カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

86 / 111
注意、今回はグロい描写があります。苦手な方はそこだけ読み飛ばしてください。ギャグ要素はほぼなし。最後ら辺には微笑ましいラブコメカップリングが…ただし微笑んで読めるとは限りません

あえて言っておきます、自分は縦ロールちゃんが大好きです。嫌いではありません。物語の都合上描写がそうなってしまっただけなんです。原作の二番煎じにはしたくない…この後の展開上こうするしかなかった…そんな思いで書いたらこのザマ…お気に入りや評価が減る覚悟で書きました…批判ばっか来ると覚悟して投稿しました



無限に続く悪夢の中で

帆風潤子は平凡なとある中学校に通うごく平凡な中学生だ。毎朝6時に起き朝食を食べて学校に行く。休日になれば幼馴染の入鹿とその姉である猟虎、その彼氏である誉望達と何処かに遊びに行く。そんな平凡な日常を繰り返している

 

「行ってまいります」

 

両親にそう言葉をかけてから扉を開け外へと飛び出す帆風、手提げ鞄を手に持って学校へと小走りで帰って向かう帆風

 

「今日もいい天気ですわね…いい事がありそうですわ」

 

帆風は家の近くのバス停で10分ほどバスが来るのを待ち、いつもより2分ほど遅れて来たバスに乗り込む。殆どの席が空いておらず自分は6つ目で降りるのでつり革に捕まりバスに揺られながら空いた手で読書を楽しむ事にした

 

「あ、潤子ちゃんじゃないっスか」

 

「あら、誉望さん。この時間に会うとは珍しいですわね」

 

「ちょっと忘れ物したらバス乗り遅れちゃって…このバスに乗ったんっスよ」

 

帆風に話しかけて来たのは帆風が掴まっているつり革の近くの席に座っていた少年、誉望万化という幼馴染の猟虎の彼氏だ。彼は一つ年上の高校生で普段は一つ前の時間のバスに乗っているが今日は乗り遅れ偶然帆風と同じバスに乗った様だ

 

「何読んでるんっスか?」

 

「夏目漱石の「彼岸過迄」ですわ」

 

「あー、彼岸過迄っスか。名前だけは知ってるんスけど読んだ事ないっスね」

 

「他にわたくしが夏目漱石の作品でオススメするのは「吾輩は猫である」と「坊っちゃん」ですわね。後は小泉八雲の「骨董」やナサニエル・ホーソーンの「緋文字」、フョードル・ドストエフスキーの「罪と罰」もオススメですわね」

 

「へー、俺あんまり文字読むの好きじゃないんスけど今度猟虎と二人で読んでみるっス」

 

そう言ってたわいのない会話を続ける二人、その時バスのアナウンスが流れ自分が降りる場所の名前が聞こえた

 

「あ、わたくしはここで降りるので…では、また」

 

「学校頑張ってくださいっス」

 

帆風はそう声をかけてバスから降りて行く、誉望はバスの中から手を振った。帆風はそのまま歩いて学校へと辿り着き、三年二組と書かれたクラスネームプレートが目に入り教室の扉を開ける。先に学校に訪れていた入鹿に話しかける

 

「おはようございます入鹿さん」

 

「ええ、おはようございます帆風さん」

 

軽く手を上げて挨拶をする入鹿、そんな幼馴染を見て頬を緩め教科書を取り出し机の中に入れようとすると…机に何か入っていた

 

「?……これは?」

 

帆風は机の中にある手紙の様な物を取り出した、それを見て入鹿が驚いた顔をし、すぐに笑みを浮かべながら肘で帆風の肩を叩く

 

「あらら〜帆風さん、これって恋文てやつじゃないんですか〜?」

 

「………恋文」

 

つまりはラブレターである、それを聞いて帆風はラブレターを見つめる。入鹿はこのこの〜と揶揄ってくるが帆風は照れて頬を赤く染めたりしない…黙ってラブレターを見ていた

 

「皆おはよう、今日も頑張っていこう」

 

「あ、先生が来ましたね…席に座らないと…それと放課後楽しみですね帆風さん♪」

 

「………」

 

博士、と生徒達にあだ名をつけられた白毛のメガネをかけた理系な老人。彼が教壇に出席簿を開くと同時に入鹿はニンマリと笑って自分の席に座る…帆風はラブレターを手に持ったまま自分の席に座った

 

 

一限目は国語、国語の教師の名前は佐久辰彦という熊の様に大きな男性だ。羅生門の内容を事細かに教えてくれた

 

