をしようとしているお前をぶん殴りたかっただけだしな、命までは取ろうとしねえよ」

 

「……甘い奴らだ」

 

垣根達は上里達の暴走を止めたかっただけで殺す気はなかった。なんと甘い連中なのだろうかと上里は思った

 

「それが超能力者ていう頭がおかしい連中だよお兄ちゃん。常人の私達には到底理解できないよ」

 

「……そうだな、このクレイジー達の思考は平凡な高校生なぼくには一ミリも理解できないよ」

 

『おいコラ』

 

さらっと毒を吐く兄妹達を睨む超能力者達、帆風は思う。二人の言う通りだと

 

「まあそンな事はどうでもイイ、さっさとこの要塞を止めろ。このままだと学園都市に激突するぞ」

 

一方通行がこのHanging Gardens of Babylonの動きを止める様に言う…だが上里は下を向き唇を動かす

 

「……無理だ、Hanging Gardens of Babylonはもう止まらない」

 

『…………はぁ?』

 

「……やっぱりね」

 

垣根達はその言葉の意味が理解できなかった。だが去鳴はなんとなく予想していた様で困った様な顔をする

 

「それはどういう事かしらぁ?」

 

「止まらないんだよ、この要塞はね。元々緊急停止する様なシステムなんかついてない。きみ達にコントロールを奪われると厄介だからね…この要塞には学園都市に激突する…そのコマンドを実行する事だけしか出来ない」

 

「……つまり、どう言うことだ?」

 

「……簡単に言うとこの要塞は学園都市にぶつかる以外の選択肢はない、て事だにゃーん」

 

削板は飲み込めていなかったがそれ以外の全員が理解した。このHanging Gardens of Babylonを止める方法はない。何故なら上里達ですらこの要塞を止める事は出来ないのだから

 

「…この計画を考えたのはローラさんだ。ぼくらが負けてきみ達に停止方法を教える…彼女はこうなる事を予想してそういう術式にしておいたんだろうな」

 

「………コロンゾンめ、クソみてぇな事しやがって」

 

垣根はイギリスで大悪魔が嘲笑っている姿が目に浮かんだ。あの(悪魔)がやりそうな事だ。もうこの要塞を壊す以外しか止まる方法がない

 

「だがこの要塞は15kmもあるんだ…それに防御術式による耐久度強化で核を2,30発食らっても破壊できないんだ…もう無理だ。学園都市は滅びる…きみ達が努力しようがしまいがね」

 

「………ッ!アンタねぇ!」

 

上里の言い方に美琴が怒りのあまり放電しながら上里の襟首を掴もうとする。だがそれを垣根が止める

 

「そんな事したってこの要塞は止まんねえぞ。無駄な事する暇があるならその頭働かせてこの状況を乗り切る手段を考えろ」

 

「………分かったわよ」

 

垣根にそう言われ美琴は上里を睨みながらも、彼へ手を出すのをやめる

 

「……なあ、このデカブツを学園都市に落とす時…お前らはどうやって逃げるつもりだったんだ?」

 

「……何を言っている?」

 

「いやさ、お前らがこのデカブツと心中するなんて考えられねえからさ、脱出プランでもあるんじゃねえかなと思ってな」

 

「………この層…最下層に脱出用コンテナがいくつかある」

 

上里がこの層に脱出用コンテナがあると告げる、上里は上条達が脱出する為にその事を聞いたのかと思った。だから上条が次に言った言葉の意味が理解できなかった

 

「なら、お前らはそれに乗ってここから逃げろ」

 

「………は?」

 

上里は上条が何を言ったのか理解できなかった。上条は強引に上里の身体を起こし彼を引きずる様に歩き出す。垣根達も獲冴達を縄で引きずりながらコンテナまで目指す

 

「な、んで…」

 

敵である自分達を助けようとする、そう上里は問いかけようとした。その前に垣根が口を開けた

 

「それがヒーロー(上条当麻)だからだよ」

 

脱出用コンテナの前に到着した垣根達は扉を開け中に上里達を押し入れる。上里に去鳴、宛鳴と獲冴達総勢 九人が入るにはギリギリだったが無理やり押し込めばなんとか入りきった

 

「……良いのか…?」

 

「何が」

 

「ぼく達は学園都市を滅ぼそうとしたんだぞ、今でもきみ達を恨む気持ちがある…そんな人間を助けても良いのか?」

 

