カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

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何故かお気に入りが増えてて作者嬉しい。今回はオティヌスの過去とかほんの少しだけ色んなキャラの小話を書きました。だから色々と雑だけど気にしないでね!そして上里はツッコミ役

そして今回はオリジナルの霊装が登場。そして前話の最後に出て来たあの子が本格的に参戦しますよ


その少女は悪魔に魅入られて…

第七学区にある公園、子供達の遊び場にして奥様達の秘密の密談と言う名のおしゃべり会が行われるこの場所は毎日決して多くないが少なくもない人数の女子供がいる今日は平日とはいえもう午後だ。子供達が遊びに来てもおかしくない時間帯…なのに公園にはたった二人の人物しかいなかった

 

「………で、ぼくをここに連れて来た要件は?」

 

「言っただろう、話し合いがしたいと」

 

公園のベンチに腰掛けるのは平凡な高校生を自称する上里翔流。ベンチの背もたれの部分に器用に座っているのが魔神の座を廃棄した魔術師オティヌス。この異質な二人しか公園にはいない

 

「話し合い……か」

 

「ああ、話し合いだ。ここで和解しておいた方が幸先が楽そうだしな…もうここで全ての遺恨を断ち切ろうと思ってな」

 

オティヌスが上里を見下ろしながら告げる、上里はどんな内容が彼女の口から出るのかと目を細める

 

「はっきり言うが私を狙うのは色々とおかしいんじゃないか?」

 

「…………は?」

 

「いや、確かに私は元魔神だ。だが…お前の理想送りに関わったのは他の魔神だ。と言うか私は全く関わってないよな?私は理想送りを型作るための願いなどしていないし…ぶっちゃけ私は同じ肩書きを持ってるから狙われた感が半端ないんだが」

 

「…………」

 

「なあ、私を狙った理由はなんなんだ?もしや魔神だから、て理由だけで私を狙ったとか…そんな訳ないよな?」

 

「………………………………………………」

 

「図星か」

 

上里は目を逸らした、オティヌスはジト目で彼を見つめる

 

「い、言い訳を言わせてもらおう。ぼくはローラさんから垣根帝督が上条当麻と関わったから幻想殺しの方向性が変わりこのままではいけないと思った魔神達がこの右手を作ったと聞かされていた」

 

「……それで?」

 

「……いや、だからその…まあアレだ。きみもそれに関わってたんじゃないかなーと思ってまあ…疑わしきは…罰せよという日本の単語があって…」

 

「もう死ねよお前、いやもうここで殺すわ」

 

オティヌスは黄金で出来たやり 主神の槍(グングニル)を取り出した。それを天へと掲げ雷霆を上里へと放つ。上里はそれを理想送りで消し飛ばした

 

「危なっ!?ちょ、ぼくを殺す気か!」

 

「ああ、そうだが何か?私は勘違いでお前新天地とやらに送られそうになったんだ。殺されても文句は言えまい。という訳で死ね」

 

上里はオティヌスに非難の声を上げるがオティヌスは気にしない。その後も雷霆や雹の雨、風の刃が襲ってくるも理想送りで全て防いだ

 

「……まあ戯れはこれくらいにしておくとして…本題に入るか」

 

「戯れて……まあいい、話すなら話してくれ」

 

攻撃するのを飽きたかの様にオティヌスがベンチに腰掛ける。上里も溜息を吐きながらもオティヌスの横に座る

 

「……お前はあくまでも偶然で理想送りが宿ったと勘違いしている」

 

「………何?」

 

「理想送りは魔神の願いから生まれた能力だ。だが何故その能力は貴様の右手に宿ったのか?簡単だよ、お前の魂の輝きに魅入られたからさ」

 

「……魂の輝き?」

 

唐突にオティヌスは理想送りが上里の右手に宿ったのは偶然ではなく、理想送りが上里の魂に引き寄せられたのだと告げる

 

「幻想殺しが上条当麻の神浄討魔の魂の輝きに惹かれ定着した様に、理想送りもお前の魂の輝きに惹かれた。そうだろう、神里翔流(かみのさとかける)

 

神里翔流、神の里…つまり神が望んだ世界 新天地を鳥が空を飛ぶ様に魚が流れる様にその世界を自在に支配する者。つまりは神の国の支配者たる真名。存在を否定せずに肯定し新たな世界を望む者に救いを差し伸べ世界の理すらも捻じ曲げる…正に理想の能力を定着するに相応しき真名