二限目は美術、美術の教師は不願竜造という男性、設計図を描くのが上手く上野城のミニチュアを作り上げた時は全員で感嘆の声を上げた

 

三限目は体育、帆風が一番得意とする教科で教師はステファニー=ゴージャスパレス。未だに彼女から組手で一本を取った事がない

 

四限目は保険、薬味久子という七十過ぎたババアの癖に見た目はピチピチという理不尽な存在が男子生徒にセクハラ発言をしながら黒板に文字を書き綴る

 

昼休みは入鹿と猟虎、一つ年下の皆から心理定規とあだ名で呼ばれる少女と一緒に弁当を食べた。因みに帆風の弁当の中身はウインナーに卵焼き、トマト、唐揚げだ

 

五限目は音楽、見た目は殺人鬼、中身は少し小心者な元有名交響楽団の指揮者の火野神作がベートーヴェンの第九交響曲「歓喜の歌」を指揮した

 

六限目は理科、「粘性・濃度と次世代演算装置の未来」という本を執筆した有名な教師である松定先生が空気砲の実験をした

 

そして放課後、帰りのホームルームが終わり帆風は帰り支度をしていると入鹿が声をかけて来た

 

「帆風さ〜ん〜、忘れてませんか?今日体育館裏でそのラブなレターの送り主が待ってるんですよ〜?早く行った方がいいですよ〜」

 

「……そう、でしたわね」

 

「?どうしたんですか?元気がない様に見えるんですが」

 

「………いえ、なんでもありません」

 

そう言って帆風は教室から出て行く…入鹿はそんな彼女を見て首を傾げた

 

(何か……大事な事を忘れている様な…なにを忘れているのか…分かりませんが……でも大事な人の事を…忘れている…そんな気がします)

 

何か忘れている、自分にとって大事な人を、誰だったか分からない、いつであったのか、どんな人物なのか…それすらも分からない。でもこれだけは分かる。自分はその人物が大好きだと言う事は分かる

 

(誰……わたくしが忘れているのは…誰なんですの?いやその人だけじゃない…もっと何かを忘れている気が……)

 

そんなもやもやした気持ちの中、帆風は体育館裏に辿り着く、そこには一人の男子生徒が待っていた。彼は顔を赤くしてカチコチになりながらも帆風に向かって口を開いた

 

「ほ、帆風さん!俺、入学式で貴方を一目見た時から好きになりました!一目惚れです!俺と付き合って下さい!」

 

「…………」

 

そう言って頭を下げる男子生徒、どう返事を返そうかと悩む帆風だがふと気づいた。スカートのポケットに何か入っている。帆風は無意識にポケットに手を入れ…それを取り出した。それは小さな赤い二つの玉だった

 

(……あぁ、そうでした。この時の為に、アレイスターさんはこれを託してくれたのですね)

 

帆風は思い出した、自分が好きな人物を、自分の友人達を、全てを思い出した。帆風はそれをギュッと握りしめると自分の三つ編みに触れる

 

(三つ編みも嫌いじゃないですが…垣根さん(・・・・)が褒めてくれたのはこれじゃありません)

 

彼が褒めてくれたのはこの髪型じゃない、彼は自分に何か物をくれた事はないけれど…あの髪型は彼が素敵だと褒めてくれたものだ。それだけで帆風はどんなプレゼントを貰うよりも嬉しかった。未だ答えを待っている男子生徒に向かって帆風はゆっくりと口を開いた

 

「すみません。わたくし、好きな人がいるので」

 

ピキッ、と何かに亀裂が走る音が聞こえた。帆風にはそれが分かった。世界が割れる音(・・・・・・・)

 

「ありゃ〜バレちゃったか〜。でも可哀想に。ずっとこのまま気づかなかったら幸せな生活を送れたのに」

 

神は体育館の屋根に悠々と腰掛け笑っていた。彼女は魔術を極め神の座へと至った者。そして世界を滅ぼした元凶である。名はゾンビ

 

「気づかなかったら家族も友人も何もかも失わずに済んだのに〜自らそれを捨てちゃうなんてね」

 

「わたくしにとって垣根さんがいない世界など偽物以外の何物でもないので」

 

「へぇ〜案外冷たいんだね」

 

「安心してください、自覚はありますので」

 

ゾンビは屋根から飛び降り地面へと着地する。そして帆風と向かい合い帆風はゾンビを睨む

 

「貴方を倒せば世界は元に戻りますか?」

 

「お、もしかしてゾンビちゃんを倒す気?脆弱な人間風情が?笑わせる☆」

 

「やって見ないと分かりませんわ」

 