「そうか」

 

上条は笑った、何故彼が笑ったのか上里には理解できなかった。ただ分かった、彼は…いや彼ら(・・)は自分とは比べ物にならない程遠い場所に立っているのだと

 

「なら、学園都市に来いよ。敵としてじゃなくて観光客として、色々案内してやるよ」

 

そう言って上条はコンテナの扉を閉め外側からロックする。直後に短いレールを滑ってコンテナが大空へと投げ出されコンテナはだんだんと小さくなっていく…それを上条は見送っていた

 

「ていとくン、他の連中もコンテナにいれて脱出させたぞ。後はこの個人用の一機だけだ」

 

「そうか、ならサーシャはこれに乗って脱出しろ」

 

「第一の問いですが私がそれに乗ればていとくん達はどうやって脱出するのですか?」

 

「俺らはこのHanging Gardens of Babylonを止めなきゃいけねえ。だからまだ帰れないんだよ」

 

「……そうですか…貴方達の健闘を祈ります」

 

サーシャはそう言うと一人用のコンテナに乗り込み、内側から扉を閉めロックをかける。そして地上目掛けて落下していく

 

「……で、この建物をどうやって破壊する気なんだにゃーん?」

 

「壊すだけ、ただそれだけだ。シンプルだろ」

 

「成る程、その方が俺的には分かりやすいな」

 

「あァ、シンプルでイイな」

 

垣根はHanging Gardens of Babylonを破壊すればいいと麦野に答えながら笑う、削板と一方通行もそれを聞いて笑う

 

「野蛮力高過ぎねぇ…まあ戦闘力皆無な私には関係のないけどねぇ」

 

「私と操祈の散弾液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールショットガン)ならこんな建物完全に破壊出来るわ」

 

「わたくしも建物相手なら全力で拳を振るう事が出来ますわ」

 

そう言いながらも食蜂はリモコンを持ち、美琴は手持ちのコインを確認する、帆風も軽く身体を動かす…それを見て上条が笑った

 

「ああ、やろうぜ皆!俺達でこのデカブツをぶち壊そうぜ!」

 

『おう!』

 

 

Hanging Gardens of Babylonが学園都市に激突するまで残り僅か。Hanging Gardens of Babylonが激突するのを防ぐ為に七人の超能力者と一人の大能力者がその行く手を阻んだ。垣根達は翼を広げ宙に浮き上条達は白いカブトムシに乗る事で宙に浮いていた

 

「俺らの最大火力をそのままアレにぶつける…それだけだ。準備はいいかお前ら?」

 

垣根が純白の翼を羽ばたかせながら上条達に問いかける、それに全員が頷く。そして垣根は未元物質を覚醒させ通常形態よりも遥かに高火力となった太陽光を変換した殺人光線と竜王の顎(セルピヌス)を、上条は7匹の竜王の顎を、一方通行は黒い翼を棍棒の様に振るう、削板は超すごいパーンチを、麦野は極限まで威力を引き出した原子崩しを、美琴と食蜂は散弾液状被覆超電磁砲を、帆風はガブリエルを宿し夜に変え神戮をHanging Gardens of Babylonへと放つ

 

それぞれが放った攻撃は通常の建築物なら影も形も残さず消滅させてもなおお釣りが余る程の威力を誇っていた。だがHanging Gardens of Babylonは上条の攻撃以外の一切の傷を受けていなかった(・・・・・・・・・・・・)

 

「な…効いてない!?」

 

「……チッ、コロンゾンの野郎…防御術式でも構築してやがったな」

 

恐らくはコロンゾンが施していたであろう防御術式に垣根達の攻撃は阻まれたのだ。だがそれが魔術なら上条の幻想殺しで破壊すればいい…そう考えたその瞬間、Hanging Gardens of Babylonの落下スピードが加速した

 

「っ!?厄介な真似を!」

 

コロンゾンはこの防御術式が何かの拍子で起動すればHanging Gardens of Babylonの動きを加速する様に細工でもしていたのだろう。このスピードなら後三分で学園都市へと衝突してしまう…そうすれば学園都市はこの世界から消えてしまう

 

「そんな事……させるかよ!」

 

垣根はそう叫ぶと純白の翼を広げ浮遊要塞へと突き進む。そして下面に翼の先端を突き刺し押さえつけるかの様に力を込める。だがそれでも全くHanging Gardens of Babylonのスピードは弱まらない