 

「お前は天然のダイヤだ、お前の信念は「迷いながらも抱いた理想を現実に押し潰される事なく為し遂げさせる」…その右手が示す通り理想を送るヒーロー…理想を肯定しそれを成し遂げる手助けをする事で相手を救う…成る程、上条当麻とお前は似ている様で対照なのだな」

 

歪んだ理想を否定する事で救う上条とは違い、上里は理想を肯定しそれを叶える事で救う…同じ結果を生みながらもやり方は真逆…だが両者とも右手に持つ能力の名がその本質を表している点では一致する

 

「……ぼくはそんな御大層な存在じゃない。女の形をしていれば助けてしまうクソッタレな性質なだけだよ」

 

「いや案外それが普通かもしれないぞ?漫画とかラノベとかアニメを見ろよ、男なんて大体かませか死亡キャラばっかりだが女のキャラは救済ありとか多いだろ?現実でも美少女かハゲで太ったおっさんが道端で困ってたらどっちを助ける?しかも助けた方がヒロインになるとしたらお前はどっちを選ぶ?」

 

「その二択は極論じゃないか?」

 

「で、実際はどっちを選ぶ」

 

「………美少女でオナシャス」

 

巫山戯ているのか真面目なのか分かりかねる会話を続ける二人、オティヌスは主神の槍をペン回しの様に回転させながら口を開く

 

「まあ、難しい事を言ったが貴様は困っている人間がいたら見過ごせない、だから助けてしまう。それが偶々女で好意を持ってしまった。という訳だ…お前がハーレムを築いていたのは右手のせいではなくお前の人柄のせいだな」

 

「……別にハーレムなんか築いた覚えはない」

 

「だが女共がお前に好意を抱いたのはぶっちゃけどうでもいい。重要なのはここからだ、何故お前の周囲ばかりに不可思議な事が起こったのか?これはある意味アレイスターの計画(プラン)に酷似している」

 

「……どういう意味だ?」

 

オティヌスの言ったアレイスターとのプランとの酷似という言葉に上里は反応する

 

「学園都市は上条当麻を成長する為だけに作られた箱庭だ。神浄討魔を成長させる為だけに学園都市は悲劇が起こりやすい舞台となっていた…」

 

「……それとぼくが何の関わりがある?」

 

「ここからが確信だ、何故アレイスターは学園都市を悲劇の舞台にしたのか?それは上条当麻が「拳で悲劇を解決することで最も輝く存在」だからだ」

 

「………何?」

 

オティヌスの言葉に目を見開く上里、オティヌスは言葉を続ける

 

「もし仮に上条当麻が特撮愛好家ならばスーツアクターやらの育成機関になっていた。サッカー好きな少年ならばプロのサッカー選手を育成する施設になっていた…つまり学園都市がこうなったのは「上条当麻の自由な(テレマ)が手本となった」からだ……だが学園都市を作ったのは50年前(・・・)だ。上条当麻はまだ生まれてすらいない。なのに何故アレイスターは学園都市を超能力育成機関にしたのか?…決まっているアレイスターには幻想殺しが誰に行き着くか、そしてその行き着いた先の人物がどんな性質を持つか理解していたからだ」

 

「………そんな事が可能なのか?」

 

「さあな、私はやった事がないから知らん。だがローラ=スチュワートはお前に理想送りを宿した事は理解していた様だがな」

 

「………どういう事だ?」

 

「疑問に思わなかったのか?ローラ=スチュワートが何故お前の前に現れたのか?何故理想送りの正体を知っていたのか?それこそ理想送りを作り出した本人でしか知り得ない事を」

 

「!?ま、まさか…………!?」

 

「そうだ…魔神達の願いに指向性を与え理想送りを作り出した張本人…それこそがローラ=スチュワート…いな大悪魔 コロンゾン。ただ一人だ」

 

コロンゾン、生命の樹の30のアエティールの内、10番目の「ザクス」にわだかまる深淵(アビス)の主。 それこそが理想送り誕生の元凶だとオティヌスは語る

 

「奴は知っていたのだろう。願いが生み出す能力について…そう、理想送りの対たる上条当麻の幻想殺しや右方のフィアンマの聖なる右、そしてお前が以前捕まえようとした鳴護アリサ…それらと同一である原石、魔術、超能力とは違う種別である第四の力の誕生の仕方をな」

 

「……第四の力…?」

 