「無理無理、貴方はあたくしには絶対に勝てない。たかが人間如きがあたくしに勝とうなんて片腹痛し、ですわ」

 

帆風は問いかける、お前を倒せば世界は元に戻るのかと。ゾンビは笑う。お前如きにそれが出来るのかと

 

「『幻想殺し』はあたくしが作った夢の世界で恋人達と夢のひと時を。アレイスター達は因果ごと世界から消し去りました。誰も貴方を助けに来てくれない。永遠(とわ)に一人で孤独な戦いを続ける事になりますがよろしくて?」

 

「上等ですわ。こう見えてもわたくし怒っていますのよ?目の前にわたくしが好きな人を傷つけた相手がいてその相手を許すほどわたくしは度量が大きくはないので」

 

「は、は、は…抜かしやがる♪でも暇潰しにはもってこいですし…いいですわ。特別にこのゾンビちゃんの玩具になる権利を与えましょう。精々精神が擦り切れて廃人にならないようにお気をつけて」

 

怒りの目を向けられてもゾンビはなんのその、逆にいい玩具を見つけたと大喜びだ。そして亀裂が入った世界が完全に崩壊し黒一色の世界となる…そして再びその黒だけの世界に色が現れる

 

「さて、貴方はどれだけ持つかな?数年?数十年?数百年?もしくは数千年、数万年、数億年?まあ、いいや楽しめれば☆」

 

 

 

帆風が目を覚ましたのは手術台の上だった、手足は動かない。拘束されているからだ。照明が眩しくて目を細める…そして一人の術衣を着た男性が帆風の目に映った。帆風は何か言おうと口を開いた。だが声は出なかった

 

(!喋れない!?これは…)

 

帆風が思考する前に、術衣を着た男が手に持っていた銀色に光るメスに似たナイフが帆風の皮膚を野菜の皮を剥くように皮膚を剥き始めたからだ

 

(ーーーーーッ!!!?)

 

激痛が走った、絶叫を上げようとした。だが口はパクパクと動くだけで悲鳴はでない。それを見て術衣の男は微笑む。その苦痛に満ちた顔こそが彼が見たかったものと言わんばかりに

 

男は帆風の全身の皮膚を剥き終わると次は痛覚神経を弄り始める。もう帆風には痛みしか分からなかった。舌を噛んで自殺する事も出来ない。男は大鉈の様な物で帆風の四肢を切り裂いた。ダルマになった彼女を男は引きずって何処かへと連れて行く。地面に擦り付ける度激痛が走った。もう思考するだけの余裕はなかった

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いーーーッ!!)

 

涙が出るのなら枯れるほどまで涙を流しているだろう。普段なら泣き叫ばない彼女でさえもう痛みの余り狂ってしまうほど泣き叫んでいた事だろう。だがそれすらもできない。自殺は愚か狂って楽になる事すらも許されない

 

「ほらよっと」

 

男は無色の液体が詰まった水槽の様な場所に帆風の身体を入れた。同時に焼け付く様な痛みが帆風の全身を襲った

 

(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!???)

 

痛い、その概念すら超えた痛みが帆風の全身に走った。これが痛み、ならば今まで自分が経験してきた痛みなど痛みの内には入らないのではないか、そう思う程の痛みが彼女を襲った

 

彼女の身体は溶け始めていた、この液体は硫酸だった。全身が溶ける感覚など知りたくなかった…同時に帆風は安堵した。これで終われると

 

(か、きね……さ…)

 

そして視界がシャットアウトした

 

 

そして再び眼が覚めるとまた彼女は手術台の上に拘束されていた

 

(…………ぇ?)

 

声は出なかった、そして先程と同じく術衣を着た男が銀色のメスに似たナイフを手に持っていた

 

(ま、さか……)

 

帆風の脳裏に最悪の考えが浮かんだ、そもそもゾンビが一度自分を殺したぐらいで終わらせるような存在なのかと…そして術衣の男は帆風の腹を裂いた。そして帆風が激痛で苦しむ中腑をくり抜いて行く

 

(ーーーッ!?)

 

大腸、小腸、肝臓、腎臓、膵臓…体の中の臓器全てを取り出さんとばかりに取り出されていく自分の臓器…それを見て帆風は吐き気がした。もし吐けるのなら吐いていた。吐きたくても吐けない。彼女の今の気持ちを表すのなら『気持ち悪い』その一言だ

 

(気持ち悪……)

 

そして最後に術衣の男が手に取ったのは脈打つ自分の心臓だった。血で汚れた脈打つ心臓を見て吐き気がし…そして今度は脳天にナイフが突き刺さった

 

(ーーーーーッ!!!!)