 

「く、そ……!」

 

垣根が悔しげな声を出す、自分一人ではこれで限界なのかと…だが垣根帝督は一人ではない。一方通行が黒い翼で浮遊要塞を押さえつける。削板が両手で動きを抑えようとする。麦野が数万発の原子崩しを放つ事で動きを阻害させる。美琴と食蜂の液状被覆超電磁砲が流星の様に何発も撃ち込まれる、上条の竜王の顎が外装を喰らっていく、帆風はミカエルの巨大な剣を具現化し剣を突き刺す…それでもなお動きは止まらない

 

(くそ……止まらねえ!このままじゃ…街が…)

 

上条は焦る、このままでは学園都市が、学園都市に住まう人々が、上条の友達が全てなくなってしまう

 

(ダメだ、そんなのは絶対にダメだ!学園都市を、皆を、俺が、俺達が絶対に守るんだぁぁぁ!!!)

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!!ーーー

 

上条の意思に同調する様に竜王の顎達が叫びを轟かせる。だがこのままでは学園都市に激突してしまう…そんな時上条の中で何かが目覚めた

 

(……ッ!そうか、退魔師(幻想殺し)の力だけじゃ足りないのなら…魔術師(幻想片影)の力も使えば……!これなら…いける!)

 

退魔師の力だけでは足りないのなら魔術師の力も使えばいい。そう思った上条は幻想片影で発動できる最強の能力を顕現させる…それは今まで発動出来なかった異能

 

(今なら使える、あいつを…神浄討魔を従えた今なら…この力を使いこなせる!)

 

その力を発現出来る様になったのはアウレオルス戦の後だった。アウレオルスが顕現させた堕天の王、悪魔王をその身に宿す…上条の背中に12の黒いスパークが迸る

 

「来い光を掲げる者(ルシフェル)!」

 

黒い雷光が上条の背で弾けた、雷光の速度を得た上条が右手から顕現せし七体のドラゴンを引き連れながら浮遊要塞へと激突した

 

「!?その翼は……!」

 

光を掲げる者、神の如き者に敗れた元天使である堕天使にして悪魔の王。ルシフェルとはサマエルやベルゼブブ、ベリアルとも同一視される偉大なる悪魔にして光の竜であるとされる。古代まで遡るとメソポタミアの天の主神 エンリルに叛逆せし怪鳥 アンズーに起源が遡るとされる。またエジプト神話の不死鳥の起源たるベンヌやカナン神話の太陽神に叛逆せし明けの明星 シャヘルなどがルシフェルの前身という説もある

 

「うお"お"お"お"お"お"お"お"おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ルシフェルは悪魔の王として悪しきイメージが強いが神智学において「内なる光・導き手」とされ人間の永遠不変を望む傲慢なる神から人間を救済する為に堕天したのだとされる。また日本においても護法魔王尊としてその名が知られ金星から飛来し人間の魂を進化させたサナト・クマーラと同一視される。そして護法魔王尊はかの源義経に武術を教えた鞍馬天狗だとされる…この様にルシフェルとは単なる悪ではない英雄的な一面を持つ

 

「……は、当麻には負けてられねえな!」

 

「ええ、そうですわね!」

 

ルシフェルは例え地に堕ちようとも人間を救済する為に勝つ事を諦めなかった、共に戦う同士を奮い立たせ神に挑む…その姿はまさに今の上条の様…そしてルシフェルはヨハネの黙示録において七本の首を揃えた赤き竜(レッドドラゴン)だとされる。右手から七本の竜王の顎を顕現させルシフェルの象徴たる六対の翼を展開した今の彼はまさに人類を救済するルシフェルが遣わした化身と言っても過言ではない

 

「いっ………けぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

竜王の顎達が口から黒き雷霆を放つ、黒い雷霆が迸る度にHanging Gardens of Babylonに亀裂が走る。防御術式はもう完全に崩壊していた

 

「これでトドメだ!」

 

垣根が三対の翼を数百メートルまでに巨大化させ、それを縦横無尽に振り回し建物をナイフでチーズを切断するかの如く切り裂いていく。そして瓦礫の雨と化した浮遊要塞が学園都市へと降り注ごうとする

 

「させるか!」

 