「それは願いの集積体とも言う、人の願いとは主観を歪める。複数の願いが同一の指向を与えれば因果律にする干渉する力となる。そう例えば鳴護アリサはオリオン号の乗組員や乗客全てが助かりたいと願った事でオリオン号に施されたレディリーの術式とシャットアウラの歌が象って誕生した集積体。聖なる右はローマ正教徒20億人全員の…いや十字教徒全ての願いが集積した神の如き者の名に相応しい万能な絶対的な力。幻想殺しは全ての魔術師達の怯えと願いが結実したもの…そして理想送りは魔神達の幻想殺しに代わる救済の願いが集積体となった」

 

願い、または祈り。無数の同一の願いが指向性を持つと因果さえ狂わせ力が誕生する。それが理想送り。聖なる右やアリサ、幻想殺しと同一なる力だ

 

「コロンゾンは魔神達の溢れた願いに願いに自らの力で別の指向をつけ理想送りを誕生させた。だが誰に宿るかは分からなかったが誰に宿ったかは分かった。そうアレイスターが上条当麻に幻想殺しが予期していたようにな」

 

「……じゃあぼくの周りに事件ばっかり起きたり、女の子を助けてきたのは…」

 

「コロンゾンの仕業だろうな。アレイスターと同じく舞台を整え上里翔流という自分の手駒となるべき存在を手にいれる為だけに悲劇を作っていた…そう考えるべきだろう」

 

「……………ッ!」

 

その事を聞いて上里は静かに憤る、事の全ての元凶が自分の近くにいたのにそれに気づかなかった自分、そしてそんな自分を見て嘲笑っていたであろうあの女狐に

 

「自分を責めるな、あいつは大悪魔、人を誑かす存在だ…騙されたお前に一切の非はない」

 

「……下手な慰めはいらないさ」

 

「……卑屈な奴だな、まあいいじゃがバターでも食って落ち着け」

 

「いやなんでじゃがバター?」

 

「じゃがバターは偉大だ、じゃがバターは美味い、ほら早く食え」

 

慰めのつもりかオティヌスは上里にじゃがバターを渡す、上里は嫌そうな顔をしたがオティヌスはそれを一切気にしない

 

「……昔、とある貴族の少女がいました」

 

「……唐突に何を言い出す?」

 

「その少女は母親と父親、色々と残念な兄との四人暮らしでした」

 

唐突に始まったオティヌスの語りに上里は不審な目で彼女を見る。だがオティヌスは話を続ける

 

 

その少女は疑問に思っていました、何故世の中は不公平なのかと。食べ物が食べられなくて困っている人がいるのに有り余る食べ物を食べきれずに捨てる人がいる。誠実で優しい人が領主の息子に殺されてもその領主の息子は何の御咎めもない事。善人が虐げられ悪人が蔓延るこの世界を疑問に思っていた。何故神様はこんな世界にしたのかと

 

『神様は不公平だ、何で不幸な人と幸福な人に分かれている?』

 

『ーーー、それが人間て生き物なんだよ』

 

『そんなの理解できない、私が神様なら全員を平等にする』

 

『ーーーは子供だな〜、神様なんている訳ないのに』

 

彼女は人の痛みが理解できた、全人類を自分が導きたいとは思わない、ただ全員が不幸にならず幸せになって欲しいだけだ。そんな考えを兄は笑いながらも微笑ましく思っていた

 

そんな兄妹に起きた悲劇、二人の両親が何者かに殺されたのだ。犯人はすぐ分かった、町のならず者だった。彼が両親を殺した理由は「自分が気持ちよく酒を飲んでいる時に父親と肩をぶつけたから」というしょうもない理由だった。そんなつまらない理由で男は父親を家までつけ一緒にいた母親も殺したのだ。幸い兄妹達は家にいなかった為難を逃れた

 

『……母さん、父さん』

 

彼女は貴族だった、父も母も由緒正しい家柄だ。家には兄妹だけでも生活できる金があった。だがその金も親族と名乗る大人達が家に乗り込み奪っていってしまった…兄はそれに申し立てるも殴られて床に倒れ大人達が財産や金目になりそうなものを奪うのを見ているだけだった…そんな光景を彼女は冷めた目で見ていた

 

『ああ、世界は荒んでいる。これではダメだ、これでは父さんと母さんの様な被害者が出るばかりだ…私が何とかしないと』

 