 

そのまま頭蓋骨を開いて脳味噌が露わになる、どういう原理か分からないが見えない筈の自分の脳みそが帆風にははっきりと映った。そしてそのままナイフで脳みそをかき混ぜ始めた

 

(ーーーっ!!?)

 

痛みはなかった、脳みそには痛みを感じる器官がないのだから当然だ。だが自分の脳がかき混ぜられる所を見て気持ちがいいわけがなかった…そしてまた視界が暗転する

 

 

また眼を覚ますと今回は液体の中に帆風は閉じ込められていたが拘束されていなかった…いや拘束される必要がないと言った方が適切か。何故なら帆風には身体はなく脳味噌だけの存在だったからだ

 

(身体が……ない?垣根さんの様な感じでしょうか?でも先程よりはマシですわね)

 

マシ、この状態をマシだと言ってしまう程彼女は少し狂っていた。だがこの状態は先ほどの様な痛みはないのだから当然か。まあこの脳みその姿を見ていて気持ちが悪いのは変わらないが…

 

だがそんな幻想も術衣を着た男が現れた事で打ち砕かれる。彼は機械のボタンを押し液体の中に電撃が走った。帆風に絶え間のない激痛が襲う。ショック死すらできず自殺したくても噛みちぎる舌がない。ただ永遠と感じるほどの時間を激痛に襲われ…また意識が遠のいた

 

 

次に眼を覚まして帆風が立っていたのは森林の中だった…ジャングルの様な場所にいた事に驚くよりも手術台に拘束されていない事に安堵する帆風…だが背後から誰かに強く肩を掴まれた

 

「ーーー!?」

 

帆風が驚いて振り向いた瞬間、ゴリッブチッ、と帆風の人差し指を噛みちぎられた

 

「痛っ………!!」

 

民族衣装に赤いメイクの様なものを施した男が帆風の指を咥えていた、その男は帆風に馬乗りになって何やら叫ぶ。帆風にはその言葉が理解できなかった、言語というより奇声に近いその声に誘われて同じ様な姿をした男達が集まって来る

 

(この人達は…まさか、食人族?)

 

帆風の考えを裏付ける様に、その男達は帆風に群がり彼女の指を噛みちぎり、四肢を裂き眼を抉り、腹を切って臓器を口にする

 

「あ"、が!ぐぎぃ……!?がぁああ!!い、痛ぁっ…や、やめ…………!」

 

帆風の懇願の声も届かない、帆風は全身を貪られる感覚と共に意識を失った

 

「さぁて、後どれぐらい精神は持つのかゾンビちゃん、ワクワクしてきたぞ☆」

 

 

その後も帆風は様々な地獄を味わった、魔女狩りで十字架に磔にされ恐らくは十字教徒であろう人々に石を投げられたり糞尿を浴びせられたり、最後は斧で首を刈られて殺された。それだけでなく火の中に超時間放り込んで熱した岩を両手で持たされ、手足を縛れ泉の中に沈められ、塔の先端に縛られ落雷を浴びせられ、一月も水と食料を口にする事なく牢の中で衰弱死され、火炙りにされて殺された。それを何度も何度も繰り返した。もう数が数百回を超えた所から覚えていない。だが帆風の心は折れなかった

 

 

ゾンビは魔女狩りに飽きたのか、次に行ったのは某ゲームを連想させるかの様なゾンビに襲われる世界だ。死人達に襲われ帆風は食人族の時同様に全身を貪られた、しかも今度は自分もゾンビになってしまうウイルスに感染してしまうというオマケ付きだった、ゾンビになると堪え難い激痛が走り自分が生き残った他の人間に殺されるまで決して死ねない。その生き残りに殺されるまで何年も、何十年もその痛みに耐え続けなければならない…それを何百回と繰り返し…帆風はそれに耐え抜いた

 

 

これにも飽きたのかゾンビが次に用意した遊戯(世界)は人間ではない異形な者達に殺される世界だった。それは妖怪、時代は安土桃山時代辺りだろうか、妖怪達は人間の生き肝を好物とし帆風だけでなくその他の人間にも襲いかかり生き胆を帆風の眼の前で食べていく、当然帆風自身も妖怪達に襲われた。何度も何度も人が死ぬ瞬間を眼にした、それでも帆風の心が折れる事はなかった

 

 