上条の一二枚の黒き雷光の翼が五月雨の様に刺突し瓦礫の雨を粉砕していく。僅かに撃ち漏らした瓦礫は帆風達が能力を使って破壊していく…そして最後に残ったのは巨大な瓦礫の破片だ…目視でも数km程度の大きさはあるだろう…だが上条は左手に黒雷の剣を形成する

 

「これで……終わりだァァァァッ!!!」

 

剣を振るった、剣を振るった音が雷鳴が鳴り響く。フラッシュの如く閃光が走る。瓦礫はかけらも残さず融解し蒸発して消えた…もう瓦礫の一欠片も残されていない…

 

「……終わったんだな」

 

それを確認した上条はゆっくりと目を瞑り黒い雷光の翼が唐突に消え地上へと落下し…白いカブトムシに落ちた。そして操祈が気を失った上条の頭を自分の膝に乗せる

 

「お疲れ様なんだゾ私達の王子様(上条さん)

 

「……お疲れ先輩」

 

二人のヒロイン(美琴と操祈)はそう言って安らかな寝顔の上条の頭を優しく撫でた

 

 

 

学園都市から遠く離れたとある場所、そこに上里達は不時着していた。コンテナの扉を蹴り飛ばし強引に外へ出る去鳴、そして彼女の次に上里が外へと出た

 

「……」

 

太陽が澄んだ空に眩い光を放っている。そんな普通な光景が上里には美しく感じた

 

「くそ!超能力者達め!よくも火炙りにしてくれたな!」

 

「ほんまやわ!焼け死ぬかと思ったわ!」

 

「み、水を……誰か、水………死ぬ」

 

「誰か暮亜に水をプリーズなのです!」

 

「琉華、海賊ぽい格好をしているのだから水くらいだせないの?」

 

「無理だよ!冥亜こそ幽霊なんだから気温を下げてみてよ!」

 

「…幽霊は関係なくないか」

 

「……宛那以外煩いなぁ」

 

自分を慕う少女達の騒がしい声が聞こえる、

それが上里には心地よかった。右手の所為で失った筈の日常がそこにあった

 

(…右手のあるなしは関係なかったんだ)

 

例え彼女達は上里に理想送りがあろうとなかろうと慕ってくれる。上里は確信が持てた。自分が今までやって来た事はなんと無駄な事なのだろうか…分かりきっていた事ではないか、自分は何を怯えていたのか…そう思うと上里は自分を自分で鼻で笑った

 

(……上条当麻、きみはこれを教えたかったのか?)

 

上条の事など上里には分からない、それ程まで上里と上条では見ている場所が違うのだ。上里は微笑むと後ろの少女達の方を向く

 

「…去鳴、宛那、獲冴、絵恋、暮亜、琉華、府蘭、冥亜…こんなぼくについて来てくれてありがとう」

 

『!?』

 

戸惑った目を向ける少女達に上里は言葉を続ける

 

「ぼくはこれから自分がやって来た罪の償いをしたい…だから手伝ってくれるか?ぼくの仲間として…ぼくの償いを手助けしてくれるか?」

 

上里のその澄んだ眼を見て呆然とした少女達、だが即座にその顔に笑みを浮かべ上里の問いに答えようとしたその瞬間、上里の右腕が肩の所から切断された

 

「………!?」

 

後方より放たれし一撃は容赦なく右腕を切り離す、理想送り、上里の力の象徴たる右手を失った上里は大地に赤い血を撒き散らし声にならない悲鳴を上げる。だが彼は左手で傷口を押さえ後方を振り返る…そこに立っていたのは一人の少女だった。だがその風貌は歪だった

 

継ぎ接ぎだらけのドレスに生気のない青白い豊満な身体、濃いピンクの髪には赤と青の二色が混ざったリボンを付けその眼は緑に輝いていた。その異質な雰囲気に只者でないと全員が察し上里のみその正体に気づく

 

「…………………魔神?」

 

「正解、あたくしは魔神 ゾンビちゃんなのだ☆」

 

魔神が一柱 ゾンビ、ブードゥー教のルーツであるヴォドゥンにて信仰される「ンザンビ」と呼ばれる神であり、あのゾンビの元ネタとなった神の名を名乗る魔神

 

「君が上里翔流(ワールドリジェクター)ちゃんか、全くコロンゾンめ。あたくし達の零れ落ちた『願い』をこんな子供の右腕に宿すなんて…困っちゃうわ」

 