この世の中は腐っている、だから自分が変えなければならないと決意した。例えどんな方法を使ってでも、自分のあらゆるものを犠牲にしてでも…その後彼女は魔術を知り、魔術を極めた魔神なる存在を知る。そして世界を変えるべく魔神になる事を決意した

 

長い道のりだった、彼女は自分が得意な魔術は北欧系だと長年魔術を行使して理解していた。だからこそ彼女は北欧系の魔術の深奥を知り尽くしその智慧を知っていった。後はチャンスだけだ、一万年にあるかないかの希少なチャンスを巻き続けた

 

『待つんだーーー!こんな真似はもうよせ!』

 

『……兄さん』

 

彼女の実の兄が彼女を止める為何度も立ち向かって来た、何度も兄と戦い勝つか撤退するかを繰り返し…その希少なチャンスが訪れる日がやって来た…幸いな事に兄はそのチャンスを棒に振った

 

『……これで誰も不幸にならない幸福な世界になるんだ』

 

そう言って彼女は自分の片目を抉り取り、デンマークのとある島にあるとある城が浮かぶ泉に片目を投げ入れた。そして近くにあった樹に縄を括り付け…自らの首を絞め自分の腹に槍を突き刺した

 

『この状態で9日間生きていれば………私は魔神になれる』

 

これが儀式だ、北欧の主神に深く関わるエピソードを元にした儀式。北欧系の深い知識と魔術師としての素質、そして一万年に一度のチャンス、これらが無ければ成り立たない儀式…そして儀式は成功し彼女は晴れて魔神となり…世界は魔神となった彼女の容量に耐えきれず滅んだ

 

『………は?』

 

少女は何が起こったか分からなかった、何故自分は真っ黒な世界に一人佇んでいるのかと。そして理解した自分という存在に世界が、宇宙が耐えきれなかったのだと…ならばまた新しい世界を作ればいい

 

『…違う、これは私がいた世界じゃない!』

 

何度も何度も世界を作り変え、作り替えた世界からまた本来あるべき世界の姿を取り戻そうと試行錯誤する少女、だがその能力のために世界の本質が見えないため元の世界に戻る事が出来ない。何度世界を作り直しても僅かな疎外感や違和感は拭い去ることは出来ず、元の世界に変えるために途方もない程こ世界の再生と創造を繰り返した彼女は孤独な迷宮に取り残された迷子の様だった

 

『……帰りたい、帰りたい…あの世界に』

 

彼女は元の世界に戻る為に魔神の力を自分自身の為だけに使う事にした。当初の全人類を救いたいという理想は既になく数億の時を生き者の世界に戻るためにその智慧を働かした。そんな永劫とも言える時間の中で彼女はふと気になる存在が現れた事を知る

 

『……今の気配は?』

 

それが何なのか彼女には分からなかった、だが何かしらの気配を感じとりその気配を探した。そしてたどり着いたのは学園都市と呼ばれる場所だった…そしてその気配の人物を見つけた

 

『……お前か』

 

『……へ?魔神、オティヌス?』

 

その男は何故か自分の魔神としての名前を知っていた。そして何故か彼女はその男とじゃがバターを食べていた

 

『……おい人間。何だこれは?』

 

『じゃがバターですが?』

 

『何故こんな物を私に食べさせようとしている?』

 

『オティヌスと言えばじゃがバターだから』

 

『引っ叩くぞ貴様』

 

だがじゃがバターは美味かった

 

『おい、遊びに来たぞ人間』

 

『また来たのか?オティちゃん』

 

『誰がオティちゃんだ、誰が』

 

彼女…オティヌスは度々彼の元へ訪れる様になった。自分と同じ気配がする彼といると元の世界に戻るという目的すら忘れるほどだった

 

『…で、このゲームはどんな内容なんだ?』

 

『百姓一揆をモチーフしたゲームだ、1、2人で悪代官を倒す為忍者とかと戦うファミコンゲームだな』

 

『一揆なのに一人なのか?』

 

 

「おい、結局何の話をしているんだ?」

 

「盟友との馴れ初めの話だが?」

 

「ぼくが何故そんな話を聞かなければならない」

 

上里はどうでもいい話を長いこと聞かされてうんざりした顔をする

 

「まあ簡単に言うとだ、私が望んでいたのは元の世界ではなく理解者だったんだな〜て盟友と出会って理解したと言うことだな」

 

「それならそうと最初から言え」

 