次は宇宙の果てからやって来た旧支配者達に帆風が玩具にされる世界、ある旧支配者には永遠に石化され何百年も石化したまま過ごし、蜘蛛の邪神には糸でがんじがらめにされた後捕食され、蛆虫の様な邪神が放つ冷光に当てられ大理石の様に白化し凍結された、ある蛇神の怒りに触れ自らの腹を突き破って現れた額に三日月の紋章を持つ巨大な蛇に食い殺され、五芒星から出現した黒い炎に焼き殺されたり、とある地球外生命体に生きたまま脳を摘出され、特殊な円筒に入れて永遠に宇宙空間を飛び回った…それでも帆風の心は挫ける事はなかった

 

 

眼を覚ますとそこにはゾンビが帆風の顔を覗き込んでいた

 

「ねえ、メンタル強過ぎない貴方?普通何百年も生き続けたり、何千回も殺されたら精神おかしくなる筈なんだけどなぁ〜」

 

「………地獄に落ちろ」

 

「ワォ辛辣ぅ♪ゾンビちゃん怖い人は嫌いだぞ」

 

「貴方なんかに好かれたくもないですわ」

 

悪質な笑みを浮かべるゾンビに対し、帆風は今まで見た事ない程の冷たい眼をゾンビに向ける。それを向けられてもゾンビは笑みを崩さない

 

「もういい加減に諦めちゃえば?もう生きるのを諦めた方がいいよん」

 

「巫山戯ろ、ですわ。わたくしは貴方を倒すまで決して諦めませんので」

 

「えぇ〜この子面倒臭い〜。もうゾンビちゃんも飽きて来たていうか〜もう退屈なんだよ。新しい刺激がない」

 

「ならわたくしに殴り飛ばされて見てはいかがですか?」

 

「パスパス、ゾンビちゃんは人を殴ったり不幸にするのは好きだけど…自分が同じ事をされるのは大嫌いなんだ〜」

 

「この下衆が……」

 

巫山戯た事を抜かすゾンビにいつになく冷たく容赦無い言葉を吐きかける帆風、それを見たゾンビは彼女の心の支えを壊さなくては帆風は諦める事はないとようやく気付いた

 

(ん〜この子の支えて何だろう?友達?家族?いやいやそんな低俗なものじゃないでしょ。となると…垣根帝督(イレギュラー)かな?)

 

帆風潤子の心の支えは「垣根帝督に会いたい」。それを心の支えとし何千回殺されようがもう数えるのも馬鹿馬鹿しい年月を過ごしても折れなかった理由だ…垣根帝督に会いたい、その考えがある限り彼女は決して折れないだろうーーーーーーー逆を言えばそれさえ無くせば折れるのは容易とも言えるのだが

 

「なら次の世界(遊戯)はこんな風にしてみよう」

 

 

帆風が立っていたのは第七学区の街中だった

 

「……学園都市…?」

 

随分久しぶりにその光景を見た気がした。もう何百何千年も見ていなかった光景だ。懐かしさを感じて帆風は自分が悪夢の世界で長い年月を過ごしたのか嫌でも理解出来た

 

(……例えどんな責苦でもわたくしは決して諦めません。垣根さんに会うまでは絶対に…)

 

そう心の中で帆風が呟こうとした、まさにその瞬間だった。自分の視界の端にあった宝石店に、自分が探している男性が、垣根帝督(・・・・)がいた

 

「……………垣、根…さん?」

 

ホストの様な格好、整った顔立ち…間違いなく垣根帝督だ。帆風が見間違える筈がない。帆風はその姿を見て胸から何かがこみ上げた…そして同時に涙が溢れた

 

「……ね、さん……きねさん……かきね、さん、垣根さん!ああ垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん!ずっと、ずっとずっとずっとわたくしは貴方に会いたかった!」

 

無意識に走り出した、彼に会える。自分の悪夢の様な世界を乗り越え漸く自分は彼と出会えたのだと…その喜びの気持ちのまま…彼の隣にいた金髪の女性が彼に声をかける

 

「ねえ帝督、この指輪なんか貴方に似合うと思わない?」

 

「お、いいな。操祈(・・)にも似合いそうだし…これにするか」

 

「………………ぇ?」

 

その女性は食蜂だった、二人はペアルックの指輪を手にとって笑い合っていた。どういう状況か帆風は理解出来ない

 

「ほら、俺がつけてやるよ」

 

「え!?……もう帝督たら強引力強過ぎよぉ」

 

「安心しろ、自覚はある」

 

垣根はそう言って優しく微笑むと食蜂の薬指にゆっくりとエメラルドが飾り付けられた黄金の指輪をはめていく…食蜂の白い頬がピンクに染まっていく

 