ゾンビ少女はそう言いながらも笑う、さもこの状況が愉悦とばかりに

 

「な、にが目的だ?」

 

「決まってるじゃない、貴方の抹殺よ。あたくし達をその右手とやらで新天地なる場所に送ろうとしている貴方を、ついでにそのお仲間さん達を殺しに来てあげたのよ。神様直々に殺しに来るなんて君達はとても光栄だね☆」

 

おちゃらけた様子で殺すと宣言するゾンビ、だがその言葉に偽りはない。殺される、上里は確信した。目の前の存在は本当に神様の様な存在なのだと嫌とも理解した

 

「さあ。ここで死んでもらおうか☆」

 

そう言ってゾンビが手を伸ばした瞬間だった、去鳴達が上里の前に立ちゾンビから上里を守ろうとする

 

「お兄ちゃんに手出しはさせないよ」

 

「大将は私達が守る!」

 

「上里さんには指一本触れさせません!」

 

「上里君に手は出させないぞ!」

 

「!?み、皆!?」

 

上里は目を見開いた、そして叫ぼうとした。自分など見捨てて逃げろ、と…だがそう言っても彼女達は聞かないだろう…何故なら全員が上里の事を慕っているのだから…上里が死ぬぐらいなら自分達が死ぬ、死んでも上里を守り抜く…それが彼女達の信念だ

 

(違う、ぼくは女の子達に守ってもらいたいんじゃない!ぼくが彼女達を守…)

 

直後血の華が咲いた、宙を舞う赤い飛沫が世界を彩る…それは去鳴達の血だった、彼女達は血塗れの身体で地面へ倒れる。上里は絶叫する

 

「あ〜あ、また殺しちゃったか〜。さっきも君を慕う女の子達が襲いかかって来てさ〜まあ全員この子達みたいにしたんだけどね」

 

死んでいるのか生きているのか上里には分からなかった、だが気付けば上里はゾンビへと左手を握りしめながら声を上げて突進していた…それは恐怖に駆られての行動なのか、去鳴達の敵討ちなのかは彼には分からない

 

 

 

 

結論から言うと上里は当然ゾンビに返り討ちにされ死にかけていた。もうあと一撃でも喰らえば死ぬだろう…彼の周囲は赤く染まり鉄の匂いが漂っていた

 

「これで終わりか〜じゃ、死んでもらいますかね」

 

ゾンビはそう言って上里へと拳を振り下ろそうとする…だがふとそれを止める

 

「……やっぱりやーめた、この失血量じゃ死ぬだろうし…さっさと隠世に帰りましょ」

 

ゾンビはそう言ってトドメを刺さずに消えてしまった、神の気まぐれといった所か。だが上里はどの道この出血量では死ぬ…意識が朦朧とし始めた時、誰かが歩く足音が聞こえた

 

「……だ、れ……だ」

 

足音からして二人だろうか、上里は全く動かない身体を必死に動かそうとするが動かない。そして何者かの声が聞こえる

 

「生きておったか……儂らの被害者 上里翔流よ」

 

「他の少女達もすぐに病院に送れば助かりそうね」

 

そんな会話が聞こえる、薄れゆく意識の中上里は何者かしれない人物達に声をかける

 

「……貴方、達は…一体?」

 

その問いに彼は、否()は答えた

 

「儂は僧正、真なる『グレムリン』にかつて所属し一人の垣根帝督(少年)のお陰で自らの過ちに気づき、その罪を償おうとネフテュスと共にグレムリンから離脱し他の魔神達を止める為各地を放浪する愚かな魔神じゃよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この小説だとゾンビちゃんは死なずにボスキャラになるよ、やったねゾンビちゃん!そしてていとくん達がハードモードになった(白目)。そして僧正さんとネフテュスさん味方ルート。上里はこれからどうなるのか!?

因みにゾンビのモデルはあの最近有名なアニメ ゾンビランドサガのヒロイン 源さくらですね。声は以前(勝手にクロスオーバーさせて)登場させたタマっち先輩こと土居球子と同じ声の人 本渡楓さんです。いやゾンビと言ったら最近有名なこれかな?と思いまして

さあ次回はギャグなしで上里のその後を書きます。果たしてこれからどうなるのか上里は?そして彼の前に一人の女の子が…理想送り編はまだ終わらない…因みに鳥人メルヘンの元ネタは超人パピヨンです

次回もお楽しみに!
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