上里は呆れた様に息を吐く、そんな呆れ顔の上里をスルーしてオティヌスは話を続ける

 

「盟友は悲劇を好まない性質のヒーローだ。何が何でもその盟友が救いたい対象を助ける…アレイスターもその対象だった。その結果盟友は自分の右腕と引き換えにアレイスターの娘を取り返した、自己犠牲とまではいかないが…盟友の行動は常軌を逸している所がある…まあヒーローとはそんなものだと思うがな」

 

「……そんなヒーローにお前も救われた口か」

 

「そうだな、盟友と出会ってから私は救われていたと言っても過言ではない。盟友は凄いぞ、絶対に友達になれない様な奴らと普通に仲良くなるしな」

 

「……垣根帝督の事を滅茶苦茶褒めるんだな」

 

垣根の事を大袈裟に褒めるオティヌスに上里がジト目で彼女を見るが彼女は気にしない

 

「他にも誰にも存在を気付かれず独りだった風斬氷華を義妹にしたり、窓のないビルに閉じ込められていたフロイライン=クロイトゥーネに自身の脳みそを複製した未元物質で製造した脳みそを食べさせたり、バチカンまで乗り込んでフィアンマ達とガチンコファイトしたり、イギリスに不法侵入して王室派と騎士派と星のカ○ビィをプレイして友達になったり、学園都市の理事長達とベイブ○ードしたり…」

 

「最初の二つ以外まともじゃないな!」

 

「仕方あるまい、盟友はカプ厨のイケメルヘンだからな」

 

「答えになってないぞ!」

 

上里が一つ以外全部おかしいと叫ぶがオティヌスはカプ厨のイケメルヘンだから仕方ない、と首を振る

 

「まあこの世に存在しない素粒子を引き出したり、その素粒子でカブトムシの形をした自律兵器を作り出す奴だ…常人の頭ではその思考は理解できんさ」

 

「……ツッコミ疲れた」

 

上里はそう言って疲れ切った顔をする、復讐で歪んでいただけで彼は本来はツッコミ役だったのかもしれない

 

「さて…まあ色々と脱線してしまったが…お前の仲間が目覚めないのは恐らく何者かの仕業で間違えない。先程冥土帰しの病院や他の病院に入院しているお前の仲間達を見た時何らかの術式の気配があったからな」

 

「……そう言う事は先に言え」

 

サラッとオティヌスが重大な情報を言うが言うのが遅いよと上里が頭を抱える。ぶっちゃけオティヌスの過去の話とか誰得だよと思った

 

「……恐らくその術式をかけたのはぼくに接触して来た魔神…ゾンビとか言う奴だろう」

 

「ゾンビ…ブードゥー教の至高神ンザンビか。諸動物の母にして貧しい人に味方する正しく慈悲深い神、邪悪な事や悪行などはせず、宇宙の秩序の管理と維持を行なう神。太陽とも同一視され人間の個性すらも作ったとされる偉大なる神。そしてゾンビ伝承の起源にして不思議な力を持つものの総称…成る程厄介な神の名を持つ魔神だな」

 

「……そんなにヤバい神様なのか?」

 

「ああ、ンザンビは不思議な力を持つものの総称…つまりそれに魔術も含まれる(・・・・・・・)。正直言ってどんな術式を扱うのか同じ魔神である私ですら検討がつかない。そもそも魔神の座を捨てた私と魔神であるゾンビでは格が違う」

 

オティヌスですら勝てないと断言する程の実力者なのだと上里は目を見開く、上里は自分はそんな敵に勝てるのかと自信をなくしかけるが右手で自分の頬を殴る

 

「……弱気でどうする、去鳴達を…大事な仲間達を助けるためなら魔神だろうが何だろうがぶっ飛ばしてやる。それに最初の目的は魔神だったんだ、今更臆してどうする上里翔流」

 

そう自分に言い聞かせる上里、それを見てオティヌスが笑う

 

「……それでこそだ、不屈の意志、諦めない心…それこそがヒーローだ。やはり盟友の目に狂いはなかった。貴様もヒーローだよ上里翔流」

 

 

パトリシアはとある大学まで走っていた、親切なスキルアウトが乗せてくれたバイクから大学近くで降りれば間に合う…その筈だったのに

 

「………?」

 

ふと背後から誰かの気配がした、パトリシアが後ろを振り向くと…誰もいなかった。そうパトリシア以外誰もいないのだ(・・・・・・・)。文字通りパトリシア一人だけ、それ以外の人の影はおろか気配すらもしない…流石のパトリシアも不安な気分になる