「ほらな、やっぱり操祈にはこれが似合うよ」

 

「……ありがと帝督」

 

「それはこっちのセリフだよ、お前のお陰で俺は闇から抜け出した。人殺しの俺に手を差し出してくれたのは…お前だけだよ操祈」

 

「それを言ったら、デッドロックから私を助けてくれたのは何処の天使様だったかしらぁ〜?」

 

そう言って二人は笑い合っていた、それは幸せな恋人達の青春の1ページ…そんな光景を帆風は静かに見ていた

 

吐き気がした、自分の好きな人が、自分が女王と呼んでいる少女と笑い合っている…酷い吐き気がして帆風は近くの壁にもたれかかった。今の自分はなんの干渉も出来ない。ただこの幸せ(地獄)を見ている事しか出来ない

 

 

また世界が変わった、今度は垣根が学生鞄を手に持って歩いていた。そんな彼に栗髪の少女が走り寄ってくる

 

「ちょっと!私を置いて先に行かないでよね!」

 

「お前が遅いから悪いんだよばーか」

 

その少女は御坂美琴だった、美琴は垣根の肩に寄り添う様にくっつく。垣根はそれに対して何も言わず抱き寄せる。美琴は頬を赤くして垣根と手を繋ぐ

 

「美琴たんは甘えん坊だな」

 

「美琴たん言うな」

 

そう軽口を叩きながら幸せそうに歩く二人、美琴は視線を垣根から外しアイスクリームの屋台を見つけ暫くそれに釘付けになる…垣根はそんな彼女を見て笑ってアイスクリームの屋台に近づきバニラアイスを一つ買う

 

「ほらよ」

 

「え、いいの?」

 

「ま、俺はお前の彼氏だし。彼女が食べたそうに見てたもんを買ってやるのは当然だろ?」

 

「……ありがと」

 

パクパクと小動物の様にアイスクリームを頬張る美琴、そんな彼女を黙って見ていた垣根は彼女の頬に軽く口付けした

 

「ふにゃ!?ち、ちょっといきなり何すんのよ!」

 

「悪い、つい可愛くてな」

 

「〜〜〜っ!!も、もう!」

 

いきなりの出来事に困惑しながらも大きな声を上げる美琴、垣根は可愛過ぎてつい手を出したくなったのだと笑った。それを聞いて美琴は顔を真っ赤にして…垣根から顔を背けた…が、にやけ顔だった

 

学生同士の仲良しなカップルの1ページ、それを帆風は口元を押さえ吐き気を我慢しながら黙って見ていた。全身から熱が引いていくのが分かった。嫉妬などという生半可な言葉では説明出来ない感情が帆風の胸の中に蠢いていた

 

 

また世界が変わった、何処かの家のリビングだった。いかにも高そうな家具や装飾品が置かれている…ソファーには金髪の女性がふっくらと膨らんだ下腹部を軽く撫りながら座っていた

 

「……あら、また動いた。お父さんに似てちょっとヤンチャな子なのかしら?」

 

「誰がヤンチャ坊主だ」

 

「違うの?」

 

「違くねえな」

 

そう言って笑い合う二人、帆風はその女性を知っている。心理定規だ。垣根は彼女に近づくとお腹に耳を当てる

 

「お〜聞こえる聞こえる。相当なヤンチャ坊主だな…いや女かもしれねえが」

 

「ふふふ、そうね……ねぇ、名前は何にする?」

 

「気が早えんじゃねえか?まあ俺はお前が決めた名前ならなんでもいいけどな」

 

「あら、それは困るわ…貴方に名前を決めて欲しいんだもの」

 

そう夫婦らしい会話を続ける垣根と心理定規、垣根は軽く彼女のお腹を撫でる

 

「俺は女の子が生まれてきて欲しいな」

 

「私は男の子がいいわね…でも、貴方と私の子なら性別は気にしないわ」

 

「奇遇だな、俺もお前と一緒だよ」

 

そう言って微笑み合う二人、それは幸せな夫婦達の生活の1ページ。床に膝をついて沈黙したままそれを見入る帆風…これはまやかし、ゾンビが作った偽りの世界だとしても…今までのどんな世界よりも、彼女の心を苦しめた

 

 

また新しい世界に帆風は立っていた、学園都市の何処かの歩道を垣根と頭に花飾りをつけた少女が二人マフラーをして歩いていた

 

「暖かいですね垣根さん」

 

「そうだな」

 

その少女…初春は少し照れ臭そうに垣根と一緒に歩く

 

「こうしてるとあったまりますね〜、それに恥ずかしさで火照りますし」

 

「そうだな、まあ俺はそんなエコプレイ興味ねーけど飾利が好きなら俺は付き合うぜ」

 

「ちょ!?まるで私がドMで人に恥ずかしい所を見られて興奮する変態みたいじゃないですか!」

 

「え?違うの?」

 

「違いますよ!」

 

ギャーギャーと騒ぎ立てながら反論する初春、垣根は指で耳を抑えて聞こえないふりをする

 

「だって佐天の奴にスカート捲られてもその時怒るだけでそれ以上は怒んねえし、本気で止めようともしねえからそういう趣味かとばかり思ってた」

 

「あれは佐天さんがいくら言ってもやめないから諦めてるだけです!興奮なんかしてませんよ!」

 

「そう、形ばかりの反論をするドMな飾利ちゃんなのでした」

 

「だからドMじゃありません!」

 

そう言って喚く初春、そんな彼女に垣根は笑みを浮かべながら彼女の口を自分の口で塞いだ

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」

 

「………これで少しは静かになったか?」

 

「〜〜〜ッ!!ず、ズルいですよ垣根さん!キスで無理矢理黙らせるのは卑怯です、反則です!」

 

「でも嫌じゃねえだろ?」

 

「そうですけど!こういうのは雰囲気とかムードとかが大事なんです!」

 

「俺にお前の常識は通用しねえ」

 

そう言ってニマニマと笑う垣根、初春は顔を真っ赤にしてポカポカと垣根を殴り続ける。それは恋人同士の幸せなデートの時間の1ページ…それを見て帆風は心の中の大事な何かが音を立てて崩れ始めたのを感じ取った

 

 

そこは結婚式場だった、そこにはこれから夫婦になる白いタキシードを着た青年と白いウェデイングドレスを着た少女がいた

 

「その服似合ってるぜオティヌス」

 

「お前も様になっているぞ帝督」

 

オティヌス、元魔神の黄金の様な美しい金髪とエメラルドの様に輝く碧眼の少女。彼女はウエディングヴェールを頭に乗せて微笑みながら垣根を見ていた

 

「……私はお前しかいなかった」

 

オティヌスがそう微笑みながら垣根に言葉をかける

 

「私は兄を捨て、世界を捨ててでも魔神になって世界をより良くしようとした。そして失敗して孤独になった。私はずっと一人だった。永遠とも思えるほどの時間を過ごした…そんな時お前と出会った。最初は主神の槍を製造する為の鍵としか認識していなかった。でもお前と触れ合う度に私はお前に惹かれていった…そしてお前は私を助けてくれた…その時気付いたんだ。私はお前に恋をしていたんだと」

 

「………おいおい、今そんな恥ずい事言わないでくれよ。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる」

 

「煩い、私だって恥ずかしいんだ」

 

そう言って太陽の様に眩しい笑みを浮かべるオティヌス、彼女を見て垣根も笑った

 

「"好き"という感情はお前の未元物質以上に説明できないものなのだな。どうして好きになったのか分からない……分からないのにお前が欲しかった、いつの間にかお前の事しか考えられない様になっていた……全く神を手篭めにするなど罰当たりな奴だよお前は」

 

「お褒めに預かり至極光栄です女神様」

 

垣根はオティヌスの白い肌に優しく触れる、そしてオティヌスの両頬を両手で抑え…小鳥が木の実を啄む様に口付けした。口の中で舌と舌と絡み合った…口を離すとネットリとした透明な糸が二人の口と口の間に出来た

 

「……帝督」

 

「……オティヌス」

 

愛おしげに見つめる二人、そんな空気の中扉が音を立てて開き金髪の男性…オティヌスの兄であるオッレルスが入ってくる

 

「…お楽しみの最中悪いけど式の時間だよ二人共」

 

「……タイミングが悪いなクソ兄貴」

 

「すまない、だが妹の晴れ舞台を早く見たいんだよお兄ちゃんは」

 

「へいへい、義兄さんの言う通り行きますか。ほら行くぞオティヌス」

 

「………ん」

 

垣根はオティヌスに手を差し伸べる。オティヌスは笑いながらその手を握り…垣根にエスコートされる形で自分達の結婚を祝福する人達の元へと向かった

 

 

そんな光景を見続けて帆風は等々我慢出来ずにその場で嘔吐した、嗚咽を漏らしながら胃の中にあるもの全てを吐き出さんばかりに吐いた。そこに乙女の恥じらいはなかった。お嬢様としての威厳と可憐さはなかった

 

「これで分かったんじゃない?」

 