 

『いひひ……』

 

「!?」

 

そんな時背後から不気味な笑い声がした、急いで振り返るが……誰もいない。空耳かとパトリシアは安堵の息を吐き向き直す…そして

 

『いひひ。初めましてお嬢さん、ひひ』

 

「!?」

 

自分の顔の目の前にその少女は翼を羽ばたかせながら宙に浮いていた。大きく裂けた口にクラゲの様に広がった七色の半透明な髪、額にある人の指くらいなら余裕で入りそうな大穴と異形染みた容貌に人外の者らしきウーパールーパーの羽の様な翼に軟体動物の触手の如き尻尾…そして何よりもその悪意に満ちた不気味な笑みがパトリシアの眼前にあった

 

「きゃああぁぁぁぁ!!?だ、誰なんですか貴方は!?」

 

『いひ。私はクリファパズル545と申します。以後お見知り置きを〜ひひ』

 

クリフォパズル545と名乗ったその悪魔は自分から距離を取るパトリシアの前に一瞬で現れ彼女を恐怖に駆らせる

 

『ひひひ。実はコロンゾン様(・・・・・・)に上里翔流の抹殺を命じられましてね。どうやって殺そうかなーて悩んでたんですよ』

 

「か、上里さんを!?」

 

『いひ、そうですよぉ。そんな時に貴方が上里翔流と仲良くしてるじゃないですか。これはもう貴方を使って上里翔流を殺すしかないな〜と思いこうやって接触しに来たんですよ』

 

そう言って笑うクリフォパズル545。それを聞いてパトリシアは更に後ずさるが悪魔から逃れることは出来ない

 

『いひひ。と言うわけで貴方に憑依してコロンゾン様の命令をさっさと果たしちゃう事にします。いひひひ!』

 

そう言ってクリフォパズル545は右手を自分の胸の中に入れる。そして胸をたゆんたゆんと揺れさせパトリシアが何をしているのかと疑問に思い…そして胸元から銀色に輝く鳥の装飾品を取り出した

 

『ひひひ。これはトート=ヘルメス!エジプトの偉大なる月を司る魔術神 トートとアポロンすら欺くトリックスター ヘルメスの力が混ぜ合わさった最強最悪の神威混淆なのです!』

 

トート=ヘルメス。エジプトの死者すら蘇らせラーの真名を知りその力を奪い取ったイシスの魔術の師である神 トート。そして錬金術とも深い関わりがありかのオーディンとも同一視される多彩な神格持つ神 ヘルメス。その神の力が合わさった最強最悪の霊装、それがトート=ヘルメスだ

 

『いひひ。てな訳で貴方の力……お借りします!』

 

「あ、ああ………あああああああぁぁぁぁ!!?」

 

クリフォパズル545はそう笑うとトート=ヘルメスをパトリシアの胸元に押し付ける。それだけでパトリシアの胸の中にトート=ヘルメスが入り込み…直後パトリシアが苦しげな絶叫を上げる

 

『いひひ!更にぃ〜私も憑依しちゃいますよぉ!』

 

「がぁ!?がああああああああ!!!?」

 

クリフォパズル545もパトリシアの胸の中に入り込んでしまう。更に苦しげな声を轟かすパトリシア…これが本来の神威混淆と彼女の運用方法。神威混淆使用者に憑依し、無理解・不寛容を拡散させる…それこそが正しい使い方なのだ

 

「た、す………て。か………さと……ん…」

 

彼女は手を伸ばした。誰かに助けを乞う様に必死に手を伸ばし……その意識が途切れた

 

 

 

「……ゾンビについて教えてくれて感謝する。ここからはぼく一人でなんとかする」

 

「……そうか、勝手にしろ。だがもし自分一人では限界だと思えば私達が力を貸してやらんことも無い」

 

「………お人好しだな、君も君以外の奴らも」

 

「それが学園都市に住んでる奴らと言うものだ」

 

上里はオティヌスとの会話を終えそのまま何処かへ立ち去ろうとする。そんな上里は黙って見ていたオティヌスだがふと何かに気づき声を上げる

 

「っ!?伏せろ!」

 

「!?」

 

その声にいち早く反応した上里は即座に伏せる、そして上里の頭が先ほどあった所に銀色の光が通り過ぎ近くにあった建物を破壊した

 

「何者だ!?」

 