とん、と帆風の肩をゾンビが優しく叩く。動かない帆風にゾンビは甘い囁きを口にする

 

垣根帝督(イレギュラー)にとって女なんて誰でもいいんだよ。自分にとって都合がいい女なら誰でも愛する軽薄な男なのさ。ああ、なんて可哀想なんだ。君が愛した男はなんて軽薄なのか。でも分かったでしょう、貴方がこんな目にあって会う価値がないと言う事に…だから諦めちゃいなよ。言っておくけどこれはまやかしや作り物じゃない。数多くある選択肢の中でイレギュラーが選んだ世界。つまりあり得たかもしれない世界て事だよ」

 

そう帆風に言い聞かせるゾンビ、帆風がこんな酷い目にあってでも会う価値などあの男にはない。垣根は女なら誰でも愛する軽薄な男だ、都合のいい女がタイプな下衆なのだと言い聞かせる。だから諦めろと笑いながら囁くゾンビ…だが、だとしても、それでも、彼女は諦めない

 

「……確かに世界が無限にあるとしたら、垣根さんは先程の様にわたくし以外の誰かを選ぶでしょう…ひょっとしたらわたくしなんか垣根さんは選んでくれないかも知れない」

 

「なら」

 

「でも、だとしても…わたくしは諦めません。わたくしは垣根さんが好きです、愛しています。その思いが決して伝わらないのだとしても、叶わなくても関係ありません。垣根帝督はわたくしの初恋の殿方です。彼の方に会うまでわたくしは諦めない!」

 

帆風の心は折れない、砕けない、壊れない、挫けない、曲げない。垣根に会うまでは決してゾンビに負けやしない。それが彼女の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)だった。故にこの程度の絶望で彼女の心は負けやしない

 

「わたくしは諦めません」

 

その言葉こそ今の帆風を象徴するに相応しい不屈の言葉だった。それを聞いてゾンビは一瞬顔を固め…舌打ちした

 

「………チッ、いくら温厚なゾンビちゃんでもいい加減頭にきましたわ。いいでしょう、貴方はわたくしが直々に手を下して殺してあげます。そして何度でも生き返らせてまた殺しましょう。自らの死を何千、何万、何億回も繰り返せば諦めてくれるでしょう!てな訳で死に戻りを極めましょう!」

 

本性を剥き出しにして手刀で帆風の首を切り落とすゾンビ、一瞬で帆風の視界は真っ暗になり…気づけば闇の世界に立っていた

 

「さあ、ここからが本番!何度死ねば心が砕け散るんでしょうねぇ!?」

 

ゾンビに天使崇拝(アストラルバディ)も通用するか分からない。不利というレベルではなく単純に蹂躙されるだけであろう帆風…だが彼女の眼は死んではいない、勝てなくてもいい。諦めなければいいのだから

 

「こんな所でわたくしは折れません。こんな所で折れているようでしたらわたくしは決して垣根さんの横に並び立つ事は出来ませんので」

 

帆風潤子(少女)魔神 ゾンビ()に挑む。少女は揺るぎない想いを胸に抱き神へと叛逆した

 

 

 

 

 

 

 




………書いててわかった、縦ロールちゃんメンタル強過ぎない?上条さんレベルじゃないか。因みにていとくんならもう最初の段階で詰んでた。やっぱり縦ロールちゃんは主人公(ヒーロー)なんだなて分かりました…因みに作者はこれを書いてるだけで吐き気がしました。なら書くなよと思うかもしれませんが…作者は頑張って書き切りました

因みにグロ描写の元ネタは「フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」」と「魔女狩り(新約5巻の行間に書かれていたフロイラインに行った拷問)」「クトゥルフ神話(ガタノソア、イグ、ミ=ゴ、ルリム・シャイコース、アトラク=ナクア、クトゥグアの化身の一つ 生ける漆黒の炎)」「ぬらりひょんの孫 過去編」「バイオハザード」「映画 食人族」です。食人族は母にこの映画、滅茶苦茶グロいよて言われて調べて吐き気がしました

帝風以外のカップリング、普段ならいいカップリングやな〜て思う程度ですが…単なる縦ロールちゃんの心を折るための失恋またはNTRですね…皆さんも考えてください。自分にとって大切な人が他人に、しかも知ってる奴に取られたと…想像もしたくないわ…でもこれに耐えきった縦ロールちゃんて一体…

次回は意外な人達が登場。果たしてこんな絶望の淵みたいな状況から縦ロールちゃんは勝てるのか!?そして早く出てこいていとくん!そして次回は……帝風のラブコメありです

次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。