オティヌスがそう叫ぶと誰かが二人の目の前に現れる。その襲撃者の正体を見て上里は目を見開いた

 

「………パトリシア?」

 

現れたのはパトリシア=バードウェイだった、だが何故彼女が襲撃を?と考える前に上里の目がいったのは彼女が来ている服…まるで古代エジプトの神官が着る様な衣服に頭についた銀色の鳥の冠。そして二体の蛇が巻きついた黄金の杖だった

 

『「はぁい上里さん、私はパトリシア=バードウェイですよぉ」』

 

パトリシアの声だ、同時に何か違うと思った。一人の声にも二人の声にも聞こえる不思議な声。はっきりと聞こえるのになんと言ったか分からない。上里は思った彼女はパトリシア本人なのかと?だが同時に彼女はパトリシアだと言う確信があった…なのに疑ってしまう

 

「なんだ……これは?」

 

上里が思わず呟いてしまう、すると今度はパトリシアではない誰かの声が響く

 

『いひひ。悩んでますかぁ?』

 

「ッ!?誰だ!」

 

『ひひ。私はクリフォパズル545と申しますぅ。コロンゾン様からより貴方の抹殺を頼まれこうして現れました』

 

「……コロンゾン、あの便所ブラシめ。神威混淆をレイヴィニアの妹に仕掛けやがったか」

 

オティヌスが舌打ちする、これでは便所ブラシ(コロンゾン)に自分の同僚の妹を人質に取られた様なものだと

 

『いひひ。さあどうします上里翔流?このままパトリシア=バードウェイに殺されるのがお望みですか?それとも貴方と仲良くなった女の子を切り捨てて殺す事で生き延びる事を選ぶか…どちらか好きな方を選んでください』

 

そう言ってクリフォパズル545は究極の選択を上里へと突きつけた。自分の死かパトリシアの死か…どちらかを選べと

 

「く…………ッ!!」

 

その悪魔の選択に上里は表情を歪める。そんな上里を見てパトリシア(クリフォパズル545)は笑った

 

『「いひひ。さあ上里さん、私と一緒に楽しい、楽しい殺し合い(遊び)をしましょう」』

 

そう言ってパトリシアは二体の蛇が絡みついた黄金の杖を振り上げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オティヌスの過去とかは適当です、オッレルスが没落した貴族とか書かれてたから元は裕福な家の生まれだと解釈、そこから何故魔神になったのか推測しこうなったわけです。そして願いの集積体は某考察を見て取り入れました…聖なる右はあの動画を見るまではフィアンマの右手がミカエルの右手と似てるから偶像の理論でミカエルの力が引き出せてるのかな?と思ってたけど全然違ったみたい…恥ずかしい

そして現れたこの章の真のラスボス クリフォパズル545。ヒロインに憑依して主人公(上里)と戦わせるというある意味王道的(なのか?)な展開を作り出したボスキャラ、そして本編では運用されなかった神威混淆の使用者の憑依もこの作品では行うと言う…はっきり言ってこれまでの神威混淆を使って来た敵とは一味違います

そしてトート=ヘルメス、この二柱の名前は魔術界でもかなり有名でトートは言葉だけで世界を創造した魔術師、イシスがオシリスを蘇生する際にアヌビスと共に手助けをしたほどで月を管理する者で太陽が沈んでいる間はトートが世界を支配するのだとか。ヘルメスは生まれてすぐにアポロンの牛を盗むというとんでもない野郎。そしてゼウスの前で堂々と「自分は盗んで無いよ」と言い張りゼウスに「こいつの嘘つきの才能と窃盗の才能を伸ばそう」と英才教育を受け後にアポロンと自分が作った竪琴とアポロンの杖を交換した…これが商売の始まりとも言われている…そしてヘルメスはオーディンとも同一視され錬金術とも関わりがあり、後にトートとヘルメスはヘレリズム時代に融合され「ヘルモポリス」となり更に錬金術師ヘルメスとも複合しヘルメス・トリスメギストス(三重に偉大なヘルメス)という偉大なる錬金術師になったのだとか…トート=ヘルメスは神威混淆の中でも屈指の強さを誇る霊装です

さあ次回はトート=ヘルメス戦、上里はパトリシアを救う事ができるのか?因みにオティヌスの過去編に出て来た「一人二人なのに百姓一揆なのか?」と言うゲームの元ネタは「いっき」と言うゲームです

次回もお楽しみに!
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